大阪大学大学院医学系研究科
甲状腺腫瘍研究チーム

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2/2 最新の論文が出ました。 Natural History of Thyroid Cancer (Review)
無料PDF::https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj/advpub/0/advpub_EJ17-0026/_article

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甲状腺腫瘍は非常に頻度が多い疾患です。その中でも甲状腺癌は、転移・浸潤を早期に起こすが予後が非常に良いものが多いこと、遺伝性を示す髄様癌、非常に悪性度の高い未分化癌等、バラエテイーに富んでいること等、ヒトの腫瘍発生のメカニズムを考える上で非常に興味深い腫瘍です。また、2011年の福島原発事故以降、社会的な注目を集める疾患でもあります。当グループは大阪大学学系研究科内分泌代謝内科・病院臨床検査学・保健学専攻生体情報科学講座のメンバーで構成され、甲状腺腫瘍の診療と新しい診断・治療法の研究開発を中心に世界をリードする研究を進めています。

1. 研究室メンバー(クリックで詳細へ)

内分泌代謝内科学講師・阪大病院臨床検査部副部長     高野 徹
医学系研究科大学院博士課程              中谷 理恵子
保健学専攻大学院                   深野 晴香 中川 詩織
保健学科学部生                    藤本 柚芽

研究協力者

病院臨床検査学講座准教授・阪大臨床検査部部長 日高 洋
保健学専攻生体情報科学講座教授        岩谷 良則 
保健学専攻生体情報科学講座准教授       渡邊 幹夫
  


アメリカ甲状腺学会誌の表紙で取り上げられた芽細胞発癌説(2005年)。それまで異端とされてきた学説が突如メジャーになった瞬間です。


2. 研究内容  日本から、甲状腺から始まるがん診療の大転換

我々は過去のしがらみにとらわれない、新しいことが今日からすぐに研究できる、といった小さいグループならではの強みを生かし、10年、20年先の医療を変えることを目指し、挑戦的な研究を続けています。当グループが最初に始めた革新的な研究のいくつかは世界的に広く知られています。

1)日本人が提唱した新しい発癌理論、芽細胞発癌説(Fetal Cell Carcinogenesis)
多段階発癌説が誤っていると考えれば甲状腺癌は理解できる!ー


 転移をしていても治療をすべきでない癌が存在する:癌は早期発見・早期治療から「治療すべきでない癌」を見つけ出す段階へ!

2014年、韓国における甲状腺癌の過剰診断問題、日本における甲状腺微小乳頭癌の長期経過観察のデータ、福島県民健康調査により、芽細胞発癌説を支持する臨床データが出されました。

従来、癌の発生機序のモデルとしては、良性または正常な細胞が分裂を繰り返すうちにゲノムにエラーを生じ、悪性形質を獲得して「癌化」するのであると考えられてきました(多段階発癌説)。しかし、この説では甲状腺のように細胞がほとんど再生・増殖しない臓器からの癌の発生を説明できません。我々は世界で最初に甲状腺癌の遺伝子発現プロフィールの作成に成功し、そのエビデンスに基づき、新しい発癌モデルとして「癌は分化した細胞が悪性化するのではなく、発生途上で出現する未分化な芽細胞が分化することなく遺残したものから発生する」とする「芽細胞発癌説(fetal cell carcinogenesis)」を提唱しました(2000年)。近年、甲状腺癌においてこの理論の予測するとおりの実験的・臨床的エビデンスが蓄積され、癌に対する見方・考え方は大きな転換期を迎えようとしています


◎2005年 アメリカ甲状腺学会誌Thyroid 5月号に総説・表紙として大々的に取り上げられました。
◎2007年 癌研究の代表的な総説誌であるSeminars in Cancer Biologyで世界で最初の癌幹細胞特集号が組まれ、日本人の論文ではただ一報、芽細胞発癌説が掲載されました。
◎2009年以降、Nature Review Endocrinology, J Clin Endcrinol Metab, Oncogene等代表的な学術誌の総説で甲状腺癌の新しい発癌モデルとして取り上げられています。

〇芽細胞発癌説に基づく甲状腺癌の新しい考え方・特に最近の過剰診療問題に関する解釈については下記の文献または解説をご参照ください。

【英語論文】
Natural History of Thyroid Cancer (Review) Endocrine Joural (2017, in press)
無料PDF
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj/advpub/0/advpub_EJ17-0026/_article
(人類史上初めて明らかになった治療すべきでない癌について記載した芽細胞発癌説の最新論文です)


