大阪大学大学院医学系研究科 麻酔科集中治療医学講座

  • TOP
  • 麻酔学講座
  • 関連施設
  • 研究生・学生の方へ
  • 各種マニュアル
  • リンク集
  • 研修医・学生の方へ
    大阪大学大学院医学系研究科 麻酔集中治療医学講座 TOP研修医・学生の方へ後期研修ガイド>8.麻酔科における専門医等の資格について~14.最後に
    8.麻酔科における専門医等の資格について~
    14. 最後に
    大阪大学医学部附属病院麻酔科・ICUおよび阪大麻酔科関連施設における
    後期専門研修ガイド(改訂4版)
    大阪大学大学院 生体統御医学・麻酔集中治療医学(TEL:06-6879-3133)
    お問い合わせ:林 行雄(yhayashi@anes.med.osaka-u.ac.jp)

    8.麻酔科における専門医等の資格について

     他の診療科同様に麻 酔科にも国および学会が認定する様々な専門医や認定医制度があります。

    1) 麻酔科標榜医

     麻酔科指導医のいる病院(麻酔科研修施設病院)で2年間の麻酔科専従が条件。国(厚生労働省)により認定されるもので、国家資格のひとつ。この資格がないと開業に際して麻酔科標榜ができない。また麻酔科標榜医がいない病院では麻酔科の標榜はできない。

    2) 麻酔科認定医

     麻酔科標榜医を持っているか、それを申請中で日本麻酔学会の正会員で学会参加の実績があることが条件。日本麻酔学会が認定するもので基本的には書類審査。

    3) 麻酔科専門医

     認定医として2年以上の臨床専従ののち、所定の研究業績(学会発表や論文)があれば受験できる。試験は筆記、口頭、実技からなり、勉強しないと通らない(国家試験程度の勉強が必要)。日本麻酔学会が認定するもので麻酔科医としてやっていく上で必要不可欠な資格。

    4) 麻酔科指導医

     日本麻酔学会が認定する。専門医として5年以上の麻酔業務に専従、その間に所定の学会出席、臨床実績および研修医等への指導実績があれば、申請できる。基本的には書類審査。指導医は5年ごとの更新があり、そのたびに同じ条件が要求される。

    9.留学(海外および国内)について

     海外の大学や研究施設に研究および臨床目的での留学については希望する先生には積極的にサポートするというのが基本的な考えです。ただ、留学する時期や期間については事前に人事担当と相談してほしいと考えていますし、原則留学は一生に1回としています。現在、医局から定期的に医局員を派遣している海外の施設はありません。自分で探してきて、どこどこへ行きたいという申し出があれば、それを医局が追認するというのが従来からの考え方です。もちろん、大学のスタッフの多くは留学経験者ですから、漠然と留学をしたいという希望を伝えていただければいろいろとアドバイスもします。逆に、留学なんかしたくないと思っている方を無理に行かせることもありません。ここでも阪大麻酔科の持っている"自由な雰囲気"があります。また、留学といっても先進国に行くばかりではなくアフリカのシエラレオネに医療活動に行った先生もいます。さらに、海外でなく国内にある病院に臨床技術習得のため国内留学も認めています。これまでの医局員の留学先の例をあげますとユタ大学、スタンフォード大学、ハーバード大学、ジョンズホプキンス大学、デューク大学、コロンビア大学、ロンドンインペリアル大学などがあります。国内の施設ではペインクリニックの技術習得のためNTT関東病院のペインクリニック科や佐賀大学医学部麻酔科へ国内留学された先生が数名おられます。

    10. 麻酔科医のメリット、デメリット

      麻酔科と他科を比べて、いい面もあればそうでない面もあります。あくまで私(林)個人の考えで書かせていただきますので、他の麻酔科医の先生は違う考えをもっておられるかもしれません。

     麻酔科医の最大の利点は仕事のオン、オフがはっきりしていることです。これは主治医となって患者を持つことがないからです(ただし、ペインクリニックは違います)。朝早くから夜まで手術室で麻酔をしていますが、麻酔が終われば翌日の術前回診をしてその日の仕事は終わりです。当直(病院に泊まっている)やオンコール(緊急手術があれば、呼び出しがかかる)でなければ、夜中に呼び出されることはありません。夏休み等のちょっと長い休みを取るときも患者さんの都合を考える必要がありません。最近患者さんのQuality of lifeの重要性が指摘されていますが、医師自身のQuality of lifeを考えると麻酔科医は恵まれているといえます。反面、患者さんとのお付き合いは希薄となりがちで、患者さんが治癒し感謝して退院されることで医者としての喜びや生きがいを感じることはあまりありません。それがストレスとなって麻酔科を離れる先生がおられたのも事実です。

