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学生、研修医の皆様へ

臨床研修お問い合わせ先

医局長
山﨑 誠 myamasaki@gesurg.med.osaka-u.ac.jp
畑 泰司 thata@gesurg.med.osaka-u.ac.jp

1、消化器外科とは、

消化器外科は、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門にいたる消化管と、肝臓、膵臓、脾臓などの実質臓器など多岐にわたる臓器の、腫瘍性疾患、炎症性疾患、機能性疾患など多彩な病態に対する外科的疾患を扱っており社会的ニーズの最も多い診療科のひとつです。特に、年々増え続ける悪性腫瘍のほとんどが消化器系癌であり、この外科的治療を含めた集学的治療の大部分を担っているのが消化器外科医です。消化器外科医は、ただ単に手術だけではなく、内視鏡検査、超音波検査、画像診断能力など、種々の検査診断技術も身につける必要があり、さらに、周術期の全身管理に必要な、循環器、呼吸器、内分泌管理能力も必要です。又、癌に対する、手術の前後に行う化学療法も消化器外科が担当する場合が多く、薬物に対する知識、治療経験も必要になります。つまり、消化器外科医は、一般的医療のオールマイテイーであるといっても過言ではありません。ただ、年々希望者が減少しているのが現状であり、今後、産婦人科、小児科などと同様にその不足が問題となってくることが予想されています。確かに研修は楽ではないかもしれませんが、多くの同僚たちと友情を深めながら切磋琢磨し、さらに仕事に対する充実感、達成感を味わうことが多く、やりがいのある診療科であると確信しております。皆さん、医療の最前線に常に立つことの出来る消化器外科に、ぜひ足を踏み入れてみてください。

2、大阪大学消化器外科研修制度(大阪大学消化器外科、専門医育成制度)

1)大阪大学消化器外科とは

大阪大学消化器外科の最大の特徴は、大阪近辺の大規模病院を多数関連病院として登録している点であり、他大学と比較して、 共同研究、人事交流がスムースに行えるという特徴があります。実際、大阪大学消化器外科は50を越える関連病院と人事交流を行っており、すべての関連病院を加えると総病床数19405,消化器外科の年間手術症例数25261と、我が国でも最大規模かつレベルの高い診療グループを形成しております。 また阪大と関連病院の消化器外科は協力して大規模の多施設臨床研究を積極的に行っており、関連病院全体のレベルアップにつながっております。
大阪大学消化器外科は、平成20年の春に新しくなり、森正樹教授、土岐祐一郎教授の2名の教授のもと、上部消化管、下部消化管、 肝胆膵移植の3つの診療グループにわかれ、専門的かつ高度な医療を提供するとともに、質の高い、基礎研究、臨床研究を行っております。

2)大阪大学消化器外科関連病院(50音順)

大阪大学消化器外科関連施設 大阪大学消化器外科関連施設

3)大阪大学消化器外科研修制度

大阪大学消化器外科研修制度

(1)初期研修(2年間)

阪大プログラムを利用されても、それ以外のプログラムを選択されてもかまいません。阪大プログラムにおける2年間の初期研修は、大阪大学附属病院でも関連病院でもかまいません。又、“たすきがけ”で1年ずつ研修を行うことが可能です。詳しくは、阪大ホームページをご覧ください。
阪大ホームページ初期研修説明へリンク

(2)後期研修(外科専攻医、3年間)

初期研修を終了したのち、主に大阪大学消化器外科関連病院で外科専攻医として3年間勤務していただきます。この間に、外科専門医を習得するためのサポート、さらに、外科専門医取得後のキャリアサポートを行いますので、阪大専門医コースへの登録をお願いいたします。外科専門医取得後も、第一線の外科医として活躍していくためには、消化器外科専門医、指導医、内視鏡技術認定、などの資格をとる必要があります。このサポートを大阪大学消化器外科及びその関連病院で行っていきます。以下に概要を記載します。

