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腫瘍外来

腫瘍外来が扱う疾患は、頭頸部癌および頭頸部領域の良性腫瘍です。大阪大学では全ての頭頸部癌、頭頸部良性腫瘍に対して最善の治療をご提供します。

1.担当医師

教 授 猪原 秀典 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
頭頸部がん専門医
頭頸部がん専門医制度暫定指導医
日本がん治療認定医機構暫定教育医
助 教 山本 佳史 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
頭頸部がん専門医制度暫定指導医
日本がん治療認定医
助 教 竹中 幸則 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
助 教 中原 晋 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医

2.診療について

頭頸部癌とは

頭頸部癌は、頭頸部領域に発生する癌の総称です。耳鼻咽喉科・頭頸部外科がその診療において中心的な役割を担っています。頭頸部領域は口腔、咽頭、喉頭、鼻・副鼻腔、聴器、唾液腺、甲状腺から構成されます。咽頭は上咽頭、中咽頭、下咽頭に細分されます。口腔、咽頭、喉頭、鼻・副鼻腔、聴器に発生する癌の殆どは、病理組織学的に扁平上皮癌に分類され、頭頸部扁平上皮癌と呼ばれます。一方、唾液腺、甲状腺に発生する癌は、腺系癌で病理組織学的に大きく異なります。

頭頸部扁平上皮癌の発生には喫煙、飲酒が密接に関与しています。したがって、中高年の男性に多く発生する傾向があります。口腔癌の発生には不良歯牙も密接に関与しています。例えば、内向きに生えた臼歯が慢性的に舌の辺縁に当たっていたりすると、その部分から舌癌が発生します。したがって、若年女性にも舌癌などは認められます。興味深いことに、咽頭癌はその発生部位によって特徴が大きく異なります。上咽頭癌はEBウイルスの感染によって発生します。EBウイルスには全ての人が感染しますが、なぜ一部の人でのみ上咽頭癌が発生するのか、その詳しいメカニズムは解明されていません。中咽頭癌は、その約40%はヒトパピローマウイルスの感染により発生しますが、やはりその詳しい発癌メカニズムは不明のままです。中咽頭癌の約60%は喫煙・飲酒が原因です。下咽頭癌は大量の喫煙歴、飲酒歴がある人に発生し、頭頸部扁平上皮癌の中で最も予後不良な癌です。

頭頸部扁平上皮癌の治療

頭頸部扁平上皮癌の治療方針は、その発生部位、そして早期癌か進行癌かによって大きく異なります。また、頭頸部扁平上皮癌は放射線や抗癌剤に対して感受性があるため、治療方針は施設によって若干異なります。ここでは大阪大学における治療の概要を部位別に解説します。

1)上咽頭癌

上咽頭癌はEBウイルスが原因となって発生しますが、放射線や抗癌剤に対して高い感受性を示します。また、上咽頭癌は顔面深部にあり、解剖学的にも手術のアプローチが困難です。そのため、上咽頭の早期癌に対しては放射線単独療法を、進行癌に対しては抗癌剤を投与する化学療法と放射線照射を同時進行で行う化学放射線同時併用療法を行います。癌が残存した場合には、サイバーナイフと呼ばれる定位放射線治療、手術、あるいは化学療法などを症例に応じて行います。

2)中咽頭癌

中咽頭の早期癌は手術、あるいは放射線療法で治療を行います。進行癌は手術+術後放射線療法、あるいは化学放射線同時併用療法で治療を行います(化学放射線同時併用療法の詳細は別項をご覧ください)。進行癌の手術では摘出に伴う咽頭の欠損の大きさに応じて、その部位をご自身の腹直筋や大胸筋などを用いた皮弁で充填します。手術の結果、病理組織学的に悪性度が高いと判断された場合は、術後に放射線療法に換えて化学放射線同時併用療法を行います。これは後述する下咽頭癌、喉頭癌、口腔癌などの場合でも同様です。手術を主体とした治療を行うか、放射線を主体とした治療を行うかは、どちらの方が治療後の後遺症が少ないか、すなわちどちらの方が治療後のQOL(quality of life、生活の質)が保たれるか、ということを基準にして選択しますが、両者の治療成績は同等です。

