寄附講座

糖尿病病態医療学

糖尿病の個別化医療~個々の患者の病態・併存疾患に応じた適切な糖尿病医療を目指す
  • 高齢糖尿病患者にとって安全で優しく、かつ有効な治療目標・治療方法は何か
  • 担がん患者における糖尿病の血糖コントロール目標値と最適な治療法は何か
  • 周術期患者における適正かつ安全な血糖コントロール目標値の設定
  • 重症合併症患者における糖尿病診断遅延や治療中断とその背景因子に関する研究
  • 肥満2型糖尿病病態における新たな創薬ターゲットの探索

患者さんを中心に据え、様々な状況にある患者さんからみたときに、糖尿病という疾患にどう対応するのがよいのかについての情報(医療学)を発信する

今日の糖尿病治療において、血糖管理目標値は、年齢や罹病期間、血管合併症の程度、重大な併存疾患を考慮して、個々の患者さんで設定すべきであるとされています。しかし個々の患者さんで、具体的にどのように血糖コントロール目標を設定すべきか、またどのような薬剤が適切かについては必ずしも明らかでなく、手探りの状況です。本講座では、年齢や併存する重大な疾患、さらに糖尿病の病態別に、糖尿病治療をどのように行うのが良いのかをメインテーマに、現在下記のような研究を進めています。

1.高齢者における糖尿病の薬剤選択に関する研究

1) 高齢糖尿病患者に対する基礎インスリン(Basal Insulin) + GLP-1(ヒトグルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬併用療法の有用性の検討:高齢者では厳格な血糖管理よりも、低血糖予防と治療手技の簡素化が優先されます。現在の高齢者が置かれている社会的背景を踏まえ、本治療法の有用性と限界を探っています。

2) 経口血糖降下薬の糖尿病治療満足度に及ぼす影響について:高齢者と非高齢者に分けて、種々の経口血糖降下薬が治療満足度にどのように影響するかを解析しています。また、服薬アドヒアランスの実態を明らかにするとともに、その規定因子を解明し、服薬アドヒアランス向上・治療満足度向上の方策について検討しています。

2.重大な併存疾患を合併する糖尿病患者の最適治療に関する研究

1) 糖尿病網膜症患者の硝子体手術周術期における血糖管理をどのようにすべきか?:硝子体手術を受けた糖尿病網膜症患者において、術前3ヶ月のHbA1cc(ヘモグロビンA1c)高値、あるいは術前3ヶ月でのHbA1cの下げ幅は、術後再出血のリスクを高める可能性があることを観察研究で明らかにしています。ある範囲に血糖コントロールされていた患者さんでは、術前に急激に血糖を下げることはかえってよくないかもしれません。

2) 悪性腫瘍を合併した糖尿病患者の最適治療は何か?:肝がんは糖尿病患者に併発しやすい悪性腫瘍の一つです。肝がん併発糖尿病患者さんにおいて、血糖コントロールや使用薬剤の違いが、生命予後や再発率にどのように関連するのか、消化器内科との共同研究で明らかにしようとしています。

3.生活習慣病の診断遅延・治療中断と動脈硬化性疾患に関する検討

末梢動脈疾患患者をはじめとする心血管疾患患者を対象に、それまでの生活習慣病に対する診断・治療状況を調査し、生活習慣病の診断遅延や治療中断既往の頻度、およびその関連因子を明らかにしようとしています。さらに、調査対象集団を前向きに追跡することにより、生活習慣病の診断遅延や治療中断が、その後のイベント発生、すなわち、総死亡や主要心血管疾患発症等にどのような影響を及ぼすかを縦断的に検討しようとしています。

4.肥満2型糖尿病患者におけるインスリン抵抗性を改善する因子の探索

糖尿病の原因の一つとしてインスリンが効きづらくなることが挙げられます。脂肪組織などのインスリンが作用する臓器に炎症性の免疫細胞が入り込み炎症が起こるとインスリンの作用が減弱します。この免疫細胞の浸潤を抑制する因子を同定することにより肥満2型糖尿病を改善することを目標に研究を行っています。