大阪大学大学院医学系研究科 内科系臨床医学専攻 消化器内科学では患者さんに役立つ診療・研究を目標に医療・医学レベルの向上を目指します。

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診療案内(対象疾患)

B型肝炎の患者さま向け
  1. B型肝炎とは

    B型肝炎ウイルス保有者(HBVキャリア)は、わが国で約130〜150万人と推定されています。B型肝炎ウイルスは、遺伝子型によりジェノタイプA〜H型の8種類に分かれており、わが国ではジェノタイプC型、次いでジェノタイプB型が多く認められます。しかし、最近では欧米に多いジェノタイプA型が外国から持ち込まれ、わが国でも増加してきています。HBVが体内に感染し、人体の免疫応答により肝細胞が破壊されている状態を肝炎といいますが、肝炎の状態は、一過性に肝炎を生じ、その後ウイルスが排除される『急性肝炎』と、少なくとも6ヶ月以上肝炎が持続する『慢性肝炎』に大きく分けられます。HBVは主に血液を介して感染しますが、わが国では、出産前後に母親から赤ちゃんに感染する『母子感染(垂直感染)』による感染がほとんどです。成人になってからの感染は、性交渉、覚醒剤の回し打ち、刺青、医療上の針刺し事故などによる『水平感染』が主です。この場合、多くが急性肝炎を発症し、安静・食事療法にて自然に治癒しますが、約1%で劇症肝炎という非常に重症の肝不全になることがあります。また、B型肝炎ウイルスの一部の型(ジェノタイプA型)では、慢性肝炎に移行する症例が約10%認められるとされています。

    B型肝炎には、さまざまな状態があります。赤ちゃんの時期に感染した場合、90%以上は無症候性キャリア(ALT正常であるが、体内にウイルスが存在する状態)となります。その後、15〜30歳になると免疫機能が活発になり、肝炎を発症します(ALT上昇を伴う)。多くの場合(85〜90%)は、この肝炎の時期にセロコンバージョン(HBe抗原が消失し、HBe抗体が出現すること)という変化が起こり、多くの場合で、ウイルスが増殖しなくなり肝炎がおさまります。一方で、この時期にセロコンバージョンが起こらなかった方や、セロコンバージョンが起こった後もウイルスが増殖し肝炎が持続する方は、慢性肝炎となり、肝細胞の破壊と再生が繰り返されるうちに肝臓の線維化が進んでいきます。慢性肝炎からさらに線維化が進行すると、肝臓が硬くなって徐々に肝臓の機能が失われる肝硬変へ進行したり、肝細胞癌の発生、あるいは慢性肝炎の急性増悪などの経過をたどる可能性があります。


    B型慢性肝炎の自然経過
    B型慢性肝炎の自然経過

  2. B型肝炎の診断

    B型肝炎の診断には、1)血液検査、2)画像検査(超音波、CTなど)、3)肝組織検査を用います。
    1)血液検査

    ウイルスマーカー(HBs抗原、HBe抗原、HBe抗体、HBV DNAなど)を測定し、ウイルスの活動性やウイルス量を調べます。また、トランスアミナーゼ(AST、ALT)により、肝炎の程度がわかります。
    2)画像検査

    超音波やCT、MRIによって、肝細胞癌を合併しているかどうかを調べます。


    3)肝組織検査

    肝臓の組織を一部採取し、肝組織の炎症や線維化の程度を詳しく知ることができます。検査には入院が必要となります。


  3. B型肝炎の治療

    B型肝炎の治療は、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス療法と、肝庇護療法の二つに大きく分けられます。B型肝炎は自然に経過観察していても、セロコンバージョンを起こし、肝炎がおさまることがあります。よって、自然経過ではセロコンバージョンが起きる可能性が低い方、トランスアミナーゼ(ALT)が高い方、肝生検や画像検査で肝臓の線維化や炎症が進んでいる方が治療対象となります。

    抗ウイルス療法では、インターフェロンや核酸アナログを投与します。どちらを選択するかは、年齢、肝組織、ウイルスの状態や量によって選びます。


    1)インターフェロン

    体内の免疫を活性化してウイルスの増殖を抑える薬です。大阪大学では、入院しインターフェロン治療を開始します。治療開始後2週間は毎日、3週目以降は外来で週3回の注射を行い、計24週間の治療を行います。