1. 大阪大学消化器外科では、後期研修は関連病院にて行っております。この研修にも2つのコースがあり、3年間を同じ施設で研修を行うコースと、3年間の間に消化器外科医として2年間、その他心血管、呼吸器、乳腺外科医として1年間行うコースです。後のコースは、どこの外科に行くか迷っている場合、あるいは、消化器外科医をめざすが、他の診療科での研修を希望する場合に選択されます。研修病院のローテーションは、本人の希望を加味し、大学の外科系各科の委員で構成される研修調整委員会で決定します。消化器外科医として3年間勤務する場合問題となってくるのが、外科学会専門医の資格を得るために必要な消化器外科以外の手術症例数(下記参照)です。各施設内で、一定期間他科へ出向するプログラムを用意されているところもありますが、そうでない場合は、これも大学の研修調整委員会にて、その施設に在籍しながら、大阪大学の必要な診療科への一定期間の派遣システムを用意しております。

2. 大阪大学消化器外科では、基本的には、後期研修は3年間と決めております。これは、研修医として学べる技術、知識には限界があり、又同一施設での研修は、知識に偏りが出てしまうと考えているからです。後期研修3年目は、やっと手術というものがわかりかけてきた時期であり、又、同じ施設での勤務は居心地がよいと感じるかもしれませんが、研修を延長しても得られる知識の量はかなり減少していくと考えます。どうしても後期研修を延長したいという方に対しては、1年単位(最大2年)で、関連施設を移動して受けていただきます。

(参考資料)
外科専門医取得に必要な条件
1)診療経験
外科専門医制度修練施設において以下の手術を経験する。本プログラム在籍期間中に、外科専門医修練カリキュラムが定める最低手術症例数を経験・クリアーする。各領域の症例数は術者または助手として経験する手術手技の最低症例数を示す。

・ 最低手術経験数 350例
・ 術者として 120例
・ 消化管及び腹部内臓 50例
・ 乳腺 10例
・ 呼吸器 10例
・ 心臓・大血管 10例
・ 末梢血管(頭蓋内血管を除く) 10例
・ 頭頚部・体表・内分泌外科 10例
・ 各臓器の外傷(多発外傷を含む) 10例
・ 鏡視下手術(腹腔鏡、胸腔鏡を含む) 10例
・ 小児外科 10例

2)業績
修練施設での指導医のもと、筆頭者として適当と思われる学術集会または学術刊行物に研究発表または論文発表を行う。

(3)後期研修終了後のキャリアデザイン

5年間(場合によってはそれ以上)の研修終了後のキャリアデザインについて説明します。研修終了後の進路については、大きく分けると2つあります。ひとつは、大阪大学消化器外科で大学院生あるいは、研究生として、高度医療の経験と臨床研究、基礎研究を行い、博士号を取得するコースで、取得後は、希望により海外留学、関連施設へスタッフとして勤務、大学病院で教官としての勤務というコースです。新たな研修制度が始まる以前の大阪大学消化器外科では、ほぼ全員がこのコースを進んでいました。もうひとつは、大学での研究を希望しないコースです。この場合でも、5年間の研修終了後に、大阪大学にて1年間臨床を行っていただきます。この目的は、市中病院ではなかなか経験できない高度医療の研修と、外科学に関する臨床研究、基礎的研究を通して研究マインドを養ってもらうことです。又、いろいろな施設で研修を行った先生方と、お互いの知識を交換し合えること、同期のみではなく先輩の先生とも交流を深めることができることは、先生方にとってもプラスであると思います。又、同時に、我々スタッフも、先生方の技量、人柄を評価させていただき、今後の関連施設での就職の参考にさせていただきたいと考えております。

3、私の消化器外科研修体験記

平成19年卒 柳本 善智(卒後8年目) 大学院3年生

私の現在までの経歴

平成19年3月 兵庫医科大学卒業
平成19年4月 兵庫医科大学病院(初期研修 スーパーローテート)
平成21年4月 大阪警察病院 外科(後期研修)
平成24年4月 大阪大学消化器外科学大学院

