大阪大学大学院医学系研究科
臨床検査診断学
腫瘍研究チーム

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甲状腺腫瘍は非常に頻度が多い疾患で小さいものまで含めると成人の10%以上に認められるといわれます。その中でも甲状腺癌は、転移・浸潤を早期に起こすが予後が非常に良いものが多いこと、遺伝性を示す髄様癌、非常に悪性度の高い未分化癌等、バラエテイーに富んでいること等、ヒトの腫瘍発生のメカニズムを考える上で非常に興味深い腫瘍です。当グループは新しくできた小さなグループではありますが、甲状腺腫瘍の診療と新しい診断・治療法の研究開発を中心に積極的な活動を行っています。また阪大病院臨床検査部、および関連病院との共同研究も行っています。

1. 研究室メンバー(クリックで詳細へ)

講師     高野 徹
大学院   松本 智紗, 山川 法子
学部生   伊達 亜理沙
  


アメリカ甲状腺学会誌の表紙で取り上げられた芽細胞発癌説(2005年)。それまで異端とされてきた学説が突如メジャーになった瞬間です。


2. 研究内容         自分流から世界標準へ
             −甲状腺から始まる癌の診療革命ー


我々は過去のしがらみにとらわれない、新しいことが今日からすぐに研究できる、といった小さいグループならではの強みを生かし、10年、20年先の医療を革命的に変えることを目指して、常に将来を見据えた斬新で挑戦的な研究を続けています。当グループが最初に始めた研究の多くが世界的標準になりつつあります。

1)日本人が提唱した新しい発癌モデル、芽細胞発癌説(Fetal Cell Carcinogenesis)
        ー癌は胎児性細胞から直接発生するー


Nature Reviews Endocrinologyで甲状腺癌の新しい発癌モデルとして紹介されました。
  (Lin RY, Thyroid Cancer Stem Cell, 7:609, 2011)


従来、癌の発生機序のモデルとしては、良性または正常な細胞が分裂を繰り返すうちにゲノムにエラーを生じ、悪性形質を獲得して「癌化」するのであると考えられてきました(多段階発癌説)。しかし、この説では甲状腺のように細胞がほとんど再生・増殖しない臓器からの癌の発生を説明できません。我々は世界で最初に甲状腺癌の遺伝子発現プロフィールの作成に成功し、そのエビデンスに基づき、新しい発癌モデルとして「癌は分化した細胞が脱分化するのではなく、発生途上で出現する未分化な芽細胞が分化することなく遺残したものから発生する」とする「芽細胞発癌説(fetal cell carcinogenesis)」を提唱しました(2000年)。近年、この理論の予測するとおり癌幹細胞(Cancer Stem Cell)が同定され、癌に対する見方・考え方は大きな転換期を迎えようとしています
。芽細胞発癌説は代表的な研究誌の総説として取り上げられ、多段階発癌説の対立軸として重要な理論とみなされるようになりました。

◎2005年 アメリカ甲状腺学会誌Thyroid 5月号に総説・表紙として大々的に取り上げられました。
◎2007年 癌研究の代表的な総説誌であるSeminars in Cancer Biologyで初めて癌幹細胞特集号が組まれ
       日本人の論文ではただ一報、芽細胞発癌説が掲載されました。
◎2009年以降、国際学会のシンポジウムや代表的な学術誌の総説で甲状腺癌の新しい発癌モデルとして多く取り上げられています。

癌の発生について:新しい発癌仮説ー芽細胞発癌説(fetal cell carcinogenesis)

2)穿刺吸引核酸診断法の開発
(Aspiration Biopsy Nucleic Acid Diagnosis, ABND)
我々は甲状腺腫瘍の術前診断法として、腫瘍を穿刺した検体より核酸を抽出して解析することより良悪を判定する穿刺吸引核酸診断法(ABND)を世界で初めて開発しました。

A. 甲状腺濾胞癌の鑑別マーカーとしてTFF3(trefoil factor 3)の同定に成功しました(特許が成立しました)。


TFF3 mRNAは現在世界各国の多くの追試で濾胞癌を含む甲状腺癌鑑別のベストマーカーとして記載されています。また最近、穿刺検体でのTFF3 mRNA測定法の開発(フィルター濾過法)に成功し、いよいよ実用化を目指した実地検討を開始します。甲状腺腫瘍は非常に頻度が高く、検査法が開発されれば甲状腺の領域では抗TSHレセプター抗体(TRAb)測定法の開発に匹敵する20年ぶりの快挙であると考えられています。是非、関係諸氏のご助力・ご支援をお願いいたします。
(ふぁっつ・にゅうもご覧ください。詳しくは 総説を参照してください。Takano T and Yamada H Trefoil Factor 3 (TFF3): A promising indicator for diagnosing thyroid follicular carcinoma. Endocr J 56: 9-16, 2009 http://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj/56/1/9/_pdf.)


 
(甲状腺癌鑑別のベストマーカーとしてのTFF3)(穿刺検体でのTFF3測定プロトコール:フィルター濾過法Ver.2


B. 悪性リンパ腫の簡易判定法としてVR法を開発しました       
   
(VR法の基本原理)(VR法 プトロコール
(特許が成立しました)

3)遺伝子発現を指標に組織中の細胞を分別するFACS-mQ
(平成21−22年度日本臨床検査医学会学術推進プロジェクト)

芽細胞発癌説によると次世代癌研究に必須の技術は細胞1個1個の遺伝子発現パターンを検出することであることになります(細胞発現プロフィール)。しかし、現状ではそのような方法は確立されていません。我々はあらゆる細胞内・核内蛋白、mRNAの発現を検出し、その発現パターンを指標に細胞を選別して、選別された細胞の遺伝子発現プロフィールを作成するFACSーmQ(mRNA quantification after FACS)の開発を進めています。

◎FACS-mQの論文が続々発行されています。参考文献をご覧ください。
(FACS-mQプロトコールー免疫染色編) (FACS-mQプロトコールーISH編)

4)新規甲状腺特異的遺伝子Tensin3
甲状腺に極めて特異的に発現する新規遺伝子としてTensin3を同定することに成功しました。今後、甲状腺疾患の病態解析や、診断法の確立に役立つことが期待されます。(臨床検査部技官 前田育宏氏の研究成果です。)


各種組織におけるTensin3 mRNAの発現
   

3. 研修医、大学院生、研究生募集

 当チームで診療、研究に従事したいという希望を持っている人を募集しています。
学歴、職歴、資格、経験等一切問いませんが、強靱な体力と柔軟な思考を持った若い人を望みます。特に遺伝子解析や細胞・組織培養等本格的なバイオの技術を身につけたいと希望している人を歓迎します。まずはメールで
ttakano@labo.med.osaka-u.ac.jp


★直接つかまえて話を聞きたい人は

(学会予定)

6月3日(日) 日本臨床細胞学会(幕張メッセ)
ワークショップ 甲状腺腫瘍の最前線〜診断から個別化治療まで〜
甲状腺濾胞癌の分子診断法


 


<ふぁっつ・にゅう> 1月27日更新((またまた久しぶりの更新です。もはやふぁっつ・おーるどか?)

とりあえずクリックしてみてください。よろしく。

各種参考文献