    2)核酸アナログ

    ウイルスの合成を阻害してウイルスの増殖を抑える薬です。ラミブジン(ゼフィックス)、アデホビル(ヘプセラ)、エンテカビル(バラクルード)の3種類が保険適応となっています。いずれも経口の内服薬です。これらの薬剤は、急に内服を中断すると急激にウイルスが増殖することがあるため、原則としてずっと内服し続ける必要があります。また、内服期間中に薬剤耐性ウイルス(投与中の薬剤に抵抗性を持ち、その薬が効かないウイルス)が出現することもあり、定期的な外来通院が必要となります。

    また、抗ウイルス療法を施行できない、あるいは施行する必要のない方には、強力ネオミノファーゲンC、ウルソデオキシコール酸などで治療を行います。

    大阪大学では、大阪大学と大阪府下の主要病院から構成されるOsaka Liver Forumにおいて、B型肝炎に対する治療成績をまとめ、一般臨床でのB型肝炎患者さんの治療に役立てるように様々な臨床研究を行っています。核酸アナログ治療では、薬剤耐性ウイルスの出現が大きな問題であり、治療効果にも影響を与えることが明らかとなっていますが、ラミブジン治療においては、治療開始前のウイルス量が多い例、治療開始後6ヶ月で十分にウイルスが低下しない例において、高率に薬剤耐性ウイルスが出現することを報告しています。また、ラミブジン治療によって薬剤耐性ウイルスが出現した場合は、ラミブジンにアデホビルを併用する治療が行われますが、アデホビルを追加する時期については一定の見解を得ていません。ラミブジン治療によって薬剤耐性ウイルスが出現し、アデホビルを追加投与している例を検討した結果、セロコンバージョンを起こしていない例、薬剤耐性ウイルス量が多い例において、アデホビルの抗ウイルス効果が低くなることが明らかとなり、今後の一般臨床に役立つものと期待されます。

    わが国でも、2006年9月より、B型慢性肝炎に対するエンテカビルが保険適応となり、多くの症例に投与が行われています。大阪大学では、Osaka Liver Forumにおいてエンテカビル投与症例を蓄積し、B型慢性肝炎患者さんの治療成績を向上させる新たな情報を発信するために、詳細な検討と加えていく予定となっています。以下に、Osaka Liver ForumでまとめたB型肝炎治療の最新情報を示します。


  4. B型肝炎治療の最新情報
    1)ラミブジン耐性B型慢性肝疾患に対するアデホビル投与症例について

    ラミブジン(LAM)耐性B型慢性肝疾患症例に対して、アデホビル(ADV)の追加投与が施行されています。Osaka Liver ForumにおいてLAM耐性ウイルスを検出しADVとLAMの併用療法が施行されているB型慢性肝疾患55例を対象として検討しました。 ADV開始後のHBV DNA<2.6logcopies/mlとなる割合は、HBe抗原陽性症例では、6か月20%、1年29%、2年59%、HBe抗原陰性症例では、6か月62%、1年68%、2年90%であり、HBe抗原陰性例の方がADV開始後6か月以降のウイルス低下は良好でした。また、HBe抗原陽性例において、ADV開始時のHBV DNA量によって2群(:HBV DNA 7logcopies/ml未満あるいは以上)に分けてHBV DNA<2.6logcopies/mlとなる割合を検討した結果、7logcopies/ml未満群では6か月33%、1年53%、2年92%、7logcopies/ml以上群では6か月12%、1年15%、2年33%であり、HBV DNA量の多い群では少ない群に比べて抗ウイルス効果が低率でした(図2)。ALT値が40IU/ml未満となる割合は、3か月49%、6か月73%、1年74%、2年67%であり、6か月目以降上昇を認めず、HBe抗原の状態で有意差を認めませんでした。

    以上のように、ラミブジン耐性例に対するアデホビル併用療法では、HBV DNA抑制症例の割合は2年後まで増加を認めましたが、HBe抗原陽性例、高ウイルス量例では低率でした。また、HBV DNA量が多い群では、ADV投与による抗ウイルス効果が低い可能性があり、ラミブジン耐性ウイルスが多くなる前にADV投与を始めた方が良いものと考えられます。

    ADV投与後のHBV DNA
    (A;HBe抗原の有無別、B;HBe抗原陽性におけるHBV DNA量別、
    C;HBe抗原陰性におけるHBV DNA量別)