【日本語文献】
1.Thyroid Cancer Exploler 2巻1号 p40-43, 2016 甲状腺癌の発生機序:芽細胞発癌の立場から
2.臨床化学 45巻2号 ジャーナルトピックス1 甲状腺がん過剰診断問題が鳴らす多段階発癌に基づいた癌診療への警鐘
3.日本甲状腺学会雑誌 7巻1号 解説:見えてきた甲状腺癌の自然史と2種類の乳頭癌

癌の発生について:新しい発癌仮説ー芽細胞発癌説(fetal cell carcinogenesis)

2)穿刺吸引核酸診断法(Aspiration Biopsy Nucleic Acid Diagnosis, ABND)
甲状腺腫瘍の術前診断法として、腫瘍を穿刺した検体より核酸を抽出して解析することより良悪を判定する穿刺吸引核酸診断法(ABND)を世界で初めて開発しました。


A. 甲状腺濾胞癌の鑑別マーカーとしてTFF3(trefoil factor 3)の同定に成功しました

TFF3 mRNAは世界各国の追試で濾胞癌を含む甲状腺癌鑑別のベストマーカーとして記載されています。検査法が実用化されれば甲状腺の領域では抗TSHレセプター抗体(TRAb)測定法の開発に匹敵する30年ぶりの快挙となります。臨床治験が開始されています。


(甲状腺癌鑑別のベストマーカーとしてのTFF3)(
穿刺検体でのTFF3測定プロトコール:フィルター濾過法Ver.2

B. 悪性リンパ腫の簡易判定法としてVR法を開発しました       

(VR法の基本原理)
(VR法 プトロコール
(特許が成立しました)

3)幹細胞・癌幹細胞解析の新技術、FACS-mQ
芽細胞発癌説によると次世代癌研究に必須の技術は細胞1個1個の遺伝子発現パターンを検出することであることになります。しかし、従来のFACSでは、細胞表面抗原に対する抗体を使用して細胞を生きたまま採取して後で培養する等複雑で時間のかかる操作が必要です。我々はFACSのこのような欠点を克服するため、細胞をRNAを保持した状態で固定・蛍光標識し分離するFACSーmQ(mRNA quantification after FACS)の開発を進めています。この方法だと、細胞表面抗原に限らず、細胞内・核内抗原の標識も可能でさらにmRNA等での分別も可能です。また、採取後の解析も細胞が既に固定されているのでmRNAを抽出して遺伝子発現プロフィールを解析するだけで、非常に迅速・簡便になります。FACS後にもほとんどRNAの分解がない新しいプロトコールを開発しました。特許申請後に公開しますのでしばらくお待ちください。

FACS-mQ よくある質問

FACS-mQプロトコールー 免疫染色編(Ver.2:近日中にVer.3となります。)

FACS-mQプロトコールー ISH編

4)新規甲状腺特異的遺伝子Tensin3
甲状腺に極めて特異的に発現する新規遺伝子としてTensin3を同定することに成功しました。今後、甲状腺疾患の病態解析や、診断法の確立に役立つことが期待されます。(阪大病院臨床検査部技官 前田育宏氏の研究成果です。)


各種組織におけるTensin3 mRNAの発現

   

3. 医師向け:実践!甲状腺癌診療マニュアル
  
甲状腺結節の診療にまだ自信が持てない内科医等を対象にした甲状腺癌診断のわかりやすいマニュアルです。

1. 芽細胞発癌に基づく甲状腺結節性病変の簡単な診断法

2. 穿刺吸引細胞診


4. 研修医、大学院生、研究生募集

 当チームで診療、研究に従事したいという希望を持っている人を募集しています。
学歴、職歴、資格、経験等一切問いませんが、強靱な体力と柔軟な思考を持った若い人を望みます。特に遺伝子解析や細胞・組織培養等本格的なバイオの技術を身につけたいと希望している人を歓迎します。まずはメールで
ttakano@labo.med.osaka-u.ac.jp


★直接つかまえて話を聞きたい人は

(学会予定)

5月26(金), 26日(土)
日本内分泌外科学会総会
特別講演:芽細胞発癌:日本から、甲状腺から始まった癌診療の大転換

 


<ふぁっつ・にゅう>

若年者の甲状腺癌をどう扱うか(2015/11/2)

アインシュタインは偉かった(2016/2/4)

多段階発癌VS芽細胞発癌VS癌幹細胞説(2016/5/28)

芽細胞発癌が変えた癌の常識(2016/7/16)

2つの原発事故と甲状腺癌研究(2016/9/16)

2つの甲状腺癌(2016/10/28 情報追加:剖検例から見た甲状腺がんの発生時期)

今後予想される甲状腺癌診療の大転換(2017/1/5)

多段階発癌説で見た福島県民健康調査と微小癌の経過観察(2017/1/14)

各種参考文献