中咽頭癌の約40%はヒトパピローマウイルスの感染により発生しますが、ヒトパピローマウイルス陽性の中咽頭癌はヒトパピローマウイルス陰性の中咽頭癌と比べ、予後が良好であることが明らかになっています。そこで、ヒトパピローマウイルス陽性の中咽頭進行癌に対して、強度を下げた治療、すなわち後遺症の軽い治療を行う試みを開始しています。詳しくは別項をご覧ください。

3)下咽頭癌

下咽頭の早期癌は手術、あるいは放射線療法で治療を行います。しかし、下咽頭癌が早期で発見されることは稀です。進行癌は手術+術後放射線療法、あるいは化学放射線同時併用療法で治療を行います。進行癌の手術では喉頭を温存することが可能な例は限られており(下図、喉頭温存手術の写真をご参照ください)、多くの例では咽頭・喉頭全摘出を行います。咽頭の摘出により、口腔と食道をつなぐ食事の通路が失われます。そこで、この部分を空腸(小腸の一部)を用いて再建することにより、口から食事を摂ることができるようにします。

喉頭の摘出により発声機能が失われ、身体障害者の3級に認定されます。無喉頭となっても、食道発声、電気喉頭やシャント発声などの代用音声と呼ばれる方法により発声することは可能です。

下咽頭癌に対して喉頭温存手術を施行した症例。癌(▼)の摘出後に前腕皮弁(↓)で再建をしています。このように喉頭を温存することが可能な進行癌は限られています。

4)喉頭癌

喉頭癌でも同様に、早期癌は手術あるいは放射線療法で、進行癌は手術+術後放射線療法あるいは化学放射線同時併用療法で治療を行います。進行癌の手術では殆どの場合、下咽頭癌の場合と同様に喉頭を摘出し無喉頭となります。そのため、進行癌の多くの方は化学放射線同時併用療法による治療を選択されています。

本邦では喉頭全摘出した方は、その後の代用音声獲得として食道発声や電気喉頭を利用することが多いですが、欧米では9割以上の方が留置型の人工喉頭(ボイスプロテーゼ:商品名=Provox,プロヴォックス)を利用しています(=シャント発声)。当科でも約10年前から希望する方に人工喉頭留置術(ボイスプロテーゼ挿入術)を行っています。

5)口腔癌

口腔癌には舌癌、口腔底癌、歯肉癌、頬粘膜癌などがあります。早期の口腔癌は手術で治療します。進行した口腔癌は手術+術後放射線療法による治療を行います。進行癌の手術では、摘出に伴う欠損部位をその大きさに応じて腹直筋皮弁や大腿皮弁などを用いて再建します。切除範囲が大きくなると術後に誤嚥を生じやすくなるため、こうした場合は誤嚥防止手術も併せて行います。

6)鼻・副鼻腔癌

鼻・副鼻腔の早期癌は手術、あるいは放射線療法で治療を行います。進行癌は手術+術後放射線療法、あるいは超選択的動注化学放射線同時併用療法で治療を行います。鼻・副鼻腔癌は通常の化学放射線同時併用療法では治療効果が乏しく、超選択的動注化学放射線同時併用療法を行います。これは通常の化学放射線同時併用療法と異なり、抗癌剤の投与を静注からではなく、腫瘍を栄養する動脈に留置したカテーテルの先端から注入することから、超選択的動注と呼ばれています。

鼻・副鼻腔には扁平上皮癌だけではなく、悪性黒色腫や腺様嚢胞癌などが発生することもあります。これらの悪性腫瘍は通常の放射線療法には抵抗性を示すため、重粒子線と呼ばれる特殊な放射線で治療を行うこともあります。重粒子線の照射装置は大阪大学にはないため、こうした場合は兵庫県立粒子線医療センターへ紹介しています。

