上部消化管 胃

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胃

胃がんとは

 胃がんは、胃の壁のもっとも内側の粘膜(食べ物と接する場所)より発生します。粘膜より、胃壁の外に向かって粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜と広がっていくと、がん転移の頻度が増加し、進行度が進み、生命予後が悪くなっています。(下図参照)
 胃がんは、早期胃がんとそれ以外の進行胃がんに分類されます。早期胃がんとは、がんが粘膜あるいは、すぐ下の層である粘膜下層までにとどまっているものをいいます。早期胃がんの場合、ほとんど転移をおこすことはなく、治療によりほぼ100%治ります。一方、胃壁の筋層を越えて広がった進行胃がんの場合、転移が問題となり、それぞれの進行度に応じた治療法の選択が必要となってきます。
 胃がんの転移形式は、大きくわけて以下の3つに分れます。

 1)リンパ節転移
 2)腹膜転移
 3)肝臓転移

 リンパ節転移は、もっとも多い転移形式です。リンパ節は、胃の周囲に多数存在し、本来胃から侵入する細菌などの外敵を食い止める働きをしています。がん細胞も同様にリンパ節に侵入し、ここで増殖したものがリンパ節転移です。リンパ節転移が胃の周辺に留まっている場合は、外科手術にて広範囲に切除することで治る可能性があります。
 腹膜転移は、胃壁の最も外側にあたる漿膜層を越えたがんが腹腔内にばらまかれることにより、腹腔内の小腸、大腸、膀胱、腹壁を被っている腹膜上に発生します。別名、腹膜播種あるいはがん性腹膜炎と呼ばれるもので転移が進むと、腹水が貯まったり、腸閉塞をおこします。
 肝臓転移は、胃壁にある血管内に入り込んだがん細胞が肝臓へ流れていき転移病巣を形成するものです。腹膜転移、肝臓転移があると、胃がんの進行度は最も進んだIV期となり、通常は外科的切除の適応とはならず、化学療法を中心とした集学的治療が選択されます。

検査

胃X線検査

 硫酸バリウムという造影剤と胃の中でガスを発生させる発泡剤を飲んで、レントゲン台の上で体をいろいろな方向に動かし、胃の内側の細かな病変を検出します。胃カメラのように直接胃の中を覗く分けではありませんが、病変の範囲を決めたり、胃壁の動きをみて周りの臓器との関係をみる為に重要な検査です。特に手術を行う場合、胃の切除する範囲を決めるために必要な検査です。

胃内視鏡検査

 胃がんの確定診断を行うための重要な検査です。直径6~12mmの太さの細長いフアイバースコープを飲み、胃内の病変を直接観察するとともに、 組織を採取し、顕微鏡にて、がん細胞があるかどうか、あるいは、がん細胞の種類を確認します。カメラを通して病変の広がり、胃の入口あるいは、 出口までの距離を調べます。通常は、のどの麻酔と、軽い、鎮痛剤を投与されて行われます。

超音波内視鏡

 この検査は、ファイバースコープの先に小型の超音波断層装置をつけて行います。この検査の目的は、がんの部分の胃壁を断層撮影することにより、がんの胃壁内の深さや、胃壁内の広がりを調べます。又、胃壁の周囲の転移リンパ節を検出することもできます。

CT検査

 検査台に横になり、ドームの様な断層撮影装置の中に入っていきます。X線を使い、身体を数mm間隔で輪切りにした像を描き出します。腹部や、胸部の内部に異常が無いかどうかを調べます。胃がんの場合は、肝臓、リンパ節への転移があるかどうか、あるいは、胃の腫瘍が、どこまで広がっているか、周囲の臓器に浸潤していないかを調べます。通常、造影剤を点滴でいれてから撮影します。

治療

胃がんの治療

 胃がんの治療法について説明します。胃がんの治療は、その進行度によって異なります。2001年に日本胃がん学会が、 胃がん治療のガイドラインを作りました。これは、これまで施設により違いがあった胃がん治療法を集計し、さらに、 科学的な研究結果も考慮して現時点での標準的な治療法を決めたものです。このガイドラインでは、胃がん治療を、 すべての施設で施行可能な日常診療と先駆的な施設による胃がん治療をよりよくするための臨床研究とに分けてあります。 我々は、胃がん治療の成績向上、胃がん患者さんの苦痛の軽減を目指し、この臨床研究の方針にしたがって治療を行っています。 胃がん治療について早期胃がんと進行胃がんに分けて説明します。

