研究

高血圧・老化研究室 Section of Hypertension & Aging Research

平成28年研究成果 【高血圧・老化グループ: Hypertension and Aging Research】

1.基礎研究

レニンーアンジオテンシン(RA)系の新規メカニズムの解明

RA系における抑制系であるACE2-Ang 1-7が骨格筋に与える影響を検討中である。これまでに1.Ang 1-7が骨格筋筋芽細胞の分化を促進する(論文準備中)。2.ACE2欠損が加齢による筋力低下を促進すること、3.Ang 1-7が高齢マウスの筋力を回復することを明らかにしてきた。またマウスの筋力を正確に測定する方法を報告した(論文投稿中)。またAT1がAng II以外の生体内物質により活性化され、病態形成的に作用するという仮説を証明する研究を実施中である。これまでにAT1が酸化LDLのLOX-1結合により間接的に活性化され血管傷害を引き起こすことを見出した。(2015 FASEB J) また酸化LDL以外の血中代謝物質がAT1を活性化することを見出し検討中である。上記現象の病態生理学的意義を解明するために動物モデルを用いた研究計画を進行している。

加齢性疾患進展に関与する新規分子メカニズムの解明

パーキンソン病関連分子αシヌクレイン(SNCA)の機能性分子としての病態生理機能を解析している。これまで、細胞老化への関与、血管内皮機能や糖代謝における保護的な新規機能を、基礎研究及び臨床研究により明らかにしてきた。今後は循環血液中におけるエクソソームや多量体に着眼したSNCAの各種加齢性疾患における意義や誘導型血管内皮特異的SNCAノックアウトマウスによる更なる詳細な病態解析を行う予定である。また、脱ユビキチン化酵素CYLDやA20、リソソーム関連分子myoferlinについて血管疾患、インスリン抵抗性における機能解析も引き続き行っている。更に、新規の老化関連分子を酸化ストレス及びSASP(細胞老化随伴分泌現象)を機軸として基礎的に探索中であり、解析対象とする分子についてはバイオマーカーや治療標的分子としての可能性を臨床面からも検討する。

2.臨床研究

SONIC

保健学科神出計教授主導の元、大阪大学歯学部池邉一典准教授、および大阪大学人間科学部権藤恭之准教授との共同研究である健康長寿の因子検索のためフィールドワーク(SONIC)を、兵庫県朝来市、伊丹市在住の高齢者を対象に実施した。

認知症

認知機能とサルコペニア・フレイルについて継続的に調査を行っている。患者数の増加により3ヶ月待ちとなっていた新患外来枠を拡大し、現在2週間待ち程度にまで改善している。さらに症例を積み重ね地域に貢献していきたいと考えている。また、1泊2日の”物忘れドック”に加え、3泊4日の物忘れドックも開設し、パス入院中での髄液検査なども行えるようになった。

高齢者薬物有害事象

2013年9月より、大阪大学医学部附属病院老年・高血圧内科に入院となった高齢者を対象に薬物有害事象(ADR : adverse drug reaction)の頻度、薬剤情報、高齢者総合機能評価などを継続調査し、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」作成にも参加した。2016年より認知機能やADLに応じた高齢者の適正な薬物療法の確立にむけて薬剤師との共同研究も開始した。

睡眠呼吸障害

高齢者の睡眠時無呼吸症候群に関連する因子を検討し、高齢者においてはBMIだけでなく年齢も重症OSAと相関する一方、握力や膝伸展筋力、10m歩行速度などは重症OSAと相関しないことを報告した(Geriatr Gerontol Int. 2016)。またOSAを診断するバイオマーカーとして血漿中のマイクロRNA(miRNA)に注目し、検討中である。

将来の抱負

1.基礎研究

レニンーアンジオテンシン系やSNCA、CYLDなどの因子と老年疾患との関与について従来の概念に囚われない研究を継続していきたい。将来的には老化関連疾患のバイオマーカー探索や新規治療法開発など老年病臨床に寄与する成果につなげることを目標とする。

臨床研究

SONIC:H22年~H24年度に初回調査を行った 70歳、80歳、90歳の高齢者に対する3年後の追跡調査をH25年~H27年度に開始している。頚動脈硬化や認知機能、メタボリック症候群などについて、各疾患パラメータの経年変化に関連する因子や疾病発症に関連する因子の検討を行っていく。

睡眠呼吸障害:高齢者のOSAは無症状であることが多く発見が困難である一方、重症化すると予後を悪化させる因子となる。高齢者のOSAを鋭敏にかつ簡便に検出する手段を見出していきたい。

認知症:老年内科医が診る認知症として、日常活動度(ADL:activity of daily living)と生活の質(QOL:quality of life)をいかに維持するかをメインテーマとして、介入方法を模索している。生活習慣病、特に糖尿病とアルツハイマー病の関係、虚血性病変とADLの関係、およびサルコペニアと認知機能の関係を解明し、老年学の手法を用いた介入方法を提示していく。

高齢入院患者における薬物有害事象の実態:高齢者ではADRが多く、入院症例の6-15%に認め、65歳未満に比べて1.5~2.0倍の頻度で出現すると報告されている。薬物有害事象に関連する項目を抽出し、高齢者にとって過剰でも過小でもない適切な薬物療法を提示していきたい。

所属者

山本浩一、竹屋 泰、伊東範尚、鷹見洋一、竹屋美幸、山本博子、武田昌生、河合達男(留学中)、本行一博、横山世理奈、吉岡義治、濱野 剛、永澤元規、野里聡子、野里陽一、前田聡美、中嶋恒男(臨床遺伝子治療学)、大山 茜、竹下ひかり、今泉友希、神出 計(保健学科)
新宅加奈子(秘書)、北村ひかり(実験助手)、中尾由香(実験助手)

ページの先頭へ