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大学院について

日比野 浩 先生(平成7年度入局)

はじめまして。新潟大学医学部第二生理学教室を担当しております、日比野 浩と申します。基礎の人間が、なぜこのホームページに登場してくるか、疑問に思っておられる方が大半だと存じます。少しお時間を拝借して、私の略歴から簡単に説明させていただきます。

話は医学生の時に遡ります。4年生の時に、基礎研究室で実験を体験するカリキュラムがあり、阪大蛋白質研究所の中川八郎教授、永井克也助教授(後に教授)の教室の門を叩きました。動物に顕微鏡を使った簡単な手術を施行して、神経科学の実験に携わりました。教室の雰囲気が気に入り、結局、その後卒業まで、研究室に入り浸りました。その過程で、神経科学と顕微鏡手術に興味を持ち、それらを同時に行える耳鼻咽喉科を選択しました。平成6年のことです。

元々、患者様とのふれ合いや手術が好きだったので、入局後は一生懸命、臨床をしました。しかし同時に、難聴の原因は意外と知られていない、またそれを解明して新しい治療法を開発するためには、基礎研究が重要である、ということを認識しました。医学生時代の経験から研究もやってみたいと思っていた矢先に、久保教授のご好意で平成7年から大学院に進学することになり、土井勝美先生(現 近畿大学教授)の指導の元、第二薬理学教室の倉智 嘉久教授の研究室で実験をすることになりました。研究対象は、やりたかった神経ではなく、、、、「内耳蝸牛」でした。これが、小さくって骨に囲まれていて、組織実験も、分子生物学実験も、生理実験もとても難しい。。。。。薬理学教室も、内耳を扱うのは初めてであり、特に骨の処理には閉口したのを覚えています。しかし、次第に、内耳の魅力に取り付かれてきました。内耳は、その中に、極めて特殊に分化した細胞が、これまた極めて特異的な配列を示して存在しています。内耳にしかない変な液体もあります。これらが上手く組み合わさって聴こえの機能が成立しているのですが、そのメカニズムは、まだ多くが謎だということも次第に分かってきました。内耳は超マイナー分野ですが、そうであるこそ、自分だけが研究しているという錯覚に陥って、とても楽しくなってきた思い出があります。

大学院で研究をしてみて非常に強く感じたことは、サイエンスに年齢も経験も国籍もない、ということです。実験結果を学会などで発表していると、他の大学の偉い先生が気さくに質問してくださったり、また論文を発表すると海外からメールが来たりしました。大学院時代の研究を通じて、臨床、基礎の色々な先生と知り合いになりましたし、またそのような方々と酒を交わすのもこの上なく喜ばしいものでした。研究を通じてだからこそ、の機会が多かったように記憶しています。

平成11年からは、なんと、アメリカの憧れの先生の所へ、内耳研究のため留学できることになりました。ニューヨークのロックフェラー大学です。この留学も、大学院で研究をしていたから可能になったことです。ニューヨークでの滞在は、まさに刺激的でした。ロックフェラー大学は、世界中から年間20人しか大学院生を取りませんので、非常に優秀な人材が集まってきます。また、教授陣も超一流ばかりで、ノーベル賞の受賞者や候補者がゴロゴロしている環境です。しかし、やはり研究は平等でした。外国人の親友も多くできました。その頃の友人やボスとは、10年を経過した今でも、親密につきあっています。また、ミュージカルやオペラ、美術館と非常に楽しみました。更に、留学では、「一流の科学者は一流の教養や文化を身につけている」ということを痛烈に感じました。小学校から高校までは、美術や音楽の授業があります。研究を進める上でも、そして海外の科学者と対等に渡り合うためも、このような教養は極めて大切であることを認識した訳です。

ニューヨークでは、あの9.11にも遭遇してしまいましたが、何とか無事に仕事もまとまり、2002年に帰国することになりました。その際に、研究を続けてみてもいいかな、と考え、大学院の時にお世話になった薬理学教室に雇っていただくことになりました。本格的な研究生活が始まった訳です。その後、日本でも、はやり様々な人々と研究を通じて出会いましたし、よい大学院生にも恵まれました。また、教室主任の倉智教授が、内耳研究に甚大なる理解を示してくださり、円滑に研究を進めることができました。阪大耳鼻咽喉科からの継続的なご支援も、本当に有り難いものでした。

平成22年の4月より、縁あって、新潟大学に採用していただき、内耳聴覚研究を中心に研究室を立ち上げている最中です。全てのスタートは、大学院生時代に内耳研究を行ったことにあるのは、読者の皆様には既にお分かりいただけたかと存じます。また、最も大きな財産である「人とのつながり」も、大学院の研究をきっかけに飛躍的に広がりました。人生は、実験と違って、対照をおくことができませんので、私は、自分が歩んで来た道が最善であったかを評価することはできません。しかし、大学院に進学していなければ、このような極めて刺激的な道を歩むこともなかったでしょう。大学院に行こうかどうしようか迷っている人、ご一報いただければ、相談にのります。

日比野 浩

代表論文

  • The endocochlear potential depends on two K+ diffusion potentials and an electrical barrier in the stria vascularis of the inner ear. Nin F, Hibino H, Doi K, Suzuki T, Hisa Y, Kurachi Y. Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 105(5):1751-6.
  • RIM binding proteins (RBPs) couple Rab3-interacting molecules (RIMs) to voltage-gated Ca(2+) channels. Hibino H, Pironkova R, Onwumere O, Vologodskaia M, Hudspeth AJ, Lesage F. Neuron. 2002 34(3):411-23.
  • An ATP-dependent inwardly rectifying potassium channel, KAB-2 (Kir4. 1), in cochlear stria vascularis of inner ear: its specific subcellular localization and correlation with the formation of endocochlear potential. Hibino H, Horio Y, Inanobe A, Doi K, Ito M, Yamada M, Gotow T, Uchiyama Y, Kawamura M, Kubo T, Kurachi Y. J Neurosci. 1997 17(12):4711-21.