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虚血性心筋症治療用の骨格筋芽細胞シートの再生医療等製品として初の移植を行いました

ポイント

■虚血性心筋症の患者さん自身の細胞を用いた骨格筋芽細胞シートが保険適用されてから、初めての移植を実施
■今後、心臓移植や人工心臓を必要としない、重症心不全に対する新たな治療法の一つとして普及することに期待

概要

大阪大学 大学院医学系研究科 心臓血管外科学では、2015年9月にテルモ株式会社が再生医療等製品として厚生労働省より条件及び期限付承認※1を取得した、虚血性心筋症※2による重症心不全患者さんを対象にした自己骨格筋由来細胞シート「ハートシート」の臨床応用にむけて準備を進めてまいりました。このたび、8月5日に保険適用による自己骨格筋由来細胞シートの移植の第1例目を実施しました。

背景

重症の心不全の治療には、心臓移植が最も有効な方法ですが、日本ではドナー不足が極めて深刻で、その普及は困難であることが予想されています。また他に、人工心臓についても、感染症や脳血栓等の合併症の問題が見られます。
これらに代わる新たな治療法として、再生医療への期待が高まっており、大阪大学 大学院医学系研究科 心臓血管外科学では、2006年より重症心筋症患者に対して、自己由来筋芽細胞シートの移植治療を開発してきました。骨格筋芽細胞シートによる心筋再生治療は、患者さん自身の足の筋肉(骨格筋)から採取した筋芽細胞と言われる細胞のシートを作成し、心不全に陥った心臓表面に貼ることにより、心機能回復を目指すものです(下図)。この自己骨格筋由来細胞シートは、患者さん自身の細胞を用いるため拒絶反応がなく、このシートを用いたこれまでの臨床研究では重篤な心室性不整脈などの合併症は認められていません。
これまでに同グループは人工心臓を装着している拡張型心筋症に4例、拡張型心筋症や虚血性心筋症をはじめとする成人重症心不全症例に38例、小児拡張型心筋症に1例の臨床研究を行ってきました。さらに、治療の適応拡大を目指し、2014年12月より、成人拡張型心筋症に対して2例、小児拡張型心筋症に対して1例の医師主導治験を行っております。また、テルモ社が、これまでの企業治験および臨床研究のデータをもとに、虚血性心筋症を対象疾患とした自己筋芽細胞シート「ハートシート」の薬事申請を行い、2015年9月に厚生労働省から条件付き期限付きの承認を取得しています。
それを受けて、同グループはハートシートの臨床応用を開始するため、2016年5月30日に第1例目の対象の患者さんから骨格筋の採取を行い、そこから培養・作製された細胞シートを用いて、今回、移植手術を実施しました。

金田医学系研究科長の挨拶

本発表が社会に与える影響

患者さん自身の細胞を用いた骨格筋芽細胞シートの移植によって重症心不全の患者さんの病態改善が期待でき、この細胞シートを用いた再生医療は心臓移植や人工心臓を必要としない新たな治療法の一つとなりうると考えられます。さらに、この治療法は、65歳以上若しくは合併症によって移植登録を行うことができない等、現在有効な治療法がない心不全の患者さんにも治療を提供できる可能性があります。
また、保険診療として実施できるため、大阪大学だけでなく、日本の多くの医療機関・施設にこの治療法が普及し、より多くの患者さんの治療に役立つことが期待されます。

【用語解説】
※1) 条件及び期限付承認
再生医療等製品はヒトの細胞を用いるため品質が不均一である上に、症例数が少ない等、臨床データの収集・評価に長時間を要し、実用化まで時間がかかることを踏まえて、2014年11月に施行された医薬品医療機器等法で導入された制度。
ハートシートでは、7例の治験により安全性と有効性が示唆されたところで製造販売承認が取得されたが、この承認には5年の期限がついている。その間、ハートシートによる治療60例の有効性、既存治療120例との比較による生存率の優位性を確認し、5年以内に改めて承認申請を行うことが条件となっている。

※2) 虚血性心筋症
心臓のへの血流の悪化が原因となって生じる心臓の筋肉の障害。