研究

代謝・糖尿病研究室 Section of Metabolism & Diabetes

平成26年研究成果 【老年代謝・糖尿病グループ:Geriatric Metabolism and Diabetes】

“糖尿病、骨格筋代謝制御によるwith agingの実現”

老年代謝・糖尿病グループでは、インスリンの標的臓器でありかつ加齢を含めた様々な要因により代謝障害を生じる骨格筋をターゲットとした基礎研究または臨床研究を行っている。生活習慣病とサルコペニアに関する基礎研究と臨床研究、高齢消化器癌術前評価における身体機能評価の有用性に関する研究、高齢者糖尿病患者を対象とした介入研究など、特に後期高齢者の健康寿命延伸を目的とした研究を継続的に行っている。

1. サルコペニアと生活習慣病の関連性:

転倒・寝たきりの増加の一因をなすサルコペニアは、骨格筋の量的減少を基盤とし、加齢による筋タンパク合成低下・分解促進、全身性炎症によるインスリン抵抗性や筋代謝障害などがその成因と考えられている。我々はここ数年、生活習慣病を有しかつ筋量・筋力低下を示すサルコペニアモデル動物を確立すべく研究を続けており、高脂肪高炭水化物食のサルコペニア進展への影響、ミトコンドリア機能を賦活させる介入のサルコペニアへの影響について検討している(平成22年以降科学研究費補助金を交付継続中、日老医誌等で報告)。

2012年から65歳以上の入院患者全例に行っている身体機能評価については、対象症例も200例を越え、患者背景や生活習慣病とサルコペニアとの関連性ついて、経時変化を含めた臨床的検討を行い、学会等で発表している(国際サルコペニアフレイル研究会、日本老年医学会、日本糖尿病学会、PT学会など多数の学会で発表)。

東京都と兵庫県の高齢者を対象にした縦断的疫学研究であるSONIC研究において、70歳、80歳を対象に高血圧と身体機能との関連について検討し、フレイル高齢者における降圧と転倒の関連について報告した(日本高血圧学会で発表、日経メディカルに発表内容掲載)。

2. 高齢外科手術前評価としての高齢者総合機能評価、身体機能評価の有用性:

2006年から当院消化器外科との共同研究として、手術適応と判断された高齢消化器癌患者を対象に術前の高齢者総合機能評価(CGA)が術後合併症または予後に与える影響について検討しており、CGAが従来のPSなどの術前評価と独立した術後合併症(特にせん妄、当科より論文投稿中)、長期予後(消化器外科より論文投稿中)予測因子であることを明らかにした。2012年からはさらに術前評価項目に筋力測定を加えており、下肢筋力がCGA要素と並び術後合併症の独立した予測因子であることを報告している(日本内科学会総会などで発表)。

3. 高齢者糖尿病患者を対象とした臨床研究:

近年の糖尿病患者の高齢化に伴い、高齢者糖尿病の治療目標や治療法が注目されている。我々も、高齢者糖尿病のエビデンス構築を目的に高齢糖尿病患者を対象とした臨床研究を考案し、症例を蓄積中である(「高齢2型糖尿病患者におけるシタグリプチンのCGMを用いた血糖日内変動への影響に関する検討」、「高齢2型糖尿病患者における運動の血中GLP-1濃度に対する影響とテネリグリプチン併用効果に関する検討」、「高齢2型糖尿病患者におけるイプラグリフロジンの体組成、筋力への影響の検討」、すべて大阪大学医学部附属病院倫理委員会の承認済)。また前述のSONIC研究において、百寿者の耐糖能の特徴についても報告している(日本糖尿病学会で発表)。

4. 今後の抱負 <骨格筋代謝制御によるwith agingの実現>

超高齢社会をすでに迎えている本邦において、加齢とともに増加する糖尿病・代謝異常の克服とともに、フレイル(虚弱)の基盤となるサルコペニアの病態解明とその有効な予防法の確立は急務である。高齢者代謝疾患・糖尿病の適切なマネージメントとともに、分子メカニズムに即したサルコペニアの病態解明と同時にその効果的な進展抑制法の確立を目的に日々研究を進めている。なかでも抗炎症性筋由来サイトカイン(マイオカイン)に着目した基礎研究を今後進めていく予定である。昨年に引き続き増員もあり、さらに臨床研究、基礎研究のスピードを上げ、業績向上に繋げたい。

所属者(平成26年12月現在)

杉本 研、前川佳敬(高齢外科手術研究)、中間千香子、藤本 拓、王 中奇
協力者:川口義彦、新堂修康、立花宏一(東大阪市立総合病院)、藤澤智巳(市立堺病院)

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