好酸球が増加する疾患|大阪大学 免疫アレルギー内科

免疫疾患の診療

好酸球が増加する疾患

好酸球は、エオシンでピンク色に染まる好酸性顆粒を持ち、骨髄造血幹細胞からGM-CSF、IL-3、IL-5の刺激によって分化増殖し、血中、粘膜へ分布していく。特にIL-5の作用は好酸球に選択的に重要であり、実際、抗IL-5抗体(mepolizumab)投与により末梢血や喘息患者の喀痰中の好酸球は激減する。

血液中の好酸球は、血管内皮細胞のp-selectinを感知して血管壁を転がり(rolling)、好酸球表面のLFA-1、VLA-4を介してそれぞれ血管内皮細胞のICAM-1とVCAM-1に結合して血管壁へ接着し、血管内皮を通過する。さらに好酸球表面のケモカイン受容体CCR3を介してeotaxin、RANTES、MCP-4などの濃度勾配により病変局所へ遊走する。

好酸球はIL-5やGM-CSFなどによって活性化され、好酸球顆粒に存在するmajor basic protein(MBP)、マトリクスに存在するeosinophil cationic protein(ECP)などを放出する。これらは寄生虫障害作用を持つとともに、組織障害活性を持ち、好酸球による病態を形成する。また、好酸球からのleukotriene C4(LTC4)、LTB4、platelet activating factor(PAF)などの脂質メディエーター放出は、気道収縮や血管透過性亢進を促し病態を修飾する。

好酸球増多

好酸球の増加する疾患は、感染症、アレルギー、悪性腫瘍、原因不明のものなど多岐にわたり、自然寛解するものから重症なものまである。

好酸球数 /μl
500〜1500軽度増加
1500〜5000中等度増加
5000高度増加

好酸球数が1500/μl以上で、好酸球増多症とする。特に2000/μl以上であると臓器障害を呈しやい。国立病院機構相模原病院からの報告では、頻度順に、薬剤性、固形腫瘍、皮膚疾患、血液腫瘍、気管支喘息、好酸球性血管浮腫、Churg-Strauss症候群、好酸球性肺炎、アトピー性皮膚炎などが報告されているが、開発途上国では寄生虫感染症が最も多い。

感染症(とくに寄生虫感染症)

アニサキス症、旋毛虫症、回虫症、鈎虫症、条虫症、フィラリア、肺吸虫症、日本住血吸虫などの寄生虫感染症。開発途上国への渡航歴、有機農法野菜の摂取歴を問診する。猩紅熱,結核,ニューモシスティス肺炎などの感染症でも好酸球の増加を伴うことがある。

アレルギー疾患

薬剤アレルギー

末梢血好酸球が2000/μl以上の好酸球増加の原因として頻度が最も多いと報告されている。好酸球増加の場合、まず薬剤を疑うべきである。

気管支喘息

末梢血好酸球の軽度の増加、気道の好酸球浸潤や喀痰中の好酸球増加は、気管支喘息でみられる。同じ慢性閉塞性肺疾患(COPD)では見られない。

アレルギー性鼻炎

鼻汁中の好酸球増多が見られるが、末梢血の好酸球は増加しないこともある。

リウマチ性疾患

好酸球性肉芽腫性多発血管炎: EGPA

気管支喘息やアレルギー性鼻炎が先行。好酸球浸潤を伴う肉芽腫性血管炎。発熱、多発単神経炎(四肢の知覚・運動障害)、中枢神経障害、消化管穿孔、心血管系障害がみられる。血液検査では、炎症所見、好酸球増加、血小板数増加、血清IgE高値、MPO-ANCA(P-ANCA)陽性(42-70%)。尿中に好酸球がみられることがある。組織診断は、肺、下部消化管、腎、皮膚などで得られたと報告されているが、安全性から皮膚生検、下部消化管生検が推奨される。

結節性多発動脈炎: PAN

中型の動脈壁の炎症。血管炎による梗塞により多彩な臓器症状を呈する。

肉芽腫性多発血管炎: GPA

耳や鼻などの上気道、肺、腎臓の壊死性肉芽腫性血管炎。PR3-ANCA(C-ANCA)を検出することが多い。

血液疾患、悪性腫瘍に随伴するもの

好酸球増多症: Hypereosinophilic syndrome(HES)

1968年、Hardy&Andersonにより概念の提唱。1975年のChusidらの診断基準では、末梢血好酸球増加(1500/μl以上)が6ヶ月以上、寄生虫感染症・アレルギー・その他の疾患が除外され、好酸球浸潤による臓器障害(心、肺、中枢神経系、皮膚)がみられる場合にHESと診断される。心筋障害や弁膜症などの心病変は60%に認められ生命予後に影響する。肺病変は50%に認められるがレントゲン像は正常のことが多い。

異常なT細胞クローンによる好酸球増多症

異常なT細胞クローンがIL-5を過剰に発現し、好酸球が反応性に増加する。T細胞受容体遺伝子再構成を調べて、T細胞クロナリティを確認する。IgEの上昇やポリクローナルなIgG上昇がある。従来のHESの17〜26%と報告され、独立した疾患概念となった。

慢性好酸球性白血病: Chronic eosinophilic leukemia(CEL)

