大阪大学医学部付属病院 麻酔科ペインクリニック部門

大阪大学医学部附属病院 疼痛医療センター 
麻酔集中治療医学講座 ペインクリニック部門


Center For Pain Management, Osaka University Hospital

ペインクリニックで行われる主な手術療法を紹介します

高周波熱凝固法

脊髄神経後枝内側枝高周波熱凝固法

後枝内側枝.jpg高周波熱凝固法は、局所麻酔薬を用いた神経ブロック治療で一定の効果がみられる患者様が対象となる治療法です。

脊髄神経後枝内側枝高周波熱凝固法は、背骨の関節に痛みが出る人に対して、先端に熱を加えることができる特殊な針を用いて関節の痛みを伝える神経(脊髄神経後枝内側枝)を変性させる事により、長期間痛みの伝わりをおさえる事を目的としています。

針の先端に弱い電流を流した状態で、背骨の表面で針を動かし神経に針先が触れる場所を探します。針先が神経に触れると、関節付近に痛みを感じ、電流をとめると痛みもおさまります。

神経の場所が確認できたら造影剤と局所麻酔薬を少量注入し、異常がないことを確認した後、針の先端に約90度の熱を加えて関節の痛みを伝える神経だけを熱で変性させます。
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通常、1回の処置で上下2〜3カ所の背骨の神経に治療を行います。
ブロック終了後は、約1時間ベッドで休んでいただいた後、帰宅となります。

硬膜外脊髄刺激電極挿入術

ope_man.gif脊髄を包む硬膜という膜の外側に,ボールペンの芯より少し細い程度の電極を背中から注射針を通して入れます。

まずは,体の外からその電極に電気を流し,痛みのある体の場所に電気の刺激が感じられるように電極の場所を設定します。

からだの外から電気を流して,普段の痛みが和らぐかどうかを観察します。数日間観察して効果があれば,スイッチと電池の役目をする装置を腹部や鎖骨の下あたりの皮膚の下に埋め込んで,患者さん御自身で操作できるようにします。

この治療の対象疾患としては,脊椎の手術後に残存した慢性の痛み,末梢神経障害性疼痛,脊髄障害性疼痛の一部のものなどの難治性の痛みの方です。適応かどうかは,一概に病名だけでは決められませんし,上記病名以外の方にも適応できる場合が多いですから,希望される方は当方に受診のうえご相談ください。

エピドラスコピー

内視鏡的難治性腰下肢痛治療

kenshui.gifエピドラスコピー(硬膜外内視鏡)は慢性の腰痛や難治性の腰部椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの坐骨神経痛、腰椎手術後も下肢痛にしびれや痛みが残存し、手術後の神経周囲の癒着などが考えられる場合に、内視鏡を硬膜外腔に入れて癒着を剥離して治療するもので、従来の保存的治療が無効な方に対して行われる治療法の1つです。

この方法は手術室で以下の手順で行います。手術室にてお腹の下に枕を入れうつ伏せになります。お尻の上に局所麻酔の注射をし、直径1mm以下の細い内視鏡を仙骨硬膜外腔に挿入します。

内視鏡およびX線透視下に神経、血管、脂肪などを見ながら、痛みの原因となっている神経周囲の病変を観察し、痛みの原因となっている神経と周囲の癒着組織を剥離、洗浄します。

この治療は2005年度より高度先端治療となりましたので健康保険が使えないために、自費治療となります。

エピドラスコピーの対象疾患

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エピドラ対象.pdf

治療成績

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エピドラ治療成績.pdf 効果(術後3ヶ月~1年)
著効 → 下記の判定項目①~④のすべてを満たす
有効 → 2項目以上を満たす
無効 → 1項目以下しか満たさず

判定項目
①歩行距離が延長した
②歩行時の痛みの強さが軽減した
③日常生活の動作が楽になった
④治療を受けて満足している

疾患別治療成績

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エピドラ疾患別.pdf 効果(術後3ヶ月~1年)
著効 → 下記の判定項目①~④のすべてを満たす
有効 → 2項目以上を満たす
無効 → 1項目以下しか満たさず

判定項目
①歩行距離が延長した
②歩行時の痛みの強さが軽減した
③日常生活の動作が楽になった
④治療を受けて満足している

ニュークレオプラスティ

経皮的高周波椎間板減圧術

Nucleoplasty.jpg経皮的高周波椎間板減圧術(ニュークレオプラスティ)は、慢性の腰下肢痛の原因と考えられる腰椎椎間板ヘルニアを経皮的に除圧し痛みを軽減する方法です。

経皮的に椎間板を除圧する方法はこれまでに、鉗子で髄核を摘出する方法、レーザーや高周波熱凝固法で髄核を除圧する方法等が開発・施行されてきました。

しかし髄核の摘出量にばらつきがあったり、高熱により髄核周囲の組織が損傷を受けたりといった副作用の為、臨床応用が限られてきました。

経皮的高周波椎間板減圧術(ニュークレオプラスティ)は米国で2000年に最初の症例が行われて以来、欧米を中心に普及してきた新しい治療法です。
原理は椎間板髄核に挿入した切除用プローブ先端に高周波電流を加え、プラズマ層を発生させます。プラズマ層周囲の髄核組織が分解されるので、組織の除圧が行えます。

