大阪大学大学院医学系研究科 生体統御医学講座 麻酔集中治療医学教室

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    大阪大学大学院医学系研究科 麻酔集中治療医学講座 TOP>各種マニュアル>気道管理マニュアル>4・麻酔科医に必要なファイバースコープの知識(2)

    気道管理マニュアル

    ここでは基本的な気道確保の方法から、
    挿管困難症例に対する対応や分離肺換気
    の方法など麻酔管理上必要な特殊な気道
    管理の方法までについて解説する。

    4.麻酔科医に必要な
      ファイバースコープの知識(2)

    気道管理マニュアル
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    麻酔科医に必要な気管支ファイバースコープの知識

    ここでは麻酔における基本的な気道確保の方法について解説する.ここでは麻酔における気道確保としてマスク換気と気管内挿管について解説する.

    目次

    I.  気管支ファイバースコープの操作
    II.  気管支ファイバースコープを用いた観察
    II-1. 喉頭
    II-2. 気管
    II-3. 右主気管支
    II-4. 右上葉気管支
    II-5. 中間気管支幹
    II-6. 右中葉気管支
    II-7. 右下葉気管支
    II-8. 左主気管支
    II-9. 左上葉気管支
    II-10. 左下葉気管支

    II-2. 気管の観察

    まずは,気管の背側と腹側を決定することである.気管の腹側には気管軟骨輪が存在するため横方向の模様が見えることになる.一方背側には気管膜様部があ り,縦(吻尾方向)に線維が走っている.写真は気管分岐部のファイバースコープ画像であるが,下方に縦方向に走る線維が認められるため,こちらが背側であることがわかる.また,両側の気管支内には上方に気管軟骨輪が認められる.従ってこの写真では向かって右側が右主気管支であり,左側が左主気管支である.

    II-3. 右気管支の観察

    この画像を一見すると先の気管分岐部の画像と非常によく似ていると思われる.実際この写真だけを見せられた場合に,これが気管・気管支のどの部分を写したものかを正確に言い当てられる医師はわずかである.この画像は右の第2分岐すなわち右上葉気管支と右中間気管支幹の分岐部のものである.向かって右が膜様部であり,右上の気管支が右上葉気管支ということになる.ちなみにI-2.でファイバースコープの視野マークを示した画像も右の第2分岐のものである.
    左用ダブルルーメンチューブを盲目的に挿管した場合,挿管方法が適切でなかった場合や,気管の右方への偏位が存在するような症例の場合には時として気管支 側先端が右気管支内に迷入してしまい,気管側開口部の正面にこの右の第2分岐が見えることがある.確かに一見するとダブルルーメンチューブが適切な位置に 置かれているように見えるが実際はそうではないのである.このような状況を正確に診断する最も簡便な方法は,左右一側ずつの分離換気時の呼吸音の聴診でありファイバースコープの視野での確認は熟練者でなければ必ずしも容易でない.「百見は一聴に如かず」である.ファイバースコープで正確に診断するためには,気管側にファイバースコープを通し,右主気管支と考えている気管支の奥を観察することである.この部位に再度気管分岐部に似た分岐が認められれば確かにチューブは適切な位置に置かれているのであるが,ここで3ないし4分岐のような右上葉気管支のB1-3の分岐が認められた場合にはチューブが右気管支内に迷入していると判断できるのである.ダブルルーメンチューブや気管支ファイバースコープに慣れていない初心者の場合にはしばしば認められるトラブルであるので注意しておいて頂きたい.

    II-4. 右上葉気管支

    右上葉気管支には肺尖部に向かうB1と側方に向かうB2および前方に向かうB3の3つの区域気管支が存在する.3分岐が一般的ではあるが,区域気管支の分岐には変異が多く,まず2分岐してからすぐ先でさらに2分岐ずつする場合や4分岐のように見える場合など種々の分岐様式がある.一般的には膜様部が進入するのがB2であり,B2の時計廻りの位置にB3が,反時計廻りの位置にB1が位置する.上の写真では最も右側に位置するのがB2,その上がB1,左下方が B3aとB3bと考えられる.いずれにしても右上葉の区域の分岐は気管分岐部とは明らかに異なる分岐形態である.

