平成22年元旦:医学系研究科・医学部の皆様方へ、
あけましておめでとうございます。
旧年中は医学部運営に一方ならぬご協力をいただきありがとうございました。心より御礼申し上げます。本年も引き続きよろしくお願い申し上げます。
一昨年4月に医学系研究科長・医学部長に就任し、皆様方の御協力のもとに、微力ながら医学部の運営に全力投球して参りました。今年は緒方洪庵生誕200周年、昨年は医学伝習140周年、また来年は大阪大学創立80周年と、歴史的な筋目をむかえつつあります。学外においては、今年は戦後65周年を迎えます。昨年は天皇陛下ご即位20周年を迎えました。戦後初めて本格的な政権交代もありました。また我々の足下は、医師不足や医療崩壊の問題が深刻化し、医学部出身者の基礎医学離れが一段と進みつつあるという状況があります。
このような変化の時代においては、将来への不透明さから不安が増大する傾向があります。しかし、変化があるからこそ、チャンスがあるとも考えられます。また変化をともなう時代だからこそ、我々大学人としての立場を大事にしなければならないと思います。高浜虚子の句に、“去年今年貫く棒のごときもの“というのがあります。我々にとっての棒とは何でしょうか?それはあくまでも”大学は学問と教育の府である“という事であります。世の中がどのように変化しようとも、大学は大学であり、大学の本分を貫く必要があります。
このような考えのもと、医学教育を抜本的に見直し、考える医師の育成を目指すとともに、6年一貫した医学教育カリキュラム改革も進行中です。また教育専任教授職を新設し、医学教育のシステム化とカリキュラムの内容の充実に務めます。目の前の医療はもちろん重要ではあることは申すまでもありませんが、阪大医学部としては10年、20年先の未来の医療を切り開く責務があります。医学マインドを有した優秀な医師、医学研究者を育てる必要があります。この目的のために昨年4月から、新入生を対象としたMD研究者育成コースを開始しました。このコースは希望者のみを対象とし、医学研究に対する興味や、その重要性を認識してもらうために始めたコースです。将来基礎医学はもちろん、臨床に進んでも医学研究マインドを有した医師を育てるのが目的です。
さらに、文部科学省の医学部学生の定員増の方針により、昨年と今年度で合計10名の定員増となり、1学年の定員は110名となります。政府は医師の数を1.5倍に増やす事を国民に約束していますが、我々は、単に医学部定員を1.5倍にするのではなく、あくまでも医学研究マインドを有した医師や、日本や世界の医学界をリードする国際感覚を有した優れた医師や医学研究者を育てる事を心がけていく必要があります。このために、国際医科学科を新設する事を真剣に検討するとともに、現在のMD研究者育成コースに対する財政的処置を文部科学省に求める準備を進めています。さらに優秀な外国人大学院生を増やすために、医学系研究科博士課程や修士課程の入学試験の改革を検討中です。
一方、より一層の研究を推進するため研究環境の充実にも注力していきます。今年の4月には、動物実験用PET-MRIや専用のサイクロトロンなど世界最先端の設備を有したPET分子イメージングセンターが開設される予定です。医学研究や生命科学の分野で増々重要になる分子イメージングの日本における中核的な施設になるはずです。さらに緒方洪庵生誕200周年記念事業による募金活動や概算要求などの手段により研究スペースの拡充の為の努力を引き続き行ないます。
“天の時、地の利、人の和”と言う言葉があります。この世の出来事はすべて、くるべきときが来たときに、そして、そのことを実行するのに最も相応しい条件が整ったときに成就するものです。さらに重要なことは人の和なくしては何事も成就出来ません。“大学は学問と教育の府である”、アカデミズムを追求することこそが、我々大学人に課せられた使命であるという理念のもと、 “日本だけではなく世界の医学界のリーダたるべきである”という高い志をもって、医学科、保健学科、附属病院の皆様方と一致協力して、さらなる飛躍をはかる努力をおこないたいと思います。
本年も医学部の発展のためによろしくご協力のほどお願い申し上げます。
最後に皆様方の益々の御活躍とご健康をお祈りいたします。
2010年元旦
平野俊夫
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