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| 【阪大病院産科・婦人科をご利用の患者・妊婦のみなさまへ】 |
阪大産婦人科では、産科・婦人科のすべての領域で最善の治療を提供するべく、日夜診療に励んでいます。もはや昔の帝国大学病院のような、少数の稀な病気の治療を行うだけではその病院の診療レベルは向上しません。阪大産婦人科は北米や西ヨーロッパの大学病院のような多くの患者さんを治療し、また妊婦の皆さんに安全な分娩を提供することで社会に貢献するとともに、そこから問題点を見いだし、新しい治療を開発する、という力強い組織を目指しています。そのためには安全で、安心できる医療体制の整備と、個々の医師の研鑽・能力向上が不可欠です。常に最新の情報を収集し、しかしその情報に振り回されるのではなく、患者さん個々人に最適な方針を相談しながら見いだし、検査・治療をすすめて参ります。最近、様々な分野で選ぶための付加価値は何か?という問いがなされています。私どもの最大の付加価値は、高度・安全・安心だと思っております。どうか、みなさまのご利用をお待ちしています。各分野の特徴はそれぞれの項目をご参照下さい。
| 【これから産婦人科を志す医学生・初期研修医のみなさん、大阪での勤務を希望される専門医のみなさんへ】 |
大阪大学ならびに関連病院は密接な連携と協力のもと、産婦人科医を目指す若い先生方に臨床的実力を身につけてもらうための研修プログラムを用意しております。大阪は狭い地域ですが人口も多く、産婦人科の診療レベルが非常に高い地域だと思います。私たちは常に国際標準を意識しながら日本のよいところを活かしてさらに高いレベルの医療を展開できるよう、産婦人科医療を支える産婦人科学の発展に貢献することも目指しています。まず、産婦人科に興味を持ってもらい、その上で阪大とその関連施設での研修・勤務にぜひ参加していただきたいと思っています。見学なども随時受け付けています。詳しくは産婦人科紹介の項目をご参照下さい。
大阪大学医学部附属病院の産科は昨年530件の分娩を行い、そのうち160件が帝王切開でした。約70%の妊婦のみなさまが何らかの合併症を持っておられ、大学病院ならではのあらゆる診療科との密な連携のもと、エビデンス(信頼できる根拠)に基づいた医療を提供しています。世間ではハイリスク妊婦、ローリスク妊婦という区分けがなされており、大学病院はハイリスク妊婦さんだけを担当する、という考え方が一般的です。しかし、出産などに際して、命に関わる事態が発生し、集中治療が必要となる妊婦さんの約3割はいわゆるローリスク妊婦の方です。私たちは分娩が無事終わって、出血が止まって、何事もなかったことを見届けてはじめてこの方はローリスクの方であった、とわかると考えております。多くの妊婦さんが、何が起こっても対応できる施設で分娩できる時代が来るように願っており、阪大病院ではいわゆるハイリスク妊婦さんを担当するのはもちろんのこと、一般の妊婦さんの分娩も受け入れております。
麻酔科や新生児科と常時連携して安全な母児管理を行うだけでなく、胎児疾患に対して小児外科と出生前から診断、治療を共同で行う、母体の危機的出血や、脳卒中、急性心不全などの命に関わる疾患を高度救命救急センターに収容して共同で治療を行う、妊娠糖尿病や、甲状腺疾患を専門内科と共同で治療する、など、先進的な取り組みを行い、総合周産期センターであるとともに、大阪府の最重症妊産婦受け入れ指定期間にもなっております。
高度周産期医療を提供することは必ずしも人為的な出産を意味しません。私たちは必要がない限り、浣腸やてい毛、会陰切開、吸引分娩、などの処置は行いません。しかし、いわゆる自然分娩に凝り固まることもいたしません。母体や胎児のモニターをしっかり行い、根拠がない医療介入は行わず、逆に必要であれば即座に介入ができる体制を整えてお産を見守ります。このために夜間・休日でも常時2名の産婦人科医が当直し、麻酔科にも2名の当直が、新生児科は交代制勤務で常に1名以上の医師がNICUで勤務しております。育児に関しては母児同室制を取り入れて、助産師のきめ細かなサポートで母親が不安なく退院していただけるように勤めています。母乳育児に特に力を入れており、BFH(母乳に優しい病院)の方針に準拠しています。
合併症のある方はもとより、ご高齢の方や一般の方々も含めて、ぜひ当院での出産をお考え下さい。
