寄附講座

漢方医学

伝統医学と先進医学の融合による新たな解決手法の創出
  • 漢方医学に伝わる腎虚概念をヒントに研究展開
  • 超高齢社会で問題となるフレイル・サルコペニアの解決への取り組み
  • がん・リウマチ膠原病・神経疾患での融合医学の探索
  • 新たな がん支持療法としてのケトン食治療

漢方腎虚概念に基づいたフレイル・サルコペニアに対する治療法の開発

漢方の一般的な印象は、薬効がマイルドで、経験的に使用されるが、何故か、一定の臨床的な効果が見られるというところだと思います。私たちは、漢方医学に伝えられる様々な漢方概念をヒントにして、漢方製剤の分子薬理機序を明らかにし、伝統医学と先進医学の融合による新たな解決手法を創出していくことを目標としています。

現在、日本は超高齢社会を迎え介護の対策が急務となっています。その中で、介護前段階を意味する「フレイル」という概念が提唱されています。「サルコペニア」は、加齢に伴う筋力の低下・筋肉量の減少を意味し、寝たきりを引き起こす重要な因子として注目されていますが、有効な治療手段はなく、超高齢社会を迎え、新たな治療法の開発が望まれています。

漢方医学では、人の生命エネルギーを腎気と呼び、老化に伴う骨粗鬆症、脱毛、腰痛などの症状は腎気が減少した状態、腎虚と考え、牛車腎気丸 (ごしゃじんきがん)などの補腎薬が用いられてきました。私たちは、サルコペニアを腎虚の一症状と考え、老化促進マウスを使って、牛車腎気丸の抗サルコペニア効果の検討を行いました。その結果、老化促進マウスがサルコペニアモデルマウスとして適切であることが確認され、牛車腎気丸は、インスリン/IGF-1シグナルの改善・ミトコンドリア機能の回復・TNF-αの産生低下を介して、サルコペニアを改善することを明らかにすることができました(図1)。牛車腎気丸は、老化に伴う疼痛だけでなく、糖尿病や抗がん剤治療後の末梢神経障害を改善する効果が報告されています。そこで、私たちは、坐骨神経絞扼モデルマウスを使って、牛車腎気丸の疼痛改善効果を検討しました。牛車腎気丸は慢性の神経性疼痛を改善することを確認し、その分子薬理機序として脊髄後角における活性化ミクログリアからのTNF-αの産生抑制を介して慢性疼痛が改善されることが明らかになりました(図2)。これらの解析結果から、牛車腎気丸がフレイル・サルコペニア対策に有望な薬剤となる可能性が考えられ、臨床的エビデンス構築を準備しています。

図1

図2

その他にも、がん、リウマチ膠原病、神経疾患において融合医学の探索を行っています。特に、がん治療においては、新たながんの支持療法として、2013年から日本国内で初めて、がんケトン食治療の臨床研究を開始しています。