     また、外科医と麻酔科医の一番大きな仕事の内容の違いとして、麻酔科医はひとりひとりが独立して、ちいさな会社の社長のような立場でいることがあげられます。手術は外科医一人ではできません。実際に手術をする人、それをサポートする人など、チームで仕事をしますので、術者としてその場のリーダーとなるのは長い時間を要します。しかし、麻酔科医は一人で麻酔管理をしますので、若いうちから手術をするチームのひとりではありますが、単独して麻酔管理という仕事をすることになります。それは若い先生には楽しくもあり、プレッシャー(外科医からの理不尽なプレッシャーも含めて)を感じることでもあると思いますが、その場の麻酔を任されていると感じて仕事をすることはやりがいのあることだと思います。

    11. 麻酔科医となって10年後は?

     ここまでの話は先生方が麻酔科医を志された後の近未来について述べてきました。さて、麻酔科医となって10年以上がたったらどのような生活をしているか、ちょっと考えてみたいと思います。10年たてばもはや押しも押されぬ麻酔専門医です。おそらく関連施設のスタッフとなっているか、大学でスタッフ(助教)として働いているかではないでしょうか。いずれの場合も日々の忙しい臨床の傍らスーパーローテ、研修医や後輩の教育、さらには病院内の会議等の雑用、出版社からの原稿の依頼や学会からの仕事も舞い込んでいるかもしれません。おそらく家庭をもたれ、ローンをかかえ、それなりの収入も必要になっているでしょう。でも中には独身貴族を謳歌しておられる方もおられるでしょう。関連施設で若干の相違はありますが、10年めで年収は1000~1200万円です。いくらかの幅があるのは病院の忙しさ等で超過勤務がどれだけあるかに大きく依存します。大学助手であれば、大学からの給与は600~700万円ですが、週に1日外勤日が認められております。外勤する病院の麻酔業務の忙しさや特殊性等が影響しますが、年間400万円程度はありますので、大学の収入が悪いわけではありません。大学と関連施設とどちらがいいかは個人の好みというか、どんな仕事をしたいかにかかわってくると思います。例えば、動物実験等の基礎研究を続けたいならば大学でなければ難しいでしょう。でも臨床を前面にやっていくのであれば、大学は雑用が多くてあまりいい環境ではないかもしれません。関連施設におられても臨床研究でがんばっておられる先生もいます。要は本人のライフスタイルや職場環境が大きな因子になると思います。後で触れますが、なかにはもう開業されているかもしれません。開業にはリスクが伴いますが、うまくいけば収入面では勤務医の数倍であることは間違いありません(ある開業麻酔科医の先生からそれほどあくせく働かんでも年商で8000万はいけますと私はうかがいました。またある先生は一人で年商2億以上とも)。ただ、麻酔科の開業にあたっては確かな技術と経験が必要ですので、若いうちから安易に開業するのではなくて、少なくとも麻酔科の専門医を取得してからにしてほしいと思います。

    12.その他

    1)ママ麻酔科医制度

      女性医師というより女性が結婚、出産後、育児と仕事を両立していくにはいろいろな困難、それも本人の努力のみでは克服しえないものがあるのが今の日本の現状といえます。阪大麻酔科では女性麻酔科医がやる気と努力で結婚、出産を経ても仕事が続けられるように大学病院と一部の関連施設で以下の3条件を受け入れて働いていただいています。

    3条件とは
    1.子供の保育所の保育時間にあわせての勤務
    2.当直免除
    3.子供の急病時の欠勤(ドタキャン)は不問

    です。阪大麻酔科としては一人でも多くの女性麻酔科医が麻酔科専門医、指導医を習得されることをサポートしたいと考えていますし、医局にとってもある程度の麻酔科医としての技術や能力を身につけた先生方のリタイアは大きな損失と考えています。