    ADV投与後のHBV DNA


    2)新規導入におけるエンテカビル投与症例について

    2006年9月より、B型慢性肝疾患に対しエンテカビル(ETV)投与が施行されています。そこで、Osaka Liver Forumでは、エンテカビルを導入し3ヶ月以上経過した116例を対象として、その治療効果を検討しました。 ETV開始後のHBV DNA<2.6logcopies/mlとなる割合は、HBe抗原陽性症例では、6か月55%、1年73%、HBe抗原陰性症例では、6か月85%、1年100%であり、まだ観察は短期間ですが、良好な治療成績が得られていました(図3)。また、6ヶ月目にHBV DNA<2.6logcopies/mlとなりやすい症例は、HBe抗原陰性、治療開始時ウイルス量が少ない症例でした。

    ETV投与後のHBV DNA量の推移(新規導入例)
    ETV投与後のHBV DNA量の推移(新規導入例)


    3)ラミブジンからエンテカビル投与に切り替えた症例について

    現在、Osaka Liver Forumでラミブジン(LAM)からエンテカビル(ETV)に切り替えた52症例の中で、HBV DNA<2.6 logcopies/mlでETVに切替えた35例(LAM投与 3年未満30例、3年以上5例)では、観察期間内(3−17ヶ月)にウイルスの再増殖は認めませんでした。しかし、LAM耐性変異のないLAM不応例(LAM2年投与、HBV DNA7.6log<)の1例からETV耐性ウイルスが検出されています。この投与方法については、今後さらに症例を集積し、検討することが必要と考えられます。

C型肝炎の患者さま向け
  1. C型肝炎とは
  2. C型肝炎ウイルス保有者(HCVキャリア)は、全世界で1億7000万人から2億人、わが国でも約200万人(全人口の1〜2%)と推定されています。HCVは主に血液を介して感染しますが、一旦HCVに感染すると、15〜150日の潜伏期間の後、急性肝炎が起こります。急性肝炎は自覚症状のないままに治癒することもありますが、60〜80%ではウイルスキャリア状態が持続し、慢性肝炎(ALT上昇を伴う)や無症候性キャリア(ALT正常)に移行します。肝炎が起こって肝細胞が壊されると、壊された肝細胞の再生が起こりますが、炎症が持続する慢性肝炎の状態では肝細胞が再生してもどんどん破壊されてしまい、破壊と再生が繰り返されるうちに肝臓の線維化が進んでいきます。慢性肝炎の進行度は線維化の程度によってF1〜F3に分けられ、さらに線維化が進行すると、肝臓が硬くなって徐々に肝臓の機能が失われる肝硬変(F4)となります。肝硬変からは年率6〜8%に肝細胞癌が発生します。

    C型慢性肝炎の自然経過
    C型慢性肝炎の自然経過


  3. C型肝炎の診断
  4. C型肝炎の診断は、主に血液検査で行います。肝機能の異常を示すトランスアミナーゼ(AST、ALT)などに加え、ウイルスマーカー検査でC型肝炎ウイルスの感染の有無を調べます。HCV抗体陽性の結果が得られた場合、現在もHCVに感染しているかどうかを調べるためにHCV RNA検査を行います。現在もHCVに感染していることが確定すると、ウイルスの遺伝子型やHCV RNA定量検査を行います。その他、線維化マーカーなども測定し、肝線維化の程度の参考とします。また、肝組織検査は肝組織の炎症と線維化の程度を正確に知るために必要であり、治療方針を決定するためにも積極的に肝生検を行います。また、肝細胞癌を合併しているかどうかを血中腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-U)の測定や、画像検査(超音波検査、CT、MRIなど)で調べます。


  5. C型肝炎の治療
  6. C型肝炎の治療は、ウイルスを排除して肝炎を治癒させることを第一目標に行います。ウイルスを排除するためには、インターフェロンを中心とした抗ウイルス療法が選択されます。C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法は飛躍的に進歩しており、インターフェロン単剤での治療から、現在では長時間作用型のペグインターフェロンにリバビリンを組み合わせる治療法が中心となり、難治群と言われる遺伝子型1型高ウイルス量群においても約半数(48週投与)、その他の群では約90%(24週投与)にウイルスの排除が得られるようになりました。抗ウイルス療法の治療対象には、肝機能異常を認める慢性肝炎例は基本的に全てが対象となりますが、抗ウイルス療法の治療効果が期待できるかどうかを、治療前、あるいはウイルスの減少率など治療への反応性を見ながら判断し、また副作用などを考慮して、それぞれの患者さんに合わせた治療方針を立て、治療を行っていきます。

