血管炎症候群の分類|大阪大学 免疫アレルギー内科

免疫疾患の診療

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2012年 国際Chapel Hillコンセンサス会議による血管炎の改訂命名

概要

血管炎の名称を定めた1994年のChapel Hill会議を改訂し、名称を適切なものに変更するため2012年に再びChapel Hill会議が開催され、血管炎の名称が変更、追加された。


大・中・小血管炎の病変分布から3つに主分類されるが、病変には重複があり、どのサイズの血管に対しても影響を及ぼすことがある。(Jennette JC et al. Arthritis Rheum 2012 より改変)

(1)大血管炎(Large Vessel Vasculitis: LVV)

大動脈とその主要分岐動脈に主に病変がある。筋肉、神経、腎臓、皮膚などの臓器内の血管は大血管に含まない。

高安動脈炎Takayasu Arteritis: TKA
巨細胞性動脈炎Giant Cell Arteritis: GCA

高安動脈炎は、通常50歳以下で発症する。一方、巨細胞動脈炎は、通常50歳以上で発症し、側頸動脈、浅側頭動脈、椎骨動脈の分岐が侵されることがある。必ずしも側頭動脈を侵さないので"側頭動脈炎"の名称は不適切とされた。また必ずしも病変部位に巨細胞を認めるものでもない。

(2)中血管炎(Medium Vessel Vasculitis: MVV)

内臓動脈とその分岐である中動脈に主に病変がある。大血管炎より発症が急で壊死を伴いやすい。炎症性動脈瘤や狭窄を伴う。

結節性多発動脈炎Polyarteritis Nodosa: PAN
川崎病Kawasaki Disease: KD

結節性多発動脈炎は、中動脈の壊死性動脈炎であり、糸球体腎炎や小血管炎を伴わない。ANCA(抗好中球細胞質抗体)との関連はない。川崎病は、中・小動脈に病変がある血管炎で、皮膚粘膜リンパ節症候群を伴う。しばしば冠動脈が侵される。大動脈などの大血管が侵されることもある。乳幼児に発症が多い。

(3)小血管炎(Small Vessel Vasculitis: SVV)

実質内の小動脈、細動脈、毛細血管、細静脈などの小血管に主に病変がある。中動脈や中静脈が侵されることもある。ANCAが産生されるか、血管壁へ免疫複合体が沈着するか、で2つに分類される。

ANCA関連血管炎(ANCA Associated Vasculitis: AAV)

MPO(myeloperoxidase)-ANCAやPR3(proteinase 3)-ANCAと関連した壊死性血管炎。免疫複合体の沈着は殆どない。全ての患者がANCA陽性ではなくANCA陰性のAAVが存在する。

顕微鏡的多発血管炎Granulomatosis with Polyangitis: GPA
多発血管炎性肉芽腫症(旧Wegener肉芽腫症)Granulomatosis with Polyangitis: GPA
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧Churg-Strauss症候群)Eosinophilic Granulomatosis with Polyangitis: EGPA

顕微鏡的多発血管炎では、糸球体腎炎、肺毛細血管炎、末梢神経障害がしばしば生じる。通常肉芽腫はない。多発血管炎性肉芽腫症は、上・下気道の肉芽腫性ならびに壊死性の血管炎である。壊死性糸球体腎炎もしばしばみられる。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は、主に気道に好酸球に富んだ肉芽腫性ならびに壊死性の血管炎で好酸球増加および気管支喘息を伴う。好酸球浸潤を伴う肺、心筋、消化管、末梢神経などの炎症もしばしばみられる。

免疫複合体性小血管炎(Immune Complex Small Vessel Vasculitis)

主に小血管の血管壁に免疫グロブリンや補体成分の沈着を、中等度から高度に伴う血管炎。糸球体腎炎をしばしば伴う。

抗GBM抗体関連疾患Anti-GBM Disease
クリオグロブリン血管炎Cryoglobulinemic Vasculitis: CV
IgA血管炎(旧Henoch-Schonlein紫斑病)IgA Vasculitis: IgAV
低補体蕁麻疹様血管炎(抗C1q血管炎)Hypocomplementemic Urticarial Vasculitis: HUV(anti-C1q Vasculitis)

