2016年

 

竹田 潔≪免疫制御学≫ Lypd8は有鞭毛細菌と大腸上皮を分け隔てる

免疫制御学-1
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2016年3月30日 発表
掲載誌Nature(2016) doi:10.1038/nature17406

Lypd8は有鞭毛細菌と大腸上皮を分け隔てる

近年患者数が増加の一途をたどる潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の原因の一つとして、主に腸管上皮によって形成される腸管粘膜バリアの破綻が知られています。実際、腸管粘膜のバリア機能が低下しているマウスにおいては粘膜への腸内細菌への侵入が観察され、腸管炎症が起こるまたは起こりやすくなっていることがわかっています。すなわち、粘膜バリア形成のメカニズムの全容解明は炎症性腸疾患の病態解明に重要であるとともに、新たな治療法の開発の可能性を広げます。おびただしい数の腸内細菌が存在する大腸では、粘膜バリアの一つである粘液層に厚く覆われており、腸内細菌が容易に大腸組織に侵入できないことがわかっていますが、どのように細菌の侵入を抑えているかに関してはよくわかっていませんでした。
私たちの研究グループは、大腸上皮細胞に特異的に高く発現するLypd8に着目しました。Lypd8は高度に糖鎖修飾されるGPIアンカー型蛋白質で大腸管腔内に恒常的に分泌されていることがわかりました。またヒトにおいてもマウスと同様に大腸上皮に発現していますが、潰瘍性大腸炎の患者では発現の著しい低下が観察されました。Lypd8を欠損するマウスを作製すると、このマウスの大腸では正常であれば無菌に保たれている内粘液層に腸内細菌が侵入しており、特に大腸菌やプロテウス属菌などの有鞭毛細菌が侵入していました。有鞭毛細菌の多くが悪玉菌として知られ、腸管炎症との関連を指摘されていることから、次にLypd8欠損マウスに腸炎を引き起こし、野生型マウスと比較すると、有意に腸炎が重症化しました。次に、Lypd8分子の機能をさらに解析するため、有鞭毛細菌の一つであるプロテウス菌を使って、Lypd8分子の細菌への作用を調べました。電子顕微鏡を用いた観察でLypd8はプロテウス菌の鞭毛に結合することがわかり、さらに寒天培地を用いた実験にてLypd8はプロテウス菌の運動性を抑制することがわかりました。
本研究の結果より、大腸上皮に高く発現するLypd8は、大腸管腔内に分泌され、特に有鞭毛細菌の鞭毛に結合し、運動性を抑制することで細菌の粘膜への侵入を防止し、腸管炎症を抑制していることがわかりました。

URLhttp://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/ongene/