寄附講座

疼痛医学

明るく健全な社会の実現に向けて~未来指向の痛み対策
  • 産業界における慢性痛の実態及び認知行動療法の需要調査と実施体制の構築
  • 慢性痛に対する認知行動療法の開発及び効果解明と施行者の人材育成・普及体制の構築
  • 慢性痛に対する多職種による短期集中型治療プログラムの構築と効果解明
  • 安静時fMRIによる痛みの慢性化機序の解明と予防法の開発
  • 慢性痛の教育体制の整備と次世代のリーダーを養成

 

 

痛みの慢性化に関する研究

国民の4人に1人が何らかの慢性痛を有していて、日常生活が妨げられ膨大なコストが使われています。アメリカの研究によると、痛みによる社会的コストは、がんや心臓病、精神科疾患をも上回り、年間60兆円にのぼるといわれています。日本では慢性痛が深刻な問題であるとはあまり知られていませんが、今後実態を調査することによってこの問題の重要性を評価し、対策を検討することが必要です。当研究室では、公衆衛生学講座や環境医学講座、他大学とも連携し、慢性痛の実態調査に取り組み、痛みが慢性化する心理社会的要因の解明に取り組んでいます。

慢性痛に対して最も効果があり医療経済的に優れた治療法とされているものの一つに認知行動療法や多職種による短期集中治療などがあります。これらの治療法は欧米のペインセンターでは一般的な組織として医療の一部として機能していますが、日本ではまだ一部の機関で試行的に実施されている段階です。当研究室では、国立精神神経センター、東京慈恵会医科大学、神戸大学、川崎医科大学、医療法人篤友会と連携し、認知行動療法の開発と多職種による短期集中治療の実施に取り組み、その効果を多面的に評価しています。このような診療システムを日本でも構築し発展させるためには、土台となる痛みに関する正しい知識の普及が必要です。当研究室では、附属病院疼痛医療センターの運営や文科省課題解決人材育成プログラムを通して、医療者や学生、一般の方に対する教育普及活動にも力を注いでいます。

今、脳研究が進歩するに連れて、痛みの慢性化に主要な役割を果たしていると考えられる臓器は脳であることが分かっていました。安静時fMRI(MRI 装置を使った脳活動の計測)の技術を用いて痛みの慢性化にかかわる脳内機序を解明し、新たな治療法や予防法の開発につながると考え、さまざまな疾患を対象にした臨床研究に取り組んでいます。器質的な原因からは説明が困難な慢性痛に伴う脳内の機能的な変化を滋賀医科大学、神戸大学、近畿大学、兵庫医科大学などと連携してデータを集積し解析を進めています。学内では麻酔科、整形外科と共同で、安静時fMRIを用いて手術後の慢性痛の発生を予測する方法の開発に取り組んでいます。