患者の皆様へ・診療案内・診療内容

1.スタッフ

科長(兼)教授  竹原 徹郎
その他、准教授3名(うち兼任2名)、講師1名、学部講師3名、助教10名(うち兼任5名、特任2名)、医員8名
当該診療科は、2005年6月に旧1~3内の消化器グループが統合して生まれた新規講座「消化器内科学」のメンバーより構成されています。(2012年7月現在)

2.診療方針

 胃腸疾患ならびに肝胆膵疾患をはじめとし広く消化器疾患を診療対象にし、高度先進医療の実践を目標にしています。 また、極めて質の高い医療技術を基盤とし、患者さまやご家族の考えを尊重する全人的な医療を心掛けています。

3.診療体制

  1. 外来診察:内科東外来にて月曜から金曜日の午前、午後に5診察室(1診一5診)で、週延べ24名の消化器内科医が行っています。  (詳しくは、担当医表のページへ)。

  2. 病棟業務:病棟体制は3~6名の研修医に対し11名のジュニアライターがマンツーマンで指導する 主治医制をとり、さらに5名のシニアライターと病棟医長の計17名の病棟スタッフによる万全の診療体制を布いています。

  3. 検査スケジュール (詳しくは、検査スケジュール表のページへ)。

  4. 回診、カンファレンス (詳しくは、回診、カンファレンス表のページへ)。

4.疾患別患者数・検査/治療件数


  1. 外来診療
    •  平成16年度の外来患者延べ人数は新患1,320名、再来43,175名、合計44,495名にのぼります。主な疾患の内訳は表2の通りです。 その他には消化管悪性リンパ腫、消化管間葉系腫瘍、漏出性胃腸症、腸管ベーチェット、腸管アミロイドーシス、感染性下痢、 慢性膵炎、膵癌、ウイルソン病、へモクロマトーシス、先天性肝線維症等が含まれており、幅広い消化器疾患の診療を行っています。

  2. 入院診療
    •  平成19年度に延べ831名の患者さまが入院治療を受けられています(表1)。C型慢性肝炎症例の殆どに インターフェロン療法を行っています。その他には食道静脈癌、消化管間葉系腫瘍、偽膜性腸炎、 劇症肝炎、ウイルソン病、Budd Chiari症候群、肝カルチノイドなどが含まれています。

  3. 検査・治療件数
    •  平成19年度に消化器内科として施行した主な検査・治療件数を表6に挙げています。 この他に内視鏡的緊急止血術、食堂狭窄バルーン拡張術、内視鏡的総胆管結石除去術など幅広い診療を行っています。

  4. 先進的医療
    •  C型慢性肝炎に対する新しいインターフェロンおよび抗ウイルス剤、B型慢性肝炎に対する新しい抗ウイルス剤、 消化管間葉系腫瘍に対する分子標的療法、進行膵癌に対する放射線化学療法、炎症性腸疾患に対する分子標的 療法(レミケード)、潰瘍性大腸炎に対する免疫抑制療法などの臨床試験を行っています。進行胃癌、大腸癌、膵癌 などの消化器癌は切除不能の場合の予後はきわめて悪く、化学療法による治療成績の改善が期待されています。特に、 予後不良の膵臓癌に関してはゲムザールに加えティーエスワンを用いた新たな併用療法の検討中です。
       進行胃癌、大腸癌に対する樹状細胞ワクチン療法が2008年4月に厚労省先進医療に承認され、2008年6月時点で4例の治療を 終了しています。消化器癌に対する樹状細胞ワクチン療法の有効性を検証するべく、治療を継続していきます。

