
壊れた細胞や臓器を再生させる薬、
肝細胞増殖因子(HGF)の臨床応用が、今春から始まる見通しとなりました。HGFはその名前の通り、最初は肝臓の細胞の増殖因子として1980年代に大阪大学にて発見されましたが、その後、肝細胞以外の種々の細胞あるいは臓器に作用があることがわかってきました。HGFの臨床応用は、重症の肝臓、心臓、血管、腎臓、消化器、肺、神経、筋などの病気が対象になっていくと我々は考えています。
その中でも研究が最も進んでいるのは、血管あるいは心臓の動脈硬化性疾患です。HGFには血管を強力に再生させる作用があり、従って、動脈硬化による虚血性疾患に対する効果が期待されています。虚血性疾患とは、主に血管の動脈硬化のため、十分な血液の供給が保たれず、臓器にダメージが与えられる病気で、具体的には閉塞性動脈硬化症、バージャー病(これは動脈硬化性疾患ではありませんが、やはり血流不足により引き起こされる病気です。)、狭心症、心筋梗塞などです。
今春からはまず、閉塞性動脈硬化症、バージャー病に対してHGF遺伝子を用いた遺伝子治療が行われようとしています。
また、血管の病気に対しては、HGF以外にも
おとり型核酸医薬(デコイ)というものを用いた治療も我々は行っています。現在、行っているのは、デコイを用いた風船療法後の再狭窄予防です。閉塞性動脈硬化症、狭心症、心筋梗塞の患者さんに対しては、狭くなったあるいは閉塞した血管を風船のついたカテーテルで広げる治療法が非常にポピュラーに行われています。しかし、風船で血管を広げても、20%前後の患者さんでは、再び血管がせまくなってしまう再狭窄という現象が問題になっており、今までこれを防ぐ治療法はありませんでした。再狭窄に対しては、再度風船療法を受けるか改めてバイパス手術をするかということになり、患者さんにも身体的あるいは経済的負担がかかっていました。
再狭窄は血管の内側にある細胞の異常増殖が引き起こすと考えられていますが、我々が開発したおとり型核酸医薬は、細胞増殖を引き起こす遺伝子の活性化をおさえる働きをします。それによって再狭窄を防ぐことができるのではないかと考えています。