抗GBM抗体関連疾患は、肺、腎糸球体の毛細血管に生じる血管炎で、抗基底膜抗体すなわち抗GBM(Glomerular basement membrane)抗体が沈着する。肺出血、壊死や半月体形成を伴う糸球体腎炎を生じる。両臓器が侵される場合が旧Goodpasture症候群である。クリオグロブリン血管炎は、小血管にクリオグロブリン沈着を伴う血管炎で、皮膚、糸球体、末梢神経がしばしば侵される。IgA血管炎では、皮膚や消化管に小血管にIgA1優位な沈着がみられ、しばしば関節炎を伴う。IgA腎症と区別できない糸球体腎炎を伴うことがある。糖鎖修飾異常によって生じたIgA1に対するIgG抗体が免疫複合体を形成し沈着する。低補体蕁麻疹様血管炎は、蕁麻疹と低補体血症を伴う小血管炎。抗C1q抗体と関連する。糸球体腎炎、関節炎、閉塞性肺疾患、炎症性眼病変が見られる。

(4)多彩な血管を侵す血管炎(Variable Vessel Vasculitis: VVV)

大・中・小血管など様々なサイズの血管、あるいは動脈、静脈、毛細血管など様々な血管に病変がある血管炎。

ベーチェット病Behcet's Disease: BD
コーガン症候群Cogan's Syndrome: CS

ベーチェット病は、口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍や外陰部潰瘍を特徴とし、皮膚、眼、関節、消化管、中枢神経系などに炎症性病変を伴う。小血管炎、血栓性血管炎、血栓症、動脈炎、動脈瘤などを生じる。コーガン症候群は、結膜炎、上強膜炎、強膜炎、ブドウ膜炎などの炎症性眼病変と、感音性難聴、前庭機能障害などの内耳疾患を特徴とする。眼の小血管炎は無血管である角膜実質にまで及び特徴的な角膜実質炎を呈する。大・中・小動脈の動脈炎、大動脈炎、大動脈瘤、大動脈弁膜炎、僧帽弁膜炎などの血管病変が生じる。

(5)単一臓器での血管炎(Single Organ Vasculitis: SOV)

単一の臓器に生じる様々なサイズの動脈、静脈の血管炎。全身性血管炎を示唆する特徴がない。単一臓器での血管炎と診断された後、他の症状が現れ全身性血管炎の診断に変わることもある。例えば、皮膚動脈炎が後に結節性多発動脈炎に再診断されるなど。

皮膚白血球破砕血管炎Cutaneous Leukocytoclastic Angitis
皮膚動脈炎Cutaneous Arteritis
原発性中枢神経系血管炎Primary CNS Vasculitis
弧発性大動脈炎Isolated Aortitis

(6)全身疾患に関連した血管炎(Vasculitis Associated with Systemic Disease)

ループス血管炎Lupus Vasculitis
リウマトイド血管炎Rheumatoid Vasculitis
サルコイド血管炎Sarcoid Vasculitis

(7)病因が判明している血管炎(Vasculitis Associated with Probable Etiology)

C型肝炎ウイルス関連クリオグロブリン血管炎Hepatitis C Virus-Associated Cryoglobulinemic Vasculitis
B型肝炎ウイルス関連血管炎Hepatitis B Virus-Associated Vasculitis
梅毒関連大動脈炎Syphilis-Associated Aortitis
薬剤関連免疫複合体性血管炎Drug-Associated Immune Complex Vasculitis
薬剤関連ANCA関連血管炎Drug-Associated ANCA-Associated Vasculitis
腫瘍関連血管炎Cancer-Associated Vasculitis

参考文献

* Jennette JC et al. 2012 revised international Chapel Hill consensus conference nomenclature of vasculitides. Arthritis Rheum 2012
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2014/Nov, 2012/Dec