共同研究講座

先端ゲノム医療学

先端ゲノム医療の開発と臨床実装 ~ゲノム病理学的立場から~
  • 次世代シーケンシングを活用したがん遺伝子パネル検査の開発と病理診断、臨床への応用
  • 遊離核酸解析の実装化(リキッド・クリニカルシーケンス)を見据えた技術開発
  • 腸内微生物叢解析による疾患バイオマーカー探索
  • 難治性疾患の本態解明に向けたシングルセル解析研究
  • ゲノム病理学的アプローチによる腫瘍性疾患、炎症性疾患の病態解明

最新のゲノム科学の知見を臨床現場に活かすための研究を展開

2000年以降のゲノム科学の進歩は目覚ましいものがあります。特に次世代シーケンサーが登場してからは、様々な疾患の遺伝子異常が次々と明らかにされてきました。腫瘍性疾患の領域では背景遺伝子異常に対応する形で疾患概念の整理が進み、血液腫瘍や脳腫瘍をはじめとする多様な臓器の腫瘍に関して分類の改訂が行われました。実際のところ、病理診断の現場では次世代シーケンシングを含む遺伝子解析技術の導入が必須となりつつあります。なお、がんの遺伝子異常を探索する意義は「正確な診断・分類」にとどまりません。今後、がんの臨床において特に重要になってくるのは「治療戦略の構築」にゲノミクスを応用することです。具体的には、所謂クリニカルシーケンス(治療標的となる遺伝子異常を検出し、適切な薬剤選択につなげていくこと)への期待が非常に高まっています。

これまでのゲノム研究によって、がんの遺伝子異常に関しては網羅的かつ基礎的なデータの集積がかなり進んでいます。検索されつくした、と言ったら言い過ぎかもしれませんが、主要なデータはあらかた揃った状況です。これから考えなくてはいけないのは「がんの実臨床に役立つゲノム情報は何なのか」「日本の臨床の現場において適切に運用できるゲノム解析技術はどれなのか」といった問題です。私たちは、ゲノム科学の視点と病理学の視点を融合し、これらの問題の解決、すなわちがんゲノム医療の実装化に向けた課題の克服を目指します。がんの診断、治療の質的向上が最終的なゴールです。まずその第一歩として、日本のがん医療の実態をふまえて最適化したがん遺伝子パネルを構築し、臨床サンプルを対象としたゲノム病理学的検討を行った上で、クリニカルシーケンスにおける有用性を検証していきます。

さて、ゲノム科学の臨床応用という点では、否が応でもがんが主たるテーマとなってきます。しかし、私たちの研究対象は腫瘍性疾患のみではありません。近年では次世代シーケンシングによる免疫細胞のレパトア解析や細菌叢の分析、シングルセル解析が盛んに行われています。これらの技術を用いた研究は、現段階では基礎的なものが主体ですが、既に様々な炎症性疾患、難治性疾患の成因解明につながる知見が得られており、今後、必ず臨床に還元するフェーズが来ると考えられます。私たちは、これらの新しいシーケンス技術の臨床応用を見据えて、非腫瘍性疾患や難病をも研究対象とし、幅広くゲノム病理学的研究を展開していこうと考えています。

「次世代シーケンシング」が実質的に「現世代シーケンシング」になりつつある今、ゲノミクス・病理・臨床を統合してヒトの病気と向き合い、基礎研究と応用研究の橋渡しを行う。これが本講座の基軸コンセプトです。