消化管研究室・炎症性腸疾患グループ

 潰瘍性大腸炎、クローン病に代表される炎症性腸疾患は、難治性で未だに原因不明の腸管に障害をきたす疾患です。私たちのグループでは、以下のテーマを中心に臨床・基礎研究を進めています。



免疫寛容誘導による炎症性腸疾患の治療法の開発


 私たちの体には、体と接触する多数の抗原に対して過剰に免疫反応を起こさない仕組みが備わっています。この免疫寛容というシステムがありますが、長期間、ある程度の量の抗原に暴露されていると、多くの場合に抗原に対して過剰に反応しなくなることが知られ、これを免疫寛容と呼んでいます。健康な腸では通常の食事性抗原や正常な腸内細菌に対する免疫寛容が維持されていますが、炎症性腸疾患患者においては免疫寛容が破綻していると考えられています(図)。免疫寛容の誘導に、Gene Related to Anergy in Lymphocytes (GRAIL)などのユビキチン・リガーゼが重要な役割を果たしていることが報告されています。私たちは、潰瘍性大腸炎患者さんのうち寛解状態を保っている患者さんにおいてこれらのユビキチン・リガーゼの発現が高いことを報告し、病態との関連が認められることを報告しました(1)。現在、クローン病を含めた炎症性腸疾患における病態との関連、マウスの炎症性腸疾患モデルを用いた検討をつづけており、新しい免疫寛容誘導というコンセプトに基づく炎症性腸疾患治療法の開発を目指しています。
 さらに、免疫寛容の誘導には腸管免疫誘導組織であるパイエル板の制御が重要であると考えられます。パイエル板内にはAlcaligenes属の菌種が共生していますが(2)、ヒトのパイエル板の解析や動物モデルを用いた検討によりさらにパイエル板を含めた粘膜免疫系と腸管炎症の関わりについて解明を進めています。

免疫寛容の破綻が炎症性腸疾患(IBD)の成立に重要である


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  1. Egawa, S., et al. Upregulation of GRAIL is Associated with Remission of Ulcerative Colitis. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 2008; 295(1): G163-G169.
  2. Obata T, et al. Indigenous opportunistic bacteria inhabit mammalian gut-associated lymphoid tissues and share a mucosal antibody-mediated symbiosis. Proc Natl Acad Sci U S A. 2010; 107(16): 7419-24.
(2012年11月23日更新)