肝臓研究室・肝再生・肝代謝グループ

私たちの研究グループは、以下のテーマを中心に研究を進めています。

肝におけるadiponectinを中心としたアディポサイトカインの作用と脂質代謝の解析

 肥満は非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis; NASH)、アルコール性肝障害、C型慢性肝炎、肝細胞癌など慢性肝疾患進行の独立した危険因子であることが疫学的に明らかとなっています。脂肪組織から分泌される生理活性物質は「アディポサイトカイン」と総称され、現在レプチン、アディポネクチン、tumor necrosis factor-α(TNF-α)、アンギオテンシノーゲン、レジスチンなどが知られています。アディポサイトカインの多くが肥満とともにその血中濃度が上昇するのに対し、血中アディポネクチン濃度は肥満度と逆相関することが最大の特徴です。肥満者におけるこのアディポネクチンの低下が慢性肝疾患増悪に寄与しているのではないかと考えられます。

アディポネクチンの肝疾患への作用


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 脂肪組織から分泌され、血中に豊富に存在するアディポネクチンは肝臓に発現するアディポネクチン受容体を介して肝臓を構成する様々な細胞に作用します。肝細胞における新規脂肪合成を抑制し、脂肪酸β酸化を促進します。また筋肉に作用することでインスリン感受性を改善し、脂肪酸β酸化を亢進させることで血中脂肪酸を低下させます。これらにより脂肪肝の改善を促進します。肝臓のマクロファージであるクッパー細胞に働き、炎症性サイトカインであるTNF-α産生を抑制することで肝障害を軽減します。さらには肝線維化の中心的役割を果たす活性化した肝星細胞からのTGF-β1産生を抑制することで肝線維化をも抑制します(図)。これらの作用により脂肪肝、肝臓の炎症、肝線維化を抑制することで様々な慢性肝疾患の改善作用を有しているものと考えられます。現在肝疾患に対するアディポネクチンの作用に関して、基礎的、臨床的研究を進めています。

  1. Kamada Y, Matsumoto H, Tamura S, et al. Hypoadiponectinemia accelerates hepatic tumor formation in a nonalcoholic steatohepatitis mouse model. J Hepatol 2007;47:556-64
  2. Tamura S, Shimomura I. Conrtibution of adipose tissue and de novo lipogenesisis to nonalcoholic fatty liver. J Clin. Invest 115. 1139-1142. 2005
  3. Kamada Y, Tamura S, Kiso S, et al. Enhanced carbon tetrachloride-induced liver fibrosis in mice lacking adiponectin. Gastroenterology 125(6):1796-807. 2003
  4. Fukushima J, Kamada K, Matsumoto H, et al. Adiponectin prevents progression of steatohepatitis in mice by regulating oxidative stress and Kupffer cell phenotype polarization. Hepatol Res, 2009 in press.