大阪府には数多くの教育施設がありますが、私が後期研修に選んだのは大阪警察病院でした。私が消化器外科を志望した理由のひとつとして、初期研修時に助手として参加した腹腔鏡下胆嚢摘出術がきっかけでした。腹腔鏡手術の低侵襲性や整容性の高さに感銘を受け、私もこんな手術が出来るようになりたいと思い、腹腔鏡下手術の症例数の豊富な病院で3年間後期研修を行うことを選びました。


当然ですが、後期研修が始まってしばらくは手術の術者や患者さんの重要な管理を任せてもらえませんでした。特に私たちはスーパーローテート世代で、初期研修医時代は患者さんを独りで受け持つといった経験がほとんどありませんので、実際は医師3年目(後期研修1年目)が外科医としてのスタートになります。したがって、初めの1年間は術前術後管理から始まり、外科医としての基本的な知識や手技を身につけていく必要がありました。ただ、警察病院に限らず大阪大学の関連病院には、各病院に専門知識の豊富な指導医の先生がおられますので、特に困ることなくさまざまな手技を習得することができました。その後は徐々に外科医として出来ることが多くなり、4年目からは週1回の外来枠も持たせて頂き、初診や良性疾患の術後フォローなどを行うようになりました。5年目になると、悪性疾患の術後フォローや外来化学療法なども任せてもらえるようになり、学年を重ねるごとに、より患者さんと深く関わり、責任が重くなっていっていくことが嬉しくもありました。

手術では助手から始まり、上級医の指導の下、ヘルニア修復術、胆嚢摘出術、結腸・胃の悪性腫瘍手術というように徐々に大きな手術の術者もさせて頂けるようになりましたし、希望していた腹腔鏡手術も数多く経験させて頂きました。5年目になると肝胆膵領域の高難度手術にも術者として執刀させて頂くことができました。
他にも乳腺、甲状腺疾患症例などの手術も経験させていただき、また心臓外科、呼吸器外科でも研修させていただくことで、外科専門医として必要な症例も充分に得ることができました。さらに臨床以外では、さまざまな学会にも演者として参加したり、論文の投稿も経験させて頂きました。

 

柳本 善智 平成19年卒(卒後6年目) 大学院1年生このように後期研修は非常に多忙で、決して楽とは言えませんでしたが、医師としても人間としても成長できた濃厚な3年間だったと思います。厳しくも熱心な指導医の先生やコメディカルに恵まれ、長い外科医人生を共にする先輩後輩とも出会えたことは私にとって大きな財産です。

 

現在、大学院には14名の同期(社会人大学院生は8名)がいますが、彼らもまた阪大の関連施設で充実した研修を積んでおり、心強いライバルとして日々切磋琢磨しています。

 

初期研修医の先生方で、後期研修病院を悩まれているなら、阪大の関連病院での研修を検討してみてはいかがでしょうか。阪大の関連施設は若手の教育に熱心で、阪大病院を中心とし、大小さまざまなセミナーや研究会が開催されたり、関連施設間での交流も盛んであるため、人脈や人間関係の輪が広がります。また、外科専門医の習得に必要な症例(心臓外科、呼吸器外科、小児外科症例なども含む)も十分に経験することができますので、外科医として充実した研修生活を送ることができると思います。ぜひ我々の力で大阪の外科をますます発展させましょう。

平成16年卒 山中千尋(卒後11年目) 大学院4年生

私は卒後9年目で、現在大学院2年生として肝胆膵・移植グループに所属しています。
帰学前は、阪大消化器外科の関連施設で、初期、後期研修を行ってきました。これまでの経歴です。

