ふぁっつ・にゅう

 

                      芽細胞発癌が変えた癌の常識

  近年、甲状腺癌において従来の常識を覆すようなデータが次々に出されていますが、これらは随分前に我々が芽細胞発癌説で予測してきたことです。芽細胞発癌説の講演をするとき、聞いていただいた方の一部からはあまりにドラスティックな変化に戸惑いの声も聞かれます。しかし、これが現実で、従来甲状腺癌は癌の常識から外れた変わり者のであるといわれてきましたが逆に癌の常識が誤っていたために甲状腺癌が”変な癌”に見えていたのです。我々のグループはその違和感にいち早く気づいて警鐘を鳴らしてきました。いくつかの重要なポイントについて今回まとめてみようと思います。

1.早期発見・早期治療がふさわしくない癌が存在する。
少なくとも甲状腺では特に治療しなくても一生患者に害を及ぼさない癌が多数存在する。これらの癌は悪性に変化しない、のではなく転移能等の悪性形質はすでに持っているがある程度増殖すると成長を止める性質があるのである。これらを早期発見・早期治療することは過剰診療となる。

2.転移していることが進行した癌ということにはならない。
甲状腺癌は1cm程度の小さな癌でも50%に顕微鏡的頸部リンパ節に転移を認める。そのほとんどがそのまま成長を止めるのでこれらの癌を手術せずに経過観察しても癌死することはない。 したがって、少なくとも顕微鏡的な頸部リンパ節転移についてはそれがあるから進行例ということにはならない(福島県民健康調査で手術された未成年の甲状腺癌の70%i以上に頸部リンパ節転移を認めたことから、これらの症例を進行例だと定義する研究者もおられますが私はこの説には反対です)。

3.良性の細胞が悪性化することはない。
これは、「良性の細胞が悪性化することを証明するエビデンスは無い。」と言い換えた方が良いでしょう。実際に無いのです。エビデンスが無いのになぜこれを多くの研究者が常識と考えてきたのか、がある意味面白いところです。唯一例外のように思えるがのが分化癌組織から未分化癌が発生する点ですが、これについても我々が以前から論文で指摘しているように、分化癌の細胞が未分化癌の細胞に変化する、ということとイコールではありません。分化癌の細胞が未分化癌の細胞に変化するという仮説に否定的なエビデンスは存在しますが、肯定的なエビデンスは実は存在しません。

大阪大学医学系研究科甲状腺腫瘍研究チーム:ホームへ戻る