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開催延期のお知らせ: 研究講演会:中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)研究 10年の歩みと今後の展望


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台風のため、開催を延期します。
日程・場所等が決まりましたら、改めてお知らせいたします。

概要

 大阪大学大学院医学系研究科の平野 賢一助教(循環器内科学)らは「中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)研究 10年の歩みと今後の展望」というタイトルで研究講演会を開催します。中性脂肪蓄積心筋血管症1は、大阪大学医学部附属病院にて発見された新規の難病です。TGCVの患者さんは心臓のエネルギー源である中性脂肪を利用できず、中性脂肪が心臓や血管に蓄積することにより重症の心不全や冠動脈疾患をきたします。心臓死した解剖例の探索から患者数は国内において4~5万人程度と考えられますが、現在、確定診断数は138例(内、死亡27例)に過ぎません。TGCVでは、コレステロールを低下させる治療や通常の狭心症薬・カテーテル治療などに抵抗性を示すため極めて高リスクです。このようなTGCVにおける「未診断・診断遅延、治療困難2」を解決するための診断法・治療法の開発・実用化は危急の課題です。

 この度のTGCV講演会では、医療関係者、医学部・薬学部等の研究者・学生、企業関係者等に向けて、この病気の診断・治療法の研究開発について、最新のトピックスと10年の歩み・今後の展望についてご報告させて頂きます。

イベント概要

場所大阪大学 銀杏会館(吹田キャンパス)

日時 平成30年10月6日(土)13:00~16:00
参加費 無料
対象者 医療従事者・研究者、医療系学生、企業関係者など

イベント開催の背景

 平野 賢一助教らの研究グループは、CNT研究室、Japan TGCV study groupとして新規疾患の発見から診断・治療法の開発までを一貫してアカデミアで行ってきました。脂肪酸の一種であるカプリン酸3がTGCVで細胞内に蓄積した中性脂肪を分解すること、また、カプリン酸がTGCVの心臓でのエネルギー源になり、症状を改善し得ることを見出し、カプリン酸を用いたカプセル剤を開発しました。医師主導治験など医薬品としての開発を続ける一方で、治験参加の機会がなかった重症患者さんに対して栄養療法を行いました。栄養療法により、重症心不全から心機能が正常化した患者さんや冠動脈硬化が改善し6年にわたり狭心症がなくなった患者さんもおられます。本治療法は、安全かつ低コストであり、昨今の医療費高騰による保険医療制度への影響が少なく、また、他の希少難病や心臓疾患、内分泌代謝疾患にも応用が期待できます。CNT研究室は、アカデミア開発でデスバレー4を渡り切り、本治療法を1日でも早く患者さんのお手元に届けるため、平成31年1月から中性脂肪研究センター (Triglyceride Research Center, TGRC) として研究開発を展開して参ります。

本件に関する問い合わせ先

平野 賢一(ひらの けんいち)
大阪大学 大学院医学系研究科 循環器内科学 助教
TEL/FAX: 06-6872-8215  平野携帯: 090-8656-5518
E-mail: khirano@cnt-osaka.com
URL: http://www.cnt-osaka.com/

用語解説

※1 中性脂肪蓄積心筋血管症 (Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy, TGCV)
 平野助教らのグループが、2008年に国内の心臓移植の患者さんから発見し、New England Journal of Medicine誌に報告した病気。
ヒトの心臓が1日に10万回程度拍動するための主なエネルギー源は、長鎖脂肪酸 (Long chain fatty acid)であるが、この病気では、心臓が長鎖脂肪酸を使えず、中性脂肪が心臓の筋肉、血管に蓄積する。いわば、心臓の肥満とも言える病気である。結果として、心臓の機能が低下、中性脂肪蓄積型の動脈硬化が進み、難治性の心不全、狭心症を引き起こす。身体の肥満や高脂血症とは、必ずしも関係なく、痩せていても、或いは、血中の中性脂肪が正常でも、この病気に罹患する可能性がある。糖尿病が合併している場合が多い。
(参考文献)
1. Hirano K, et al. N Engl J Med. 2008 (IF 72).
2. Hirano K, et al. Eur Heart J 2013 (IF 23).
3. Ikeda Y and Hirano K, et al. Eur Heart J 2014 (IF 23).
4. 平野賢一 日本内科学会雑誌(特別掲載) 2017.
など、英文25編、和文16編。

※2 希少疾患における未診断・診断遅延、治療困難
  多くの希少疾患患者は、情報の不足、医療サイドの経験不足などによる「未診断・診断遅延、治療困難」の問題を抱えている。TGCVのような新規疾患概念の場合は、特にその啓発・教育が重要である。
治療法についても希少疾病用医薬品の価格高騰が患者の大きな負担、保険制度を圧迫することが珍しくない。Lancet誌は、2015年に “Reducing the cost of rare disease drugs”というEditorialを発表している。後述のごとく本研究開発で用いるカプリン酸は既知の栄養成分であり、低コストでの提供が可能である一方、実用化に際しては製薬会社などの関心を引きにくい。食品会社も機能性食品などはあくまで「健常人が対象」であるため重症疾患患者への提供は難しい。

※3 カプリン酸
 中鎖脂肪酸は、自然界に存在する油で、ココナツの核(種)などに高濃度に存在する成分で、ヒトでは、母親の乳腺で合成される脂肪酸の中で最も量が多い。これまで50年にわたり、多くの病気(内科、外科、小児科、神経内科、内分泌代謝内科)に対して、食事療法として使用されたことがある。TGCVの治験では、中鎖脂肪酸から、TGCVによって心臓に蓄積した中性脂肪を減らす事の出来る有効成分のカプリン酸を高純度精製して使用している。また、TGCVのみならず、他の疾患への適応拡大が期待されている。

※4 デスバレー(死の谷)
 「技術開発が資金調達の問題から実用化に至らない状態」を指す。医療開発において、資金や様々なリソースの不足や法律、制度等の外的要因なども含めて、基礎研究が応用研究に、または研究開発の結果が事業化に活かせない状態を示す。