分娩は行わなくても胎児疾患のご心配、ご自身の持病が妊娠に対してどのような影響があるか、に対する妊娠前相談も外来でお受けしております。なるべく紹介状をお持ちの上、産婦人科外来をご受診くださいますようお願いいたします。なお、大阪府の高次周産期医療体制の役割分担上、当院では妊娠28週未満の早産は扱いません。このような場合には他院に緊急搬送となることを予めご了承下さい。なお、新生児科、NICU、助産師外来を含む診療体制については総合周産期母子医療センターホームページをご参照下さい。
特に以下のような妊婦あるいは妊娠を計画しておられる方々のご利用をお待ちしています。
- 合併症・持病(内科的・外科的・精神神経的・その他)をお持ちの妊婦さん。
- 子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮頸部の前がん病変(CIN)などが見つかった妊婦さん。
- 胎児疾患を疑われた、あるいは前回に赤ちゃんに何らかの問題があった妊婦さん。妊娠中期の超音波によるスクリーニングのみでも受け付けています。
- 心疾患、中枢神経疾患、外傷、大量出血などの救命救急を必要とされる妊婦さん(産褥期を含む)。
- 前置胎盤、低位胎盤、癒着胎盤と診断されたり、前回のお産で出血が多かった、などの分娩時に大量出血が予測される妊婦さん。
- 高齢妊娠で胎児や分娩に不安をお持ちの妊婦さん。
- 早産など前回の妊娠出産時の異常の既往をお持ちの妊婦さん。
- 現在妊娠を考えている方で、今飲んでいる薬や、持病の妊娠への影響がなどが心配な方への妊娠前相談
緊急事態の際は大阪産婦人科相互援助システム(OGCS)へ搬送依頼をしていただけましたら迅速に対応いたします。また母体救命の必要な事例は直接ご相談下さい。
婦人科がん:阪大婦人科は年間200人以上の婦人科がん患者さんの手術、放射線、抗がん剤治療を最新の国際標準治療法に則って行っています。代表的ながんの治療の治療方針と私たちの施設の特色を述べます。
- 子宮頸部上皮内病変(CIN):CIN Iは経過観察を原則としています。CIN IIに対して経過観察を原則に、場合によっては外来でレーザー治療を行います。CIN IIIには円錐切除術を行います。この場合の入院は2泊3日を原則にしています。
- 子宮頸がん:妊娠を希望されない方はI、II期に対しては広汎子宮全摘術か放射線化学同時療法を十分な両者の長所・リスクを説明の上選択していただきます。術後必要に応じて放射線化学同時療法を追加しています。妊娠を希望される方には、微小浸潤癌に対しては円錐切除術で、I期の一部早期例に対して広汎子宮頚部摘出術で子宮体部を温存することを行っています。既に30例以上の実績があり、お二人が自然妊娠・出産をされています。III、IVa期に対しては放射線化学同時療法が適応となります。従来法で再発リスクが高いグループを特定し、その方々には放射線化学同時療法の抗がん剤の種類を変更し、放射線終了後に追加化学療法を加える臨床試験を行っています。また、放射線化学同時療法終了後に腫瘍が残存した場合、積極的に手術で摘出を行っています。IVb期に対しては化学療法を中心とした治療となります。
- 子宮体がん:妊娠を希望される一部のI期患者さんにはホルモン大量療法で子宮を温存し、治癒したらすぐに排卵誘発などで不妊治療を行う方針をとっています。原則は手術療法で子宮・両側卵巣卵管に加えて患者さんの腫瘍の性格に応じてリンパ節廓清範囲を決定しています。III、IV期の進行例に対しても積極的に手術で転移病変も含めて摘出することが予後の改善につながっています。必要に応じて術後化学療法を追加し、よい治療成績を上げています。日本で一般的に行われているタキソール+カルボプラチンの2剤化学療法に対して私たちが行ってきた3剤化学療法がより有効な可能性があり、これを証明する多施設共同の臨床研究を行う予定としています。また、薬剤抵抗性の再発に対する4剤併用療法の臨床研究を行っています。
I期で子宮体癌に対する腹腔鏡下手術が高度医療に認定されました。国立大学附属病院では日本で3カ所?だけの指定であり、小さい傷で終わり、また術後の回復も早いというメリットがあります。自己負担医療費が70万円ほど通常より増えますが、一部の民間医療保険は償還してくれますので、適応のある方はぜひご検討下さい。