    抗ウイルス療法が副作用のために施行できない、あるいはインターフェロン・リバビリン併用療法によってもウイルスが排除されなかった場合は、肝炎の進行を抑えて肝癌の発生を防ぐための治療を行います。トランスアミナーゼの沈静化を期待して少量のインターフェロンを長期に投与したり、強力ネオミノファーゲンC、ウルソデオキシコール酸などで治療を行います。これらの治療で効果が不十分であれば、瀉血療法なども行います。

    大阪大学では、大阪大学と大阪府下の主要病院から構成されるOsaka Liver Forumにおいて、C型肝炎に対するインターフェロン治療成績をまとめ、一般臨床でのC型肝炎患者さんの治療に役立てるように様々な臨床研究を行っています。インターフェロン単独療法では、治療期間を長期に延長することによって、治療後にウイルスが再び現れる率(ウイルス再燃率)を低下させ、最終的にウイルス排除率が向上することを報告しました。また、インターフェロン治療を受けた患者さんを長期に経過観察することによって、インターフェロン治療で治療効果が得られた患者さんでは肝細胞癌の発生リスクが低下することや、生命予後も改善することも報告しています。つまり、インターフェロン治療によってウイルスが排除された例だけでなく、治療後にウイルスが再燃する例においても発癌率の低下が認められること(未治療例と比べて、発癌が平均4-5年遅くなる)や、インターフェロン治療を受けた例では未治療例に比べて肝臓病による死亡が改善されることを明らかにしました。

    インターフェロン/リバビリン併用療法においても、同様に治療期間を延長することによりウイルス排除率が向上することを報告し、わが国のC型慢性肝炎の特徴でもある、高齢者C型慢性肝炎治療の実際についても報告しました。さらに、リバビリンを組み合わせることにより貧血が副作用として生じますが、貧血により治療を中断する例が少なくないことから、このような重度の貧血例を少なくし、安全に治療を行う投与法の必要性を考え、治療開始後早期(2週間)のヘモグロビン減少が重度の貧血の予測因子となることを明らかにしました。現在、治療開始後2週間のヘモグロビン減少により、早期にリバビリンの投与量を調節する投与方法(2by2 rule)を提唱し、その有用性を確認するために、ペグインターフェロン/リバビリン併用療法において前向きな研究を行っています。

    わが国でも、2004年10月よりC型慢性肝炎に対するペグインターフェロン/リバビリン併用療法が保険適応となり、多くの症例に投与が行われています。大阪大学では、Osaka Liver Forumにおいて、保険認可直後より約3500症例を蓄積し、国内最大規模の治療成績について検討しています。

    2009年2月現在、Osaka Liver Forumで治療成績が判定可能である遺伝子型1型高ウイルス量症例の解析では、ウイルス排除率は48%、副作用中止率は16%であり、従来の治療法と比べて良好な治療成績であり、治療効果には年齢や血小板数、肝線維化の進展度などが関係することがわかってきました。また、ウイルス排除率はウイルス陰性化時期により異なり、治療開始12週までに陰性化が得られるEVR(Early virologic response)例では80%にウイルス排除が得られる一方、治療開始13週以降24週までに陰性化が得られるLVR(Late viroligic response)例では、35%のウイルス排除にとどまることがわかっています。治療効果にはペグインターフェロンやリバビリンの投与量が関係しており、EVRとなるためには、最初の12週間のペグインターフェロンの投与量が重要(目標1.2μg/kg以上)で、治療後にウイルスが再陽性化するのを防ぐためには、全期間を通じてのリバビリンの投与量が重要(目標12mg/kg以上)であることがわかってきました。さらに、ウイルス陰性化の遅いLVR例では72週の長期投与により、48週投与と比較して良好なウイルス排除が得られること(ウイルス排除率:60%)や、48週投与では治療効果が十分得られない高齢者、肝線維化進展例においても治療効果が向上することなどもわかってきています。今後も、治療効果を向上させるべく、難治例の特徴やその対策など、C型慢性肝炎患者さんの治療成績を向上させる新たな情報を発信するために、詳細な検討を加えていく予定となっています(詳しくは、肝疾患臨床研究グループのページへ)

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