消化管研究室・炎症性腸疾患グループ

 潰瘍性大腸炎、クローン病に代表される炎症性腸疾患は、多数の研究者による長年の検討にもかかわらず、未だに原因不明で、難治性の疾患です。私たちのグループでは、以下のテーマを中心に研究を進めています。



獲得免疫系の異常による炎症性腸疾患の誘導


 腸の表面積はテニスコート1.5面分もあると言われ、腸管粘膜固有層には多数の免疫担当細胞が存在しています。腸炎は粘膜免疫のバランスが崩れることにより発症すると考えられていますが、私たちは、T細胞レセプターα鎖欠損マウスにおいてサイトカイン異常が誘導され、ヒトの炎症性腸疾患類似の腸炎を発症することを報告しました(1, 2)。マウスの腸炎を抑制する方法はいくつか報告されていますが、私たちはCEAファミリーの糖蛋白であるCEACAM1という免疫分子に対する抗体の投与によりマウスの実験腸炎が抑制できることを明らかにしました(3)(図)。さらに抗CEACAM1抗体の抑制機序としてTh1型サイトカインの抑制が関与していることがわかりました。これらの結果により獲得免疫系のT細胞の制御により炎症性腸疾患の新たな治療法が開発できる可能性が示唆されます。現在、次項の免疫寛容誘導へのCEACAM1の関与についても解析を進めています。

抗CEACAM1抗体投与によるマウス炎症性腸疾患の抑制


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  1. Iijima, H., I. Takahashi, D. Kishi, et al. Alteration of interleukin 4 production results in the inhibition of T helper type 2 cell-dominated inflammatory bowel disease in T cell receptor alpha chain-deficient mice. J Exp Med 190:607-615. 1999.
  2. Okuda, Y., I. Takahashi, J.K. Kim, et al. Development of colitis in signal transducers and activators of transcription 6-deficient T-cell receptor alpha-deficient mice: a potential role of signal transducers and activators of transcription 6-independent interleukin-4 signaling for the generation of Th2-biased pathological CD4+ betabetaT cells. Am J Pathol 162:263-271. 2003.
  3. Iijima, H., M.F. Neurath, T. Nagaishi, et al. Specific Regulation of T Helper Cell 1-mediated Murine Colitis by CEACAM1. J Exp Med 199:471-482. 2004.