5.治療方針・成績

  1. 肝、胆道系疾患
    • 1)ウイルス性肝炎
         B型慢性肝炎に対しては、核酸アナログ治療とインターフェロン(IFN)治療が中心です。核酸アナログはHBVが増殖する経路を阻害することにより、IFNはHBVが感染した肝細胞を直接攻撃することにより、抗ウイルス効果を発揮します。核酸アナログでは、エンテカビルが第一選択です。IFN治療では、ペグインターフェロン(Peg-IFN)の48週投与を行います。また、抗ウイルス療法ができない症例の場合は、活動性肝炎の抑制を目指した肝庇護療法として、ウルソデオキシコール酸やグリチルリチン製剤を投与します。
         C型慢性肝炎に対しては、テラプレビル/Peg-IFN/リバビリン併用療法、Peg-IFN/リバビリン併用療法が中心です。テラプレビル/Peg-IFN/リバビリン併用療法はGenotype1型症例のみ保険適応があり、テラプレビル/Peg-IFN/リバビリン12週投与ののち、Peg-IFN/リバビリン12週投与(合計24週投与)を行います。Peg-IFN/リバビリン併用療法の治療方針は、画一の治療ではなく、Genotypeやウイルス量、治療の反応性に応じて行っています。Genotype1型高ウイルス量症例では、48週投与が標準的ですが、ウイルス陰性化時期によって治療期間を変更しています。治療開始後12週でHCV RNAが陰性化した症例は予定通り48週投与とし、12週~36週でウイルス陰性化した症例では72週の長期投与を行っています。逆に36週でHCVRNAが陰性化しなければ治療を中止します。一方、Genotype1型高ウイルス量以外の症例では、24週で投与終了としています。また、初回投与の低ウイルス症例にはリバビリン併用療法の保険適応がなく、IFN単独療法となりますが、このうち、治療開始後8週以降にウイルスが陰性化した場合は、24週投与で治療終了すると、ウイルスが再燃する症例が多いため、可能な限り、IFN長期投与を行います。逆に、治療開始8週の時点でウイルスが陰性化せず、また副作用などの理由で24週を超える長期投与が困難な場合には、この時点で治療中止とし、Peg-IFN/リバビリン併用(Genotype1型症例にはテラプレビル/Peg-IFN/リバビリン併用)による再治療を考慮しています。 C型肝硬変に対しては、Peg-IFN/リバビリン併用療法(Genorypeに関係なく48週投与)、Peg-IFN少量長期投与などを行います。また、IFN療法が無効あるいは副作用でできない場合、肝庇護療法としてウルソデオキシコール酸やグリチルリチン製剤を投与し、これらの薬剤でもALTの改善が得られない場合には瀉血療法を行っています。今後、Peg-IFN/リバビリン併用療法に第二世代のNS3プロテアーゼ阻害剤の併用や、IFNを用いない、NS3 プロテアーゼ阻害剤とNA5A 阻害剤などの新薬との併用がなされる予定です。

    C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法の治療指針

    [Genotype1型高ウイルス量]

    graph
    (2013年2月6日更新)

      2)肝細胞癌
         当院では肝がんの症例は入院前に、消化器内科、消化器外科、放射線科の専門医よりなるcancer boardにて一例ずつ検討し、手術、局所治療、IVR、放射線量療法等の治療方針を決定しています。消化器内科病棟での治療は肝動脈塞栓術、動注化学療法、ラジオ波焼灼術(RFA)が中心となりますが、特にRFAに関しては積極的に行っており、経皮的にエコーガイド下に施行困難な症例でも、人工胸水・腹水下、CTガイド下、腹腔鏡下あるいは術中にて、安全に施行しています。また国内で利用できるRFA焼灼装置をすべて利用でき、局在や大きさにより使い分けているが、5cm大の腫瘍に対しても焼灼可能です。進行肝癌に対してもLow dose FPや5-FU+インターフェロンなどの動注化学療法を積極的に行っています。

    当院での肝細胞癌症例の5年生存率 (1993年9月~2003年7月) は、TNM Stage I期90.0%、II期 53.2%、III期 42.2%であり、 JIS scoreでは 0点87.7%、1点65.4%、2点52.2%、3点24.3%です。

      3)劇症肝炎
         当院では劇症肝炎やLOHFの患者様は、消化器内科、消化器外科、小児外科、麻酔科、感染制御部、高度救命センターの専門医からなる劇症肝炎ワーキングにて治療方針を決定し、高度救命センターにて全身管理をしながら、抗ウイルス療法、ステロイドパルス療法。血漿交換、持続的血液濾過透析など集学的な治療を行っています。また、肝臓移植の適応がある場合、いつでも行えるように入院当初より並行して準備を行い、内科的な治療で救命困難な場合、直ちに消化器外科にて肝臓移植を施行しています。

