音声・嚥下・気道外来 − 様々な音声障害疾患

音声障害は、①器質性音声障害、②機能性音声障害、③神経学的音声障害に分類されます。①は声帯の器質的異常によって声に異常が生じるもの、②は声に異常が生じているにも関わらず声帯に異常を認めないもの、③は神経の麻痺や痙攣などにより声に異常が生じるものです。
ほとんどの音声障害は喉頭を観察することにより診断が可能です。以下に各疾患の喉頭所見を提示します。

1)器質性音声障害

①ウイルス感染による急性声帯炎

左は吸気時、右は発声時です。声帯が赤く腫れており、発声時はほとんど振動しないため、声はほとんど出ません(「失声」といいます)。治療で最も重要なことは「声の安静」です。

②胃酸逆流による慢性声帯炎

声帯自体も赤くなり、表面が不整になっています。これでは規則正しく振動しません。声帯のみでなく後ろの土手(「披裂部」といいます)の部分が水ぶくれ状になっており、胃酸の逆流による粘膜炎と考えられます。治療には胃酸分泌抑制剤を内服してもらいます。

③声帯ポリープ

右側の声帯に赤色の病変を認めます。大声に伴う声帯の強い衝突によって粘膜下の血管が破れて生じます。自然治癒は少ないため手術で切除を行うことが多いです。

④声帯結節

両側の声帯の中央部〜前方3分の1に「たこ」のような病変ができ、発声時にたこ同士が接触して振動が不規則になります。声の安静に加え、副腎皮質ステロイド剤などの薬物療法を行いますが、難治性の場合には手術を行うこともあります。

⑤声帯嚢胞

右側の声帯に粘膜下病変を認めます。大声に伴う声帯の強い衝突によって粘液腺が詰まるなどの原因で生じます。自然治癒はほとんどないため手術で切除を行うことが多いです。

⑥ポリープ様声帯

左:両側声帯が何倍もの大きさに腫れています。原因は長期にわたる喫煙です。軽度のものは禁煙により改善することもありますが、中等度以上の方は手術を行うことが多いです。右は手術後1週間後の喉頭所見です。

⑦喉頭肉芽腫

声帯の後方に病変ができます。胃酸逆流、咳、気管挿管が三大原因です。ステロイドの吸入剤、抗ケロイド剤、胃酸分泌抑制剤の内服治療を行います。

⑧声帯萎縮

加齢によって声帯のボリュームが減少することによって生じます。男性に多いです。発声時に声帯が完全に閉じなくなります。声帯内に脂肪を注入してボリュームを増大させることにより治療します。

⑨声帯溝症

両側の声帯に溝が生じて(原因は不明です)発声時に声帯が完全に閉じなくなります。溝によって声帯振動が悪くなる分、萎縮よりも嗄声は高度です。当科では溝をレーザーで焼灼してから声帯内に脂肪を注入する治療を行っています。

2)機能性音声障害

①心因性失声症

発声時に声帯が完全に閉じず、失声となります。ストレスにより発症します。治療として音声治療を行います。

②のど詰め発声(muscle tension dysphonia)

発声時の声帯部および声門上部の閉じすぎにより声嗄れが生じます。いわゆる「だみ声」です。音声酷使や胃酸逆流によって生じることが多いですが、ストレスが原因で生じることもあります。

治療として音声治療を行います。

3)神経学的異常による音声障害

①反回神経麻痺による声帯固定(左)

左声帯が固定しており、発声時に中央に移動しないため、発声時に声帯が閉じません。

声帯を動かす反回神経が傷ついたときに生じます。甲状腺、食道、肺などの疾患、手術後に生じることが多いです。

治療として人工材料あるいは自家脂肪を用いて固定した声帯を中央に移動させる手術を行っています。

②けいれん性発声障害

特に会話発声時において声帯および声門上部が断続的に詰まり、声が途切れます。

当科では治療として声帯内部の筋肉を切除する手術を行っています。