7)聴器癌

耳に発生する癌の総称で、外耳癌、中耳癌に分類されます。早期癌は手術、進行癌は手術+術後放射線療法、あるいは超選択的動注化学放射線同時併用療法で治療を行います。

化学放射線同時併用療法

1)背景

前述したように下咽頭・喉頭の進行癌の手術では、その殆どで喉頭全摘出が必要となり、喉頭を温存することができる症例は限られています。また、舌根に発生した中咽頭癌の手術でも喉頭全摘出を余儀なくされることが少なくありません。癌が喉頭に広範に浸潤している場合は喉頭を摘出することは止むを得ませんが、癌が喉頭に浸潤していない場合、あるいは軽度の浸潤しか認めない場合でも喉頭の摘出を要することがあります。これは咽頭の手術後では嚥下機能が低下するため、喉頭を温存すると誤嚥が生じ、その結果、口から食事を摂取することが困難となるからです。そこで、喉頭を摘出することにより、誤嚥することなく口から食事を摂ることができるようになります。しかし、喉頭の摘出により発声機能を失うだけでなく、様々な面でQOLが低下します。また、喉頭を温存する手術が可能であった場合でも、切除範囲に応じて嚥下障害や構音障害などが生じQOLが低下することがあります。そこで、喉頭に代表される臓器の温存を目指し、手術の代替治療として化学放射線同時併用療法が導入されました。

2)方法と成績

化学放射線同時併用療法は、抗癌剤の投与と放射線の照射を同時進行で行う治療です。放射線に抗癌剤を上乗せすることにより、放射線単独療法と比較して治療効果が上がりますが、同時に副作用も強くなります。放射線の照射期間は7週間です。抗癌剤は大量投与を3週毎に行う方法、少量投与を毎週行う方法などがあります。治療中は口腔や咽頭の粘膜炎が高度となり経口摂取が徐々に困難となるため、胃瘻を造設して栄養管理を行うことがあります。

化学放射線同時併用療法の治療効果は手術+術後放射線療法と同等です。手術が可能な下咽頭進行癌に対して行った化学放射線同時併用療法の治療成績は、3年生存率で66%、3年喉頭温存生存率で59%です。実に生存している方の85%で喉頭を温存できています。これは、生存している方の15%は下咽頭癌が再発したため手術をして咽頭・喉頭全摘出を行い救命し得た方であることを意味しています。また、手術が可能な中咽頭進行癌の治療成績も3年生存率で84%と非常に良好です。

3)後遺症

化学放射線同時併用療法により喉頭などの臓器温存を実現することができますが、その一方で治療による後遺症もあります。唾液の分泌が障害され、口腔の乾燥感やう歯(虫歯)を生じます。稀に嚥下障害が残る方もいます。味覚障害も生じますが、これは多くの場合回復します。また、放射線が照射された部位では血流が障害されるため、残存あるいは再発した癌に対して手術を行った場合、術後に皮膚や咽頭の壊死などを生じる合併症の頻度が、一次治療として手術を行った場合と比べて高くなります。また、そうした合併症の病態を改善するために再手術が必要となることがあります。

4)救済手術

化学放射線同時併用療法の後では咽頭や喉頭に瘢痕や浮腫が生じ、そのため癌の再発の発見が遅れ救済手術ができないことが多い、と言われています。また、救済手術は高度な技術を要します。しかし、大阪大学では再発の早期発見に努め、肺などへの遠隔転移がない限り、再発した症例の殆どで救済手術を行っています。化学放射線同時併用療法は癌の再発時に救済手術ができる裏付けがあってこそ、良好な治療成績を出すことができます。化学放射線同時併用療法は、救済手術の経験が豊富な施設で受けていただくことが肝要です。

唾液腺癌の治療

唾液腺には大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)に加え、小唾液腺(口腔内に多数存在)があります。頻度としては耳下腺癌が最も多く、病理組織学的に非常に多彩な像を示します。早期癌、進行癌ともに手術により治療しますが、進行癌では術後に放射線療法あるいは化学放射線同時併用療法を行うこともあります。腺様嚢胞癌では重粒子線治療も選択肢に入ります。耳下腺の中を顔面神経が走行しており、手術においては極力その温存に努めますが、癌が浸潤している場合には顔面神経を合併切除することになります。切除した顔面神経は腓腹神経などを用いて再建します。

