ゲノム生物学

放射線基礎医学

ゲノム安定性維持機構–その巧妙なメカニズムを解明する
  • 突然変異はどの様にして生じるのか?損傷乗越えDNA複製酵素の役割
  • 体組織におけるDNA損傷応答
  • 体組織幹細胞における突然変異生成の制御機構
  • 光と生命–環境応答機構としての概日リズムとDNA損傷修復
  • 放射性物質の経世代影響
教授 藤堂剛
ゲノム生物学講座 放射線基礎医学
放射線の人体影響研究の必要性から文部省(現在の文部科学省)がいくつかの国立大学への担当講座の設置を決定し、大阪大学にも医学部に当教室が設置され、1963年に初代近藤宗平教授が着任されました。その後、野村大成教授に引き継がれ、現在に至っております。

生命と外部環境との相関を、可視光から紫外線・放射線を含む光(電磁波)に対する生体応答から解析する

光無くして生命はありえません。私たちの周りにあふれる様々な波長の光は、全ての生命の根元的エネルギー源あるいは環境を認識するシグナルとして生物に有用であると同時に、波長が短く高エネルギーの光は生体物質に損傷をもたらします。 当研究室では、これら様々な波長の光の生体影響・生体応答を解析し、生物が如何に巧みに地球環境に適応しているのかを明らかにしようとしています。 DNA損傷の修復・突然変異生成から生物時計の制御と幅広い生物現象を扱いますが、光と物質の相互作用として共通の分子基盤を明らかにしたいと考えています。

光と生命の関係を以下の二つの面から研究しています。一つは、波長が短くエネルギーの強い光である放射線や紫外線の生物作用であり、それらによるDNA損傷と その修復機構、および突然変異生成のメカニズムを解析する研究です。二つ目は、光を外部環境シグナルとしてとりあげ、紫外線から可視光を含む光に対する生体応答を、 光受容体を中心に行う研究です。前者では、電離放射線に特徴的なDNA損傷として二重鎖切断を、また紫外線によるものとしてピリミジン二量体をとりあげています。 これらは損傷に特異的な修復機構により修復されますが、修復されずに残った損傷は特別なDNAポリメラーゼにより複製され突然変異を引き起こします。 損傷修復と突然変異生成は微妙なバランスの上に制御されているわけです。両者の制御メカニズムを明らかにする研究を、体組織でのモザイク作成により行っています。

図1

後者としては、 体内時計における光受容タンパク質のシグナル伝達機構を明らかにする研究を行っています。光受容タンパク質は、ある種のDNA修復酵素と近縁である事が知られており、 DNA修復と概日リズムといった全く異なる生命現象の制御に、共通に存在する分子基盤を明らかにできることが期待されます。この様な研究は、ショウジョウバエ、 メダカ、マウス等、分子遺伝学的解析が可能なモデル生物を用い行っており、タンパク質の構造解析など分子レベルで明らかにしたことを、更に、変異個体 (ノックアウト個体や変異原誘発変異個体)及びトランスジェニック個体等を駆使し、個体レベルにおける表現型として理解することを目指しています。

図2

分子から個体までをトータルに捉え「生物」を理解する、「光と物質の相互作用」をとおして生命を理解する、この2つが当研究室の基本戦略です。