大阪大学大学院医学系研究科
甲状腺腫瘍研究チーム

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  (7/10更新:過剰診断についての情報:学校検診が過剰診断の悲劇を生む)

*最新の論文は下記から読めます。*

@Overdiagnosis of thyroid cancer: The children in Fukushima are in danger
Arch Pathol Lab Med 143:660-661, 2019 https://www.archivesofpathology.org/toc/arpa/current

A週刊医学のあゆみ Vol260: 229-230 芽細胞発がん説ー甲状腺からはじまったがん診療のパラダイムシフト(TOPICS)

B日本リスク研究学会誌 Vol28(2):67-76 福島の甲状腺がんの過剰診断ーなぜ発生し、なぜ拡大したか(https://doi.org/10.11447/sraj.28.67

 

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甲状腺腫瘍は非常に頻度が多い疾患です。その中でも甲状腺癌は、転移・浸潤を早期に起こすが予後が非常に良いものが多いこと、遺伝性を示す髄様癌、非常に悪性度の高い未分化癌等、バラエテイーに富んでいること等、ヒトの腫瘍発生のメカニズムを考える上で非常に興味深い腫瘍です。また、2011年の福島原発事故以降、社会的な注目を集める疾患でもあります。当グループは大阪大学学系研究科内分泌代謝内科・病院臨床検査学のメンバーで構成され、甲状腺腫瘍の診療と新しい診断・治療法の研究開発を中心に世界をリードする研究を進めています。

1. 研究室メンバー(クリックで詳細へ)

内分泌代謝内科学講師・阪大病院臨床検査部副部長     高野 徹
医学系研究科大学院博士課程              中谷 理恵子
医学系研究科大学院修士課程              日高 汐海


研究協力者

病院臨床検査学講座准教授・阪大臨床検査部部長 日高 洋   


アメリカ甲状腺学会誌の表紙で取り上げられた芽細胞発癌説(2005年)。それまで異端とされてきた学説が突如メジャーになった瞬間です。


2. 研究内容  日本から、甲状腺から始まるがん診療の大転換

我々は過去のしがらみにとらわれない、新しいことが今日からすぐに研究できる、といった小さいグループならではの強みを生かし、10年、20年先の医療を変えることを目指し、挑戦的な研究を続けています。当グループが最初に始めた革新的な研究のいくつかは世界的に広く知られています。

1)日本人が提唱した新しい発癌理論、芽細胞発癌説(Fetal Cell Carcinogenesis)
 -転移をしていても治療をすべきでない癌が存在する:癌は早期発見・早期治療から「治療すべきでない癌」を見つけ出す段階へ!
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従来、癌の発生機序のモデルとしては、良性または正常な細胞が分裂を繰り返すうちにゲノムにエラーを生じ、悪性形質を獲得して「癌化」するのであると考えられてきました(多段階発癌説)。しかし、この説では甲状腺のように細胞がほとんど再生・増殖しない臓器からの癌の発生を説明できません。我々は世界で最初に甲状腺癌の遺伝子発現プロフィールの作成に成功し、そのエビデンスに基づき新しい発癌モデルとして「癌は分化した細胞が先祖返りして悪性化するのではなく、発生途上で出現する未分化な芽細胞が分化することなく遺残したものから直接発生する」とする「芽細胞発癌説(fetal cell carcinogenesis)」を提唱しました(2000年)。韓国における甲状腺癌の過剰診断問題、日本における甲状腺微小乳頭癌の長期経過観察のデータ、福島県民健康調査のデータ等、近年甲状腺癌においてこの理論の予測するとおりの実験的・臨床的エビデンスが報告されるようになり、癌に対する見方・考え方は大きな転換期を迎えようとしています


◎2005年 アメリカ甲状腺学会誌Thyroid 5月号に総説・表紙として大々的に取り上げられました。
◎2007年 癌研究の代表的な総説誌であるSeminars in Cancer Biologyで世界で最初の癌幹細胞特集号が組まれ、日本人の論文ではただ一報、芽細胞発癌説が掲載されました。
◎2009年以降、Nature Review Endocrinology, J Clin Endcrinol Metab, Oncogene等代表的な学術誌の総説や教科書で甲状腺癌の新しい発癌モデルとして取り上げられています。


【英語論文】
Natural History of Thyroid Cancer (Review) Endocrine Joural (64:237-244, 2017)
無料PDF
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj/64/3/64_EJ17-0026/_article

【日本語論文】
芽細胞発がん説ー甲状腺からはじまったがん診療のパラダイムシフト(TOPICS)週刊医学のあゆみ Vol260: 229-230、2019.


