全身性エリテマトーデス (SLE)|大阪大学 免疫アレルギー内科

免疫疾患の診療

全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデス (Systemic Lupus Erythematosus)

概念

頭皮から足趾までの全身が侵されうる自己免疫疾患で、多彩な症状と多臓器にわたる障害により、その診療には内科臨床全般にわたる知識と経験が要求される。病態は抗原と抗体が結合した免疫複合体の沈着によって引き起こされる補体による組織障害(Gell&CoomsのIII型アレルギー)が中心とされる。

疫学と成因

好発年齢は20-40歳台であり、男女比は1:10で若い女性が多い。「衛生行政報告書」によれば、特定疾患事業により難病の認定を受けた全身性エリテマトーデス患者総数は2010年現在5万7千人であり、公費負担が認められている難病疾患の中では潰瘍性大腸炎、パーキンソン病に次いで多い。患者の多くは妊娠可能な年齢の女性であることから、女性ホルモンと病因との関連が疑われている。一卵性双生児において一方がSLEである場合の他方のSLE有病率は50%を超えるとする報告があり、また、北米では黒人女性の方が白人女性より有病率が高いとされており、遺伝的素因の存在が疑われる。

降圧薬ヒドララジン(アプレゾリン)、α-メチルドーパ(アルドメット)、抗不整脈薬のプロカインアミド (アミサリン)、抗てんかん薬のヒダントイン、抗精神病薬クロルプロマジン(ウィンタミン、ベゲタミン)など様々な薬剤を長期服用することにより薬剤性ループスと呼称されるSLEと同様の症状を惹起することがあり、未だ特定されていない外的誘因の存在も懸念される。高齢者など好発年齢をはずれてのSLE様病態の発症はまず薬剤性ループスを疑う。パルボウイルスB19感染症でもSLE様の症状を呈することがあり、小児〜児童間で感染するリンゴ病(伝染性紅班)患者と接触がなかったか問診し、パルボウイルスB19に対するIgM抗体価を検討する。

病態

多彩な自己抗体が検出されることが多いが、病態の中心は抗二本鎖DNA抗体による免疫複合体の形成と補体による組織障害である。組織障害の発生場所は個々の症例によって異なるが、”全身性”の名前のとおり、腎臓、皮膚、肺、脳など多様な臓器に障害が発生する。

臨床症状

皮膚粘膜症状

ループスエリテマトーデスループスは狼、エリテマトーデスは紅斑を意味するラテン語である。蝶形紅班や円板状皮疹が狼の咬傷を想起させることから由来すると考えられている。皮膚症状から患者は皮膚科を初めに受診されることも多い。
頬部紅斑 (蝶形紅斑)頬骨部から鼻梁に広がる両翼を広げた蝶の形に類似した紅斑で、蝶形紅斑と呼称されることも多い。小児の皮膚筋炎においても同様の外観を呈することがあり、鑑別を要する。
円板状皮疹 (discoid lupus)慢性の鱗屑を伴う円板状皮疹は次第に周囲が肥厚し中央が陥没様になっていく。
日光過敏肌の露出部位において紫外線暴露後に発赤や水泡形成などの反応を示す日光過敏が観察されることがある。
口腔内潰瘍口腔内病変として通常は無痛性の口腔内潰瘍がある。典型的発生部位は硬口蓋。医師の口腔内診察で初めて気づかれることがある。
環状紅斑環状の紅斑局面である環状紅斑がみられることがある。
凍瘡様皮疹手指末梢部位には凍瘡に陥った外観を呈することがあり凍瘡様皮疹と呼ばれる。爪周囲に紅斑が観察されることもある。
レイノー症状SLEに特異的な症状ではないが、寒冷刺激によって手指の色調が白色化、青紫色化するレイノー症状が観察される。
リベドー疹四肢に淡褐色の網目状皮疹が見られることがある。これもSLEに特異的な症状ではないがリベドー疹と呼ばれ、SLE患者に観察された場合は血管炎、もしくは腎炎の存在を示唆する。
脱毛頭皮には脱毛が見られる。頭皮に紅斑が形成され、皮疹により局所的な脱毛局面が形成される場合と皮疹を伴わずびまん性の脱毛が発生する場合とがある。
深在性ループス特殊な病態に深在性ループスがある。皮下脂肪組織に炎症が発生し、脂肪組織が自壊、瘢痕形成に至る。もともと脂肪組織が豊富な顔面頬部や臀部などに好発し、外観上は陥凹した局面を形成。触診上内部の瘢痕を硬結として触れる。治癒後も皮膚陥凹が残りやすく治療は急がれる。
* 頬部紅斑、円板状皮疹、日光過敏、口腔内潰瘍はSLEの分類基準に含まれる項目として診断上重要

関節炎

発症時には多関節痛を自覚することが多いが、関節リウマチとは異なり骨のびらん・破壊を伴わない非破壊性関節炎である。したがって、原則的に時間が経過しても関節変形や強直は起こさない。例外的に、関節周囲の支持組織障害の結果、手指関節の亜脱臼あらわれるJaccoud関節症がある。この場合もレントゲン上では関節構造は破壊されておらず、関節リウマチによる変形とは異なる。

漿膜炎

胸膜、心外膜、腹膜といった漿膜に炎症が発生し胸膜炎や心外膜炎をおこし、炎症性浸出液が貯留する例がある。SLEでは通常血清CRPは上昇しないが、こうした漿膜炎を生じた場合、しばしばCRPの上昇が観察される。胸部レントゲンでの胸水貯留像や心胸郭比の拡大、心エコーによる心嚢液貯留が確認され、腹水貯留では腹部膨隆が観察される。

腎障害

腎障害は糸球体腎炎が基本である。シェーグレン症候群とは異なり、びまん性の間質性腎炎は少ない。症例ごとに様々な病理組織像がある。現在では国際腎臓学会2003年度分類(ISN分類)がもっとも標準的な分類である。腎炎発症の結果、1日尿蛋白3.5g以上のネフローゼ症候群を呈することがしばしばある。多くの場合、抗DNA抗体価は高く血清補体化は低値である。ループス腎炎はISN分類における腎組織分類に基づいて治療が選択されるため、腎生検による病理組織分類決定は強い禁忌がない限り行われることが望ましい。

神経障害

SLEではしばしば痙攣や意識障害の症状が現れたり、統合失調症様症状を呈する神経障害 neuropsychiatric SLE (NPSLE)症例がある。末梢神経の障害がない場合 central nervous system lupus (CNS Lupus)という病名も用いられるが、両者の使い分けは必ずしも厳密ではない。血清中に抗リポゾームP抗体、髄液のIL-6上昇を認めることがあり、診断の補助となる。末梢血中に抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントが検出される抗リン脂質抗体陽性例では多発脳梗塞を示すことがある (APS合併例)。

肺障害

しばしば間質性肺炎を合併する。混合性結合組織病や強皮症に比べると頻度は少なくなるが肺動脈高血圧症が観察される例もある。肺胞出血を経験することがあり、この場合予後不良であり積極的な治療が必要となる。

肝障害

未治療例の多くでは肝機能障害を伴う。抗ミトコンドリアM2抗体陽性の胆汁うっ滞性肝硬変症や抗LKM-1抗体陽性の自己免疫性肝炎の合併もあるが、これらがない症例でも生化学データでのASTやALTといった肝逸脱酵素が上昇することがある。

ループス膀胱炎

頻度は少ないが膀胱壁の線維化がおこり、膀胱容量が減少することがある。膀胱壁は肥厚しコンプライアンスが不良になる。1回尿量が150mL程度になり、著しい頻尿になる。

検査所見

血液異常

白血球減少(4,000/mm3未満)、リンパ球減少(1,500/mm3未満)、血小板減少(100,000/mm3未満)、溶血性貧血(網状赤血球増加を伴い、ハプトグロビン低下)が観察されるが、これらの事象はウイルス感染症でもしばしば発生しうる。発熱患者の採血結果において白血球減少がみられた時、安易にSLEの診断を誤って下すことを避ける目的でアメリカリウマチ学会1997年診断基準では、血球異常は2回以上観察されることという付帯条件が付記された(on 2 or more occasions)。

検尿異常

ループス腎炎のACR criteriaでは、持続的尿蛋白>0.5g/日または3+以上、かつ/または 細胞円柱(RBC、hemoglobin、granular、tubular、mixed)でループス腎炎を定義する。持続的尿蛋白量は随時尿で蛋白/クレアチニン比>0.5でも可能。細胞円柱は活動性尿所見(非感染症下で>5 RBC/hpf 又は >5 WBC/hpf、又は赤血球円柱か白血球円柱を認める)でも可能。