■ 胃がんガイドラインの日常診療

 我々の施設では、胃がん学会ガイドラインに基づき、さらに、臨床研究を行ない発展させていく形で診療を行なっています。その中で、特に以下の2点について力を入れています。

1)早期胃がんに対する、低侵襲治療、縮小手術

(胃カメラによる治療、腹腔鏡手術)

2)進行胃がんに対する、微小転移(従来の検査では見逃される微小な転移、このために、手術後に再発をします)

  診断に基づいたより適確な治療法の選択。特に、進行胃がんの治療後再発でもっとも多い腹膜播種に対する診断、治療に力を入れています。
 つまり、ほとんど転移、再発することがない早期胃がんに対しては、できるだけ侵襲の小さな治療、胃の機能をできるだけ温存する治療法を選択していきます。根治手術を行なっても、高頻度に再発、転移をしてくる高度進行胃がんに対して、従来の検査では見逃されてしまう微小がん転移を種々の方法で検出し、治療前に再発を予測することにより、手術単独では不十分な症例を選びだし、抗がん剤治療を組み合わせた集学的治療を行なっております。

 早期胃がんについては、積極的に低侵襲、縮小治療を行なっています。具体的には、内視鏡(胃カメラ)で粘膜切除を行なう方法、この方法ができない症例に対しても、お腹の中に、カメラと、細い器具を挿入し、胃切除(胃部分切除、幽門側胃切除、胃全摘出)を行なう腹腔鏡下(補助下)胃切除術を積極的に取り入れています。この方法を用いると従来の様に、お腹を大きく切開する必要がなく、術後の痛みも少なく、入院期間も短くなります。一方、進行胃がんに対しては、再発形式として、もっと頻度が高く、治療が困難な、腹膜播種に対し、術前に腹腔内の洗浄液を採取し、遺伝子解析を用い微小がん細胞を検出することにより、手術後の腹膜再発を予測しています。又、腹膜再発が予測される患者さんに対しては、術前に腹腔内抗がん剤治療を行なったのち手術を行なっています。近年、胃がんに対し奏効率の高い薬剤(TS-1、タキサン系抗がん剤、CPT-11など)が開発承認されるようになり、これらの抗がん剤治療も取り入れた集学的治療により進行胃がんの治療成績の向上が期待されます。

早期胃がん

早期胃がんの治療

 粘膜下層までにとどまるがんを早期胃がんといいます。早期胃がんでも10数パーセントに転移があり、明らかに転移を認めないものと思われるもの以外は、リンパ節郭清が必要です。よって、内視鏡下の粘膜切除術(EMR)は、ガイドラインでも明確に適応が示されているとおり、転移が無いと予想される症例を適応としています。当科では、現在のところ胃がん学会が示すガイドラインにそって適応をきめています。

■ 内視鏡的粘膜切除術

 内視鏡的粘膜切除の適応は、大きさ2cm以下、陥凹型では潰瘍を認めない粘膜内がんを対象としています。又、組織診断にて分化型胃がんであることを条件としています。これは、胃がん学会ガイドラインに準拠したものです。粘膜切除は、内視鏡(胃カメラ)を用いて行います。手順は、内視鏡を胃内に挿入し、病変を確認、病変の直下に生食を注入し病変を浮かせ、ワイヤーをかけて切除します。切除した病変の断端にがん細胞がいないか、リンパ節転移の可能性はないかを顕微鏡を用いた病理検査で診断します。場合により追加手術が必要になることもあります。

■ 腹腔鏡胃がん手術

(写真1)従来の胃全摘術(左)と比較し、腹腔鏡(右)による手術では4cm程度の皮膚切開で手術が可能になります。

1)はじめに

 腹腔鏡胃がん手術は、1990年はじめに行なわれました。まだまだ歴史の浅い手術ではありますが、日本でも着実に手術症例数が増えてきています(グラフ1)。これまでは、胃の一部を切除するだけ(部分切除)が多かったのですが、最近は、胃がん手術の中で重要とされているリンパ節郭清も腹腔鏡下手術で行なわれるようになってきました(写真1)。現在では、幽門側胃切除のみならず胃全摘、噴門側切除、幽門保存胃切除など様々な術式が行なえるようになっています。

