免疫アレルギー内科TOPページ » 免疫疾患の診療 » 関節リウマチの診療
免疫学的機序により引き起こされた多発滑膜炎であり、関節の腫脹や疼痛に留まらず、軟骨や骨の破壊により関節機能を障害し、日常生活を著しく損なうため早期診断早期治療が必要である。21世紀に入り生物学的製剤が登場した。抗体が出来て病を逃れることを免疫というが、関節リウマチの病態に鍵となる物質に対する抗体(あるいは阻害蛋白質)を人工的に製造し、点滴あるいは皮下注射することにより病を逃れる内科的治療である。こうした生物学的製剤により高い治療効果が見込めるようになり関節リウマチの診療が大きく変化してきた。疾患活動性の評価方法や治療方針だけでなく診断基準までもが新しくなり、疾患概念さえ変化しつつある。
日本人の有病率は0.3-1.5%程度で、(患者数は約50万-100万人)。男女比は約1:3で女性に多く、好発年齢は30-50才。環境要因と遺伝要因が重要とされている。環境要因としては喫煙や腸内細菌叢や歯周病などの感染が、遺伝要因としてHLA-DRB1やPTPN22, REL, TRAF1、PADI4などT細胞活性化関連遺伝子やNF-κB関連遺伝子、シトルリン化関連遺伝子などが抽出されており、ある種の遺伝的背景を持った人が環境要因により免疫寛容が破綻し発症するものと考えられている。関節炎発症に先立ち、自己抗原のシトルリン化により免疫寛容が破綻し抗シトルリン蛋白抗体(ACPA)のような自己免疫が成立する。CD20陽性細胞による自己抗体の産生や、T細胞受容体刺激によるT細胞の活性化、特にTh17細胞の誘導により滑膜炎がおこる。さらにIL-6などの炎症性サイトカインの刺激を受け滑膜炎が慢性化し腫瘍性に増殖することによりいわゆるpannusが形成される。pannusはTNFα, IL-1, IL-6等の炎症性サイトカインを産生し、軟骨を破壊するMMP-3のような蛋白分解酵素や、RANKLによる破骨細胞の誘導などが起こり関節を破壊して行く。さらに関節破壊による物理的刺激により破壊の悪循環が生じ、最終的に関節が変形し、固定化し、関節の強直に至る。関節で産生された炎症性サイトカインは血流にのって全身にもさまざまな影響を及ぼす。肝臓での急性期蛋白の産生や、脂質代謝異常、インスリン抵抗性、動脈硬化、骨粗鬆症が出現する。また全身的な免疫活性化により間質性肺炎、シェーグレン症候群、リンパ腫やアミロイドーシスの合併などが見られることがある。
末梢の小関節、特に手指MCP関節、PIP関節や手関節、足趾MTP関節などに好発する多発関節炎である。関節変形として、スワンネック変形やボタンホール変形、尺側偏位が有名。滑膜の存在しない脊椎は通常障害されないが、頸椎の環軸関節には滑膜が存在するため障害されることがある。
活動性の高い関節リウマチでは関節外症状がみられることがある。関節近傍伸側に見られる皮下結節であるリウマトイド結節や間質性肺炎もしばしば見られる。関節外の血管炎症状(潰瘍などの皮膚症状や眼強膜炎末梢神経障害など)を合併する場合は特に悪性関節リウマチとして区別する。
診察所見や患者の訴えなどを含めた総合的な活動性評価が関節リウマチの疾患活動性の指標として用いられている。これまでLansbury指数やACRコアセット、DAS28法等が用いられてきたが現在ではDAS28 法を改良したCDAI(Clinical Disease Activity Index)、SDAI (Simple Disease Activity Index) が用いられている。

関節リウマチの原因と関係するとされる免疫異常を示す血液検査として、リウマトイド因子、抗CCP抗体(anti-cyclic citrullinated peptide antibody; ACPA)がある。疾患活動性の指標となる血液検査として炎症所見を示す赤血球沈降速度(ESR)、C反応性蛋白(CRP)、血清アミロイドA蛋白(SAA)とマトリクスメタロプロテナーゼ3(MMP-3)がある。単純レントゲン検査にて軟骨破壊による関節裂隙の狭小化や骨破壊による骨びらんを観察することにより関節破壊を評価する。関節MRIは関節びらんがレントゲンより早く把握できる以外に、滑膜炎や骨髄浮腫など単純レントゲンで得られない情報が得られる。また関節超音波法はベッドサイドで簡単に関節の画像評価ができるだけでなく滑膜血流をドップラー法で評価する事により関節滑膜の質的な評価ができる特徴がある。診断はこれまで用いられていた1987年の診断基準が早期診断に不向きなため2010年に新しい診断基準が作られた。1カ所でも関節破壊が認められれば関節リウマチとし、関節破壊がなくても関節リウマチと診断できるようになり、早期診断が可能になった。