抗核抗体陽性

抗核抗体陽性のみで専門外来を紹介受診されることがあるが、抗核抗体陽性のみではSLEを示唆する訳ではなく、自覚症状、理学所見、その他の検査異常を参考にSLEを疑うことが大切である。peripheral (shaggy) typeのパターンは抗DNA抗体を反映している。

自己抗体

抗2本鎖DNA抗体(抗ds-DNA抗体)は比較的疾患特異度が高いとされるが、抗1本鎖DNA抗体の場合は薬剤性ループスの可能性がある。抗DNA抗体以外に、抗Sm抗体、抗SS-A抗体、抗U1-RNP抗体、RF、抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント、ACL-β2-GPIが陽性に検出されることがある。抗SS-A抗体はSLE以外にシェーグレン症候群の多くで検出され、抗U1-RNP抗体は混合性結合組織病や強皮症でも検出され、疾患特異度は低い。

低補体血症

漿膜炎の合併がない場合、原則的に、SLE単独では補体低値やCH50低値を示すことが多く、正常値を超えて上昇することはない。免疫複合体がいずれかの組織に沈着すると補体が動員される。このため障害臓器での組織学検査では補体の沈着が観察される。腎生検におけるC1qの沈着はSLEに比較的特徴的である。病変局所で補体が消費されるため末梢血中ではC3、C4などの補体が減少する。補体を測定するときは必ずCRPも同時測定しておく。漿膜炎や感染症併発などでCRP高値の場合は補体低下やCH50低下が炎症による産生増加によって中和されてしまうためである。こうした炎症下では補体が正常値であっても補体が消費されていないとは言えない。

陰性所見

SLEの検査上特徴的なものとして、発熱や腎炎などが顕著でもCRPなどの急性期蛋白質の上昇はみられず、こうした陰性所見もSLEを疑う根拠となる。例外は胸膜炎や心外膜炎など漿膜炎症状を呈した場合で、この場合はCRP上昇が観察される。ステロイドや免疫抑制剤使用時の感染症併発時にもやはりCRPは上昇する。

生検による病理所見

皮膚生検検体を蛍光抗体で染めると表皮真皮境界部に免疫グロブリンの沈着を認めることがあり「ループスバンド」と呼ばれる。ループス腎炎を合併する時は、強い禁忌がない限り腎生検を行なう。これはループス腎炎の病理組織分類に基づいて治療方針を決めるためである。国際腎臓学会(ISN)によるループス腎炎の2003年分類を別に掲載する。

分類基準

@ 改定ACR基準1987

Updating the American College of Rheumatology revised criteria (1997)
11項目
1.Malar rash(頬部紅斑) 
2.Discoid rash(円板状皮疹) 
3.Photosensitivity(日光過敏) 
4.Oral ulcers(口腔潰瘍) 
5.Arthritis(関節炎) 
6.Serositis(漿膜炎)胸膜炎、心膜炎
7.Renal disorder(腎障害)尿蛋白、細胞性円柱
8.Neurologic disorder(神経障害)痙攣、精神症状
9.Hematologic disorder(血算異常)溶血性貧血、白血球・リンパ球減少、血小板減少
10.Immunologic disorder(免疫異常)抗DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体
11.Antinuclear antibody(抗核抗体) 
* 上記4項目以上でSLEと分類する(出現時期は一致しなくともよい)
  1. Malar rash(頬部紅斑)
    Fixed erythema, flat or raised, over the malar eminences, tending to space the nasolabial folds
  2. Discoid rash(円板状皮疹)
    Erythematous raised patches with adherent keratotic scalling and follicular plugging; atrophic scarring may occur in older lesions
  3. Photosensitivity(日光過敏)
    Skin rash as a result of unusual reaction to sunlight, by patient history or physician observation
  4. Oral ulcers(口腔潰瘍)
    Oral or nasopharyngeal ulceration, usually painless, observed by a physician
  5. Arthritis(関節炎)
    Nonerosive arthritis involving 2 or more peripheral joints, characterized by tenderness, swelling, or effusion
  6. Serositis(漿膜炎)、以下のいずれか
    • Pleuritis- convincing history of pleuritic pain or rub heard by a physician or evidence of pleural effusion
    • Pericarditis- documented by ECG or rub or evidence of pericardial effusion
  7. Renal disorder(腎障害)、以下のいずれか
    • Persistent proteinuria greater than 0.5 grams per day or greater than 3+ if quantitation not performed
    • Cellular casts- may be red cell, hemoglobin, granular, tubular, or mixed
  8. Neurologic disorder(神経障害)、以下のいずれか
    • Seizures- in the absence of offending drugs or known metabolic derangements, e.g., uremia, ketoacidosis, or electrolyte imbalance
    • Psychosis- in the absence of offending drugs or known metabolic derangements, e.g., uremia, ketoacidosis, or electrolyte imbalance
  9. Hematologic disorder (血液異常)、以下のいずれか
    • Hemolytic anemia- with reticulocytosis
    • Leukopenia- less than 4,000/mm3 total on 2 or more occasions
    • Lymphopenia- less than 1,500/mm3 on 2 or more occasions
    • Thrombocytopenia- less than 100,000/mm3 in the absence of offending drugs
  10. Immunologic disorder (免疫異常)、以下のいずれか
    • Anti-DNA: antibody to native DNA in abnormal titer
    • Anti-Sm: presence of antibody to Sm nuclear antigen
    • Positive finding of antiphospholipid antibodies on:
      1) an abnormal serum level of IgG or IgM anticardiolipin antibodies
      2) a positive test result for lupus anticoagulant using a standard method
      3) a false-positive test result for at least 6 months confirmed by Treponema pallidum immobilization or fluorescent treponemal antibody absorption test
  11. Antinuclear antibody (抗核抗体)
    • An abnormal titer of antinuclear antibody by immunofluorescence or an equivalent assay at any point in time and in the absence of drugs known to be associated with " drun-induced lupus" syndrome
** Eng M. Tan, et al. The 1982 revised criteria for the classification of systemic lupus erythematosus. Arthritis Rheum. 25: 1271-1277, 1982
** Hochberg MC. Updating the American College of Rheumatology revised criteria for the classification of systemic lupus erythematosus. Arthritis Rheum. 40: 1725, 1997.

A 分類基準2012

The systemic lupus international collaborating clinics classification criteria for systemic lupus erythematosus
臨床11項目
1.Acute cutaneous Lupus(急性皮膚ループス)
2.Chronic cutaneous lupus(慢性皮膚ループス)
3.Oral ulcers(口腔潰瘍)
4.Nonscarring alopecia(非瘢痕性脱毛)
5.Synovitis(滑膜炎)
6.Serositis(漿膜炎)
7.Renal(腎症)
8.Neurologic(神経症状)
9.Hemolytic anemia(溶血性貧血)
10.Leukopenia or Lymphopenia(白血球減少、リンパ球減少)
11.Thrombocytopenia(血小板減少)
免疫6項目
1.ANA(抗核抗体)
2.抗dsDNA抗体
3.抗Sm抗体
4.抗リン脂質抗体
5.低補体
6.溶血性貧血がない場合の直接クームステスト陽性
* 臨床11項目と免疫6項目から、それぞれ1項目以上合計4項目を認めればSLEと分類する。
* 項目が同時に出現する必要はない。
* 腎生検でSLEに合致した腎症があり抗核抗体か抗dsDNA抗体が陽性であればSLEと分類する。