2)適応と術式

 胃がん学会ガイドラインの臨床研究(表1)に位置付けられる範囲を適応としています。一般的には、標準術式は、開腹手術であり、早期胃がんでもまだまだ開腹手術が主流です。全国的にも明確な手術適応が決まっていないのが現状です。
 前述の如く、通常開腹手術で行なっている手術はすべて腹腔鏡下で行なえるようになっています。従って場所によって、開腹手術と術式が異なることはありません。
 現在までに腹腔鏡下胃がん手術は101例を数え、リンパ節郭清を伴う胃切除は83例を行なっております。 これまでの手術と比較すると、手術時間は要するものの、出血量は少なく、術後の在院日数は短く、第一歩行日なども早いなど良好な成績を得ております。また当科では、臨床研究として開腹手術との無作為試験も行ないながら、術後の負担が本当に少ないかどうかなどの検証も行なっております。

図1 腹腔鏡下のリンパ郭清終了:腹腔動脈周囲、総肝動脈前面のリンパ節が切除されている
図2 腹腔鏡下手術中の写真

進行胃がん

進行胃がんの治療

■ 手術療法

 進行胃がんにおいては、外科手術が最も有効な治療手段です。外科手術の基本は、がん病巣を含めた胃の切除と周囲リンパ節の合併切除(リンパ節郭清、かくせい)を行った後、食物が通るようにつなぎ直す(再建)ことです。外科手術は、手術前の診断にて、がんの広がりが手術でとりきれる範囲にとどまっている場合に選択されることがほとんどです。少なくても目で見てがんが完全に切除できた場合を根治手術といいます。しかし、例外的に、がんにより、食物が通らなくなる狭窄やがんよりの出血に対して、バイパス手術や、がん病巣の一部だけ切除することもあります。このように、明らかにがんを残して手術することを姑息的手術といいます。

1)胃切除範囲

 胃の切除範囲は、がんの部位、進行度によって決められます。基本的には、がんの位置が胃の出口(幽門)に近い場合は、幽門側胃切除が、胃の入り口(噴門)に近い場合は、胃全摘術が選択されます。(早期胃がんの場合で噴門の近くにのみある場合は、噴門側胃切除が行われることもあります。)

2)リンパ節切除(リンパ節郭清)

 胃がんの転移形式として最も多いリンパ節転移に対して、切除を行います。転移は、まず、胃の周囲のリンパ節(1群リンパ節といいます。)におこります。そして、さらに進行すると、胃から離れた2群リンパ節に転移をしていきます。よって、進行胃がんの手術では、この2群リンパ節まで含めて切除するのが標準的です。転移がさらに胃より離れた3群のリンパ節に転移している場合は、これを切除する意味があるかどうかは現在臨床試験中で、わかっていません。我々の施設では、まず、抗がん剤治療を行い、転移を縮小させた後に、3群リンパ節までを切除しています。 胃上部の進行胃がんに対しては、2群のリンパ節を完全に切除するために、脾臓あるいは、膵臓の一部を切除することがあります。脾臓は、古くなった血液(白血球、血小板、赤血球)を壊す臓器です。乳幼児の時期は、細菌に対する抵抗力(免疫)に関わっているといわれていますが、成人ではほとんど影響はなく、むしろリンパ節を完全に切除する目的で切除されます。

3)消化管の再建

 幽門側胃切除を受けた後は、残った胃(残胃)と十二指腸を直接つなぐ(吻合)方法(ビルロートI法)か、十二指腸は閉じてしまい、残胃と持ち上げた小腸とを吻合する方法(ルーワイ法)で再建します。胃全摘後は、ルーワイ法にて再建するのが一般的です。 その他、胃全摘後に代用胃として、小腸を置き換える小腸間置法、あるいは、小腸をつなげて袋(パウチ)をつくり食物の貯留をよくする工夫がなされることがありますが、手術が複雑となること、それによる合併症の頻度が少し増すこと、さらには、ルーワイ法と比較してその有効性が証明されていないことより我々の施設では、ルーワイ法を選択しています。

4)手術に伴う合併症

 胃がん手術後の合併症としては、以下のものがあります。

○膵液漏
 合併症としては、最も頻度の高く、主に胃全摘後におこります。膵臓周囲のリンパ節を切除する時に膵臓が傷つき膵臓が分泌する膵液(消化液)が漏れることが原因です。消化液が周囲組織に炎症を起こし腹痛、発熱がおこります。治療は、絶食と膵液の産生をおさえる注射をおこないます。

○縫合不全
 消化管をつないだ部分がくっつかないことにより、消化管の内容物が漏れてしまうことです。食道と小腸をつないだ場合におこることがあります。ほとんどの場合、絶食にて自然治癒します。

