研究内容

1、ゲノム解析を応用した筋ジストロフィーや他疾患の原因遺伝子同定と機能解析、治療法開発に関する研究
2、SNPを基盤としたパーキンソン病の原因の解明とその病態解析、オーダーメイド医療をめざした至適薬剤の選択、治療法の開発に関する研究
3、DNAチップをベースにした各種疾患病態に関する研究
4、ポリグルタミン病について、異常蛋白質の蓄積という視点から、治療法開発をめざした研究
5、DNAチップ、比較ゲノム学、分子遺伝学をベースにした記憶、知性などに関わる遺伝子などの高次脳機能研究
(また遺伝医学・ゲノム医学についても基礎から教育する。) (戸田)

福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)の分子遺伝学的研究

 福山型先天性筋ジストロフィ−(FCMD)は、重度の筋ジストロフィ−に神経細胞移動障害を伴う常染色体劣性遺伝性神経疾患であり、日本人に多く約90人に1人が保因者です。患児は生涯歩行不能で、同時に高度の知能・言語発達遅延を伴い、全面的な介護を必要とします。決定的な治療法はなく、本症患者の運命は悲惨です。我々は、ポジショナルクローニングによりFCMD原因遺伝子を同定し、遺伝子産物をフクチンと名付けました。近年の研究でフクチンは糖タンパク質の糖鎖を修飾する酵素ではないかと推測されております。現在我々は、FCMD患者の分子遺伝学的解析、フクチンの糖鎖修飾酵素としての機能追求とジストログリカン複合体との関係、神経細胞移動障害の成因、ノックアウトマウス、キメラマウス、DNAマイクロアレイを用いた本疾患の病態解明と治療研究を行っております。 (小林)

muscle-eye-brain病(MEB)の分子遺伝学的研究

 Muscle-eye-brain(MEB)病は先天性の筋ジストロフィーに眼奇形、神経細胞移動障害を伴う常染色体性劣性遺伝病です。福山型筋ジス、Walker-Warburg症候群とは症状がよく似ており類縁疾患とされ、共通のメカニズムにより発症すると考えられております。また一方で哺乳類においてO-マンノース型糖鎖は、脳、神経、骨格筋の限られた糖タンパク質でのみ認められている糖鎖です。我々は東京都老人研遠藤研究室とともに、そのO-マンノースにN-アセチルグルコサミンを付加する新規の糖転移酵素POMGnT1の遺伝子がMEB病の原因遺伝子であることを示し、筋ジストロフィーや神経細胞移動異常に糖鎖という新たな病態メカニズムを提唱しました。現在我々は病態解明に向け、MEB病患者の分子遺伝学的解析を行っております。 (小林)

パーキンソン病

 パーキンソン病(PD)は主に中脳黒質から線条体に至るドパミンニューロンが障害され、病理学的にはLewy小体が出現する神経変性疾患である。振戦、筋固縮、寡動、姿勢反射障害を四主徴とし、一部の症例では痴呆や自律神経症状を合併する。本邦における有病率は10万人中約100人であり、神経変性疾患の中ではアルツハイマー病に次いで比較的遭遇する機会が多い。近年、一部のメンデル遺伝形式をとる家族性パーキンソニズムについてはα-シヌクレイン遺伝子やパーキン遺伝子、UCH-L1遺伝子の変異が発見されたが、症例的には大多数(90%以上)の孤発性PDの原因は現時点でも不明である。しかし、孤発性PDは多くの研究結果から環境因子と遺伝因子により発症する多因子性疾患であると考えられており、その疾患感受性遺伝子の同定が重要な課題となっている。一方、PDは発症年齢や臨床症候、経過、薬剤の反応性が多様であることが特徴であり、このことは患者の階層化と患者さん一人一人に最適なオーダーメイド医療が可能であることを意味する。我々はパーキンソン病における疾患感受性遺伝子の同定とオーダーメイド医療確立を目指し、ゲノム的な視野で、東京大学神経内科、順天堂大学神経内科、香川県立中央病院神経内科、東海大学分子生命科学2と共同研究を展開している。 (水田・佐竹)

記憶に関わる遺伝子

 記憶や学習は脳の最も重要な高次機能の一つであり、世界で多くの研究グループが精力的に研究を行っている。古くは、Kandelらによるアメフラシの鰓引き込み反射学習が有名である。短期記憶に関しては、促進性介在ニューロンからのセロトニンの放出、感覚神経細胞末端におけるcAMPの増加、蛋白リン酸化酵素の活性上昇、カリウムチャンネルのリン酸化による活動電位の増加、カルシウム濃度の上昇、神経伝達物質の放出量の増加、という一連のカスケードが証明されている。一方、長期記憶では、持続的なcAMPの増加、蛋白リン酸化酵素の活性上昇があり、伝達シグナルは核まで届き、種々の遺伝子の発現、蛋白の合成が変化し、最終的にシナプスの形態変化し(シナプス可塑性)、神経伝達物質の効率が良くなると考えられている。海馬は記憶に重要であると考えられているが、ラットの海馬を高頻度刺激するとシナプス伝達が長期に増大することが知られており(long term potentiation:LTP)、長期記憶のモデルとされている。我々は、この系を用いてLTPを誘導し、LTPにおいて発現の変化する遺伝子群を、DNAチップを用いて解析している。 (倉橋・谷口)

知性などに関わる遺伝子

ヒトとチンパンジーはほとんど塩基配列が同じなのに、なぜヒトは知能、言語をもつか?key moleculeは何か?脳の各部位のDNA tipによる比較や塩基配列比較などを通じて研究を行う。また分子遺伝学、ゲノム解析を用いて精神発達遅滞に関与する遺伝子の同定、または多因子遺伝であるgeneral cognitive ability (g)などに関するヒト遺伝子の同定と、それに影響を与える環境因子、生活因子との交絡を見出すことをめざす。 (戸田)

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