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若年型甲状腺癌研究会(JCJTC)について

がん、というと早く見つけて早く治療しないと手遅れになる病気、というイメージがあると思います。しかし、最近若年者において発生初期には比較的急速に増大するものの、途中で成長を止めて一生悪さをしないという、まるでウサギとカメの話に出てくる昼寝してしまうウサギのようなタイプの甲状腺がんが高頻度で存在することがわかってきました。このようなタイプの若年型甲状腺がんが、成人の中高年で発見される甲状腺がんとどのような関係にあるのかはまだ十分わかっていません。しかしそこに焦点を当ててみることは医学的に喫緊の課題となっています。なぜなら、治療の必要のないがんを見つけてしまうことを過剰診断と呼びますが、若年者の甲状腺がんを過剰診断してしまうと心理的・社会的不利益を伴うことで中高年の方々よりもより深刻な被害をもたらしてしまうことが懸念されるからです。

2011年以降、福島県の若年者を中心に甲状腺がんの罹患率がけた違いの上昇を示しています。そのほとんどは甲状腺超音波検査でたまたま見つかったものであり、多くが過剰診断の例である可能性が高いと考えられています。国連科学委員会は、2011年の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故による一般の方々の被ばく量は、統計的に放射線影響を見ることができないくらい低いと報告しています。若年型の甲状腺がんの自然史と過剰診断に関する世の中の理解が進まなければ、低線量の放射線の影響についても大きな誤解や混乱が生じます。また、過剰診断の可能性が高いと判断される現在の状況で甲状腺がんの超音波スクリーニングを続けることは、対象者にとってかえって不利益をもたらす懸念があります。

このような状況は将来のある若者に健康被害が及ぶ可能性があるため早急な対策が必要です。一方、大規模な検診事業に伴って過剰診断が発生した場合は様々な利害関係が発生し、正しい科学情報の伝達がブロックされてしまうことで適切な対応が取れなくなってしまう現象が起こることが過去の事例からもわかっています。このような現状を鑑み、国内外の専門家が学会横断的に集まって結成された組織が若年型甲状腺癌研究会(JCJTC)です。それぞれの専門家が所属する団体の利害を離れてガイドラインの作成や講演会を通じて科学的に正確な情報を提供することで診療の適正化の道しるべを示すと同時に、従来のがんの概念では理解しがたい若年型甲状腺がんに関する調査・研究を行っていきます。この活動が国家レベルで発生した過剰診断の被害の抑制のモデルケースとなることを目指します。

Core Members

植野 映 つくば国際ブレストクリニック
大津留 晶 長崎大学 原爆後障害医療研究所
覚道 健一 和泉市立総合医療センター 病理診断科
祖父江 友孝 大阪大学大学院医学系研究科 環境医学
高野 徹 りんくう総合医療センター 甲状腺センター
津金 昌一郎 国立がん研究センター 社会と健康研究センター
日高 洋 大阪大学大学院医学系研究科 病院臨床検査学
緑川 早苗 宮城学院女子大学 食品栄養学科

International Advisory Members

Deborah H Oughton Centre of Environmental Radioactivity, Norwegian University of Life Sciences Norway
Wendy Rogers Department of Philosophy and Department of Clinical Medicine, Macquarie University Australia
Hanneke M van Santen Pediatric Endocrinology, Wilhelmina Children's Hospital, Utrecht Netherlands
Vicki J Schnadig Department of Pathology, University of Texas Medical Branch U.S.A.