上部消化管 がん免疫療法

がん免疫療法(がんワクチン、遺伝子療法、免疫増強療法)

1)「がん免疫療法」って?
2)「免疫抑制因子を制御する」!
 i) 「モガムリズマブ臨床治試験」
 ii) 「PD-1抗体臨床試験」「PD-L1抗体臨床試験」
 iii) 副作用はあるの?
 iv) 治験に参加できるの?
3)「がんワクチン」
 i) 「がんワクチン」って?
 ii) 効果はあるの?
 iii) 参加できるの?
 iv) 副作用はあるの?
 v) ペプチドワクチン?
4)吉本新喜劇で免疫が強くなるって?
5)今はどんな臨床試験をしているの?
6)受付の終了した臨床試験
7)問い合わせ

 

 

1)「がん免疫療法」って?

 がんに対しては、免疫が働くことでがんが出来たり大きくなることを抑えていることがわかっています。キラーT細胞と呼ばれるリンパ球が、がんに対して働きがん細胞をやっつけています。ところが、実際にはがんを持つ患者さんの体内では、このキラーT細胞が十分に働いてくれていません。なぜでしょうか?
 キラーT細胞が増えたり働いたりすることを抑えている抑制物質や制御細胞があることが最近分かってきました。このキラーT細胞に対する抑制物質に対する薬を作って注射すると、とてもよく効くことが2011年に報告されたのです。それ以来、世界中でこのような「免疫抑制因子を制御する」という新たな「がん免疫療法」の研究が積極的にすすめられています。PD-1やPD-L1、CTLA-4という分子、あるいは制御性T細胞という細胞がキラーT細胞を抑えています(下図)。これら因子の働きを人工的に作った抗体で抑えてやると、様々ながんが小さくなってしまう事が分かっています。

 また、キラーT細胞の数を増やしてあげることも試みられています。このための「がん免疫療法」として「がんワクチン療法」があります。がん細胞が持っているものと同じ物質を人工的に作って、腕など身体の別の場所に注射してキラーT細胞を増やすのです。さらに、この働きを助けてあげる物質(免疫賦活剤)の研究も進んでいます。

 

 

2)「免疫抑制因子を制御する」!

i) 「モガムリズマブ臨床治試験」
  キラーT細胞が増えたり働いたりすることを抑えている制御細胞は、「制御性T細胞」と呼ばれています。この細胞を減少させる抗体があります。この抗体は「モガムリズマブ」と呼ばれ、別の病気のための抗体薬として国に認可されています。今回この「モガムリズマブ」という抗体薬を食道がんや胃がんに対する抗がん剤として使えないかを調べるための「モガムリズマブ臨床治試験」を行っています。効果はまだ不明です。

 この「制御性T細胞」を制御する様々な試みは海外ですでに始められていましたが、ヒトではうまくいっていませんでした。ですので今回の「モガムリズマブ」投与の臨床治験は世界中から注目されています。
平成24年度厚生労働省科学研究費補助金 固形がんに対する抗CCR4抗体療法第Ia/Ib相医師主導治験

ii) 「PD-1抗体臨床試験」「PD-L1抗体臨床試験」
 キラーT細胞の働きを抑えている因子には、PD-1、PD-L1と呼ばれる細胞表面に存在するタンパクがあります。これに対する抗体は、抑えられているキラーT細胞の働きを回復・増強し、がんを攻撃しやすくなることが既に分かっています。欧米ではこれら因子に対する多くの種類の抗体医薬が開発され、人に投与されています。日本でも皮膚癌にはすでにPD-1抗体が厚労省により認可されています。このPD-1は日本で発見され、PD-1抗体は日本で最初に開発されました。
 食道癌や胃癌に対してはこのPD-1抗体の安全性や効果がまだわからないため、臨床試験を治験として行っています。皮膚癌では非常に良好な効果を発揮する事が分かっています。

iii) 副作用はあるの?
 あります。抗体薬などは、点滴をすると皮膚が赤くなったりするアレルギーのような症状が数時間以内に出てくることが多く見られます。また、免疫の反応が予想以上に出る場合には、数週間後にも強いアレルギーのような反応が出ることがあります。ただしこれらアレルギーの起こるということはがんを攻撃するのにも有利であると考えています。ですので、この臨床治験に参加いただく際にはあらかじめ身体の状態を詳しくお聞きします。また、臨床治験に参加していただき点滴をされた場合には、さらに詳しく何度も問診などで体の状態をお聞きし、患者さんご自身でも体調に気を付けていただきます。病院としても患者さんの体調の変化に対応できるようにしています。

iv) 治験に参加できるの?
 胃、食道がんなどで参加を受け付けています。ただし、時期によっては参加できなかったり、様々な条件に適合する必要があります。詳しくはお問い合わせください。

 

 

3)「がんワクチン」

i) 「がんワクチン」って?
 「がんワクチン」は、がん細胞が持っている物質(がん抗原)を人工的に作り注射し、注射した場所でがん抗原にだけ反応するキラーT細胞を効率よく作ることが第一歩です。そしてこのキラーT細胞が、注射した物質と同じ物質を持つがんの中に入り込み、がん細胞を攻撃することを期待します。
 私たちはこの「がん特異抗原」として、「NY-ESO-1」という物質を使っています。患者さんの腫瘍の中に「NY-ESO-1」が含まれないと、がんワクチンは受けられません。食道がん、胃がんなどの細胞の中に多く含まれていることがわかっていますが、すべての患者さんの細胞に含まれているわけではありません。注射をして「NY-ESO-1」に対して免疫が出来たものの、腫瘍組織に「NY-ESO-1」が含まれていないと、今度はその免疫反応がどこに向かっていいかわからなくなりますよね。