臨床項目

  1. Acute cutaneous Lupus(急性皮膚ループス)
    皮膚筋炎を除外の上で、ループス頬部皮疹(頬部円板状皮疹は含まない)、水疱性ループス、SLEに伴う中毒性表皮壊死症、斑状丘疹状ループス皮疹、光線過敏ループス皮疹。あるいは、亜急性皮膚ループス(瘢痕を残さずに治る非硬化性の乾癬状あるいは標的状皮疹。炎症後の色素沈着異常や毛細血管拡張症を伴うことはある。)
  2. Chronic cutaneous lupus(慢性皮膚ループス)
    古典的円板状皮疹:限局(頸部より上)あるいは全身(頸部ならびに頸部以下)、過形成(疣贅状)ループス、ループス脂肪織炎(深在性ループス)、粘膜ループス、慢性ループスエリテマトーデス、凍瘡状ループス、円板状ループスと扁平苔癬の重複
  3. Oral ulcers(口腔潰瘍)
    口蓋、頬部、舌、あるいは鼻腔潰瘍。ただし血管炎、ベーチェット病、ヘルペスなどの感染症、炎症性腸疾患、反応性関節炎、酸性食品など他の既知の病因を除く。
  4. Nonscarring alopecia(非瘢痕性脱毛)
    びまん性に薄い、あるいは壊れた毛髪がみられる傷んだ毛髪。ただし円形脱毛症、薬剤性、鉄欠乏、男性ホルモンによる脱毛症など他の既知の病因を除く。
  5. Synovitis(滑膜炎)
    2カ所以上の関節腫脹あるいは滑液貯留を伴う滑膜炎。または、2カ所以上の関節痛と30分以上の朝のこわばり。
  6. Serositis(漿膜炎)
    一日以上続く典型的な胸膜炎、または胸水、胸膜摩擦音。一日以上続く典型的な心外膜痛(臥位で痛み、前かがみ座位で軽減する)、または心嚢液貯留、心外膜摩擦音、心エコーによる心外膜炎。ただし感染症、尿毒症、Dressler心外膜炎など他の既知の病因を除く。
  7. Renal(腎症)
    尿蛋白/クレアチニン比(または24時間尿蛋白)で一日500mgの尿蛋白が推定される。または赤血球円柱。
  8. Neurologic(神経症状)
    痙攣、精神障害、多発単神経炎(血管炎など他の既知の病因は除く)。脊髄炎。末梢神経障害、脳神経障害(血管炎、感染症、糖尿病などの他の既知の病因を除く)。急性錯乱状態(中毒、代謝疾患、尿毒症、薬剤性などの他の既知の病因を除く)
  9. Hemolytic anemia(溶血性貧血)
  10. Leukopenia or Lymphopenia(白血球減少、あるいはリンパ球減少)
    少なくとも一回は白血球<4,000/mm3。ただしフェルティ症候群、薬剤性、門脈圧亢進など他の既知の病因を除く。あるいは、少なくとも一回はリンパ球<1,000/mm3。ただしステロイドによるもの、薬剤性、感染症など他の既知の病因を除く。
  11. Thrombocytopenia(血小板減少)
    少なくとも一回は<100,000/mm3。薬剤性、門脈圧亢進症、血栓性血小板減少性紫斑病などの他の既知の病因を除く。

免疫項目

  1. ANA(抗核抗体)
    検査施設正常上限以上の抗核抗体
  2. Anti-dsDNA antibody(抗dsDNA抗体)
    検査施設正常上限以上。ELISA測定ならば上限の2倍以上
  3. Anti-Sm(抗Sm抗体陽性)
    Sm核抗原に対する抗体の存在
  4. Antiphospholipid antibody positivity(抗リン脂質抗体陽性)
    ループスアンチコアグラント陽性、迅速血漿レアギンテスト(RPRテスト)偽陽性、中〜高力価の抗カルジオリピン抗体(IgA、IgGまたはIgM)、抗beta2-glycoprotein I抗体陽性(IgA、IgGまたはIgM)
  5. Low complement(低補体)
    C3低値、C4低値、あるいはCH50低値
  6. Direct Coombs' test in the absence of hemolytic anemia(溶血性貧血がない場合の直接クームステスト陽性)

B 分類基準2012の概要

1982年発表1997年改訂ACR分類基準と比べると、多様な皮疹を拾うようになり、多彩な神経症状も含まれた。SLEは自己免疫疾患であることから免疫異常の項目を増やし必ず一つは満たすことを条件としている。病因を反映させて低補体の項目が入っている。また、ループス腎炎の規定を別に設けて独立させている。これにより1997年基準(感度83%、特異度96%)より感度は97%に上がったが特異度は84%にやや下がった。

臨床項目の様々な皮疹はどのようなものをさすのか内科医には解りにくいものもあり、皮膚病変には皮膚科医の協力が必要になろう。びらんを伴うSLEの関節炎が実際存在するため関節炎からは旧基準の「non-erosive」の文言を消している。尿蛋白はテープ測定ではなくスポット尿、あるいは蓄尿測定が必要となった。血球系異常は溶血性貧血、白血球、血小板の3項目に細分された。自己抗体も抗dsDNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体の3項目に細分され、抗リン脂質抗体の定義は詳細になった。独立させたループス腎炎は国際腎臓学会(ISN)による2003年分類によって定められた組織分類に従う。

** Petri M et al. Derivation and validation of the systemic lupus international collaborating clinics classification criteria for systemic lupus erythematosus. Arthritis Rheum 2012 64(8):2677-2686

治療

@ 薬物治療

治療の原則はステロイドである。臓器障害度、重症度に応じて投与量が決められるが、プレドニゾロン換算で0.5-1.0mg/kgで開始される。重症型ではメチルプレドニゾロン1000mg/day 3日間投与のステロイドパルス療法が選択される。腎病変など各臓器病変に対しては、その病理組織型にしたがって免疫抑制剤の追加など治療薬剤を選択する。腎生検病理組織において半月体形成を伴うようなびまん性ループス腎炎(W型)や係蹄璧にdouble trackやspike形成を示す膜性ループス腎炎(V型)では免疫抑制剤が必要である。W型ループス腎炎では経静脈的cyclophosphamide大量投与の反復が有効であるとされているが、月経停止や泌尿器科領域の発癌性の問題が確認されており、米国ではMMFが使用されることがある。ループス腎炎に対する2012年ACR推奨を別に掲載する。

A アフェレーシス治療

何らかの理由でステロイド剤投与や免疫抑制剤の投与が積極的にできない場合、アフェレーシス治療が行われることもある。新鮮凍結血漿を用いて単純に血漿を入れ替える血漿交換療法、血漿成分から一定の分子サイズのものを除去し残りを返血と混合させる二重膜濾過法、吸着カラムを用いた選択的抗DNA抗体吸着療法などがある。いずれもループス腎炎やCNSループスに対して保険適応が認められている。アフェレーシス治療は組織障害に繋がる自己抗体を血液中から一時的に除去するのが狙いであり、抗体産生を抑える効果は持ち合わせていないが、ステロイドと免疫抑制剤を併用していると、アフェレーシス治療をきっかけに病勢が好転することをしばしば経験する。

B 生物学的製剤

関節リウマチの治療で劇的な効果を示している生物学的製剤の使用もSLEに対して検討されている。自己抗体を産生する抗体産生細胞はB細胞から成熟することから、B細胞除去療法が考案される。キメラ型抗CD20抗体rituximabはB細胞上に発現するCD20分子を標的に細胞障害性に働く抗体製剤である。SLE加療に有効であるが、脳内のJCウィルスの活性化など致死的な有害事象の発生報告があり、SLEへの臨床試験は中止されている。次いでB細胞の生育に必要なB lymphocyte stimulator (BLyS)がB細胞表面受容体に結合する点を阻害する完全ヒト抗BlyS抗体belimumabが開発され、米国ではSLEへの使用についてFDAの認可がおりており、本邦での承認が待たれる。樹状細胞上のBLySと同様の働きを持つa proliferation inducing ligand (APRIL)の両方に結合できるtransmembrane activator and CAML interactor (TACI)にヒトグロブリンを融合させ安定化と半減期の延長を図ったfusion proteinであるataciceptも開発されており、臨床応用が待たれる。SLE患者血球の解析からSLE病態にIFNの関与が考えられており、これに対する抗体sifalimumabやrontalizumabなども開発されている。

