健康スポーツ科学

運動制御学

日常動作からスーパーアスリートの動きまで~運動による傷害の予防と動作の効率化
  • 野球の投手の競技力向上に関するバイオメカニクス的、運動制御的研究
  • 投球障害の発生メカニズムおよび競技力向上との両立可能性に関する研究
  • 膝前十字靭帯損傷の発生メカニズムの物理的、統計学的、認知的理解
  • 床反力の時間信号の個人特徴に注目したスポーツ外傷のリスク予測
  • 箸の運動学習 きれいな箸の使い獲得するための運動制御学的研究

 

 

運動中の傷害発生メカニズムの解明と予測、そしてパフォーマンスの向上

1.

瞬きほどの極短時間(0.1~0.2秒)で、時速150kmを超えるような高速ボールを投げることができるのが、プロ野球の投手です。しかも、19m離れたキャッチャーミットを微動だにさせることなく、正確に投げることも稀ではありません。そのときのリリース時の投射角度の誤差は0.5°もあってはなりません。このような超絶技巧は、どのような身体操作によって生み出されているのでしょうか?高速、且つ、正確無比な投球においても、身体は必ず揺らいでおり、各関節運動は数°単位で毎回異なる運動を行っています。同じ動作は一つとしてありません。速度を上げるための身体の動き、制球良く投げるための身体の動き、そして投球障害に陥りにくいような身体の動きなど、全身運動である投球動作の中に、それぞれの関節運動が果たす役割分担、また協調・協働して果たす役割があることが、ハイスピードカメラを利用した動作分析により分かってきました。身体運動を定量的に捉え、運動の制御法や傷害発生メカニズムに迫ります。

筋骨格モデルおよびリンクセグメントモデルを用いた投球動作解析; Motion analysis for baseball pitching using the musculoskeletal model and the link segment model)(LinkModel.tif)

2.

スポーツにおいて怪我は付きものですが、膝前十字靭帯損傷のような重篤な怪我はぜひとも避けたいものです。膝前十字靭帯損傷は、他者からの接触がなく単独的に起こる怪我であるため、この怪我の原因は、アスリート自身の動的な姿勢制御能の良し悪しに大きく依存します。当研究グループでは、バランス課題時の床反力データを解析し、膝前十字靭帯損傷を負ったアスリートに共通する床反力信号成分を学習することにより、新たに測定したアスリートがどれほど同じ怪我を負いうるのかを予測する研究を行っています。これまでの研究では、ジャンプ着地時の衝撃緩衝能や、着地後の姿勢のゆらぎの質に注目することで、リスクの高い人とそうでない人に分類できる可能性が示されました。アスリートの怪我のリスクを事前に見える化することにより、より効果的な対策を前もって行い、怪我のリスクを下げ、パフォーマンスの向上に繋がることが期待されます。

床反力情報に基づく膝前十字靱帯損傷のリスク保有者の判別; Risk determination for anterior cruciate ligament injury based on ground reaction force properties) (prediction.tiff)

3.

箸の操作は、社会的な運動と解釈でき、いわゆる正しい方法が存在するために、そこから逸脱すると他者に“ぎこちない”との印象を与えます。そこで、当研究グループでは、1−2歳の箸を学習する時期で、誤った操作法に陥ってしまう分岐点を同定し、これを回避することで正しい箸操作に導くことができるかを検討しています。