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第388回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)

第388回 大阪大学臨床栄養研究会(CNC)
日時 平成30年6月11日(月)18:00〜
場所 大阪大学医学部講義棟2階B講堂
演題 認知症高齢者の食支援~治らない嚥下障害への対応~
演者 大阪大学大学院歯学研究科
高次脳口腔機能学講座 顎口腔機能治療学教室
野原 幹司 先生
概要

これまでの摂食嚥下リハビリテーション(嚥下リハ)は、どちらかというと回復期の嚥下障害を中心にして発展してきた。回復期の基本は、誤嚥性肺炎を起こすことなく、機能の廃用を防止し、全身の回復とともに嚥下機能の回復を待つという方針である。そこでは「訓練・機能回復」という考えが中心にあり、そこでさまざまなエビデンスが出され、嚥下リハのさまざまな知識や技術が生まれてきた。その結果、嚥下リハは目覚ましい進歩を遂げ、学問の基礎を確立したともいえる。
一方、現在増えつつあるのは慢性期の嚥下障害である。極論を言えば慢性期の嚥下障害は治らない。
廃用の部分は一部回復が期待できるが、大きな流れとしては不変もしくは悪化傾向にある。そのような特徴を持つ慢性期の嚥下障害に対して、機能回復を目指したアプローチを適用することは、患者本人だけでなく、介助者や医療者も消耗し、無力感を味わうことになる。慢性期のリハは、機能の回復ではなく、機能低下を防ぐこと、および今ある機能を活かして生活の質を改善することに重きが置かれる。要するに、回復期の嚥下リハは「キュア=訓練で治す」という治療戦略であるのに対し、慢性期の嚥下リハは「ケア=今の機能を最大限に活用できるよう支援する」という発想の転換が必要となる。 今回の講演では、慢性期疾患のなかでも認知症をとりあげ、その原因疾患に基づいた誤嚥・嚥下障害の特長について概説し、ケアの視点からできることを考えてみたい。認知症は原因となる疾患が異なれば、出現する嚥下障害の症状も異なり、適切な食支援も大きく異なる。例えばアルツハイマー型認知症では誤嚥ではなく食行動の障害が主となり、レビー小体型認知症では誤嚥やパーキンソニズムや非運動症状が問題となる。それら疾患に起因する嚥下障害の症状は訓練では治らない。訓練で治らないのであれば、医療者は無力・不要となるかといえば、そうではない。キュアできないのであればケアすればよい。ケア的な視点で取り組めば、認知症高齢者の嚥下障害に対してできることはたくさんある。
「認知症はよくわからない」「認知症患者さんは嚥下訓練できないから困る」という声を聞くことがある。それは既存の回復期の嚥下リハを、認知症患者さんに当てはめようとしているからではないだろうか。
認知症を理解し、ケア的視点の嚥下リハを知れば、認知症高齢者の嚥下障害は怖くない。本講演をきっかけに参加頂いた方々が行動を起こすことで、「嚥下難民」といわれる認知症高齢者の「食」に少しでも彩りが添えられれば幸甚である。

世話人:大阪大学大学院 統合医療学寄附講座 大野 智
E-mail: ohno@cam.med.osaka-u.ac.jp
※事前申し込み不要・参加費無料※
次回第389回CNCは内分泌・代謝内科学 下村伊一郎 先生のお世話で平成30年7月9日(月)に開催予定です。