2018年3月1日 NHK,共同通信

原発事故 甲状腺がんの子ども約1割の8人に再発し手術

(記事)東京電力福島第一原発の事故のあと甲状腺がんと診断された子どもの支援を行っている民間の基金が、子どもたちの手術後の経過を調べたところ、およそ1割に当たる8人ががんを再発して再手術を受けていたことがわかりました。

(記事についての見解)

1.福島の子供の再発率は非常に低い

子どもの甲状腺癌は増殖能・転移能ともに強く、再発しやすいことが知られています。1900年代のアメリカのデータでは約40%, 2016年のイタリアのデータでは、甲状腺全摘と放射線治療のフルコースの治療を行った子どもでも約15%に再発しています。福島県では非常に抑制的な手術が行われていると聞いていますので、通常ならばこれらより再発率は高くなるはずですがそうなっていません。再発率は非常に低いとみるべきです。またアメリカ、イタリアのデータでは、再発例であってもその後死亡したケースは極めて稀です。再発したから経過が悪くなる、ということを考える必要はありません。さらに言うと、これら再発例の多くは術後1年以内です。甲状腺がんは通常の経過では年単位でしか増大しませんので、子どもの甲状腺がんの場合、生検や手術といった侵襲的な操作が再発を誘発し、寝た子を起こした形になっている可能性も否定できません。

 2.超音波による早期診断・早期治療は無駄である

今回再発した子どもは臨床的な症状がでて発見されたものではなく、超音波で偶然見つかった症例であると思われます。すなわち、超音波によって通常より早期に発見され、手術で早期に治療されたものです。それでも再発したということは、超音波検査による早期発見・早期治療では再発を防げない、ということを明確に証明しています。これは、子どもの甲状腺がんは周りに広がる性質が強く、超音波でしか見つからないような小さな段階から首のリンパ節には広がってしまっているからです。ただし、そのような状態でもそのほとんどはいずれ成長を止めますので命をとられることはないです。

 3.福島県では甲状腺がんの過剰な治療が行われている可能性がある

再手術をされた8名の子どもについてですが、最初の手術は必要であったのでしょうか?超音波検査をしなければ最初の手術の段階で甲状腺がんがあることはわからなかったはずです。すなわち再発時に首のリンパ節が腫れてきたのがわかった時点で手術すれば手術は1回で済んだのです。最初の治療は早く見つけすぎたことによる無駄な手術であった、ということになります。さらに、1回目の手術の後は再発が無いかどうかは超音波検査によって確認されていると思われます。そうであるとすれば、再発があった、ということも超音波によってはじめてわかった症例もあるものと思われます。そのような子どもたちは超音波検査を受けなければ現在どうなっていると考えられるでしょうか。まだ自分に甲状腺がんがあることさえ知らずに、1回も手術を受けていないはずです。このように、子どもの甲状腺がんを診断・治療する場合、そのタイミングを間違えてはいけません。早すぎる診断・治療は子どもに大きな負担をかけます。特に、超早期で見つかったものを、「まだ小さいから」という理由で切除範囲を縮小して手術すると、後々何回も再発に悩まされることになりかねません。

*このような専門的な内容を含む報道は情報提供者の見解を一方的に伝えるのではなく、きちんとした専門家のコメントと一緒に報道されるべきだと思います。報道機関の方々にはご自身が福島の子どもたちにとって加害者の立場になりえることを自覚した上で慎重な報道を望みます。共同通信の記事には専門家の意見が記載されていますが、匿名でしか意見を述べることができない専門家のコメントは信用に値しません。


大阪大学医学系研究科甲状腺腫瘍研究チーム:ホームへ戻る