ループス腎炎

@ 国際腎臓学会(ISN)によるループス腎炎の2003年分類

T型微小メサンギウムループス腎炎
光学顕微鏡では糸球体は正常であるが、蛍光抗体法ではメサンギウムに免疫沈着物が観察される。
U型メサンギウム増殖性ループス腎炎
光学顕微鏡でメサンギウム細胞増殖(程度は問わない)もしくはメサンギウムに限局した基質の拡大が認められ、メサンギウムに免疫沈着物が認められる。蛍光抗体法あるいは電子顕微鏡において孤立性の上皮下ないし内皮下沈着物がわずかに認められる場合もあるが、光学顕微鏡では認められない。
V型巣状ループス腎炎
活動性もしくは非活動性、分節性(※)ないし全節性、管内性ないし管外性の巣状糸球体腎炎で、全糸球体の50%未満に病変が認められる。典型例では巣状の内皮下免疫沈着物が認められ、メサンギウム変化は伴っても伴わなくてもよい。
V(A)活動性病変がある(=巣状増殖性ループス腎炎)
V(A/C)活動性および慢性病変がある(=巣状増殖性および硬化性ループス腎炎)
V(C)糸球体瘢痕を伴う慢性非活動性病変がある(=巣状硬化性ループス腎炎)
W型びまん性ループス腎炎
活動性もしくは非活動性、分節性ないし全節性、管内性ないし管外性のびまん性糸球体腎炎で、全糸球体の50%以上に病変が認められる。典型例ではびまん性の内皮下免疫沈着物が認められ、メサンギウム変化は伴っても伴わなくてもよい。びまん性のワイヤーループ状沈着物を有するが、メサンギウム細胞増殖が軽度もしくはない例もこの型に含まれる。
病変を有する糸球体の50%以上が分節性病変を示すびまん性分節性ループス腎炎W-Sと、病変を有する糸球体の50%以上が全節性病変を示すびまん性全節性ループス腎炎W-Gとに分けられる。
W-S(A)Sで活動性病変を有する(=びまん性分節性増殖性ループス腎炎)
W-G(A)Gで活動性病変を有する(=びまん性全節性増殖性ループス腎炎)
W-S(A/C)Sで活動性および持続性病変がある(=びまん性分節性増殖性および硬化性ループス腎炎)
W-G(A/C)Gで活動性および持続性病変がある(=びまん性全節性増殖性および硬化性ループス腎炎)
W-S(C)Sで瘢痕を伴う持続性非活動性病変がある(=びまん性分節性硬化性ループス腎炎)
W-G(C)Gで瘢痕を伴う持続性非活動性病変がある(=びまん性全節性硬化性ループス腎炎)
X型膜性ループス腎炎
光学顕微鏡により、あるいは蛍光抗体法ないし電子顕微鏡により、全節性または分節性の上皮下免疫沈着物、もしくはその形態学的遺残が認められる。メサンギウム変化は伴う場合と伴わない場合がある。X型ループス腎炎はV型もしくはW型と複合する場合があり、その場合には両者を併記した診断名とする。X型ループス腎炎は進行した硬化性病変を示す場合がある。
Y型進行した硬化性ループス腎炎
糸球体の90%以上が全節性硬化を示し、残存腎機能は認められない。
* 分節性:一つの糸球体で病変が糸球体係蹄の半分未満である。全節性:一つの糸球体で病変が糸球体係蹄の半分を超えて広がっている。
* Weening JJ, et al. The classification of glomerulonephritis in systemic lupus erythematosus revised. J Am Soc Nephrol. 15: 241-250, 2004.

A ループス腎炎ACR診療ガイドライン(2012)

米国ではSLEの基本治療薬としてhydroxychloroquine(HCQ)が、免疫抑制剤としてMMFとcyclophosphamide (CYC)がエビデンスに基づいて主に使用されているが、日本ではHCQやMMFはSLEに対して保険適応がないのが現状である。(ACR guidelines for screening, treatment, and management of lupus nephritis. Hahn BH, et al. Arthritis Care Research 2012; 64:797-808)

level A: 複数のRCTあるいはメタ解析
level B: 一つのRCTあるいは非RCT
level C: 総意、専門家の意見、case報告

ループス腎炎の確定

ACR criteriaを満たすときループス腎炎と診断する。持続的尿蛋白>0.5g/dayまたは3+以上、and/or 細胞円柱(RBC、hemoglobin、granular、tubular、mixed)で定義する。持続的尿蛋白量は随時尿で蛋白/クレアチニン比>0.5でも可能。細胞円柱は活動性尿所見(非感染症下で>5 RBC/hpf 又は >5 WBC/hpf、又は赤血球円柱か白血球円柱を認める)でも可能。ループス腎炎に矛盾しない免疫複合体による糸球体腎炎を腎生検で認める場合は確実である。

腎生検と組織診断

活動性の証拠のある未治療のすべてのループス腎炎患者は、糸球体病変がISN/RPS2003年分類で分類できるよう、強い禁忌がない限り腎生検の実施を推奨する(level C)。このとき、Activity、chronicity、尿細管病変や血管病変もあわせて評価できる。特に以下のような場合は腎生検が望まれる。

  1. 敗血症、脱水、薬剤性などの原因がないのに血清クレアチニンが上昇
  2. 一日尿蛋白が1g以上
  3. 他に原因がないのに短期間に2回以上、尿蛋白0.5g/日以上かつ5 RBC/hpf以上か、細胞性円柱を確認する場合

治療はISN/RPS分類の病理分類に基づいて推奨する。ClassIとClassIIでは一般的に免疫抑制療法は必要なく、ClassIIIとClassIVではステロイドと免疫抑制剤を併用した積極的治療が必要。ClassVがIII/IVと共に認められた場合はClassIII/IVと同様の治療を行う。ClassV単独ならば免疫抑制剤とステロイド中等量を用いる。ClassVIの場合は腎移植を考慮する。

付属治療

禁忌がない限り、腎炎を伴う全てのSLE患者にはhydroxychloroquine(HCQ)を推奨する(日本では保険適応なし) (level C)。HCQ継続投与を受けた場合はループスの再燃頻度が少なかったという報告、HCQ投与を受けているSLE患者では腎障害が少ないという報告に基づく。HCQはSLE患者の血栓症のリスクを減らすという報告もある。

一日尿蛋白0.5g以上(または随時尿で蛋白/クレアチニン比>0.5)のすべてのループス腎炎患者にはACE阻害剤かARBの投与を行うべきである(level A)。これらの薬剤は非糖尿病性腎症において尿蛋白を約30%減少させ、血清クレアチニン値が2倍になる時期や末期腎障害への進展を遅らせる。妊娠には禁忌。ACE阻害剤とARBの併用には賛否両論ある。ACE阻害剤とARBはカルシウム拮抗剤や利尿剤よりもCKD患者の腎機能保持が優れている。

血圧130/80mmHg以下を目標に治療することを推奨する(level A)。こうした降圧目標が腎機能障害進展を遅らせることが示されている。

LDL>100mg/dlの患者に対してはスタチン製剤を推奨する(level C)。GFR<60ml/minは動脈硬化のリスク因子であり、また、SLE自体が動脈硬化の独立した危険因子である。

妊娠可能性のある女性で活動性腎炎、腎炎既往がある場合、疾患や治療による妊娠へのリスクについての相談が勧められる(level C)。

ISN ClassIII/IV ループス腎炎に推奨する寛解導入療法

ステロイド投与とともに、経口MMF(2-3g/day)またはCYC点滴投与を推奨する(level A)。MMFとCYCの治療効果は同等と認められている。MMFによる長期研究はCYCほど豊富ではないが、MMF 3g/日×6ヶ月間、MMFを減量後さらに3年間維持療法で投与する方法で良好な結果が得られている。MMFとステロイドの併用療法は、アジア人を含めてすべての人種で同様の効果を認めている。また、アジア人は比較的少量のMMFでも効果があるという意見があり(level C)、通常MMFを3g/日投与するところアジア人では2g/日投与することがある。最近、台湾からこうしたMMF少量での有効性が報告されている。

MMFの推奨投与量は臨床状況による。細胞性半月体を認めないClassIII/IV、腎生検が出来ない場合でも尿蛋白はあるが血清クレアチニンが安定していればMMF 2-3g/日でもよいと思われる。細胞性半月体を認めるClassIII/IV、尿蛋白があり最近の血清クレアチニン値が上昇している場合はMMF 3g/日が望ましい。MMF類縁薬では、MMF 2000‐3000mg/日とMMFの活性代謝物mycophenolic acid (MPA) 1440‐2160mg/日で寛解導入効果が等しいと考えられる。

推奨するCYC点滴法は2つある。low-dose CYC 点滴(2週に一度500mg点滴を計6回)後、経口azathioprine(AZA)または経口MMFで維持療法(level B)。あるいは、high-dose CYC 点滴(月に一度500-1000 mg/m2点滴を計6回)後、AZAまたはMMFで維持療法(level A)。限られた前向き比較研究であるが、毎日の内服CYCとhigh-dose CYC点滴療法では効果と毒性はほぼ同程とされている。ヨーロッパのデータではlow-dose CYCもhigh-dose CYCも効果は同等であり、10年の経過観察での、ループス腎炎の再燃率、末期腎障害率、血清クレアチニン値が2倍になる率も差を認めなかった。しかし、重篤な感染症はlow-dose CYCで少なかったため、ヨーロッパ白人に対してはlow-dose CYCを推奨する。

ステロイドパルス(methylprednisolone 500-1000mg/day 3回)と免疫抑制療法の併用は推奨する(level C)。その後は、内服ステロイド(0.5-1mg/kg/day)を投与し、必要最少量まで漸減する。ステロイドパルス療法を寛解導入に使用することは主に専門家の意見であり、最近の前向きの試験では実施も未実施もある。ステロイドの減量方法に関しては病態が様々なため十分なデータはない。毎月のCYC点滴にステロイドパルスを併用するかどうか合意はない。

寛解導入のためAZAを第一選択薬として使用することは推奨しない。AZAはCYCよりも寛解導入効果が弱いという報告があり、AZAを寛解導入維持療法で使用するのは、CYCによる寛解導入よりも腎炎再燃が多く、CYCのほうが慢性病変の進展をよく抑えていた。