H16年 島根大学医学部卒業
H16年 兵庫県立西宮病院(初期臨床研修医 2年間)
H18年 兵庫県立西宮病院(外科後期研修医 3年間)
H21年 公立学校共済組合近畿中央病院(外科レジデント 2年間)

私の卒業した年は、初期臨床研修医制度の初年度にあたります。同級生の大半が医局へ属することなく研修病院に所属するというこれまでとは全く違う制度の中で、外科医としてやっていきたいという希望はもっていたものの、手本となるものもなく、正に手さぐり状態のスタートでした
私が初期臨床研修を受けた兵庫県立西宮病院は、400床の中規模病院で救急疾患が多いのが特徴であり、必然的に外科の緊急手術を多く扱っていました。外科の先生の大半は阪大の医局に所属しており、その中で2年目から5年目の若手の先生が上級医の指導の下、予定、緊急とも積極的に臨床に関わっておられ、お手本となる存在でした。平成16年卒 山中千尋(卒後9年目) 大学院2年生内科6カ月の研修を終えた後、3カ月の外科研修をスタートしたのですが、当初は緊急事態に全く対応できず、右往左往して上級医の邪魔ばかりし、その都度怒られるという毎日の繰り返しでした。自分の不甲斐なさに涙しながらも、少しでも上の先生に追いつきたいという気持ちで経験を重ね、徐々に外科医としての態度・姿勢を身につけていきました。外科研修の最後に鼡径ヘルニアの手術を執刀させて頂く機会を得たのですが、その時今まで感じたことがなかった興奮と自分の未熟さを痛感し、「外科医になるんだ」という思いを新たにすることができました。

 

その後同病院にて3年間の後期研修を行った後、近畿中央病院で外科レジデントとして2年間研修する機会を得ました。その中で、手術だけではなく、内視鏡検査、PTCD、穿刺ドレナージ、中心静脈カテーテル挿入などの手技や周術期管理、救命処置、ターミナルケア、外来診療、パラメディカルとの関わりなど、多岐に渡り様々な経験をさせて頂きました。初期研修時代よりも患者さんを中心的な立場で診療することで、責任の重さ、臨床のおもしろさ、怖さをより実感することができました。周囲から回復が難しいと言われていた患者さんが元気に退院した時の喜びは、今も忘れられません。また経験年数が増えてくるに従って、下の研修医を指導するという役割が重要になってきます。先輩方から教えて頂いたこと、自分が経験して得たことを後輩たちにわかりやすく伝えたり、日々の診療の中で疑問点を話し合い意見を戦わせたりすることで、自分の知識を再整理し深めることができました。
阪大の関連施設は症例が豊富で、また同じ道を目指すたくさんの仲間がいます。今後は研究会などで他施設の研修医と交流する機会がより増えてきますので、自分の立ち位置を図るよい機会になり、様々な刺激を得ることができると思います。最後に、私は経歴の通り他学出身で、さらに女性という一般的にはハンデと思われる状況でしたが、特にそれを感じることもなく充実した研修生活を送ることができました。皆さんも阪大関連施設で研修してみませんか?決して損はないと思います。

平成15年卒業  田中晃司(卒後12年目) 2014年修了

私は、平成15年に医学部を卒業し、現在、大学院3年生で、消化器外科の肝胆膵・移植グループに所属して、研究に従事しています。これまでの経歴としては、

平成15年3月 医学部卒業
平成15年4月~平成17年3月
平成17年4月~平成20年3月
平成20年4月~平成22年3月
平成22年4月~平成23年3月
平成23年4月~


 大阪府立成人病センター 臨床研修医
 大阪府立成人病センター 外科レジデント
 大阪府立成人病センター 外科医員
 大阪警察病院 外科医員
 大阪大学消化器外科学 大学院



