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第387回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)

第387回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)
日時 平成30年5月14日(月)18:00〜
場所 大阪大学医学部講義棟2階C講堂
演題 酒食同源の世界―エチオピア・コンソの生活―
演者 滋賀県立琵琶湖博物館・館長
篠原 徹 先生
概要

演者は1991年のエチオピア社会主義独裁政権の崩壊直後から1998年までの約10年間、エチオピア南部の有畜農耕民コンソの生態人類学的調査を行ってきた。演者は国内では民俗学を海外では生態人類学を名乗り研究してきたが、テーマは一貫して「ヒトと自然の関係に関する民俗学的(生態人類学的)研究」というものであった。日本では、農村、漁村などを対象としてきたが、海外では有畜農耕民であるコンソや中国・海南島のリー族、中国雲南省の多民族が共棲する紅河県で長期の調査を行ってきた。

大阪大学の臨床栄養研究会で話題提供したいのは、栄養学的にはどのような問題があるのかわからないが、醸造ビールを主食とするエチオピア南部の人口10万人程度のコンソ族の生態人類学的調査である。この社会は、私たちのような高度資本主義の世界に住む者にとっては、なにもかもが「アベコベの世界」にみえるもので、如何に人間の社会や文化が多様性に富んだものであることを示している。

このコンソ社会は、私が作った箴言でいうと「私の常識はあなたの非常識であり、あなたの常識は私の非常識である」ことを見事に示しているが、私たちの世界からすると非常識なことを3つとりあげてみたい。

ひとつは、山麓に住むのではなく「山上に住む」ということ、ふたつめは「プライバシーのない世界」であること、三つめは「主食がチャガとよばれる醸造ビールである」ことである。この研究会では三つめの「主食がビールである」という不可思議な世界に焦点をあてて話をしてみたい。医学や栄養学からみてこうした社会の存在が許されるのかどうかは別にして、この不思議な世界を紹介してみたい。

コンソの農耕技術はきわめてすぐれたもので、アフリカ型の集約農耕といえるもので、18世紀から19世紀の時代ならヨーロッパあるいは日本の農耕文化に決して劣るものではない。エチオピアはアフリカで唯一といえるヨーロッパ列強の植民地にならなかった国で、ゲーズ語(現在のアムハラ語)という固有の文字をもった国である。逆にこのことがグローバル化という意味では近代化が遅れた地域とみなされているが、欧米化という近代化が唯一の近代化なのかどうかはわからない。

演者略歴

1945年、中国長春市生まれ。1969年京都大学理学部卒業、71年同文学部卒業。岡山理科大学助手、助教授を経て、86年国立歴史民俗博物館助教授、教授。2007年国立歴史民俗博物館副館長、総合研究大学院大学教授併任。

08年大学共同利用機関・人間文化研究機構・理事。10年滋賀県立琵琶湖博物館・館長現在に至る。

今回の講演に関係する著作では『アフリカでケチを考えた』(筑摩書房、1998年)、『自然を生きる技術』(吉川弘文館、2005年)、『酒薫旅情』(社会評論社、2014年)などがある。

世話人 :大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学講座 産科学婦人科学 冨松 拓治
E-mail: tomimatsu@gyne.med.osaka-u.ac.jp
※事前申し込み不要・参加費無料※
次回第388回CNCは、大野智先生のお世話で、平成30年6月11日(月)開催予定です。