寄附講座

神経難病認知症探索治療学

学際的アプローチにより難治性神経変性疾患・認知症の克服を目指す
  • タンパク質やRNAの構造異常・凝集・伝播に着目した神経変性疾患の病態機序解明
  • 凝集阻害ペプチド・化合物スクリーニングによる神経変性疾患の分子標的治療薬の開発
  • エクソソームに着目した神経変性疾患のバイオマーカーの開発
  • 異常リピートRNAとリピート関連性ATG非依存的翻訳による神経変性メカニズム解明
  • 国内最大の神経変性疾患モデル・ショウジョウバエ・バンクと全国的共同研究・学生の受入れ

 

 

タンパク質・RNAの構造解析から培養細胞、様々な動物モデルなど多彩な技術を駆使した包括的な神経変性疾患の病態・治療研究

アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ポリグルタミン病(ハンチントン病、脊髄小脳失調症(SCA)など)などの神経変性疾患は、人口高齢化社会を迎えて患者数が急激に増加していますが、いずれも有効な治療法、診断法に乏しい難病で、大きな社会問題となっています。当研究室では、このような現代医学の最重要課題の一つである難治性神経変性疾患、認知症を克服して、年老いてもQOL(クオリティー・オブ・ライフ)の高い健康的な生活が送れる未来を目指して研究を行っています。

近年、多くの神経変性疾患において、アミロイドβ、タウ、αシヌクレイン、TDP-43、ポリグルタミンなどの様々なタンパク質が、いずれも異常な構造へとミスフォールディングして凝集し、神経細胞内(あるいは細胞外)に蓄積し、神経変性を引き起こすという共通の発症分子メカニズムが考えられています。また、最近、一部の脊髄小脳失調症や筋萎縮性側索硬化症などにおいて、異常なリピートRNAが細胞内で凝集したり、異常RNAを鋳型として全く新しい翻訳機構(リピート関連性非ATG依存性翻訳)により異常なペプチドが産生されたりすることが報告され、神経変性疾患と異常RNAとの関連性が注目されています。

そこで私たちは、神経変性疾患の普遍的な病態解明、バイオマーカー・治療法開発を目指し、タンパク質やRNAのミスフォールディング・凝集に着目して研究を行っています。当研究室は、医学・薬学・理学・農学出身者から構成される研究員が、タンパク質構造解析や分子細胞生物学的解析などのin vitro解析や、ショウジョウバエ、マウス、マーモセットなどの疾患モデル動物を用いたin vivo解析、さらに化合物スクリーニングなど多彩な技術を駆使して病態研究を進めています。

これまでに、異常ポリグルタミンタンパク質のβシート構造変移による毒性発揮メカニズム[1]、異常ポリグルタミン鎖結合ペプチドQBP1による神経変性の抑制[2,3]、エクソソームを介する分子シャペロンの細胞間伝播による非細胞自律的な神経変性の抑制[4]、αシヌクレインの糖脂質との会合によるプリオン様構造変化の促進[5]、SCA31における異常リピートRNAとリピート関連性翻訳による神経変性メカニズムの解明[6]などを明らかにしてきました。これらの研究結果を基に凝集阻害ペプチド・化合物による分子標的治療薬やエクソソームに着目したバイオマーカー開発を進めるとともに、異常RNAとリピート関連性ATG非依存的翻訳による神経変性メカニズムや環境要因による神経変性促進メカニズムの解明を目指した研究も進めています。

【文献】

1. Nagai et al. Nat Struct Mol Biol 14, 332 – 340, 2007.
2. Nagai et al. Hum Mol Genet 12(11):1253-9, 2003.
3. Popiel et al. Mol Ther 15(2):303-9, 2007.
4. Takeuchi et al. PNAS 112(19): E2497–E2506, 2015.
5. Suzuki et al. Hum Mol Genet ;24(23):6675-86, 2015.
6. Ishiguro et al. Neuron, in press.