平成15年卒業  田中晃司(卒後10年目) 大学院3年生

私は外科と循環器内科に興味があり、スーパーローテートが開始される前年の卒業でしたが、大阪府立成人病センターを拠点にオーダーメードのローテート(自分の希望である外科・循環器科に加え麻酔科・消化器内科・救命救急科のローテート)をさせていただきました。その後、ローテートで外科に魅力を感じ、同センターにて外科レジデントとして研修させていただきました。3年のレジデント生活後は、食道癌を中心に上部消化管を担当させていただきました。そこで、多くの手術症例を経験させていただくと同時に、臨床研究や臨床試験も担当させていただき、外科学の裾野の広さや魅力を実感しました。また、既存の治療では治癒しない患者様や、外科治療後のQOLの低下に悩む患者様を担当させていただき、まだまだ改善・研究すべき点があると痛感していました。そんな折、卒後7年目に大阪大学から、大学院で研究をしないかとご連絡いただき、帰学を決意しました。私は卒後すぐから単一の施設での研修でしたので、このまま帰学することに不安があり、平成22年に社会人大学院生として大阪警察病院で1年間研修させていただくことになりました。救急症例を含め、胆のう摘出術、虫垂炎、ヘルニアなど一般外科症例も豊富にあり、また最先端の腹腔鏡手術も経験させていただき非常に濃密な1年を過ごすことができました。平成23年からは大学院生として研究生活に入りました。

 

現在私が行っている研究テーマは以下の内容です。
(1) 血液サンプルを用いた抗癌剤感受性予測
(2) 胃癌・食道癌における新規バイオマーカーの有用性の検討
これらの研究は、大学での過去の研究結果を基盤としており、細胞や組織での実験結果を、血液サンプルに応用し、臨床での実用化を目指したものとして位置づけられていると私は考えています。具体的には、血液中を循環しているRNAや、癌に特異的に発現しているタンパクに対する抗体を抽出・定量し、癌の悪性度や抗癌剤の治療効果との関連性を検討しています。

 

これらの研究を通して、抗癌剤感受性予測やバイオマーカーによる早期診断や再発予測が高い精度で行えることが出来れば、個別化治療に有用な情報となり、個々の患者様に、より適した医療の提供に役立てるのではないかと考え、毎日わくわくしながら実験・解析・考察をしています。このように、基礎的な実験内容でも実臨床に直結した研究が可能であり、研究のモチベーションも高まると思います。
大学院の研究生活の間は、手術を執刀する機会もほとんどなく、臨床能力の向上・維持に不安を感じるかもしれません。しかし、上記のように、消化器外科での研究生活は必ずしも臨床と解離したものではありません
実際、私は上記のような研究以外に、大阪大学の病理部で病理診断の勉強もさせていただいています。切除標本の切り出しを行い、自分の目で胃癌や食道癌のプレパラートを顕微鏡で観察・診断しています。実際の肉眼所見と病理所見を対比でき、病理所見を外科医としての視点にfeedbackできるため非常に勉強になります。また、上部消化管グループでは、関連病院と定期的にミーティングを行い、臨床研究も精力的に取り組んでいます。機会にめぐまれれば、多施設での臨床研究を行うことが可能な環境ですし、多くの大学院生が事務局を担当しています。

 

このように大阪大学消化器外科では、臨床研究から本格的な基礎研究まで幅広く行うことができ、非常にcapacityが大きい教室だと思います。そのため、まだ基礎研究にあまり興味がわかないという先生から、本気でどっぷり基礎研究につかりたい先生の希望を満たすことが可能と思われます。
また、これほどたくさんの同世代の外科医が一同に集い切磋琢磨できる機会はありませんし、これほど多くの第一線で活躍されている先生方と直接コミュニケーションをとり学べる機会もまず得られないと思います。 大阪大学消化器外科という恵まれた環境と、大学院生という比較的自由な時間を利用し、臨床をやり続けるだけでは得られないであろう創造性を、習得する絶好の機会と思います。

平成14年卒業 賀川 義規(卒後13年目) 2013年修了

外科医が研究する意義は?
私は、大学院入学前は「とにかく切ってがんを治す」が外科医だと考えていました。今は、がん幹細胞説やがん関連遺伝子などの基礎的な知識をもち、がんを生物学的にとらえ、目の前の患者と向き合い精度の高い診断のもと総合的な判断をし「手術を施行する」のが外科医ではないかと思うようになりました。その総合的な判断をするためには、自らテーマをもって研究し、その他の研究を理解する事が重要だと感じます。そして、自分たちが開発したものが将来、臨床応用されて世の中のスタンダードになる日が来るかもしれません!