  2. 消化管、膵疾患
    • 1)食道癌
         StageIの表在食道癌を中心に治療を行っています。Stage Iaで内視鏡治療の適応症例には粘膜下層切開剥離術(ESD)を積極的に行っています。ESDが不可能なStageI症例に対しては消化器外科とカンファレンスの上、根治的化学放射線療法も選択しとして治療をしています。

    治療成績は、StageIa食道癌に対するESDの治癒切除率は90%、StageI症例に対する根治的化学放射線療法の1年生存率100%、1年無再発率90.5%です

      2)胃癌
         当科における胃癌の治療は日本胃癌学会が発行している“胃癌治療ガイドライン”(以下ガイドラインhttp://www.jgca.jp/guideline.html)に沿って行っています。治療の原則は、胃癌の進行度、発生部位、そして患者さまの状態により異なり、胃癌の根治性と患者さまのQOLを考慮して集学的に決定しています。
         主な治療法として、内視鏡治療、手術療法、化学療法あるいはその組み合わせが患者さまの病状により選択されます。
         一定の条件を満たす早期胃癌は内視鏡的切除により根治可能です。当科ではガイドラインにおける適応例に切開剥離法を用いた内視鏡的粘膜切除術(ESD)を積極に行っています。また内視鏡検査における生検のみで前癌病変と診断された症例に対しても、カンファレンスを行い治療的診断が必要とされた症例に対しては積極的にESDを行っています。
         手術適応から外れる進行胃癌に対しては、ティーエスワンとシスプラチンを併用した化学療法を中心に患者様の病態に応じた化学療法薬を選択し、QOLを損なわない範囲での治療をしています。(原則治療導入は入院にて開始します)。また症例によっては当院消化器外科とカンファレンスを行い、化学療法を行い効果の認められた場合、追加治療として手術も視野にいれて治療を行っております。

    治療成績は早期胃癌に対するESDの治癒切除率96%、進行胃癌に対する化学療法(ティーエスワン・シスプラチン併用療法) の奏功率52%、生存期間中央値は14ヶ月です。


      3)大腸癌
         当科では、外来において大腸内視鏡検査で精査を行い、大腸ポリープ、早期大腸癌で内視鏡的に切除が可能なものは原則的に短期間入院の上治療を行います。内視鏡的治療困難な腫瘍や、進行大腸癌と診断された腫瘍は消化器外科と連携の上治療を行っています。また、切除不能・転移大腸癌、再発大腸癌に関しては大腸癌治療ガイドラインに基づいた化学療法を施行しています。大腸癌は他の部位の消化器癌と比較して進行癌であっても適切な抗癌剤治療を行うことにより比較的良好な治療成績が得られる癌ですから、病変が疑われた場合は速やかに医療機関を受診することが大切です。
         また手術や化学療法の適応とならない進行大腸癌症例に対しては、適応基準を満たした場合、樹状細胞ワクチン療法(先進医療に承認済み)を行っています。

      4)膵癌
         膵癌は我が国では死亡率第5位の癌であり、患者数は年々増加傾向しています。自覚症状は早期には無症状のことが多く、進行すると腹痛、背部痛、黄疸などが出現します。疫学的には膵癌は喫煙者や糖尿病、慢性膵炎患者に発生しやすい傾向があるとされますが、膵癌のハイリスク群の絞り込みは困難で、診断機器の進歩にもかかわらず比較的早期に発見される場合は膵癌全体の10%にも満たないのが現状です。また、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)や粘液性嚢胞腫瘍(MCN)などの膵嚢胞性腫瘍は検診などで発見される機会が増えています。膵癌や膵嚢胞性腫瘍の診断は腹部超音波検査やCT、MRI、PET、ERCPにて行っています。治療方針は消化器内科、消化器外科の合同カンファレンスで膵癌治療ガイドラインやIPMN/MCN国際診療ガイドラインに沿って決定します。膵癌やMCNは切除可能な場合は膵切除を原則とします。IPMNは嚢胞のサイズなどを基準に手術適応を決定します。発見時すでに浸潤や遠隔転移があり切除不能な場合には放射線や化学療法を組み合わせた集学的治療を行います。放射線治療中や抗癌剤投与の初期は入院での治療が必要ですが、その後は外来で抗癌剤治療を行っています。また、疼痛コントロールなどに関しても緩和医療チームと積極的にカンファレンスを行いQOLを損なわず治療が継続できるように取り組んでいます。現在、膵癌に対する標準化学療法はゲムシタビンとされていますが、新たに認可されたティーエスワンを用いた併用療法を確立するため臨床研究を予定しています。