3ヶ月の時点で明らかな悪化の証拠(尿蛋白量や血清クレアチニン値の50%以上の上昇)がない限り、ステロイド用量の変更は除いて、CYCやMMFによる寛解導入療法を6ヶ月間は変えないことを推奨する(level A)。CYCかMMFの治療8週間後に、尿蛋白量が25%以上改善しC3やC4が正常化した例ではその後の腎炎は良好な経過をたどりやすく、治療6ヶ月後に、血清クレアチニン値が低下し一日尿蛋白1g未満であれば良好な長期予後が予測された。MMFかCYCの治療後6ヶ月で重症ループス腎炎の約50%が改善し、12-24ヶ月では65-80%が改善している。

妊娠希望患者ではCYCよりもMMFが望ましい。High-dose CYC点滴は男性女性において不可逆的な不妊症をおこしうる。high-dose CYC点滴で治療された女性が無月経となる率は年齢と関係し、25歳未満で12%、30歳未満で27%、31歳以上では62%。25歳以上で6ヵ月のhigh-dose CYC点滴(積算4.4‐10g)では17%が無月経となり、さらに4ヶ月に一回の投与を続けると無月経は64%に達した。CYC使用患者の生殖能保持のためのleuprolide使用に関しての合意は得られなかった。MMFには催奇形性があり、MMF/MPA使用前には妊娠していないことを確認し、妊娠の6週前には投薬を中止するべきだ。

細胞性半月体を伴ったClassIV or IV/Vのループス腎炎に推奨する寛解導入療法

ステロイドパルス療法の併用とともに、CYCかMMFによる寛解導入療法(level C)、さらに高用量の経口ステロイド(1mg/kg/日)の併用を推奨する。腎生検でどんな半月体でも存在すれば半月体形成性腎炎と考える。最近まで専門家は細胞性半月体を伴えばhigh-dose CYC点滴を好んでいた。半月体を認めると予後不良である。中国の報告では、MMF(2g/日)はhigh-dose CYC点滴と同様に半月体形成性ClassIVループス腎炎に有効であった。

Class V "pure membranous" ループス腎炎に推奨する寛解導入療法

Class V病変のみで、ネフローゼ患者にはプレドニン(0.5mg/kg/日)とMMF (2-3g/日)の投与を推奨する(level A)。MMF2-3g/日とプレドニン(平均27mg/日)6ヶ月間投与は、CYC点滴とステロイド併用と同等の効果だった。6ヶ月の時点でのネフローゼは0-30%であった。他の治療法の報告はあるが推奨にはならなかった。例えば、3群での治療比較の前向き研究で、プレドニン単独(40mg/m2隔日で8週間投与)投与し12ヶ月後までには10mg/m2まで減量する方法、プレドニン隔日とCYC点滴(500-1000mg/m2、2ヶ月毎に6回投与)、プレドニン隔日とcyclosporine(5mg/kg、11ヵ月投与)では、寛解率はプレドニン単独27%、CYC 60%、cyclosporine 83%。一年以降ではCYCがcyclosporineよりも再燃が少なかった。

寛解導入後の維持療法の推奨

維持療法にはAZAかMMFを推奨する(level A)。ふたつの前向きの試験で寛解導入後の維持療法について検討されている。欧米など複数国で行われた大規模試験で、high-dose CYCかMMFの6ヵ月の投与で寛解導後、AZA 2mg/kg/日または、MMF 2g/日で維持療法を行った。プレドニン投与は10mg以下。3年間の観察期間で、MMFはAZAよりも有意に治療失敗(死亡、末期腎障害、血清クレアチニンの倍増、再燃)が少なく、重篤な副作用はAZAで多かった。ヨーロッパの小規模の研究では、low-dose CYCで寛解導入療法後、維持療法はAZA 2mg/kg/日かMMF 2g/日で行ったところ、4年間の観察期間で、死亡、末期腎障害、血清クレアチニン倍増、再燃といった項目で差を認めなかった。AZA、MMFの減量や中止に関しては特に提案はない。

寛解導入に十分反応しなかった場合の治療変更の推奨

ステロイド+(MMF or CYC)による6ヶ月の治療が奏功しなかった場合、ステロイドパルス療法(3日間)併用とともに、CYCをMMFへ、またはMMFをCYCへ変更を推奨する(level C)。ループス腎炎が6ヶ月の寛解導入療法後も改善しない、あるいは増悪の場合、CYCとMMFの両者とも奏功しない場合などはrituximab使用の投与もある(level C)。Calcineurin阻害剤の使用に関しては合意に至らなかったが、寛解導入療法や難治性病態での有効性の証拠がある。rituximabに関しての前向き試験ではMMF+ステロイドに、rituximab追加とプラセボ追加の間で1年後に差はなかった。cyclosporineやtacrolimusに関しては前向き研究がある。ある研究では、6ヶ月の治療でtacrolimusはhigh-dose CYC点滴と寛解率で等しかった。他の4年間の前向き研究では、腎炎再燃予防の維持療法としてcyclosporineはAZAと同等だった。

3ヶ月のステロイド+(CYC or MMF)による寛解導入療法でも腎炎が増悪する場合は他の治療法への変更を推奨する(level C)。MMF+Calcineurin阻害剤、MMT+rituximabが試験中で、寛解導入療法が奏功しなかった患者に対しては考慮されるが、まだ強い証拠はない。Belimumab(anti-BLyS/BAFF)はSLE治療薬としてFDAに承認されているがループス腎炎に関しては試験されていない。活動性のあるSLE(SLEDAI6点以上、高度活動性腎炎は除く)でステロイド+免疫抑制剤に、belimumab(10mg/kg/月)追加が検討された。52週の時点でbelimumab投与群はプラセボと比べ高い改善率を認めた。ループス腎炎の評価はされていないが、14-18%で一日尿蛋白2g以上であった。事後解析では53週で尿蛋白と腎炎再燃の減少傾向がbelimumab群であった。治療にもかかわらず血清学的に陽性の活動性SLEに対してbelimumab使用をFDAは承認している。

SLE患者での血管病変と腎臓異常

SLEの腎組織には血管炎、小動脈狭窄を伴うフィブリノイド壊死(Bland vasculopathy)、血栓性微小血管症、腎静脈血栓症などの血管性病変が生じうる。一般的に血管炎の治療はこれまで述べたループス腎炎の治療と同様である。

Bland vasculopathyは高血圧とよく関連するが、SLEか高血圧かどちらが先か明らかでない。血栓性微小血管症は血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と関連しうる。血栓性微小血管症に対しては原則として血漿交換療法を推奨する(level C)。

妊婦でのループス腎炎の治療

妊婦のループス腎炎の管理に関しては複数のアプローチを推奨する(level C)。過去にループス腎炎はあったが現在活動性の証拠がない場合は腎炎の治療は必要ない。軽度活動性の場合はHCQで治療してもよい、妊娠中のSLEの活動性が減少するだろう。活動性のループス腎炎があり、明らかな腎外病変の活動性がある場合は活動性を抑える量のステロイドを投与し、必要ならAZAを追加してもよい。高用量ステロイドは高血圧や糖尿病などの妊娠合併症のリスクを増加させる。MMF、CYC、MTXは催奇形性があり避けるべきだ。AZAはMicromedexでカテゴリーDに分類されるが、横断研究にて胎児異常のリスクは低いとされるが、妊婦でのAZA投与量は2mg/kgを超えるべきではない。持続的に活動性があり半月体を伴うClass III or IVのループス腎炎が疑われる場合、28週以降なら胎児の生存のため出産の考慮が推奨される。

神経精神SLE (Neuropsychiatric SLE、NPSLE)

SLEに神経、精神障害を伴う病態の呼称に関してはcentral nervous system lupus(中枢神経ループス)、Lupus cerebritis(ループス脳炎)、CNS vasculitis(中枢神経血管炎)、Neurolupus(神経ループス)などの呼称があるが、神経と精神障害を含み、必ずしも炎症を伴わないこともありneuropsychiatric SLE(NPSLE、神経精神SLE)の一般名称が1999年に提唱され、19症状を分類した。SLEの5%以上で脳血管障害やけいれんが見られるが、重度の認知障害、大うつ病、末梢神経障害などは稀である。NPSLEの既往や抗リン脂質抗体の存在はNPSLEのリスクを5倍以上に上げる。鑑別として2次性精神神経障害としてのステロイド精神病、その他の薬剤によるもの、腎障害による尿毒症、糖尿病性神経障害、心因反応、あるいは感染症などの鑑別が必要であり、場合によっては精神科、神経内科などの専門医の意見も求める。

Neuropsychiatric SLE(NPSLE)のACR分類(1999)