- 子宮肉腫:原則は子宮体癌に準じた手術ですが、転移病巣のある場合徹底した腫瘍の摘出を、消化器外科、泌尿器科、呼吸器外科などと共同で行い、強力な抗がん剤治療を行っています。
- 卵巣がん:妊娠の希望がある一部のI期の患者さんには子宮と健常側の卵巣卵管を残す手術を行います。大部分の患者さんには子宮、両側卵巣卵管、骨盤から大動脈周囲のリンパ節の廓清、大網の摘出に加えて目に見える腫瘍は外科や泌尿器科の協力を得て徹底的に摘出する、という手術方針で臨みます。その後は国際的に確立された抗がん剤治療を行います。運悪く再発された方に対しては、一部の摘出可能な方には積極的な手術+抗がん剤を、手術が困難な方には様々な抗がん剤治療を行います。プラチナ耐性のがんに対する臨床研究を行っています。
良性婦人科疾患:特にこれから妊娠を希望される女性に子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣嚢腫などが見つかった場合には手術がいいのか、経過観察や薬物療法がいいのかをよく見極めた上での治療方針を提示します。私たちのデーターや、様々な文献を元に、まず手術ありきではなく、患者さんの状況に応じた方針を考えます。経過観察となった場合は病診連携のもと、安心できる体制で見守ります。手術は筋腫核出術、子宮全摘術、卵巣に対する手術などすべての手術で内視鏡下手術の割合が増えてきました。極端に大きな筋腫や卵巣腫瘍などでは開腹になります。
今後妊娠を希望されない方に対しては、放射線科と共同で子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術(UAE)も行っています(私費診療)。
手術の待機期間が長くなってしまっておりますので、手術の内容によっては近隣の関連病院との連携下での手術をお勧めする場合があります。
生殖医療センターでは男性における問題を泌尿器科が、女性における問題を産婦人科が担当しつつ不妊症、不育症のカップルを診察しております。不妊治療に関しては、原因検索、タイミング法、排卵誘発、人工授精、体外受精・顕微授精—胚移植、凍結受精卵による保存などを行っております。特に合併症をお持ちの方、その治療中の方は病気の妊娠に与える影響や、妊娠が病気に与える影響を慎重に見極めつつ治療を進めています。
がん患者さんの治療に対し、将来の妊娠する能力を温存することが重要になってまいりました。まだ、確立された方法はありませんが、様々な可能性に対する相談を行っております。
不育症のカップルには系統的な検査による原因検索と、根拠(エビデンス)に基づいた治療を行います。
ご受診の際は今までに受けた検査や治療がありましたら、ぜひ持参していただくようお願いいたします。
| 【附属病院における医学部生などの臨床実習・研修医の研修について】 |
患者の皆様に高度医療を提供することができる阪大病院のもう一つの重要な使命が次代を担う医師の養成です。特に産科・婦人科に受診される患者さんが外来・病棟担当医以外の研修医あるいは学生がかかわることに対して、躊躇されるお気持ちはよく理解できます。しかし、教授以下すべての医師は学生時代の講義や臨床実習で産婦人科に興味を持ち、研修医時代に多くのことを患者さんから学ばせていただき、この道を選びました。昨今の産婦人科医師が足りない、という騒動も学生時代からの教育、実習を地道に行うことでしか解決ができないと思っております。次世代の医師の育成を、患者の皆様のお力添えをいただいて行う施設が大学医学部附属病院であります。次世代の医師が育たなければ我々はやがて老い、誰も産婦人科領域の患者さんを守る医師がいなくなる、という強い危機感を私たちは抱きつつ学生・研修医教育に当たっております。私たちスタッフは決して患者さんの不利益になるような行動を学生に取らせることはいたしませんし、研修医のすべての医療行為はすべて上級医の指導、監督のもとに行われます。また、複数の目を経ることにより、エラーを未然に防ぐ、という良い効果も現実に得られております。どうか、これらの点をご理解いただき、阪大病院の産科・婦人科をご利用いただきたく思います。
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大阪大学大学院医学系研究科
産科学婦人科学教室
教授 木村 正
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