共同研究講座

組織・細胞設計学

細胞分化・組織構築の基礎研究を通じて臨床応用と社会普及を目指す
  • 臨床応用を目指した、新規化合物KY03-Iによる独自のiPS細胞-心筋分化誘導法を開発
  • 国内外のiPS細胞株へ新規分化誘導法を適用
  • 新たな細胞化学・組織工学的手法によるiPS-心筋細胞組織の移植試験
  • リコンビナントペプチド(Cellnest)の組織工学、再生医療への有効利用法の探索

独自のiPS細胞分化誘導技術と組織工学を用いた次世代の再生医療研究

組織・細胞設計学共同研究講座では、私たちが開発した新規化合物を用いた独自のプロテインフリー分化誘導法で生産される、臨床適用性の高い心筋細胞を中心に、国内外のiPS細胞の臨床株を用いて各種臓器細胞の大容量分化培養プロトコルを確立します。また、それらの心筋細胞等について、ナノテク技術による組織化培養技術や、リコンビナントペプチドRCP(富士フイルム㈱)等を用いて、実用性のある高次生体組織を構築します。これに並行して、心臓血管外科学講座と密に連携を取りながら、本講座によって新たに開発された分化細胞や組織をモデル動物(ラット・ブタ等)に移植することで細胞の生着効率や治療効果を検討し、臨床応用に繋げ広く社会普及させることを目標としています。

心疾患は世界の死因一位であり、ヒト心筋細胞は創薬や再生医療において非常に需要が高い一方で、拍動する機能的な心筋細胞は分裂能が低いため初代培養による生産が困難です。したがって、工業的に大量生産が可能で、倫理的問題もクリアしている実用的細胞は、現在のところiPS細胞由来の心筋細胞のみです。しかし細胞の安全性やその性質の安定性、コストが問題視されています。一般に、細胞分化培養には成長因子等の組み換えタンパク質や血清成分など、生体由来の高分子が大量に必要であり、これが細胞の高コスト化やウイルス等のコンタミリスク、ロット差が生じる原因の一つと考えられています。

私たちは、ケミカル・スクリーニングにより発見された、心筋細胞への分化を促進する新規化合物KY02111、KY03-Iを用いて、独自のiPS細胞の心筋分化誘導法を確立してきました [1]。この心筋誘導法は、基本的に低分子化合物とアミノ酸のみの培養条件で行われており、細胞分化を人工物のみで誘導した唯一の手法です。また心筋細胞の純度が90%以上と安定して高い上に、培養液が低コストでコンタミ・リスクも低く、3次元浮遊培養系であるため、大量細胞培養にも適しています。

当研究室では今後、この新規の細胞分化誘導法を様々なiPS細胞株に適用するとともに、ナノテクノロジーを用いた組織工学により、低コストで安定なiPS細胞由来心筋細胞を更に高次組織化し、より治療効果の高い再生医療用細胞デバイスの開発を目指していきます。

【文献】

1.Cell Reports 29;2(5):1448-60, 2012.