多発性筋炎 / 皮膚筋炎|大阪大学 免疫アレルギー内科

免疫疾患の診療

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多発性筋炎(多発筋炎)/ 皮膚筋炎: Polymyositis (PM) / Dermatomyositis (DM)

概要

横紋筋を広範に障害する炎症性筋疾患には、多発性筋炎と皮膚症状を伴う皮膚筋炎がある。左右対称性の近位筋痛や近位筋力低下に、筋酵素や炎症マーカーの上昇を伴う急性〜亜急性の疾患である。間質性肺炎や悪性腫瘍の合併がみられることがある。男女比1:3と女性に多く、有病率は10万人当たり2〜5人。

両疾患の筋症状は似ているが、免疫学的機序は異なり、多発性筋炎では細胞傷害性CD8+T細胞が筋線維を傷害し、皮膚筋炎では血管周囲に浸潤したCD4+T細胞を中心にした液性免疫による血管炎が筋傷害に関与しているという考えがある。

多発性筋炎および皮膚筋炎の組織の図

症状

発熱、倦怠感、体重減少などの炎症による全身症状に加え、筋肉痛、筋力低下により手が挙がりにくい・椅子から立ち上がりにくいなどの症状を自覚する。頚部筋の筋力低下により、枕から頭を上げにくくなる。嚥下障害をきたすことがあり、誤嚥性肺炎の発生に注意する。関節炎を伴い関節痛を訴えることもある。

皮膚筋炎では、ゴットロン徴候(手指関節背側の紅色皮疹・角化性紅斑(肘や膝の伸側にもみられることがある)、ヘリオトロープ疹(上眼瞼の浮腫性紅斑)、ショール徴候(胸や肩に広がる紅班)などの皮膚症状を伴う。

検査所見

筋肉の炎症により筋酵素(クレアチンキナーゼ(CKまたはCPK)、アルドラーゼ(ALD)、ミオグロビンが上昇する。発熱とともにCRPなど炎症マーカーの上昇を伴うことがある。筋組織崩壊ではAST、ALT、LDHも上昇し、これらは治療薬(methotrexate、azathioprineなど)による肝障害時にも上昇するため鑑別が必要である。

筋炎特異的自己抗体の研究から、自己抗体と臨床症状との関連付けが報告されている。抗Jo-1抗体(アミノアシルtRNA合成酵素の一つであるヒスチジルtRNA合成酵素に対する抗体)陽性では、間質性肺炎を合併しやすい。抗SRP(シグナル認識粒子)抗体陽性ではステロイド抵抗性が多い。抗MDA5抗体(抗CADM140抗体)陽性は皮膚筋炎に特異的だが、筋症状が少ない急速に進行する間質性肺炎合併が多い。

MRI画像では、筋の炎症性浮腫を反映してSTIR像や脂肪抑制T2強調像で高信号を示す。筋電図では、筋原性の所見(随意運動時の低振幅電位、安静時の自発電位)がみられる。筋力低下部位、MRI有所見部位から筋生検を行う。多発性筋炎では、主に筋線維束の個々の筋線維周囲にCD8+T細胞優位な細胞浸潤がみられ、筋線維表面の抗原を細胞傷害性T細胞が認識していると考えられている。皮膚筋炎では、筋線維束の辺縁部に位置する筋線維の萎縮が特徴的で、筋線維束周辺の間質、特に血管周囲にCD4+T細胞優位な細胞浸潤を特徴とし、免疫複合体などの液性因子の関与による血管炎が筋傷害をおこしている。細血管を傷害し壊死性血管炎をみることもある。

多発性筋炎/皮膚筋炎に伴う間質性肺炎(胸部レントゲン、胸部CT、血清KL-6上昇などで診断)は、抗Jo-1抗体陽性例にみられやすく、non-specific interstitial pneumonia(NSIP)が多く、organizing pneumonia(OP)、usual interstitial pneumonia(UIP)などもあげられる。心筋炎や刺激伝導系障害から心不全、不整脈をきたすことがある。また、多発性筋炎/皮膚筋炎では、悪性腫瘍の合併率が高く、悪性腫瘍のスクリーニングを行うことが望ましい。