○その他
 全身麻酔に伴う合併症としては、無気肺(肺に貯まった痰が気を閉塞して肺が一部つぶれてしまうこと)、肺炎があります。手術に伴うものとして、術後出血、創感染(切開した傷が化膿する)、腸閉塞(術後に腹腔内に癒着がおこり腸がねじれてしまうこと)があります。

5)胃切除後の食生活と後遺症

 胃の働きは、大きくわけて2つあります。まず、食物をためるいわゆる胃袋としての働きと、蠕動運動により胃壁を動かし、胃酸を分泌し、食物をドロドロの状態にして腸に送りだすという働きです。この2つの働きが失われることにより、食生活に障害が出てきます。つまり、食事が一度にたくさん食べられないということと、急いで食べるとい、濃度の濃い食物の塊が、いきなり腸へ流れこみ、腸液が多量に分泌されるためにおこる、動悸、発汗、めまい、眠気、腹鳴、脱力感、顔面紅潮、蒼白、下痢などのダンピング(早期)といわれる症状が出ることです。又、急激な血糖値の上昇により、血糖値を下げるホルモンであるインシュリンが大量に分泌されることにより逆に血糖値が下がり過ぎ、食後2~3時間して、脱力感、冷や汗、倦怠感、めまい、意識消失などの症状がでます。これが晩期ダンピング症候群です。 その他、カルシウム、鉄の吸収障害、胃全摘の場合は、ビタミンB12の吸収が悪くなり、骨粗鬆症、貧血などの症状がでます。

■ 化学療法

1)進行胃がん、再発胃がんに対する治療として

 治療時点で、腹膜播種、肝転移、高度のリンパ節転移がある場合は、手術で完全に切除することは困難でありこの場合は、抗がん剤治療(化学療法)の適応となります。又、抗がん剤で先に治療し、腫瘍を縮小させ、手術できる範囲になった時点で手術をおこなう治療もおこなわれており、この場合、治療成績はよくなります。
 近年(2000年頃より)新しい抗がん剤が開発され、これまで、あまり有効と考えられていなかった胃がんに対する抗がん剤治療が変わってきています。副作用が少なく、有効な薬の開発により、進行、再発胃がんの予後は改善してきています。具体的には、経口(飲み薬)の抗がん剤であるTS-1、タキサン系薬剤であるタキソテール、タキソール、CPT-11などがあげられます。以前のように入院してではなく、外来通院にて治療が可能であり、患者さんの生活の質をあまり損なうことなく治療が可能となっています。 抗がん剤の投与法としては、以下の3種類があります。

A)全身投与
 抗がん剤を経口で、あるいは、点滴で投与する方法で、最も一般的な方法です。全身に薬がいきわたるのであらゆる転移に対しておこなわれる投与法です。

B)肝動脈投与
 鼠径部(足の付け根)あるいは、鎖骨の下より、動脈内に細いカテーテルを挿入し、肝動脈内に留置し、ここより抗がん剤を肝臓内に選択的に注入します。肝転移に対しておこなわれます。我々の施設でも積極的に行っており、普通は、直径3cm程のポートを皮下に埋め込み、外来通院にて治療しています。肝臓へ、直接高濃度の抗がん剤を投与できるので、有効性が高く、我々の成績でも、8例中6例で奏功しております。

C)腹腔内投与
 腹腔内へ、治療前あるいは、手術時にチューブを留置し、腹腔内へ抗がん剤を注入する方法です。腹膜播種の治療、予防のために行います。我々の施設では、治療前に腹腔内にチューブを留置し、腹腔洗浄を行い、腹腔内にがん細胞が検出された場合、腹膜播種再発を予防するために、腹腔内に抗がん剤を投与し、その後手術を行っています。

2)再発を予防するための化学療法(補助化学療法)

 手術後に再発を予防するために行われる抗がん剤治療のことです。現時点でこの補助化学療法に有効性があるかどうかはわかっていません。我々の施設では、この有効性を証明するために臨床試験をおこなっております。つまり、手術で一応とりきれた進行胃がん症例を2群にわか、抗がん剤を飲んでもらう人と飲まない人で予後や生活の質に差があるかを調べています。