中枢神経系末梢神経系
無菌性髄膜炎(Aseptic meningitis)
脳血管障害(Cerebrovascular disease)
脱髄症候群(Demyelinating syndrome)
頭痛(Headache)
運動障害(舞踏病)(Movement disorder)
脊髄症(Myelopathy)
発作性疾患(Seizure disorders)
急性錯乱状態(Acute confusional state)
不安障害(Anxiety disorder)
認知障害(Cognitive dysfunction)
気分障害(Mood disorder)
精神病(統合失調症様精神症状)(Psychosis)
急性炎症性脱髄性多発神経根炎(ギランバレー症候群)(Acute inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy)
自律神経障害(Autonomic disorder)
単・多発単神経炎(Mononeuropathy, single/multiplex)
重症筋無力症(Myasthenia gravis)
脳神経障害(Neuropathy, cranial)
神経叢障害(Plexopathy)
多発神経炎(Polyneuropathy)

髄液検査

感染症を鑑別するために重要。細菌性、結核性、クリプトコッカス髄膜炎などの鑑別、単純ヘルペス、JCウイルスのPCRを行う。髄液の軽度異常は40-50%でみられるがNPSLEに特異的ではない。また、無菌性髄膜炎、血管炎、横断性脊髄炎などを除いて一般髄液検査では正常を示すことが多い。しかし、髄液中の抗DNA抗体、IgGオリゴクローナルバンド、免疫複合体、IL-6高値、IgG index上昇など、髄液でのB細胞の活性化を示唆するマーカーがみられ、あるいは、髄液中の抗ニューロナル抗体、血清中での抗リボゾーマルP抗体 (MBLで測定可)などの自己抗体検出がNPSLEの診断の補助となる。抗DNA抗体の一部がNR2グルタミン酸受容体(NMDA)を認識して神経細胞を障害し、抑うつとの関連が指摘されており興味深い。

画像検査

MRIは有効な画像検査で、活動期NPSLEに対する感度は57%。しばしば神経精神症状のない病変をとらえることもある。85名のNPSLEでのMRI画像の報告では、正常(34%)、前頭葉や頭頂葉の白質での点状のT2強調での高信号病変(60%)、灰白質から白質での多発梗塞像(21%)、その他に体積減少(43%)、出血(5%)、コントラスト増強(9%)、diffusion 異常(18%)であった。FLAIRや、diffusion weighted image (DWI)での高信号領域は塞栓症、微小血管障害、炎症性血管炎などの存在を示唆する。MRIが正常の場合でもmagnetisation transfer imaging、SPECT、PET-CTや他の画像検査で情報が得られることがある。

脳波検査

発作性疾患の鑑別に重要。脳症ではびまん性徐波、痙攣や局所神経症状では局所での異常波形が出現しうる。しかし、無症状のSLE患者でも異常波形がみられることがあり、神経精神SLEに対する診断特異性は劣る。


NPSLE診療のEULAR recommendations(2010)

A: 無作為比較試験など強い証拠に基づく
B: 無作為でない試験など
C: ケーススタディなど
D: 専門家の意見)

NPSLEは、SLEの診断以前や経過後にも生じるが、50〜60%は診断後1年未満で、SLEの活動性が存在する時におきやすい(B)。脳血管障害やけいれんが5〜15%、重度の認知障害や大うつ、急性錯乱、末梢神経障害は1〜5%、精神病、脊髄炎、舞踏病、脳神経障害、無菌性髄膜炎は1%未満である(B)。リスク因子は、SLEの一般的活動性、NPSLE(特に認知障害とけいれん)の既往、抗リン脂質抗体などである(B)。

診断

神経障害、精神障害のタイプよって、腰椎穿刺、脊髄液検査(主に感染症の鑑別のため)、脳波、認知機能の神経精神学的評価、神経伝導試験、MRI画像検査などを実施する(D)。脳、脊髄のMRI検査は通常検査(T1、T2、FLAIR)、DWI、ガドリニウム造影T1を行う(A)。

治療

ステロイドや免疫抑制剤(アザチオプリン、シクロフォスファミド)は、症状(急性錯乱状態、無菌性髄膜炎、脊髄炎、脳神経障害、末梢神経障害、精神病)がSLEと関連する免疫異常や炎症過程に起因するときに適応がある(A)。抗血小板薬、抗凝固療法は、血栓症による脳血管障害などの症状が、抗リン脂質抗体に関連するとき適応がある(B)。抗けいれん薬や抗うつ薬などの対症療法、悪化要因(感染症、高血圧、代謝異常)に対する治療を行う(D)。SLE患者で抗リン脂質抗体が持続陽性、中〜高力価のときは予防として抗血小板薬を考慮する(D)。

(1)脳血管障害

動脈硬化性/血栓性/塞栓性の脳血管障害はSLEでよく見られる。脳出血は稀で、血管炎による脳血管障害はさらに稀。従って免疫抑制剤の適応は少ない。抗リン脂質抗体症候群の基準を満たす場合、再梗塞の予防に長期にわたる抗凝固療法がなされるべき(C)。SLEの活動性が高い状態以外の脳血管障害のリスク因子として、中〜高力価の抗リン脂質抗体、心臓弁膜症、高血圧、高齢が挙げられる。MRI、MRA、CT血管造影などで診断する。

(2)認知障害

軽〜中等度の認知障害はSLEではよく見られる。重度の認知障害は一般的ではないため専門家とともに神経精神学的評価を行うべき(B)。心理的学習支援により認知障害の進行を予防できる(C)。

(3)けいれん

単発性のけいれんはSLEに一般的にみられ、疾患の活動性と関連する。しかし、けいれん再発は一般集団のリスクと変わらない(B)。MRIや脳波で脳の構造的障害、炎症、代謝疾患を鑑別する必要がある(D)。けいれん後のMRIや脳波で異常がなければ、単発性のけいれんに対する抗てんかん薬の中止を考慮するが、再発性の場合は長期使用を考慮する(D)。疾患活動性がない殆どのSLEでは免疫抑制療法はけいれんの再発予防に対して適応はない(D)。抗リン脂質抗体陽性のSLEでは抗凝固療法を考慮する(D)。

(4)運動障害(舞踏病)

運動障害がみられる場合は対症療法(ドーパミン拮抗剤)に加えて、抗リン脂質抗体陽性では抗血小板剤を考慮する(D)。SLEの疾患活動性が高く、血栓症が見られる重篤なSLEの場合はステロイド、免疫抑制剤、抗凝固療法を考慮する(D)。

(5)急性錯乱状態

SLE以外の疾患、特に感染症を鑑別するために脊髄液検査やMRI検査を行うべき(D)。重篤な場合はステロイドや免疫抑制剤の使用を考慮する(D)。

(6)うつ状態や精神病

SLEのみに起因する大うつ病が見られることは比較的稀で、ステロイドに起因する精神病も生じうる(D)。血清検査や脳画像検査が大うつ病の診断に有効であるとういう強い証拠はない(D)。SLEに関連した精神病、とくに疾患活動性があるときにはステロイドや免疫抑制剤を考慮する(D)。

SLEに伴う精神病は妄想、幻覚が特徴的。ステロイド精神病は1mg/kg以上の高用量の使用の場合で10%に現れるが症状は精神病より気分障害が多い。血清抗リボゾーマルP抗体陽性と精神病との関連(感度25%、特異度75%)が報告されている。SLEの活動性があるとき、治療はステロイドと免疫抑制剤(シクロフォスファミドで導入、アザチオプリンで維持)の併用で60〜80%有効。2〜4週で改善することが多い。難治例にリツキシマブが著効した報告がある。

(7)脊髄症

診断はガドリニウム造影MRIと脊髄液検査で行う(D)。高用量ステロイドとシクロフォスファミド点滴を速やかに行う(A)。再発予防のための維持療法では弱い免疫抑制剤を考慮する(D)。

SLEにともなう脊髄症は急速に生じる横断性脊髄炎として現れるが、虚血性の脊髄症も生じうる。灰白質(下位運動ニューロン)障害症状(弛緩、反射低下)、白質(上位運動ニューロン)障害症状(痙縮、反射亢進)が現れる。白質障害は視神経脊髄炎と関連することが多い。抗アクアポリン抗体陽性であれば視神経脊髄炎の診断の補助となる。横断性脊髄炎の脊髄液は強い炎症所見を呈し、感染症に類似するため抗生剤/抗ウイルス剤の使用を併用しながら、MRIによる確定を待たずに早期に高用量ステロイドを開始することがある。感染症が否定されればステロイドを継続する。ステロイド点滴+シクロフォスファミド点滴も早期に投与されれば有効である。

(8)視神経炎

両側で生じやすく、眼科的評価(眼底鏡、蛍光血管造影)、MRI、視覚誘発電位測定などで診断する(D)。視神経炎と虚血性の視神経障害を鑑別する必要がある。虚血性障害は特に抗リン脂質抗体陽性例で片側性に生じやすい(D)。ステロイド単独、又は免疫抑制剤と併用療法を行うべき(A)。