従来のレーザーや高周波熱凝固法に比べて施術中の温度上昇も40-70度と低く、隣接組織への影響も少ないと言う利点があります。

我が国でも数年前より一部の医療機関で行われていますが、未だ保険医療行為として社会的に認められた治療法ではなく、各施設での倫理委員会の承認を得て実施されています。

経皮的椎体形成術

Percutaneous Vertebroplasty:PVP

骨粗鬆症や癌、多発性骨髄腫の転移などが原因で、背骨(脊椎)が圧迫骨折を起こすと、強い痛みが生ずることがあります。

従来、このような脊椎圧迫骨折の痛みに対する治療としては、鎮痛剤の投与や安静、コルセットの使用、外科手術などが行われたり、悪性疾患の場合には放射線治療が行われてきました。経皮的椎体形成術(Percutaneous Vertebroplasty:PVP)は骨折した背骨に 骨セメントを注入することで、骨折した背骨を固める治療方法です。

骨折した背骨を骨セメントで補強することにより、痛みをやわらげることが出来ます。PVPは局所麻酔で行うことができ、即効性がある治療法です。 

他の方法と比較して、手術療法や放射線治療、薬物療法と比較しPVPは即効性、確実性、安全性の点で優れています。

当院においては放射線科と協力して治療を行なっております。

IDET

椎間板性腰痛に対する、腰椎椎間板内高周波熱凝固法

椎間板性腰痛とは

慢性腰痛症の原因のひとつ

慢性の腰痛は様々ですが、その原因の一つに椎間板自体が腰痛の原因となっているという考え方があります。

痛みの特徴や画像診断から傷んだ椎間板が腰痛の原因となっている疑いの患者さんに、椎間板造影を行い、薬液を注入したときに、普段の腰痛が強く再現するかどうかで椎間板性腰痛かどうかを診断します。

腰痛のすべてが椎間板性腰痛では決してありません。全米では300から500万人の患者がいると言われています。
日本ではどれくらいの患者さんがおられるか調査した研究はありませんが、推計200万人程度の患者さんがいると言うことになります。

椎間板性腰痛の痛みの特徴

数分から数十分座っていたり立っていたりすると痛みが強くなり横になると和らぐという性質があります。

椎間板性腰痛の原因

過剰な負荷、加齢による変化などにより椎間板の繊維輪に亀裂が入り、それが痛みの原因になると考えられています。

現在の治療法
椎間板が腰痛の原因となつ椎間板性腰痛の場合、適切な治療法が無いのが現状です。
強いて言うならば椎間固定術といって金属を用いて2つの椎体を1つに固定する手術があります。
この手術は後に他の腰の骨との関節に新たな痛みの原因を作る事が問題とされています。

IDET治療

IDET
(Intradiscal Electrothermal Annuloplasty)


レントゲン透視を用いて椎間板の中に専用の針を挿入し、針先に熱を加えることで傷んだ椎間板に存在する痛みを伝えている神経だけを麻痺させたり、椎間板の線維輪を硬化させることにより痛みがおこりにくくします。 
(IDET治療のことを我々は、アイデットと呼んでいます)

診療のながれ

まずは外来で問診、身体診察、腰椎エックス線、MRI写真をチェックし、IDET治療の適応となるかどうか判断します。
mri.gif
その後椎間板造影検査を実施した上で最終的にIDET治療の適応かどうかを判断します。

必要検査.jpg
図左:MRI検査  図右:椎間板造影


IDET治療によって期待できる効果、起こりうる副作用、費用、治療後の安静度などについて十分理解して頂いた上で実施いたします。 

IDET透視画像.JPGIDETシェーマ.jpg
図左:X線側面像  図右:模式図

IDET治療   プローブを椎間板内へ挿入

入院期間は場合によって異なりますが、通常5から7日程度の入院が必要です。

術後にも定期的な受診が必要です。

腰痛の改善度を調べるために簡単な調査票の記入をお願いしています。調査票の結果を解析し、今後の治療に役立てていきます。

ご注意

本来のIDETは椎間板性腰痛の治療法であり、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛には効きません。

ただし、除圧用IDETという新しい治療法があり、米国では一部の椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の治療に応用されています。当院では未採用。


IDETの効果については、手術、神経ブロック、レーザー治療と同様、長期的にみて本当に効果があるのかどうか、専門家の中でも意見が分かれています。

しかし、最新の二重盲検試験(患者にも治療者にも本物の治療をしたのか偽物の治療をしたのか分からないようにして効果を評価する方法)では有効性が確認されています(参考資料)。

報告者によって成績に差がある大きな原因は、対象となる患者の選択方法にあると思われます。
見かけ上の選択方法は同じでも、その施設に集まる患者の母体が異なっていれば、成績に影響することが考えられます。

参考資料 Freeman BJ et al., A Randomized, double-blind controlled trial: Intradiscal Electrothermal Therapy versus Placebo for the Treatment of Chronic Discogenic low back pain. Spine 30: 2369-2377, 2005


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