唾液腺良性腫瘍の治療

耳下腺、顎下腺、舌下腺、小唾液腺のいずれの唾液腺にも良性腫瘍が発生しますが、癌の場合と同様に耳下腺に発生するものが最も高頻度です。唾液腺の良性腫瘍は、病理組織学的には多形腺腫とワルチン腫瘍でその殆どを占めます。多形腺腫は悪性化することがありますので、原則として手術を行い摘出します。一方、ワルチン腫瘍は“こぶとりじいさん”のこぶ(腫瘍)で、年配の喫煙歴のある男性に多く認められ、両側性、多発性に発生することもあります。ワルチン腫瘍は悪性化することはありませんので、整容面で問題がある場合に手術を行っています。耳下腺良性腫瘍の手術は耳鼻咽喉科のある多くの病院で行われていますが、大阪大学では整容面を考え、一般的な手法とは異なる皮膚切開を行っています(下の写真を参照してください)。この皮膚切開では創部の傷は目立たなくなります。また、耳下腺内には顔面神経(顔の筋肉を動かす神経)が走行しており、耳下腺腫瘍の際に最も留意すべき点は顔面神経を傷つけないようにすることです。そこで、必要に応じて顔面神経のモニタリング装置(NIMシステム、Medtronic社)を使い、顔面神経へのダメージを最小限にするよう心がけています。

甲状腺癌の治療

甲状腺癌は病理組織学的に乳頭癌、濾胞癌、未分化癌、髄様癌に大別されます。本邦では乳頭癌が殆どを占めます。乳頭癌の予後は10年生存率で90%以上と極めて良好ですが、遠隔転移がある場合、あるいは高齢者で癌が周囲に浸潤している、もしくは大きなリンパ節転移を伴うような場合は、高危険度群となり予後が不良です。甲状腺癌に対しては抗癌剤治療や放射線外照射は有効でないため、手術による治療が第一選択となります。甲状腺の切除範囲は低危険度群では亜全摘以下の切除にとどめて機能温存を図りますが、高危険度群では全摘出を行い、更に放射性ヨードによる内服治療を行います。大阪大学では縦隔転移例や喉頭・気管・食道へ浸潤した難治例に対しても積極的に手術を行っています。

甲状腺の背面を反回神経と呼ばれる声帯を動かす神経が走行しているため、甲状腺癌の手術ではその取り扱いが問題となります。反回神経麻痺が出現すると、嗄声(声がれ)、誤嚥などの症状を生じます。癌の浸潤がある場合は反回神経を合併切除しますが、同時に反回神経を周囲の神経と吻合したり、あるいは後から改めて音声改善手術を行うなどして、症状の軽減に努めています。

甲状腺良性腫瘍の治療

甲状腺良性腫瘍は濾胞癌との鑑別が問題となります。濾胞癌と良性腫瘍の鑑別は、病理組織学的に腫瘍細胞が被膜や血管に浸潤しているかどうかで決定されます。一方、術前診断として行われる病理診断は穿刺吸引細胞診(腫瘍を針で穿刺して細胞を吸引して検査します)によるため、そうした浸潤の有無を鑑別することは不可能です。そのため、診断と治療を兼ねて多くの良性腫瘍の手術が行われているのが現状です。当科では小さな腫瘍は超音波検査と細胞診による定期的な観察とし、大きな、あるいは増大傾向にある腫瘍に対しては手術を行う方針で臨んでいます。

3.研究について

私どもの研究は全て、頭頸部癌の治療成績を向上させるため、そして治療後の後遺症を軽減するため、換言すれば、個々の患者の方に適した個別化治療(テーラーメイド治療)を実現することを目的として行っています。したがって、臨床研究、そしてトランスレーショナルリサーチ(基礎研究と臨床研究を橋渡しする研究)を中心に行っていますが、大学院生は基礎研究にも携わっています。ここでは私どもが行っている研究の一端を簡潔にご紹介します。

臨床研究

1)ヒトパピローマウイルス陽性中咽頭進行癌に対する低侵襲治療

中咽頭癌は約60%がヒトパピローマウイルス陰性で、約40%がヒトパピローマウイルス陽性です。多くの研究から、ヒトパピローマウイルス陽性例は陰性例と比べ予後が明らかに良好なことが判ってきました。中咽頭進行癌に対する治療は、現在世界的にも化学放射線同時併用療法が広く行われています。しかし、化学放射線同時併用療法では唾液分泌障害などの後遺症が残ります。そこで、予後が良好なヒトパピローマウイルス陽性中咽頭癌では、治療の強さを弱めても、すなわち、後遺症が軽減されるような治療を行っても、予後が悪化しないのではないか、と考えられるようになりました。こうしたヒトパピローマウイルス陽性中咽頭進行癌に対する低侵襲治療の試みは既に海外で始まっており、大阪大学でも新たに開始します。ヒトパピローマウイルスの詳細については別項をご覧ください。

