薬理学

分子・細胞薬理学

分子・細胞・組織を統合的に理解する多階層生体機能学の構築
  • 心臓徐脈を支える分子基盤の解析
  • 心臓興奮伝導シミュレーション
  • 薬物―イオンチャネル相互作用の解析
教授 倉智嘉久
薬理学講座 分子・細胞薬理学
当研究室は大阪帝国大学医学部に昭和12年11月に設置されました。初代教授は長崎仙太郎先生、その後、岡川正之教授、今泉禮治教授が当研究室と第一薬理学講座を兼任されました。昭和44年から和田博教授が講座を担当され、平成5年から私、倉智嘉久が講座主任を務めさせて頂いております。

心臓の動きを理解する ~心臓の電気活動を分子レベルから組織レベルまで統括的に理解するための基盤研究

“心臓が動くこと”。この背景を知ることが私たちのシンプルな研究テーマです。心機能は血液を送り出すポンプ機能と、そのポンプを効率よく駆動する仕組みである興奮伝播によって特徴づけられます。これらの特徴は細胞の膜電位変化という現象によって支えられています。この膜電位変化は細胞膜を介したイオンの移動によって決定され、そしてこのイオン輸送はチャネルやトランスポーターと呼ばれる複数の分子によって支えられています。これらイオン輸送体の多数には、家族性の遺伝子変異が見つかっており、これら変異は不整脈で知られるような心臓の機能異常の原因であることが知られています。このように心臓機能に重要な役割を果たしているイオンチャネルの分子機能、その生理的な活性調節機構について研究を遂行してきました。

また、イオンチャネルは様々な疾病において、薬物治療の重要な標的です。しかしながら、創薬において、心機能への効果が想定されていない様々な薬物が、副作用として致死性の心臓不整脈を誘発することも知られています。この薬物の心毒性は薬物によるイオンチャネルの阻害であることが知られています。このような背景から、私たちはイオンチャネル作用薬の探索から、相互作用様式の解析まで、様々な角度で研究を行っております。

心臓を階層化システムとして捉えると、イオンチャネルは分子レベルの要素となります。このイオンチャネルが複数連関し、細胞レベルでの応答を支えます。そして、細胞間の電気的連絡が、その上位階層の心臓機能の基盤となります。全階層を統括的に理解するためには、分子・細胞・組織の各階層内の論理と、各階層間の相互連関の論理を解明する必要があります。その有効な手法として理解されているのが、数理モデルを使ったコンピュータシミュレーションです。これまで複数の心筋細胞からなる活動電位の興奮伝播モデルが構築されてきました。しかし、細胞の形態やイオンチャネルの局在など、組織に備わった仕組みは、考慮されていませんでした。私たちは、このような細胞構造を内包した心臓の実体により近い数理モデルを構築し、不整脈発生機構や興奮伝導を検討しております。

このようなシミュレーション技術を向上させることによって、”多階層システムである心臓が動くこと”を理解して行きたいと思っています。