    2)麻酔科開業について

     麻酔科は開業が難しいと考えられている先生もおられると思います。確かに数は少ないですが、ペインクリニックや緩和医療を看板にして現在阪大麻酔科出身で開業されている先生は7名おられます。幸いいずれの先生も成功しています。メジャーやマイナーでも眼科、耳鼻科等はかなり新規開業のリスクが高くなっているといわれていますが、麻酔科はまだまだ数が少ないので、チャンスは多いと思います。また、ペインクリニックでなく、出張麻酔(いろいろな病院と麻酔業務の契約をするという新たな開業スタイル)で開業する先生も全国的に増えてきています。先に述べましたように麻酔科医は一人で独立して臨床業務をこなせるわけですから、このような開業スタイルが可能となります。大学医局の立場からすれば、ある程度トレーニングを積んだ先生が開業で医局を離れることはあまり歓迎できることではありませんし、それを推奨するつもりもありませんが、これも時代の流れといえます。

    3)大学麻酔科医局の将来像

     今医局制度は大きな変革期を迎えています。特に麻酔科は麻酔科医不足を背景に変革が加速度的に働いているように思えます。将来的には大学医局が麻酔科医の養成場として機能し、研修が終わって専門医が取得後も大学医局で仕事を続ける麻酔科医は研究をしたい、教育に興味があるなど、大学ならではの仕事に興味を持つ先生のみが所属することになるでしょう。でも、そのような考えで大学に残りたいと考えている先生は阪大麻酔科医局内でも1割か2割でしょうか。いずれ医局人事という言葉も死語となるでしょう。そうすると市中病院の麻酔科医の皆さんは医局と関係ない、つまり自分で職場を見つけて就職した先生や開業医という時代になるかもしれません。そうなるといずれは麻酔科医同士の沙汰が起きるはずです。私たちはそんな時代の到来に備えての教育システムを作り上げつつあります。皆様にはそのような時代にでも対応できる実力ある麻酔科医になってほしいと思いますし、そのような麻酔科医を育てることも私たちの使命と考えています。

    13. 阪大麻酔科・ICUおよび関連施設での研修希望申し込みについて

      阪大病院卒後臨床研修センターでは専攻医という名前でスーパーローテ後に専門研修をする研修医を募集しています。応募に必要な書類は

    1.応募願(本冊子の最後につけますが、阪大病院卒後臨床研修センターのホームページ
     (http://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/home/sotsugo/からダウンロードできます)
    2.医師免許書(写し)1通
    3.推薦書1通(病院長または臨床研修実施責任者、様式は自由)
    4.臨床研修見込み証明書1通  です。

     

    阪大麻酔科の人事担当の林まで、研修希望を伝えていただければ、具体的な手続きのお手伝いもいたします。また、2年の専門研修の初年度を大学病院でなく関連施設での研修を希望される場合も同様に林までお知らせいただければ、しかるべき時期にどの病院で研修をするかの相談をしたいと思います。また、具体的に研修してみたい病院に直接申し込んでいただいてもかまいません。いかなるご希望でもメールなり、手紙等で伝えていただければと思います。また、研修に関するご質問等も林までご連絡いただければと思います。

    林の連絡先は以下のとおりです。

    連絡先:林 行雄

    565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2 大阪大学医学部 麻酔・集中治療医学講座

    Tel : 06-6879-3133; Fax : 06-6879-3139

    E-mail : yhayashi@anes.med.osaka-u.ac.jp

    14.最後に

     阪大麻酔科で後期専門研修を行った時の将来にわたるイメージがご理解いただけたでしょうか。医師が足りないと声高に叫ばれていますが、本当に足らなくて困っているということは裏を返せば、必要な戦力を早く育てなければならないシステム作りが必要ということになります。それには知識も不可欠ですがそれだけではだめで、多くの実践的な研修が必要です。外科医が一人前になるには手術をある程度の数をこなすことが必要で、術前術後管理ばかりでは腕のいい外科医にはなれません。麻酔も同じです。様々な知識は各自が勉強していただかねばなりませんが、実際に麻酔を自分でしてみて、それぞれの知識を生かすことで一人前の医師になっていくものです。患者さんとの臨床から直接学ぶことは教科書からの知識に代えがたいものがあります。

     今後、医療界は医師不足を契機に大きな変革期に入きます。医局という中世のギルドのような組織はいずれ解体されるでしょう。そしていずれ医師過剰となり、実力主義の時代に入ることは明らかです。それがいつかはわかりませんが、いかなる状況になっても結局最後にものを言うのは自らの実力です。本当の実力ある麻酔科専門医を育てたい、シンプルですがわれわれ阪大麻酔科の目指すところです。ひとりでも多くの将来のある先生のご参加を心よりお待ちしています。

     
    麻酔科後期研修ガイド INDEX