 

Bench to Bed side (基礎研究から臨床研究へ)
我々は、いつも臨床につながる研究を目指しています。「研究していることが将来、患者のためになる」それが、医学研究だと思います。医学の進歩を人力車に例えると、基礎研究と臨床研究は左右の車輪、患者さんは乗客、人力車を引っぱるのは、我々臨床医です。どちらか一方の車輪だけでは、人力車はまっすぐ進まず、左右の両輪をバランスよく引っぱっていくことが医学の進歩につながります。いつか臨床に応用出来そうな基礎研究はとても面白いと思いますし、基礎研究を臨床に応用する事は、臨床医でないと出来ない仕事です。外科医は、さまざまな基礎研究を応用し、手術を含めた新しい治療を患者さんに提供していく使命があると思います。

 

「博士課程」って?
現在、我々は博士過程で「研究する」という事を学んでいます。
(1) どういう事がわかっていなくて患者が困っているか(背景)
(2) それを解決するとどう役に立つのか(目的)
(3) では、どうやって解決するか(材料と方法)
(4) どうだったか?(結果)
(5) それをどう科学的に考えるか(考察
)
そして、世界初の成果を論文という形で世界中に発信します。臨床医に博士号はそれほど重要でないかもしれませんが、科学的に物事を検証するプロセスを学ぶことは、新しい知見を臨床現場に導入する上でも、また臨床試験をする上でも重要ではないかと考えています。患者のためになる研究を臨床の現場でやって行く上でも重要な期間になるのではないかと思います。

 

今やっている研究は?
私は今、「がん細胞の生体イメージング」という研究を行っています。これは、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの石井優先生の教室との共同研究になっています。この研究室は、生体イメージングにおいて世界トップクラスの実績があります。共同研究させていただく事で、この生体イメージングの技術を学び、がん細胞の動きを観察するプロジェクトをやっています。緑や赤の蛍光色素でラベルしたがん細胞をマウスに移植し二光子顕微鏡という特殊な顕微鏡で観察します。がんが転移するには、がん細胞は動いて血管内に浸潤し血流にのって遠隔転移すると考えられています。しかし、この過程を実際に観察した人はまだいません。平成15年卒業  田中晃司(卒後10年目) 大学院3年生がん細胞だけが、どうして転移するのかというメカニズムもまだよくわかっていません。そこで、我々はがん細胞を生きたマウスの中に移植してその動きを動画で観察してやろうという試みをおこなっています。その「動き」をとらえて、その関連遺伝子にせまり、そしてその分子をターゲットにした新規分子標的治療を目指します。実際に、イメージングから分子を見つけてきており、この分子は多くの癌細胞で発現しています。多くの癌で発現しているため、これを標的とした新規治療につながる研究を行っています。

 

最後に
医療は、臨床と研究という二つの大輪によって成り立っていると考えます。外科医といえども、科学的に根拠のある治療が求められ、さらには科学的根拠に基づいた個々の患者のためのオーダーメイド治療を選択出来るようになる事が理想ではないかと考えます。研究生活は普段、臨床をしていて沸き起こる疑問を解決したり、現在の治療の限界と将来の医療についてじっくりと考えたりするいいチャンスになるかもしれません。臨床で培った豊富な経験を、ぜひ研究の原動力として、我々とともに新しい医療を切り開く事にチャレンジしてください