    II-5. 右中間気管支幹

    右第2分岐の左側は中間気管支幹である.中間気管支幹へファイバースコープを進めると3分岐の分岐が認められる.写真では膜様部は左下方である.内側前方 に分岐するのが右中葉気管支(写真では左上)であり,正面が右底区(B7-10)気管支,右下がB6区域気管支である.B6区域気管支は中葉気管支よりも近位から分岐する場合もあればさらに遠位で分岐する場合もある.

    II-6. 右中葉気管支

    右中葉気管支はB4とB5に分岐する底区に近い方(写真では右)がB4であり他方がB5である.

    II-7. 右下葉気管支

    右下葉はまず中葉気管支と対側にB6区域気管支が分岐する.B6は背側に向かう気管支であるため仰臥位の場合には喀痰などにより閉塞しやすい部位である. 写真の右上側がB6であり,左下側は底区域支である.
     

    B6の分岐の後,残りの底区域気管支からはB7およびB8,B9,B10が分岐する.写真で左に見えているが,内側方へ分岐するB7であり右側の奥に1列に並んだように見えているのが前方(写真の右上)からB8, B9, B10である.中にはB8が先に分岐し,その後B9とB10に分岐するといった場合もある.また,右の写真のようにこの部位で背側方に向かって分岐する気管支が存在することがある.これは,(*)または副心臓枝と呼ばれる気管支である.右の写真では左側にB7が,右上にB8,B9,B10が並んで見えており,その下に(*)気管支が開口している.
    この写真は左上の写真からさらに先に進めた像である.前(上)から順にB8, B9, B10が並んでいる.

    右気管支内観察のビデオ


    II-8. 左主気管支

    左の主気管支長は平均43mm程度と長く,また左第2分岐は右と異なり膜様部を下にして上下に分岐するようになっている.右第2分岐が気管分岐部のように膜様部に対して左右に分岐するのとは対照的である.写真では膜様部が下方であり,上方の気管支が左上葉気管支,下方が左下葉気管支である.これらの気管支はそれぞれ分岐後まもなくさらに2分岐するため,全体として4分岐しているように見えることもある.

    II-9. 左上葉気管支

    左上葉気管支のうち頭側(写真の左側)へ分岐するのが左上大区域気管支(B1+2とB3)であり,尾側へ分岐するのが舌区気管支(B4,とB5)である.写真では左上にB1+2とB3の分岐が認められ,右側にB4とB5が見えている.
    舌区では上大区に近い側(写真の左側)がB4であり,もう一方がB5である.

    II-10. 左下葉気管支

    左下葉気管支はB6と底区域気管支のB8, B9, B10に分岐する.心臓が左に存在するためB7は通常存在しない.背側に向かう(写真では左側)気管支がB6であり,尾側に向かう気管支の奥にB8と B9,B10の分岐が見えている.この例では先にB8が分岐し,その後B9とB10に分かれる分岐様式であった.一般的には先に右がそうであったように B8, B9, B10が前方から後方に向けて3分岐に分かれる.
    写真は腹側(上方)がB9であり,背側がB10である.

    左気管支内観察のビデオ


    参考文献

    1. Benumof JL: Anesthesia for Thoracic Surgery. 2nd edition, Philadelphia, W.B. Saunders Company, 1994
    2. 中江 文,萩平 哲,高階 雅紀,真下 節.経口ファイバースコープガイド下挿管のトレーニング方法について.麻酔,56(6):728-31 , 2007.

    最終改訂 2010.05.02 (Ver 0.41) by 萩平 哲 hagihira@anes.med.osaka-u.ac.jp