関節炎による関節痛や関節腫脹を軽減するだけでなく、関節破壊の進行を抑止し日常生活機能を維持することを目的に行なう。そのために薬物療法、手術療法、リハビリテーション等の機能回復訓練が行なわれる。薬物療法としては主に非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、抗リウマチ薬(DMARDs)、ステロイド、生物学的製剤が用いられる。
アラキドン酸カスケードにおいてcyclooxygenase(COX)を阻害することにより疼痛発熱物質であるプロスタグランジンを抑制して関節痛を緩和する。恒常的に発現しているCOX1と炎症時に発現が誘導されるCOX2がある。COX1阻害作用の強いものは胃粘膜の血流阻害による消化性潰瘍の副作用があり、COX2選択的阻害剤(セレコキシブなど)の使用が望ましい。免疫反応そのものは改善させず、鎮痛を目標にした補助的な治療法である。
生物学的製剤が登場するまで関節リウマチの自然経過を変えうる薬剤DMARDsとして治療の中心を担ってきた。この薬剤は関節リウマチの活動性を抑制するが、効果発現にやや期間(1-3月)がかかる。免疫抑制作用により効果発現すると考えられているが作用機序は明確ではないものもある。葉酸代謝拮抗剤であるMethotrexate(MTX)を少量間欠的に投与する方法(週1?2日のみ内服、16mg/週まで投与可能)でMTXは「anchor drug」として関節リウマチの治療では世界の標準的治療法とされている。それでも効果不十分の場合には生物学的製剤を考慮することになる。他にSalazosulfapyridineやBucillamineなどがある。
関節痛の抑制だけでなく免疫抑制によりリウマチ活動性も抑制できる強力な薬剤である。1948年に関節リウマチに投与されて初めてその抗炎症作用が知られるようになったが、骨粗鬆症を含む多彩な副作用が高頻度で出現し注意を要する。DMARDs等が副作用で使用困難な場合や、早期の一時的な活動性抑制などで現在でも使用され、少量であれば関節破壊抑制効果も報告されている。
関節リウマチの病態にかかわる重要な物質を、中和抗体や受容体細胞外領域を利用してピンポイントで抑制する薬剤として、理論的に創薬された。その劇的な効果により現在の関節リウマチの内科的治療の中心となっている。炎症性サイトカインであるTNFを阻害するTNF阻害薬は最初に開発された生物学的製剤であり製剤の種類も多い。効果発現が早く高い緩解導入率が期待できるが、効果減弱による脱落も認められる。十分な効果を発揮するにはMTXとの併用が望ましい。非TNF阻害薬はTNF阻害薬に比べると比較的効果発現が遅いが一度効果が見られれば脱落率は低く、またMTXとの併用がTNF阻害薬ほど重要でないのでMTXが使用しにくい場合で用いられる。今後さらにペグ化抗体、biosimilarと呼ばれるジェネリック抗体製剤や免疫活性化機構での細胞内信号伝達を阻害するJAK3阻害薬など、新たな薬剤の開発もなされている。
関節破壊が進行してしまうと薬物療法では関節機能の改善は見込めない。そこで関節破壊が進行した患者において手術療法による機能改善が必要になる。最近は生物学的製剤の進歩で、関節破壊の抑制がかなりできるようになった。そのため大関節の手術(膝関節、股関節などの人工関節置換手術)は減少傾向となっているが、手指などの小関節の機能改善手術はむしろ増加している。
2008年のアメリカリウマチ学会の推奨では疾患活動性、予後因子の存在、発症時期などにより治療方針を決定する。疾患活動性があればMTXを使用し効果不十分であればできるだけ早く生物学的製剤を使用する「tight control」の考え方が打ち出された。さらに2010年にはヨーロッパ、アメリカのリウマチ学会合同の提言では、治療は寛解を目標に達成できなければ1-3ヶ月ごとに治療方法を見直すべきであると言う「treat to target (T2T)」という治療継続の方針が示されており、関節破壊が進行する前に積極的な治療を行う。関節リウマチの関節予後は治療により劇的に改善している。過去には関節リウマチのない人に比べて生命予後は約10年程度短いとされ、その原因として心血管イベントの増加が指摘されている。しかし、生物学的製剤の登場により心血管イベントの抑制作用までも報告されつつあり、関節機能改善による生活の質の向上のみならず、生命予後の改善までも目指せるようになってきている。