ii) 効果はあるの?
 過去に「がんワクチン」をした患者さんでは、確かに癌が非常に小さくなった方もおられます。しかし、すべての方に何らかの効果があるわけではありませんし、全体でみると効果のない方のほうが多いと思われます。これらの問題に対して試行錯誤をしながら改善していこうとしています。

iii) 参加できるの?
 現在は、当院で手術をされた食道がんの患者さんに、再発を予防するためのワクチンを行っています。がん細胞にNY-ESO-1抗原が存在することなど、多くの基準があります。詳しくはその都度、直接説明させていただきます。

iv) 副作用はあるの?
 今のところ大きな副作用はありません。投与部の皮膚が赤く、硬くなったりかゆくなったりすることが多くの方に見られます。ほとんどの方ではかゆみ止めや痛み止めなどの薬の必要はないくらいです。

v) ペプチドワクチン?
 ペプチドワクチンではありません。タンパクはアミノ酸という物質が長くつながってできています。ペプチドというのは、アミノ酸が8から10個つながった非常に短いタンパクの一種です。私たちは、アミノ酸が100個以上つながったタンパクを使ってワクチンを行っていますので、厳密には「ペプチドワクチン」ではなく「タンパクワクチン」です。長いタンパクの中にリンパ球を刺激できうるさまざまな「ペプチド」が多く含まれているので、それにより、より強いワクチンが可能になります。またタンパクの代わりに、20-30個のアミノ酸からなるやや長めのペプチド(ロングペプチドと呼んでいます)を使った試験も行いました。

4)吉本新喜劇で免疫が強くなるって?

 「笑い」のリラックス効果で免疫が強まるそうです。一部のキノコや海藻などでも免疫は増強されるようです。この効果は免疫全体を押し上げるために起こります。怪我の時のばい菌に対しても、風邪のウイルスにも、食べ物に入っているばい菌に対しても。ただし、この免疫全体の押し上げの程度は非常にわずかで、あるかないかわからないくらいです。2)「免疫抑制因子を制御する」で説明した臨床治験の方法では非常に強い免疫をがんに対して引き起こします。
 そのほか、がんに対する免疫を強める食事や生活上の注意点を患者さんからよく聞かれます。大事なことは普段通りの日常生活を過ごし、時には運動をして嗜好品なども適度にたしなみ、前向きな精神状態を保つことが大事だと考えます。

5)今はどんな臨床試験をしているの?


1.「進行又は再発固形がんに対するモガムリズマブ第 Ia/Ib 相臨床試験

対象: 進行・再発 食道癌、胃癌など
登録状況: 限定受付中
平成24年度厚生労働省科学研究費補助金 固形がんに対する抗CCR4抗体療法第Ia/Ib相医師主導治験


2.「進行再発胃がん・食道がんに対する抗PD-1抗体治験

対象: 進行・再発 胃がん・食道がん
登録状況: 受付中


3.「進行再発胃がん・食道がんに対する抗PD-L1抗体治験

対象: 進行・再発 胃がん・食道がん
登録状況: 受付中


4.「食道がん術後補助療法としてのCHP-NY-ESO-1がんワクチン臨床試験
  (医師主導第Ⅱ相試験)

対象: 当院にての食道癌手術症例
登録状況: 受付中

6)受付の終了した臨床試験

「Poly-ICLC、OK432をアジュバントとするNY-ESO-1タンパクがんワクチン療法(第I相臨床試験)」
「NY-ESO-1長鎖連続ペプチドを用いたがんワクチン療法(第Ⅰ相臨床試験)」
「MAGE-A4抗原を発現する進行・再発悪性腫瘍に対するCHP-MAGE-A4がんワクチン臨床試験(第I相試験臨床研究)」
「NY-ESO-1fペプチドを用いた進行癌に対するがんワクチン療法(第I相試験臨床研究)」
「MAGE-A4抗原特異的TCR遺伝子導入リンパ球輸注臨床試験」「標準治療不応進行再発胃癌に対するがんペプチドワクチン療法の臨床試験」「切除不能進行再発胃癌に対する腫瘍新生血管を標的としたHLA-A*2402拘束性エピトープペプチドカクテルを用いた腫瘍特異的ワクチン療法とTS-1+CDDP療法の併用に対する第I・II相臨床試験」「NY-ESO-1複合ペプチドを用いた進行癌に対するがんワクチン療法(第I相臨床試験)」「CHP-NY-ESO-1を用いた進行癌に対するがんワクチン療法(第I相臨床試験)」「CHP-NY-ESO-1を用いた進行癌に対するがんワクチン療法(第I相企業主導臨床治験)」

7)問い合わせ

 患者さんの病状をお聞きする事から始めます。また、がん細胞にNY-ESO-1などのがん抗原があるのかを調べることもする場合がありますが、これには、「免疫染色法で検査をするために、固定保存されている摘出腫瘍や生検組織の薄切が免疫染色法用のプレパラートを未染の状態で6枚」が必要です。
 詳しい内容はまず下記のアドレス宛てにメールにてお問い合わせください。


問合せ先:
大阪大学医学部・外科学・消化器外科
教授 土岐 祐一郎
大阪大学医学部・外科学・消化器外科、臨床腫瘍免疫学
教授 和田 尚
メールアドレス:hwada★gesurg.med.osaka-u.ac.jp
          (★を@にしてください)
電話:06-6210-8413 和田 尚(わだ ひさし)
住所:〒565-0871 吹田市山田丘2-2(E-2)
http://www.climm.med.osaka-u.ac.jp/index.html