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iPS細胞を用いた心不全の治療に向けて~iPS細胞から作製した心筋細胞による臨床研究を申請~

 

図1.iPS細胞から作製した心筋シート クリックで拡大表示します

2017年7月19日発表

研究成果のポイント

■ iPS 細胞からヒトに移植可能な安全性の高い心筋細胞を大量に作製することに成功

■iPS 細胞から作製した心筋細胞について、ヒトでの安全性を検証する臨床研究を特定認定再生医療等委員会に申請

■深刻なドナー不足である重症心不全に対する新たな治療法として期待

概要

大阪大学 大学院医学系研究科の澤 芳樹 教授(心臓血管外科)らの研究グループは、日本医療研究開発機構(AMED)の支援のもと、iPS 細胞※1から作った心筋細胞による心筋再生治療の開発を進めてきました。

これまで、澤教授らの研究グループは、虚血性心筋症※2によって心臓の機能が低下したブタに iPS細胞から作った心筋細胞をシート状に加工して移植する研究を実施し、心臓の機能を改善させることに成功しています。さらに iPS 細胞からヒトに移植可能な安全性の高い心筋細胞を大量に作製することに成功しました。

そこで、この度は iPS 細胞から作った心筋細胞の安全性をヒトで検証するための臨床研究※3を計画し、大阪大学の特定認定再生医療等委員会※4に申請いたしました。委員会での審査を受けた後に、国への届け出を行い、2018年前半には臨床研究を開始する予定です。

研究の背景

澤教授らの研究グループでは、2006年より重症心筋症患者に対して、患者自身の足の筋肉(骨格筋)から採取した筋芽細胞と言われる細胞のシートを作製し、心不全に陥った心臓表面に貼ることにより、心機能回復させる治療の研究を進めてきました。この技術は、2015 年、テルモ社によって虚血性心筋症患者への新たな治療法として製品化されました。一方で、より重症な虚血性心筋症患者に対して筋芽細胞では治療効果が認められないという課題がありました。

澤教授らの研究グループでは、2006年より重症心筋症患者に対して、患者自身の足の筋肉(骨格筋)から採取した筋芽細胞と言われる細胞のシートを作製し、心不全に陥った心臓表面に貼ることにより、心機能回復させる治療の研究を進めてきました。この技術は、2015 年、テルモ社によって虚血性心筋症患者への新たな治療法として製品化されました。一方で、より重症な虚血性心筋症患者に対して筋芽細胞では治療効果が認められないという課題がありました。細胞から作った心筋細胞に着目しました。動物実験において、iPS 細胞から作った心筋細胞も筋芽細胞と同様に心機能改善効果を示すことを確認しました。さらに心筋細胞の作製に用いる試薬や作製方法を改良することで、ヒトに移植可能な安全性の高い心筋細胞を大量に作製することに成功し、ヒトでの安全性を検証する臨床研究の実施することとなりました。

図2.iPS 細胞から移植までの流れ クリックで拡大表示します

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

iPS 細胞は京都大学の山中伸弥教授によって開発され、再生医療への応用が期待されています。患者自身の筋肉から培養する筋芽細胞では、患者自身の細胞を用いるため拒絶反応はありませんが、筋肉を採取してから移植可能な細胞を作製するまでに1ヶ月以上かかり、緊急時に使用することができませんでした。今回の治療法では、京都大学で作製されたiPS細胞を使い、事前に心筋細胞を大量に作製・保存しておくことができるため、患者の負担も少なく、緊急の使用も可能です。

以上のとおり、本治療法は、有効な治療法の存在しない重症心不全に対する新しい治療となる可能性があり、深刻なドナー不足である我が国の移植医療において、一石を投じる治療法になるものと考えられます。

研究者のコメント

<澤教授>
iPS 細胞は、2012 年にノーベル賞を受賞したわが国発の技術であり、再生医療への応用が大いに期待されています。私たちが開発した新しい治療法の安全性と有効性を検証し、iPS 細胞を用いた再生医療を一日でも早く、夢の医療から汎用的な医療として実現化させることは、心不全に対する再生医療に画期的な変革をもたらすものと確信しております。

この治療法が、患者さまやご家族にとって大きな福音になるよう願いながら、今後臨床研究を進めて参ります。

用語説明

※1  iPS 細胞(人工多能性幹細胞)
京都大学 山中伸弥教授が作製に成功した、細胞に特定の遺伝子などを導入することで、さまざまな細胞への分化が可能になる万能細胞。再生医療への応用が期待されている。

※2 虚血性心筋症
心臓の筋肉への血液供給が減ることや途絶えることによって生じる心臓の筋肉の障害。

※3 臨床研究
人を対象として行われる医学研究のこと。病気の予防・診断・治療方法の改善や病気の原因の解明、患者さんの生活の質の向上を目的として行われる。

※4 特定認定再生医療等委員会
再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成二十五年法律第八十五号)施行に伴い、再生医療等提供計画の審査等業務を担うことができる委員会。この審査を受けた後に、厚生労働省での審査を受ける。

特記事項

本研究は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED) 再生医療実現拠点ネットワークプログラム及び再生医療実用化研究事業の一環として行われ、京都大学 iPS 細胞研究所 山中伸弥教授、東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 松浦勝久准教授の協力を得て行われました。

本件に関して、7 月 21 日(金)に記者発表を行いました。

発表者: 澤 芳樹 教授(心臓血管外科学
     宮川 繁 特任教授(常勤)(先進幹細胞治療学
齋藤充弘 特任准教授(常勤)(未来細胞医療学

 

            

産経ニュース、産経WEST、日本経済新聞、読売新聞、朝日新聞、時事通信、日テレNEWS24、NHK、毎日放送・MBS NEWS、日刊工業新聞、TV Tokyo にて報道されました。