ホーム > 専門外来のご案内−めまい外来

めまい外来

1.担当医師

講 師 宇野 敦彦 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
日本めまい平衡医学会専門会員
助 教 今井 貴夫 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
日本めまい平衡医学会専門会員
いずれも日本めまい平衡医学会の専門会員(評議員)です。
難聴外来の担当医も、めまい患者の診察に協力してあたります。

2.診療について

‘めまい’は回転性のめまい、ふらふら感、立ちくらみ感など様々な症状を含み、その原因となる疾患も、耳と関連するものから、脳機能、心臓や血液の流れに関するものなど様々な範囲に及びます。当外来では、‘めまい’症状がある方の受診の入り口として、広い範囲の疾患を念頭にまず診断を行い、関連する院内各科や地域医療機関と連携して治療をすすめます。

実際に当科めまい外来に受診される方では、一般的な病院に比べ内耳性めまい症の比率が高く、特にメニエール病の割合が非常に高いです。これは紹介で受診いただく方が多数を占めるためです。良性発作性頭位めまい症は一般的に最も頻度の高いめまい疾患です。以下に、代表的な耳性めまいについて当外来での診断治療を紹介します。

1)メニエール病

典型的なメニエール病は、難聴・耳鳴りなどの聴覚の症状を伴い、数時間の回転性めまい発作を繰り返します。めまい発作のみを繰り返す場合や聴力の変動だけを繰り返す場合もあります。発作を繰り返すうちに、内耳機能が低下します。内耳の内リンパ水腫が病態と考えられています。

メニエール病の悪化には、ストレスとの関連がしばしば指摘され、当科での研究でも血液中のストレスホルモンとメニエール病発症との関連が明らかになりつつあります(これまでの研究の詳細はこちら)。

ですから治療にはストレスのコントロールが最も重要です。内服薬を用いた治療も行うことで、多くの方でめまい発作や難聴の悪化はコントロールされますが、それでもなお、めまいを繰り返す、難聴が進行する方の場合には、内リンパ嚢開放術(内リンパ嚢高濃度ステロイド挿入術)、あるいは鼓室内ゲンタマイシン投与術などの手術治療が適応となります。

手術治療の決定のためには、聴力や前庭機能(カロリックテスト)の評価、グリセロールテストや蝸電図検査といった従来からの内リンパ水腫推定検査に加え、内耳造影MRI検査による内リンパ水腫の確認も行い、慎重に判断しています。

2)良性発作性頭位めまい症

回転性めまいを主な症状とする疾患で最も頻度が高いものです。頭の位置を変える動きにより数分以内の回転性めまいが誘発され、それを繰り返します。眼振検査で診断します。当外来で用いる赤外線CCDカメラによる眼振検査(眼球運動軸解析法)は、非常に高い精度で他の疾患による異常と鑑別することができます。

良性発作性頭位めまい症は三半規管とよばれる回転感覚を感じる感覚器の障害で生ずる疾患です。病巣である半規管が病的に反応することにより、めまい、および眼振が生じます。めまい時に生ずる眼振の眼球運動映像を解析し、三次元の眼球運動データを抽出することにより、どの半規管が病巣であるのか診断します。

リハビリ、理学療法が非常に有効で、多くの方で数日から一カ月程度までには症状がなくなります。難治性の場合には半規管遮断手術の適応となります。半規管遮断手術により遮断する半規管の判定に上記検査が有用であることがわかっています。

3)前庭神経炎、めまいを伴う突発性難聴

左右どちらか一方の前庭機能(耳にある平衡を感知する機能)が突然に低下する場合、急性期にはステロイド剤等を用いた治療で機能の回復を図ります。前庭機能低下が回復しない場合には、中枢前庭代償をすすめるリハビリが重要です。平衡障害のリハビリは姿勢・動作分析による評価を行い、当科でのプログラムに沿って指導します。

4)中耳炎によるめまい

中耳の炎症によって内耳に障害が及び、めまい症状のおきる場合です。急性中耳炎に伴う場合は痛みを伴いますが、特に真珠腫性中耳炎によって起きる場合は痛みのない場合もあります。多くの場合に難聴が伴います。鼓膜所見、眼振所見、中内耳CT等により診断します。

抗生剤等の薬物による治療をまず行います。真珠腫性中耳炎を原因とする場合には手術治療(鼓室形成術)を要することがあります。

3.研究活動について

当科のめまい平衡研究の歴史は古く、山川強四郎教授による世界初のメニエール病の側頭骨病理=内リンパ水腫の報告(1938年)、長谷川高敏教授によるメイロンの開発(1950年代)、内藤儁教授による実験的内リンパ水腫の研究と内リンパ嚢開放術の開発(1950−70年代)、松永亨教授によるめまい発症への自律神経系の関与に関する研究(1980年代)、久保武教授によるめまいの外科治療の開発と宇宙医学への関与(1990−2000年代)と継続されてきました。我々はこのような国内外の諸先輩方からの伝統を引き継ぎ、基礎研究の発展と臨床治療の充実を目指しています。(最近10年の当科めまい研究のあゆみについてはこちら)

現在行われている臨床研究

1)眼球運動解析によるめまいを訴える疾患の診断の研究

眼球運動を撮影し、コンピューターで解析することにより異常な眼球運動を検出します。定量的な指標から各疾患に典型的な異常かどうかを検証し、高い診断精度が得られるシステムの構築を目指しています。

2)仮想現実による光流動刺激が空間認知に与える影響:運動器不安定症への対策に向けて

運動器不安定症は、高齢によりバランス能力の低下が生じ、閉じこもり、転倒リスクが高まった状態をさします。原因として空間認知の衰え、感覚入力の減少、感覚統合力の減退、神経反射・筋力の減退が挙げられています。

我々の研究では、仮想現実(virtual reality:VR)を利用し感覚入力を変化させます。健康人を対象に、VRによる視覚的に環境がスライドする空間がヒトの歩行・姿勢等に変化を与えるかを検討します。ヒト健常成人および高齢者の空間認知の変化および動眼・脊髄反射の可塑性の可能性と傾向を探ることを目的とします。運動器不安定症に対して、空間認知の再構成および感覚情報処理能力の増強・感覚統合能力の改善を目的としたリハビリの開発に結びつく研究です。

3)内耳造影MRIの内リンパ水腫疾患(メニエール病)診断治療への適応

内耳造影MRIによる内リンパ水腫の描出は、ガドリニウム造影剤を経鼓室的あるいは経静脈的に投与した後に3テスラの高磁場のMRIで撮影します。特に手術などの侵襲的治療を行う場合などには非常に有用な検査となってきています。(「メニエール病」の項参照

4)メニエール病の保存的治療における薬物治療の検討

メニエール病の薬物治療には、利尿作用による内リンパ水腫軽減を目指す薬剤や、精神安定、自律神経調節を期待する薬剤などが用いられます。当科で保存的治療を継続していただく方の場合は、それぞれの経過を集積し、浸透圧利尿薬や抗不安、抗うつ薬、漢方薬など含めて、どのような方にどの薬剤が適しているのか検討しています。

5)姿勢・動作解析による平衡障害の定量化とリハビリプログラムの開発

足踏みなどの動作を撮影し、その姿勢の傾きや揺れを解析し、平衡障害の定量化を目指しています。また、障害の原因部位に合わせたリハビリプログラムの作成、その検証を行っています。