3)化学療法の副作用

 抗がん剤は、がん細胞だけではなく、正常なからだの中で盛んに増殖をくり返している細胞にも影響を与え、そのために、種々の副作用がでます。頭髪、消化管粘膜、骨髄などに作用し、脱毛、口内炎、下痢、吐き気、白血球、血小板、赤血球の減少をきたします。又、薬剤の代謝や排泄に重要な肝臓や腎臓に障害がでることもあります。

取り組み

腹膜播種の治療

進行胃がんの治療後の再発形式として最も多いのが、腹膜播種再発です。よって、進行胃がんの治療成績を向上させるためには、この腹膜播種に対する治療法を改善することが重要です。
 腹膜播種は、進行胃がんのうち胃壁の外側(漿膜側)にがんが露出した症例におこります。つまり、胃壁から腹腔内にがん細胞が脱落し、腹腔内を包んでいる薄い膜である腹膜に根をはやし増殖します。進行すると腸閉塞をおこし、腹水がたまります。
 手術の際に明らかに腹膜播種は認めなくとも、腹腔内に潜むがん細胞により術後に再発を来す場合がすくなからずあります。
 我々は、この腹腔内に潜むわずかながん細胞を検出し、腹膜播種再発を予測する検査法を開発し臨床応用しています。この方法を用いると従来の顕微鏡による細胞診と比較しより感度よく腹腔内のがん細胞を検出することが可能となります。
 さらに、漿膜浸潤胃がんに対しては、手術前に病棟で腹腔洗浄液を採取し、腹膜播種再発を治療前に予測しています。これにより、腹膜播種再発のリスクが高い場合は、手術前に腹腔内化学療法を先行させその後に手術を行う治療方針でおこなっております。

腹膜播種再発予測

進行胃がんにおいては、手術によってがんを取り除くことができても、術後に再発してくることがあります。その中でも腹膜播種再発が最も多いとされています。手術時に腹膜播種が無くても術後に出てくるということで、手術時に既に病変として認識できない程度の微小な病変あるいは、がん細胞が腹腔内に存在していると考えられます。そのがん細胞を捉えるために、従来より腹腔洗浄液の細胞診が行われてきました。これは腹腔内を生理的食塩水で洗い、その液を染色後、顕微鏡で観察しがん細胞の有無を調べます。あらゆる施設で広く行われている方法ですが、感度の低いことが問題です。つまり、細胞診が陽性であれば大多数が腹膜再発を来しますが、細胞診が陰性であっても腹膜再発はかなりの確率で見られます。
 そこで、我々は、98年より腹腔洗浄液を用いた遺伝子解析を導入してきました。この方法は、がん細胞がたくさん産生する遺伝子を増やして検出し、がん細胞がいるかどうかを推測する検査です。これによって細胞診が陰性であっても、遺伝子診断では陽性となる人がかなり存在することが分かってきました。
 遺伝子診断が陽性であれば、腹膜再発のリスクが高いということがわかってきました。漿膜浸潤を来した胃がんにおいて遺伝子診断が陰性の群と陽性の群では腹膜再発の割合には大きな差が見られています。遺伝子診断が陰性であれば腹膜再発の可能性はかなり低いと言えますが、陽性であれば、その半数近くが腹膜再発を起こすことになります。

腹腔内化学療法

これまで述べましたように、腹腔洗浄液の遺伝子診断が陽性であれば、術後に腹膜再発を起こす可能性が高いことが分かってきました。よって、遺伝子診断陽性の場合には術前腹腔内化学療法と呼ばれる抗がん剤治療を手術前に行っています。腹腔内に留置したドレーンから抗がん剤を腹腔内に直接投与します。この投与法自体は以前からある方法ですが、その効果については一定の見解は得られていないのが現状です。ただ、この腹腔内投与は通常、手術時に明らかな播種性病変がある症例に対して術後に行うことが一般的でした。今回のように肉眼的に確認できない微小な転移巣を相手にしていること、手術による癒着などの影響が少ない術前に行っていることなどから、その効果は期待できるのではないかと考えています。

腹腔鏡手術

・腹腔鏡補助下胃切除ならびに開腹胃切除に関する無作為比較臨床試験
 →大阪大学医学部医学倫理委員会審査済、平成15年5月承認
・腹腔鏡補助下胃全摘ならびに開腹胃全摘に関する無作為比較臨床試験
 →大阪大学医学部医学倫理委員会審査申請中
・3DCT ナビゲーションシステムの開発(オリンパス光学(株)共同研究)
 (→図3,1-3)
・TRCシステムを用いたセンチネルノードナビゲーションサージェリーの有用性の検討
 (→図4,1-4)

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