診断

多発性筋炎/皮膚筋炎の診断基準(厚生労働省2015年改訂)に基づく。鑑別として、CKの上昇を確認した場合、まず心筋梗塞や心筋炎などの重篤な循環器疾患を除外するため、心電図や心筋特異的なCK-MBの測定などにより早期に鑑別しておく。事故による外傷、熱中症、脱水、低カリウム血症、HMG-CoA還元酵素阻害剤などの薬剤、などによる横紋筋融解症で、筋痛、脱力を生じCKが著増することがある。体育会系の激しい運動でもCKが著増することがある。甲状腺機能低下症でもCK上昇するため、鑑別が必要である。また、成人発症の筋ジストロフィーなどでも炎症細胞の浸潤がみられることがあり、鑑別が必要である。高齢者でCKの上昇が数倍程度の場合は封入体筋炎も考慮する。ミオグロビン上昇はないが、CKが上昇する場合はマクロCK血症を疑う。免疫グロブリンがCKと結合し検査上の高値を示す。

PM/DMの診断基準:厚生労働省2015年

項目
1.皮膚症状: ヘリオトロープ疹 or ゴットロン徴候 or ゴットロン丘疹
2.上肢または下肢の近位筋の筋力低下
3.筋肉の自発痛または把握痛
4.CKまたはALD上昇
5.筋炎を示す筋電図変化
6.関節炎・関節痛
7.全身性炎症(発熱, CRP, ESR)
8.抗ARS抗体(抗Jo1抗体を含む)
9.筋生検(Degeneration, cell infiltration)
* 皮膚筋炎 : 1 と 2から9の項目中4項目以上
* 皮膚症状のみで皮膚病理学的所見が皮膚筋炎に合致するものは無筋炎性皮膚筋炎とする
* 多発性筋炎: 2から9の項目中4項目以上
* 鑑別:感染による筋炎、薬剤・内分泌異常に基くミオパチー、筋ジストロフィー、先天性筋疾患、他の皮膚疾患

PM/DMの診断基準:Bohan & Peterの診断基準

項目
1.四肢近位筋、頚部屈筋の対称性筋力低下
2.筋原性酵素上昇(CK. ALD, AST, ALT, LDH)
3.定型的筋電図所見
i) polyphasic, short, small, motor unit potentials
ii) fibrillation, positive sharp waves, increased insertional irritability
iii) bizarre high frequency, repetitive discharge
4.定型的組織所見:筋線維の変性、壊死、萎縮、再生、炎症細胞浸潤
5.定型的皮膚症状:ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候、関節伸側の落屑性紅斑
* definite: 4項目以上(皮膚筋炎は5を含む), probable: 3項目以上(皮膚筋炎は5を含む), possible: 2項目以上(皮膚筋炎は5を含む)
* Polymyositis and dermatomyositis. Bohan A, Peter JB. N Engl J Med. Feb 13;292(7):344-7, 1975

治療

通常大量のステロイド薬(プレドニゾロン換算で0.75〜1mg/kg)から開始し3-4週間維持したあと、2-3週間隔で10%づつ(もしくは週5mg程度づつ)減量する。ステロイド減量時に再燃するようなら免疫抑制剤(azathioprine、tacrolimus(多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎に適用)、cyclosporine(保険適用外)、methotrexate(保険適用外)など)を併用する。免疫抑制薬の併用がステロイド減量を容易にする場合がある。

難治症例に対しては、ガンマグロブリン大量静注療法を検討してよい。嚥下障害をきたすと筋炎沈静化後も障害が長く続くことがあり、免疫抑制薬の併用、ガンマグロブリン投与も含めた早期からの積極的治療を検討する。免疫抑制剤に抵抗性の多発性筋炎に対してtocilizumabの投与によって軽快した症例を当科より報告した。

悪性腫瘍、あるいは心筋障害や難治性間質性肺炎を合併すると予後は不良となる。筋症状を伴わない皮膚筋炎(amyopathic DM)は急速進行性の重篤な間質性肺炎を合併することがあり、早期にcyclophosphamide pulse療法を含む強力な免疫抑制療法を必要とし、場合によってはcyclosporineなども併用する。特にフェリチン高値を伴う場合は予後不良である。

ステロイド筋症の合併

治療に大量のステロイドを使用するためステロイドによる筋量の減少が見られることがある(ステロイドミオパチー)。CK値が正常化しているにもかかわらず筋力の回復が遅れる、あるいは筋力低下が進行する場合、ステロイドミオパチーの合併に気をつける。長時間作用性のフッ化ステロイドでおこしやすい。%クレアチン尿 = 尿中クレアチン(g/day) / [尿中クレアチン(g/day)+尿中クレアチニン(g/day)] を測定する。健常人では10%未満であるがステロイドミオパチーでは上昇する場合がある。経時的測定も大切である。この機序による筋力低下はステロイド減量によって徐々に回復する。

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