脳神経障害では内耳神経(VIII)、動眼神経(III)、滑車神経(IV)、外転神経(VI)が障害されることが多く、他に三叉神経(V)、顔面神経(VII)も稀に侵される。脳幹梗塞、髄膜炎の鑑別が必要。

(9)末梢神経障害

末梢神経障害はしばしば他の神経精神症状とともに生じ、筋電図や神経伝導検査にて診断する(D)。重篤な場合はステロイドと免疫抑制剤の併用による治療を考慮する(A)。あるいは免疫グロブリン大量点滴、血漿交換、リツキシマブなどの使用報告もある。

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SLEに伴う蛋白漏出性胃腸症

病態

蛋白漏出性胃腸症は血清蛋白質が消化管から漏出し、著しい低アルブミン血症をきたす疾患で、漏出する病変部位は胃から大腸まで存在しうる。漏出する機構としてはびらんや潰瘍に伴う消化管粘膜の損傷、消化管粘膜の透過性亢進、リンパ管閉塞によるリンパ液の漏出などが考えられている。尿中への蛋白漏出や蛋白摂取不足、重症肝臓疾患による蛋白合成低下などを鑑別除外してから蛋白漏出性胃腸症を疑う。鑑別疾患としては、悪性リンパ腫、Whipple病(Tropheryma whipplei感染症)、腹部結核、サルコイドーシスなどの腸管リンパ管拡張症をきたす疾患、消化管アレルギー、アミロイドーシス、NSAIDs胃腸症、クローン病、潰瘍性大腸炎などの消化器疾患、三尖弁閉鎖不全症、心房中隔欠損症、収縮性心外膜炎などにより静脈圧上昇を伴う心不全がある。頻度は高くないがSLEに伴う蛋白漏出性胃腸症がある。また、抗リン脂質抗体症候群から門脈血栓症をきたし腸管浮腫から蛋白漏出性胃腸症に進展した報告もある。

症状と検査

SLEに伴う蛋白漏出性胃腸症は、下痢や吐気、体重減少、倦怠感、発熱とともに消化管からの蛋白漏出により浮腫、腹水、胸水、心嚢液貯留などの症状がみられ、血清中ではアルブミン低下以外にガンマグロブリン、フィブリノーゲン、α1アンチトリプシンなどの血清蛋白の低下をきたし栄養低下状態となる。補体低下が見られることがある。腸管からリポ蛋白が漏出すると低コレステロールとなるが、リポ蛋白が漏れない場合は腎臓でのネフローゼ症候群と同様に肝臓でのコレステロール合成が高まり高コレステロールとなる。消化管粘膜生検では炎症細胞浸潤と腸絨毛の萎縮、粘膜下の浮腫が見られるが血管炎の所見はない。99mTc-ラベルヒト血清アルブミンシンチで消化管での漏出部位を確認する。放射線を用いない方法としてα1アンチトリプシン(α1AT)の腸管クリアランスを測定することでも蛋白漏出を証明できる。α1ATは消化酵素で分解されず、アルブミンと分子量が近い。α1ATクリアランスは「糞便中α1AT濃度mg/g x 一日糞便量g/day/血清α1AT濃度mg/ml」で表される。コントロールでは10ml/day以下であるが蛋白漏出性胃腸症では16.5-218ml/dayと報告されている。

治療

1970年から2001年のSLEに伴う蛋白漏出性胃腸症の症例をまとめた報告では、ステロイドで加療された30例のうち21例はステロイド単独、7例はcyclophosphamide併用、2例はazathioprine併用であった。いずれも治療に反応している。2001年以降のSLEに伴う蛋白漏出性胃腸症48例をまとめた香港の報告では平均年齢41歳、男女比 1対8.6とされている。死亡は1例だった。消化管粘膜は非びらん性の発赤とともに、63%で消化管粘膜固有層に炎症細胞の浸潤を認めている。貧血(96%)、白血球数低下(40%)、リンパ球数低下(35%)、CRP上昇(63%)、C3低下(94%)などの検査値異常頻度が報告されている。99mTc-ラベルヒト血清アルブミンシンチによるアルブミン漏出部位は、小腸(23%)、回腸末端/盲腸(33%)、上行結腸(23%)であった。寛解導入療法として63%がステロイドとazathioprine併用で行なわれ、その他 MMF、cyclophosphamide、tacrolimus、MTXなども使用されている。維持療法は69%がステロイドとazathioprine併用で行なわれた。蛋白尿の存在、過去の免疫抑制剤使用歴がある場合では導入治療の強化が必要となっている。蛋白漏出性胃腸症がSLEの初発症状だった例が44%あり、この場合は導入治療に対する反応性が良いようであった。

腎障害における尿蛋白の選択性

分子量の違いから、クリアランス比にして、TransferinはIgGよりも5倍以上、腎排泄され易い(Tf; α分画、IgG; γ分画)。

Selectivity Index (SI) = Clearance (IgG) / Clearance (Transferin)
= { Urinary (IgG) x UV / Serum (IgG) } / { U (Tf) x UV / S (Tf) }
= { U (IgG) / Serum (IgG) } / { U (Tf) / S (Tf) }

とすれば、SIは、1:5よりひらく、すなわち、SI≦0.2が高選択性(正常)である。
SI>0.2は、尿蛋白の選択性の低下を示唆する。

Selectivity indexの計算ページ

CNSループスの評価:IgG indexの計算(中枢神経系でのIgG産生の指標)

中枢神経系での炎症性蛋白(免疫グロブリン)増加の指標。

IgG index = ( CNS-IgG / CNS-Alb ) / ( serum-IgG / serum-Alb )

と、アルブミン濃度との相対的比較をすれば、IgGのCNS局所での増加(CNS-IgG)は、IgG indexの増加として反映される。
正常は、<0.6であるが、>0.8で中枢神経系でのIgG増加が示唆される。

IgG indexの計算ページ

疾患活動性の評価(BILAG Index)

SLEの活動性によると判断されるものが対象で、薬剤、感染症、不可逆性のもの(骨壊死、皮膚硬化など)は対象としない。
各カテゴリーは、A(重症)〜E(既往なし)に評価される(評価の基準は文献参照)。
総スコアは、カテゴリーA:9点、B:3、C:1、D:0、E:0、として合計する。

一般的全身症状

項目定義
1発熱体温>37.5℃
2体重減少 1ヶ月で>5%の体重減少。Lupusによるもので意図的なダイエットや合併症によるものでない。
3リンパ節腫脹/脾腫リンパ節腫脹:直径>1cmのリンパ節を触知
4易疲労/全身倦怠/脱力日常の活動が制限される重度のもの。日内変動する傾向がある。
5食欲低下/嘔気/嘔吐Lupus関連(薬物副作用、感染症などによるものは除く。

粘膜皮膚症状

項目定義
6斑状丘疹状皮疹−重症、活動性体表面積の>2/9。瘢痕性又は身体障害をきたすもの
7斑状丘疹状皮疹−軽症体表面積の<2/9。瘢痕性でない/身体障害がない
8活動性円板状皮疹−全身性、広汎性体表面積の>2/9
9活動性円板状皮疹−局所性体表面積の<2/9、深在性狼創を含む
10脱毛−重症、活動性頭皮の炎症を伴った異常なびまん性脱毛
11脱毛−軽症限局性、比較的活動性は少ない、頭皮の炎症がほとんどない
12皮下脂肪織炎体温>広汎な有痛性紅斑性皮下結節、重層の円板状皮膚病変を伴う
13血管浮腫(咽頭浮腫)生命をおびやかす(喘鳴、舌あるいは口唇を高度におかす
14広汎な粘膜潰瘍重層、深達性、日常生活に支障をきたすもの
15小粘膜潰瘍アフタ性潰瘍が1つ以上(有痛または無痛性)
16頬部紅斑 
17皮下結節 
18凍瘡様皮疹 
19爪周囲紅斑 
20手指の腫脹損傷の場合は記録しない
21手指に限局する皮膚硬化損傷の場合は記録しない
22皮下石灰化損傷の場合は記録しない
23毛細血管拡張損傷の場合は記録しない

