特別協力講座

感染制御学

薬剤耐性菌~グローバルな対策構築のための分子疫学研究
  • 薬剤耐性菌に関する基礎・臨床・疫学と多岐にわたる研究と指針の提言
  • 耐性化メカニズムの解明と伝播経路を明らかに
  • 簡便な検査法・有効な治療法の確立を目指して
  • Resource poor country(資源の少ない国) における導入と国際保健への貢献
教授 朝野和典
 
感染制御学は2003年に病院の中央診療施設感染制御部として設置され、同時に大学院医学系研究科の特別協力講座となりました。初代教授は臓器移植学の白倉良太教授が併任され、2008年から朝野和典教授に引き継がれ、現在に至っております。

多角的アプローチが求められる薬剤耐性菌問題:日本国内・海外をフィールドとした研究

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世界各国で薬剤耐性菌のまん延が確認され、公衆衛生上の大きな脅威と認識されています。2016年に行われた伊勢志摩サミットにおいても世界経済、移民問題、テロ対策などと並ぶ課題として取り上げられるなど、世界的な対策の構築が求められています。

私たちは、大阪府内の保健所・大阪府公衆衛生研究所と共に、日本国内の一地域においてカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)の大規模なまん延を初めて明らかにしました。現在、さらなるまん延防止のために、病院や高齢者施設を巻き込んだ感染対策ネットワークの構築を行っています。また、培養検査法や遺伝子検査法の開発を行うとともに、陽性患者のリスク因子解析を行い、その研究結果をもとに耐性菌のまん延阻止に向けた対策を提言しています。研究内容が基礎・臨床・疫学の多分野にわたり、その結果をもとに行政への公衆衛生上の指針の提言まで行っている、数少ない研究室です。

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薬剤耐性菌問題は日本国内よりも海外において深刻な状態にあります。しかしながら、特に中進国や途上国では財源や人的資源が限られているため十分な検査が行われずに、その実態は明らかになっていません。私たちは、大阪大学微生物病研究所のタイ拠点と協力しながら、タイ・ベトナム・ミャンマー・インドの病院・研究所と協力体制を築き、アジア諸国における耐性菌について解析を行っています。具体的には、耐性菌の収集と遺伝子解析・分離患者情報の解析を行い、現地での流行状況をもとに公衆衛生上の提言や新規検査方法の開発を行っています。耐性菌の解析においては、次世代シークエンサーを用いて、プラスミド解析やSNP解析などによりその伝播経路を明らかにするとともに、新規の耐性機構の探索的研究を行っています。また、新規検査方法としては、途上国でも使用が可能である簡便な遺伝子増幅法としてSTH-PAS(Single Tag Hybridization Printed Array Strip)法やLAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法を開発しています。そして、それらの検査法を実際の医療現場でのサーベイランスや院内感染のために導入する臨床研究を現地の医療スタッフと共同で進めています。こうした事業は、研究という枠組みを超えて、現地の公衆衛生の向上へ寄与するというダイナミックな側面も持ち国際貢献の一助となります。また、グローバル化が進む世界において、耐性菌を含めた感染症はすぐにまん延してしまう危険性をはらんでいます。海外での耐性菌の日本におけるまん延を阻止するためにも、海外での分子疫学調査は大変有意義なものとなります。