    膵臓癌に対する化学療法の治療成績は奏功率22%、平均生存期間中央値12ヶ月です。

      5)消化管間葉系腫瘍
         消化管間葉系腫瘍は主に消化管の平滑筋層から発生する粘膜下腫瘍です。腫瘍細胞の形が平滑筋細胞と類似しているため以前は平滑筋に由来する腫瘍と考えられていましたが、我々大阪大学の研究により、消化管間葉系腫瘍は平滑筋の間に存在するカハール介在細胞に由来し、消化管間葉系腫瘍の発生にc-kitと呼ばれる遺伝子の異常が深く関係することが明らかになりました。消化管間葉系腫瘍は消化管出血の原因として発見されることがありますが、胃では検診で比較的小さな間に発見されることが多く、小腸や大腸では腫瘍が大きくなって触れることから発見されることが多いとされています。比較的小さな消化管間葉系腫瘍は腫瘍の増大の有無を定期的に経過観察しますが、5cmを超える大きな腫瘍や急速に増大する腫瘍は手術で切除します。転移を伴って切除できない場合は、c-kit遺伝子に異常を持つ消化管間葉系腫瘍に有効な分子標的治療薬(商品名:グリベック)が用いられます。グリベックは2005年6月より認可され、その後の治療成績は著しく改善しました。私たちは超音波内視鏡下穿刺生検により消化管間葉系腫瘍の組織を採取し、グリベックの有効性を予測するためc-kit遺伝子の遺伝子解析を行っています。また、当院ではグリベックに続く新しい分子標的治療薬(商品名:スーテント)の治験も行い、多くの治療経験を有しています。

      6)炎症性腸疾患
         炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)は下痢、腹痛、血便などを主訴とする原因不明の腸の慢性疾患で、厚生労働省指定の特定疾患(難病)です。欧米に多い病気と考えられていましたが、近年日本でも罹患される患者さんの数が急速に増加してきました。発症年齢が若い患者さんが多く、病状によっては入退院を繰り返し、手術が必要になることもあり、根本的治療法が存在しないことから現在でも大きな問題点を抱えています。当院では、潰瘍性大腸炎の患者さまには5-ASA製剤であるペンタサ、サラゾピリンに加え、炎症増悪期にはステロイド剤の投与を行います。また、ステロイド抵抗性の方やステロイドの副作用を軽減する必要のある方には、白血球除去療法(遠心分離法、L-CAP、G-CAP)も積極的に行っています。
         クローン病では、食事内に含まれる脂肪分などの食餌抗原により増悪すると考えられており、5-ASA製剤の他に、エレンタールなどの経腸療法が効果的です。また、ステロイド剤や免疫抑制剤の他に、2002年5月より抗TNFα抗体(商品名:レミケード)が認可され、当科では積極的にこれを用いて高い治療成果を上げており、患者さまの生活の質(Quality of life)を改善することにも配慮しています。また症例によっては、患者さまの同意を得た上で治験薬の投与など新しい治療法の開発にも取り組んでいます。クローン病に対しては世界に先駆けて抗IL-6受容体抗体療法の治験も行い、良好な治療成績を報告しました。今後も炎症性腸疾患の患者さまに対し、最先端の治療を行っていきたいと考えています。

6.その他

日本消化器病学会認定医制度認定施設
指導医 9名、専門医 41名
日本消化器内視鏡学会指導施設
指導医 9名、認定専門医 36名
目本肝臓学会認定施設
指導医 8名、専門医 32名
(2012年6月時点)