2)新たな化学放射線同時併用療法の開発

化学放射線同時併用療法における化学療法は、シスプラチンと呼ばれる抗癌剤の3週毎の大量投与が標準とされています。しかし、この方法はかなり元気な方しか適応とすることができません。大阪大学では、ドセタキセルと呼ばれる抗癌剤をシスプラチンと同日に毎週1回少量投与する方法を開発し、これまで多くの頭頸部扁平上皮癌の患者の皆様に施行して、良好な治療成績を得てきました。そして今度は、ご高齢の方、腎機能が軽度低下している方も治療対象に含め、適応を拡大することが可能かどうか検討を開始します。

橋渡し研究

1)化学放射線同時併用療法の予後因子の解析

癌の予後を規定する因子は、癌の物理的な大きさであると考えられてきました。手術を主体とした治療ではそれで問題ありませんでしたが、化学放射線同時併用療法の予後は癌の物理的な大きさだけでは説明がつかないことが判ってきました。そこで、化学放射線同時併用療法の予後を規定する因子を解明するために、分子生物学的そして核医学的なアプローチで取り組んでいます。例えば、ヒトパピローマウイルスの感染、癌抑制遺伝子p53の変異、p53遺伝子多型、metabolic tumor volumeなどについて解析しています。更に、次世代シークエンサーを用いた網羅的な解析の準備を進めています。

2)甲状腺良・悪性腫瘍の鑑別診断

甲状腺良・悪性腫瘍の最も有用な術前鑑別診断法は穿刺吸引細胞診です。しかし、細胞診では、前述したように濾胞癌と良性腫瘍を鑑別することができません。そこで、galectin-3というタンパクに注目し、細胞診検体中におけるその発現量が、そしてその代謝産物の発現量が、良・悪性鑑別の補助診断とならないか検討を行っています。

基礎研究

1)頭頸部癌の癌幹細胞

癌幹細胞とは自己複製能と多分化能を有し、強い造腫瘍能を有する細胞であり、抗癌剤や放射線に対する抵抗性を示し、そして再発や転移と密接に関与していると考えられています。頭頸部癌における癌幹細胞の研究はまだ始まったばかりですが、我々は新たなアプローチでその本質に迫ろうとしています。

2)頭頸部癌の治療抵抗性に関連する分子の網羅的解析

目的:将来のより良い治療法の開発に向けて、頭頸部がんの治療抵抗性に関与する分子を同定することを目的としています。

方法:病気の診断のために行った生検、あるいは治療のために行った手術で得られた組織のうち、検査に必要な部分を採取した後の残余の部分(余剰検体と呼びます)を研究に用い、さまざまなタンパクや遺伝子の発現の変化を解析します。

意義:難治性の頭頸部がんに対する将来の新規治療の確立に寄与します。

研究機関:大阪大学耳鼻咽喉科頭頸部外科学、医薬基盤研究所免疫シグナルプロジェクト

対象:本研究に対し文書で同意を頂いた方に加え、既に包括同意書を頂いている方、包括同意書を頂いていない方も対象となります。後2者の方については新鮮検体ではなく、パラフィン包埋検体が試料となります。

個人情報の扱い:本研究に対し文書で同意を頂いた方、既に包括同意書を頂いている方の個人情報については連結可能匿名化で管理します。包括同意書を頂いていない方の個人情報については連結不可能匿名化で管理します。

問い合わせ先:大阪大学医学部附属病院耳鼻咽喉科頭頸部外科外来腫瘍担当医 06-6879-5111(病院代表)

参加を拒否する権利:もし包括同意を以前にされている方で、本研究の対象となることを拒否される場合は、上記問い合わせ先へご連絡下さい。

ヒトパピローマウイルスと頭頸部癌 

ヒトパピローマウイルスは環状二本鎖DNAウイルスで100種類以上の型があり、皮膚・粘膜への接触感染により伝播します。高リスク型と低リスク型に分類されます。高リスク型は子宮頸癌の原因となり、低リスク型は尖圭コンジローマなどの原因となります。

