大阪大学肝疾患臨床研究グループでは、大阪大学と大阪府下の主要病院から構成されるOsaka Liver Forumにおいて、肝細胞癌の治療成績をまとめ、一般臨床での肝細胞癌患者さんの治療に役立てるように様々な臨床研究を行っています。慢性ウイルス性肝炎の患者さんでは、抗ウイルス治療による肝細胞癌の発癌抑制効果について検討しています。C型肝炎では、インターフェロン治療を受けたC型慢性肝炎患者さんを長期に経過観察することによって、インターフェロン治療で治療効果が得られた患者さんでは肝細胞癌の発生リスクが低下することや、生命予後が改善することを報告しています(1-3)。また、ALT正常(40IU/L以下)のC型慢性肝炎患者さんに対するペグインターフェロン/リバビリン併用療法により、血小板値が15万未満の患者さんでは肝細胞癌の発生リスクが低下することを報告しています(4)。また、B型肝炎では、ラミブジン治療を受けたB型慢性肝炎患者さんを長期に経過観察することによって、HBVのウイルス量の中央値が4logcopies/mL未満に維持された患者さんでは、肝細胞癌の発生リスクが低下すること、特に肝硬変の患者さんで顕著であったことを報告しました(図1)(5)。肝癌治癒後の患者さんでは、肝細胞癌治癒後の抗ウイルス治療による肝細胞癌の再発抑制効果について検討しています。肝細胞癌に対し手術、局所療法を行った後にペグインターフェロン/リバビリン併用療法を行ったC型肝炎患者さんでは、治療効果が得られた患者さんで肝細胞癌の再発リスクが低下することを報告しています(図2)。
 今後も、肝細胞癌の治療成績を検討し、治療効果を向上させる方策など、肝細胞癌患者さんの治療成績を向上させる新たな情報を発信するために、詳細な検討を加えていく予定となっています。

図1. B型慢性肝炎に対するラミブジン治療におけるMVR(*)と発癌率
A. 全症例 B. 慢性肝炎 C. 肝硬変
((*) MVR:ラミブジン投与中のウイルス量の中央値が4logcopies/mL未満に維持されたウイルス反応が良好な症例)


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図2. 肝癌癌治癒後C型慢性肝炎に対するペグインターフェロン/リバビリン併用療法におけるSVR例とnon-SVR例の発癌率
(SVR;ウイルスが排除された症例、Non-SVR;ウイルスが排除されなかった症例)


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  1. Kasahara A, Hayashi N, Hiramatsu N, et al. Ability of prolonged interferon treatment to suppress relapse after cessation of therapy in patients with chronic hepatitis C: a multicenter randomized controlled trial. Hepatology. 1995;21(2):291-7.
  2. Kasahara A, Hayashi N, Mochizuki K, et al. Risk factors for hepatocellular carcinoma and its incidence after interferon treatment in patients with chronic hepatitis C. Osaka Liver Disease Study Group. Hepatology. 1998;27(5):1394-402.
  3. Kasahara A, Tanaka H, Okanoue T, et al. Interferon treatment improves survival in chronic hepatitis C patients showing biochemical as well as virological responses by preventing liver-related death. J Viral Hepat. 2004 Mar;11(2):148-56.
  4. Kurokawa M, Hiramatsu N, Oze T, et al. Effect of interferon alpha-2b plus ribavirin therapy on incidence of hepatocellular carcinoma in patients with chronic hepatitis. Hepatol Res. 2009;39:432-438.
  5. Harada N, Hiramatsu N, Oze T, et al. Incidence of hepatocellular carcinoma in HCV-infected patients with normal alanine aminotransferase levels categorized by Japanese treatment guidelines. J Gastroenterol.; in press.
  6. Kurokawa M, Hiramatsu N, Oze T, et al. Long-term effect of lamivudine treatment on the incidence of hepatocellular carcinoma in patients with hepatitis B virus infection. J Gastroenterol. 2012;47(5):577-85.
(2013年2月6日更新)