稀な単クローン性の好酸球増殖性疾患。骨髄や末梢で好酸球増加、臓器浸潤をきたす。PDGF-RA、PDGF-RB、FGFR1などのチロシンキナーゼ遺伝子に再構成が生じ、FIP1L1-PDGF-RA、5q33転座(PDGF-RB遺伝子異常)、8p11転座(FGFR1遺伝子異常)などの変異を生じていることがある。FIP1L1-PDGF-RA異常は、imatinib感受性が報告されている。従来のHESの10〜20%とされ、独立した概念となった。遺伝子変異が検出されないものは、非特定型 (chronic eosinophilic leukemia, not otherwise specified: CEL-NOS)と分類される。

肥満細胞症

皮膚、肝臓、脾臓、骨髄、リンパ節などでの肥満細胞の増殖がみられ、2割で末梢好酸球の増加がみられる。

二次性腫瘍性好酸球増多症

T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ALL、肺癌,その他、特に転移・壊死を伴うもので好酸球増多がみられることがある。

臓器特異的な好酸球性疾患

呼吸器疾患

PIE症候群: Pulmonary infiltration of eosinophilia

肺に好酸球浸潤をきたし、末梢血での好酸球増多(6%以上あるいは400/uμl以上)を認める。原因不明(77%)、真菌(19%)、寄生虫(22%)、薬剤 (2%))。喫煙によるという報告もある。咳、喀痰、呼吸困難、発熱がみられる。

急性好酸球性肺炎の診断基準(NEJM 1989)
項目
1.7日以内の急性経過
2.60mmHg以下の低酸素血症
3.胸部レントゲンで両側びまん性浸潤陰影
4.BAL液中の好酸球が25%以上
5.先行する肺を含めた全身性の感染症やアトピー歴がない
6.ステロイドが著効する
7.治療終了後に再発しない
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症: Allergic bronchopulmonary aspergillosis(ABPA)

アレルギー性気管支肺真菌症の大部分はAspergillus fumigatusである。米国では慢性喘息患者の1〜2%。アスペルギルスに対するI型とIII型アレルギーが関与する。アレルゲンであるAsp f4、Asp f6に対するIgE抗体の測定が診断に有用とされる。

ABPAの診断基準(Greenberger 2003)
項目
1.気管支喘息(必須)
2.胸部X線で肺の浸潤影
3.アスペルギルスに対する即時型皮膚反応(プリックテスト、皮内テスト)(必須)
4.血清総IgE値の上昇(必須)>1000ng/ml
5.アスペルギルスに対する沈降抗体(必須)
6.末梢血好酸球増多
7.血清抗アスペルギルスIgE抗体、抗アスペルギルスIgG抗体上昇
8.中枢性気管支拡張症

皮膚と皮下組織疾患

アトピー性皮膚炎、

末梢血好酸球が増加する場合がある。

好酸球性血管性浮腫: Angioedema with eosinophilia

Gleich syndrome。1984年にGleichらにより報告された。好酸球増加に伴う四肢末梢の浮腫。再発するepisodic(EAE)と、再発しないnon-episodic(NEAE)がある。日本ではnon-episodicが主で、若年女性(20〜37歳)に多い。血管性浮腫、蕁麻疹、IgM増加、発熱などを呈する。ステロイドに良く反応し良好な経過をたどる。自然寛解もある。

好酸球性筋膜炎

激しい運動や外傷をきっかけに、急速に四肢に対称性有痛性の筋膜炎が生じ発赤腫脹する。表皮や真皮は侵されない。病初期に末梢血の好酸球が増加する。

木村病

病名は木村哲二に由来する。頭頸部皮下の巨大(5〜10cm)な良性の好酸球性肉芽腫で、東アジアの若い男性に多い。木村病より大きさの小さい好酸球性血管リンパ球増殖症は、人種差なく皮膚表面に近くに発生する。両疾患とも好酸球の増加を伴う。

その他

皮膚疾患として、 尋常性天疱瘡・水泡性類天疱瘡・好酸球性膿胞毛胞炎・乾癬・リンパ腫様丘疹など、胃腸疾患として、好酸球性胃腸炎・アレルギー性胃腸炎・潰瘍性大腸炎・膵炎など、内分泌疾患として、副腎皮質機能低下症(アジソン病)・甲状腺機能亢進症などがある。

鑑別のすすめ方

  1. 薬剤性は頻度として多く、まず最初に疑う。薬剤の中止で経過をみる。
  2. アレルギー性は、薬剤服用歴、アレルギー疾患の有無、食物の関連、季節性、住居環境、海外渡航歴などの問診が重要。肺炎があれば、アスペルギルス抗体などを測定する。
  3. 寄生虫検査、内分泌系(副腎、甲状腺)の精査
  4. 血液疾患や悪性腫瘍の鑑別。

参考文献

* 宮本昭正/監修 臨床アレルギー学 改訂第3版 南江堂
* 仲地真一郎、猪熊茂子、浅島弘充、松尾佳美、六反田諒、与那嶺朝樹、他 好酸球増多の程度と病態 アレルギー59;1364 2010
* 松尾佳美、猪熊茂子 Idiopathic Hypereosinophilic Syndrome (idiopathic HES) アレルギー 60(1);1-8 2011
* JN Allen et al. Acute Eosinophilic Pneumonia as a Reversible Cause of Noninfectious Respiratory Failure. N Eng J Med 321;569-574 1989
* PA Greenberger. Clinical aspects of allergic bronchopulmonary aspergillosis. Frontiers in Biosciences 8;s119-127 2003
* 鈴木澤尚美 アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss syndrome) アレルギー60(2);145-155 2011
* 中込一之、永田真 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、好酸球性肺炎 アレルギー60(2);156-165 2011
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2014/Dec