| A | 罹患関節 | ||
| 大関節1ヶ所 | 0 | * 大関節:肩、肘、股、膝、足 | |
| 大関節2〜10ヶ所 | 1 | ||
| 小関節1〜3ヶ所 | 2 | * 小関節:PIP, MCP, 2-5MTP, wrist | |
| 小関節4〜10ヶ所 | 3 | ||
| 11ヶ所以上(1ヶ所以上の小関節) | 5 | * ここに、顎・胸鎖・肩鎖関節を含めてよい | |
| B | 血清学的検査 | ||
| RF(-)かつ抗CCP抗体(-) | 0 | ||
| いづれかが低値陽性 | 2 | ||
| いずれかが高値陽性 | 3 | * 高値:正常上限の3倍を超えるもの | |
| C | 急性期反応物質 | ||
| CRP正常かつESR正常 | 0 | ||
| CRP、ESRのいずれかが異常 | 1 | ||
| D | 症状の持続 | ||
| 6週未満 | 0 | ||
| 6週以上 | 1 |

| 関節部位 | 関節数 |
| 肩関節 | 2 |
| 肘関節 | 2 |
| 手関節 | 2 |
| 手指(DIP除く) | 20 |
| 膝関節 | 2 |
| 合計28関節 |
DAS28-ESRの計算
DAS28-CRPの計算
**DAS scoreのサイト( http://www.das-score.nl/www.das-score.nl/index.html )より引用、作成
| 関節部位 | 関節数 |
| 頚椎部 | 1*疼痛のみ |
| 顎関節 | 2 |
| 胸鎖関節 | 2 |
| 肩関節 | 2 |
| 肘関節 | 2 |
| 手関節 | 2 |
| 手指(DIP除く) | 20 |
| 股関節 | 2*疼痛のみ |
| 膝関節 | 2 |
| 足関節 | 2 |
| 足根骨部 | 2 |
| 足し関節 | 10 |
| 疼痛49関節/腫脹46関節 |

| ・靴紐を結びボタンかけも含め自分で身支度ができますか? |
|---|
| 難なくできる(0点) / 少し難しい(1点) / かなり難しい(2点) / できない(3点) |
| ・寝床に入ること、寝床からおきることができますか? |
| 難なくできる(0点) / 少し難しい(1点) / かなり難しい(2点) / できない(3点) |
| ・茶碗やコップを口元まで運べますか?? |
| 難なくできる(0点) / 少し難しい(1点) / かなり難しい(2点) / できない(3点) |
| ・戸外の平坦な地面を歩けますか? |
| 難なくできる(0点) / 少し難しい(1点) / かなり難しい(2点) / できない(3点) |
| ・身体全体を洗いタオルで拭くことができますか? |
| 難なくできる(0点) / 少し難しい(1点) / かなり難しい(2点) / できない(3点) |
| ・腰を曲げて床にある衣類を拾えますか? |
| 難なくできる(0点) / 少し難しい(1点) / かなり難しい(2点) / できない(3点) |
| ・蛇口を開けたり閉めたりできますか? |
| 難なくできる(0点) / 少し難しい(1点) / かなり難しい(2点) / できない(3点) |
| ・車の乗り降りができますか? |
| 難なくできる(0点) / 少し難しい(1点) / かなり難しい(2点) / できない(3点) |
| 分類 | 一般名 | 注意すべき副作用 |
|---|---|---|
| 免疫調節薬 | 金オリゴリン酸ナトリウム | 皮疹、蛋白尿 |
| オーラノフィン | 下痢、軟便 | |
| D-ペニシラミン | 皮疹、蛋白尿、肝障害、血小板減少、自己免疫疾患の誘発 | |
| サラゾスルファピリジン* | 皮疹 | |
| ブシラミン* | 皮疹、蛋白尿 | |
| アクリタット | 皮疹 | |
| 免疫抑制薬 | メソトレキセート* | 間質性肺炎、骨髄障害、肝障害 |
| レフルノミド | 間質性肺炎、骨髄障害、肝障害、下痢 | |
| ミゾリビン | 高尿酸血症 | |
| タクロリムス | 腎障害、耐糖能異常、高血圧 | |
| 生物学的製剤 |
*推奨度A(厚生労働省研究班、EBMに基く診療ガイドライン)
Last update: May 2012