近年、一部の頭頸部扁平上皮癌が高リスク型ヒトパピローマウイルスの感染で発生することが明らかになってきました。大阪大学で約400例の頭頸部扁平上皮癌について検討した結果では、上咽頭癌の約10%、中咽頭癌の約40%、下咽頭癌の数%、喉頭癌の数%から高リスク型ヒトパピローマウイルスが検出され、口腔癌からは全く検出されませんでした。このように高リスク型ヒトパピローマウイルスは特に中咽頭癌と密接に関与しており、なかでも扁桃や舌根に原発する中咽頭癌と関与しています。また、一般に中咽頭癌は喫煙量・飲酒量の多い人に発生し、食道癌の重複が多いという特徴がありますが、ヒトパピローマウイルス陽性中咽頭癌の方は喫煙歴・飲酒歴がない、あるいは喫煙量・飲酒量が少なく、そして食道癌の重複も少ない、というように明確な違いがあります。また、ヒトパピローマウイルス陰性中咽頭癌では癌抑制遺伝子p53の変異が高頻度で認められますが、ヒトパピローマウイルス陽性中咽頭癌ではそうした変異は殆ど認められずp53は野生型です。こうしたことが、ヒトパピローマウイルス陽性中咽頭癌が放射線や抗癌剤に対して強い感受性を示す原因ではないかと考えられています。

原発不明癌頸部リンパ節転移は、頸部リンパ節に癌の転移を認めるものの、その原発巣(親元)が種々の検査を行っても不明な病態です。頸部リンパ節に癌の転移がある方が100人いるとすると、その中の数人では原発巣を特定することができません。しかし、経験的に従来から、原発不明癌頸部リンパ節転移の原発巣の多くは中咽頭と考えられています。我々の検討では、原発不明癌の頸部リンパ節転移の約40%から高リスク型ヒトパピローマウイルスが検出されました。興味深いことに、この検出率は中咽頭癌における検出率と同等であり、原発不明癌頸部リンパ節転移の原発巣の多くが中咽頭であることを間接的に示唆していると考えられます。

欧米では、中咽頭癌のなかで高リスク型ヒトパピローマウイルス陽性例が占める割合が徐々に増え、近年では実に60−70%に達しています。本邦においても高リスク型ヒトパピローマウイルス陽性中咽頭癌の比率は今後更に増えると予想されますが、高リスク型ヒトパピローマウイルス陽性例は陰性例と比べ予後が良好なことが、せめてもの救いと言えます。

1)中咽頭癌においてヒトパピローマウイルス感染およびp53遺伝子変異の有無と相関する因子の解析 

目的:中咽頭がんは喫煙・飲酒により発生する群と、子宮頸がんと同様に高リスク型ヒトパピローマウイルスの感染により発生する群に大別されます。本研究では、中咽頭がんをヒトパピローマウイルス感染の有無、がん抑制遺伝子p53の変異の有無に基づいてグループ分類し、各グループにおけるさまざまな遺伝子やタンパクの発現について解析します。将来の中咽頭がんの個別化治療の実現に役立てることを目的とします。

方法:病気の診断のために行った生検、あるいは治療のために行った手術で得られた組織のうち、検査に必要な部分を採取した後の残余の部分(余剰検体と呼びます)を研究に用い、さまざまなタンパクや遺伝子の発現の変化を解析します。

意義:将来の中咽頭がんの個別化治療の実現に役立ちます。

研究機関:大阪大学耳鼻咽喉科頭頸部外科学、医薬基盤研究所免疫シグナルプロジェクト

対象:本研究に対し文書で同意を頂いた方に加え、既に包括同意書を頂いている方、包括同意書を頂いていない方も対象となります。後2者の方については新鮮検体ではなく、パラフィン包埋検体が試料となります。

個人情報の扱い:本研究に対し文書で同意を頂いた方、既に包括同意書を頂いている方の個人情報については連結可能匿名化で管理します。包括同意書を頂いていない方の個人情報については連結不可能匿名化で管理します。

問い合わせ先:大阪大学医学部附属病院耳鼻咽喉科頭頸部外科外来腫瘍担当医 06-6879-5111(病院代表)

参加を拒否する権利:もし包括同意を以前にされている方で、本研究の対象となることを拒否される場合は、上記問い合わせ先へご連絡下さい。