神経系症状

項目定義
24意識レベルの低下薬剤、感染症、合併症によるものは除く
25急性精神症状、せん妄、又は錯乱状態妄想、幻覚、思考錯乱、明らかな非論理的思考、奇妙あるいは緊張性行動を特徴とする現実認識の重度の障害(薬物乱用、原発性精神障害に起因するものは除く)
26けいれん大発作他覚的に認めるもの
27脳卒中/脳虚血症状急性lupus炎症に起因するもの(動脈硬化、血栓塞栓、低血糖、血管奇形、腫瘍、膿瘍を除く)
28無菌性髄膜炎急性/亜急性の発現、頭痛、neck stiffness、発熱、髄膜刺激症状、脳脊髄液異常(蛋白上昇、リンパ球優位)
29多発性単神経炎炎症による複数の神経炎
30上行性又は横断性脊髄炎急速に進行する不全対麻痺、四肢不全麻痺、又は感覚レベル低下(髄内/髄外の占拠性病変によるものを除く
31末梢または脳神経障害急性の対称性の末梢又は中枢性の感覚及び/又は運動障害
32視神経乳頭浮腫/綿花状白斑 
33舞踏病薬剤性によるものを除く
34小脳性運動失調他の中枢神経症状とは別のもの、脳幹梗塞によらない。通常、亜急性に出現
35重度の持続性頭痛3日以上の持続的頭痛で非麻薬性鎮痛薬では寛解しない(頭蓋内の占拠性病変、及び中枢神経系への感染によるものは除く
36器質性うつ病Lupusに起因。身体症状を伴い、抗うつ剤治療を要する重度のうつ状態
37偽脳腫瘍を含む器質性脳症候群代謝異常、精神病または薬物に起因しない見当識障害、記憶障害その他の知的機能の障害。臨床症状が短期に発現し、日内変動する傾向がある。a)集中力及び周囲への関心持続の低下を伴う意識混濁、b)@認知障害:誤解、錯覚又は幻覚、A会話錯乱、B不眠又は日中眠気、C精神運動活動の亢進又は低下、c)失見当識及び記名力低下
38たまにみられる偏頭痛Lupusに起因する再発性の頭痛(通常4-72時間持続)

筋骨格系

項目定義
39筋炎以下の少なくとも3項目に該当:
・近位筋の筋力低下
・筋由来酵素の上昇(CPK)
・筋生検陽性所見
・筋電図異常所見
40機能障害を伴う重度の多関節炎2つ以上の活動性関節炎、関節可動域の低下
41関節炎1つ以上の活動性関節炎(圧痛、熱感、腫脹)で、可動域の低下を伴わない
42腱炎運動負荷によるものでない
43軽度の慢性筋炎上記39の基準の2又は3項目に該当または亜急性の炎症
44関節痛炎症所見を伴わない
45筋痛筋力低下やCPKの上昇を伴わない
46腱拘縮および固定性変形損傷(damage)の場合は記載しない
47無菌性骨壊死損傷(damage)の場合は記載しない

心血管系および呼吸器系

項目定義
48胸膜/心膜痛呼吸により悪化する限局性の胸痛、圧痛なし
49呼吸困難労作時呼吸困難
50心不全Lupus心筋炎、心内膜または弁の非感染性炎症による心不全
51心膜/胸膜摩擦音 
52心嚢液または胸水貯留 
53軽度または間欠性の胸痛非特異的
54進行性胸部X線変化(肺)Lupusによるもの
55進行性胸部X線変化(心)Lupusによるもの
56心膜炎または心筋炎の心電図所見 
57不整脈、発熱を伴わない、>100/minの頻脈を含むLupusによるもの
58>20%の肺機能低下 
59炎症性肺疾患の細胞組織学的所見Lupusによるもの

血管炎

項目定義
60皮膚血管炎、潰瘍を含む広汎な壊疽及び/または潰瘍形成
61血管炎による重度の急性腹症小腸または大腸、胆嚢などにおける画像診断及び/又は生検による診断
62再発性血栓塞栓症(脳卒中を除く) 
63レイノー現象 
64網状皮斑(Livedo reticularis) 
65浅部静脈炎 
66軽度皮膚血管炎爪周囲や指端の血管炎、紫斑、潰瘍、皮下梗塞、白血球破砕/過敏性血管炎など
67血栓塞栓症(脳卒中を除く)、初発 

腎症

項目定義
68収縮期血圧 
69拡張期血圧 
70悪性高血圧 
71尿蛋白定性 
721日尿蛋白 
73>1g/日の尿蛋白の新たな出現 
74ネフローゼ症候群尿蛋白>3.5g/day、低アルブミン
75クレアチニン 
76クレアチニンクリアランス 
77活動性尿沈さ膿尿(>5WBC/HPF)、血尿(>5RBC/HPF)、または赤血球円柱
78活動性腎炎の組織学所見(3ヶ月以内)WHO分類による活動性腎炎の所見、硬化性病変のみでは活動性腎炎の所見とみなさない

血液

項目定義
79ヘモグロビンLupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘
80白血球数Lupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘
81好中球数Lupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘
82リンパ球数Lupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘
83血小板数Lupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘
84溶血を示す検査所見クームス試験陽性および溶血の所見(ビリルビン上昇、または網状赤血球数上昇、又はハプトグロビン減少)
85クームス試験陽性クームス試験陽性のみで溶血の所見なし
86ループス抗凝固因子を示す検査所見ループス抗凝固因子、抗カルジオリピン抗体、又は他の抗リン脂質抗体が陽性
* 【出典】Symmons et al. Development and assessment of a computerized index of clinical disease activity in systemic lupus erythematosus. Members of the British Isles Lupus Assessment Group (BILAG). Q. J. Med. 69; 927-37. 1988.
* Stoll et al. Further validation of the BILAG disease activity index in patiens with systemic lupus erythematosus. Ann. Rheum. Dis. 555:756-60. 1996.

SLEDAI (SLE disease activity index)

WtDescriptorDefinition
8Seizure
痙攣
Recent onset. Exclude metabolic, infectious or drug cause
8Psychosis
精神症状
Altered ability to function in normal activity due to severe disturbance in the perception of reality. Include hallucinations, incoherence, marked loose associations, impoverished thought content, marked illogical thinking, bizarre, disorganized, or catatonic behavior. Excluded uremia and drug causes.
8Organic Brain Syndrome
器質的脳障害
Altered mental function with impaired orientation, memory or other intelligent function, with rapid onset fluctuating clinical features. Include clouding of consciousness with reduced capacity to focus, and inability to sustain attention to environment, plus at least two of the following: perceptual disturbance, incoherent speech, insomnia or daytime drowsiness, or increased psychomotor activity. Exclude metabolic, infectious or drug causes.
8Visual Disturbance
視力障害
Retinal changes of SLE. Include cytoid bodies, retinal hemorrhages, serious exodate or hemorrhages in the choroids, or optic neuritis. Exclude hypertension, infection, or drug causes.
8Cranial Nerve Disorder
脳神経障害
New onset of sensory or motor neuropathy involving cranial nerves.
8Lupus Headache
ループス頭痛
Severe persistant headache: may be migrainous, but must be nonresponsive to narcotic analgesia.
8CVA
脳血管障害
New onset of cerebrovascular accident(s). Exclude arteriosclerosis.
8Vasculitis
血管炎
Ulceration, gangrene, tender finger nodules, periungual, infarction, splinter hemorrhages, or biopsy or angiogram proof of vasculitis
4Arthritis
関節炎
More than 2 joints with pain and signs of inflammation(i.e. tenderness, swelling, or effusion).
4Myositis
筋炎
Proximal muscle aching/weakness, associated with elevated creatine phosphokinase/aldolase or electromyogram changes or a biopsy showing myositis.
4Urinary Casts
尿円柱
Heme-granular or red blood cell casts.
4Hematuria
血尿
>5 red blood cells/high power field. Exclude stone, infection or other cause.
4Proteinuria
蛋白尿
>0.5gm/24hours. New onset or recent increase of more than 0.5gm/24 hours.
4Pyuria
膿尿
>5 white blood cells/high power field. Exclude infection.
2New Rash
新たな皮疹
New onset or recurrence of inflammatory type rash.
2Alopecia
脱毛
New onset or recurrence of abnormal, patchy or diffuse loss of hair.
2Mucosal Ulcers
粘膜潰瘍
New onset or recurrence of oral or nasal ulcerations
2Pleurisy
胸膜炎
Pleuritic chest pain with rub or effusion, or pleural thickening.
2Pericarditis
心膜炎
Pericardial pain with at least 1 of the following: rub, effusion, or electrocardiogram confirmation.
2Low complement
低補体血症
Decrease in CH50, C3, or C4 below the lower limit of normal for testing laboratory.
2Increased DNA binding
抗DNA抗体上昇
>25% binding by Farr assay or above normal range for testing laboratory.
1Fever
発熱
>38℃, Exclude infectious cause
1Thrombocytepenia
血小板減少
<100,000 platelets/mm3.
1Leukopenia
白血球減少
<3,000 WBC/mm3. Exclude drug causes.
* 【出典】Bombardier C., Gladman DD., Urowitz MB., Carton D., Chang CH. Derivation of the SLEDAI. A disease activity index for lupus patients. The Committee on Prognosis Studies in SLE. Arthritis Rheum, 35(6): 630-640. 1992.
2012/Aug