癌の発生について:新しい発癌仮説ー芽細胞発癌説(fetal cell carcinogenesis)

)若年者の甲状腺癌の過剰診断問題
 ーSelf-limiting Cancerは早期診断・早期治療をしてはいけない!-


我々は芽細胞発癌説の理論から、転移・浸潤はするものの途中で成長を止めてしまうため一生患者に悪さをしないSelf-limiting Cancerが若年者に高頻度で存在することを予想していました。このSelf-limiting Cancerは従来の多段階発癌説では想定しえないものです。Self-limiting Cancerを早期診断・早期治療することは過剰診断につながり、対象者に害をもたらします。我々は無症状の対象者に対する甲状腺超音波スクリーニングの危険性を訴え、情報提供することで過剰診断の抑制に取り組んでいます。

若年者の甲状腺がんの過剰診断についての情報

110分でわかる甲状腺がんの自然史と過剰診断

210分でわかる甲状腺超音波検査の危険性

310分でわかる子供の甲状腺がんの過剰診断の恐ろしさ

4)甲状腺がんの過剰診断Q&A

5) 甲状腺超音波検査によるスクリーニング:海外の専門家の意見は?

6) 学校検診が過剰診断の悲劇を生む

7) 福島の若者の未来を守るための3原則(2017/12/2)

【英語論文
 Overdiagnosis of thyroid cancer: The children in Fukushima are in danger
 Arch Pathol Lab Med 143:660-661, 2019 https://www.archivesofpathology.org/toc/arpa/current

 日本語訳はここから

【日本語論文
 福島の甲状腺がんの過剰診断ーなぜ発生し、なぜ拡大したか日本リスク研究学会誌 Vol28(2):67-76 (https://doi.org/10.11447/sraj.28.67


福島県有識者会議における発言要旨

福島県民健康調査検討委員会・甲状腺評価部会における野徹委員の甲状腺検査に関する発言要旨をまとめてあります。なお、記憶に基づいて記載していますので正確なところは福島県のホームページ等でご確認ください。

 

3)穿刺吸引核酸診断法(Aspiration Biopsy Nucleic Acid Diagnosis, ABND)
甲状腺腫瘍の術前診断法として、腫瘍を穿刺した検体より核酸を抽出して解析することより良悪を判定する穿刺吸引核酸診断法(ABND)を世界で初めて開発しました。

(甲状腺癌鑑別のベストマーカーとしてのTFF3)(穿刺検体でのTFF3測定プロトコール:フィルター濾過法Ver.2

4)幹細胞・癌幹細胞解析の新技術、FACS-mQ
芽細胞発癌説によると次世代癌研究に必須の技術は細胞1個1個の遺伝子発現パターンを検出することであることになります。しかし、従来のFACSでは、細胞表面抗原に対する抗体を使用して細胞を生きたまま採取して後で培養する等複雑で時間のかかる操作が必要です。我々はFACSのこのような欠点を克服するため、細胞をRNAを保持した状態で固定・蛍光標識し分離するFACSーmQ(mRNA quantification after FACS)の開発を進めています。この方法だと、細胞表面抗原に限らず、細胞内・核内抗原の標識も可能でさらにmRNA等での分別も可能です。また、採取後の解析も細胞が既に固定されているのでmRNAを抽出して遺伝子発現プロフィールを解析するだけで、非常に迅速・簡便になります。

FACS-mQプロトコールー 免疫染色編(Ver.2:近日中にVer.3となります)

 




ふぁっつ・にゅう(そのうち再開します)


 
当研究室の研究内容を紹介した海外論文

最近の国際論文で当研究室の研究業績を紹介しているものを解説します。

 連絡先   ttakano@labo.med.osaka-u.ac.jp


★直接つかまえて話を聞きたい人は

(学会/講演会予定)

201811月10日(土)

日本リスク研究学会年次大会(コラッセふくしま)

全体セッション:福島の今と未来・リスク学の今と未来

福島の甲状腺癌の過剰診断:なぜ発生し、なぜ拡大したか