ご挨拶

平成26年度の始まりに際して

この4月から概算要求新規事業として採択された 「死因究明学」の創造と担い手養成プラン が始まりました。この事業の発案に関するコンセプトは、20世紀後半から今まで、すさまじい速度で進歩してきた臨床での病態解明、診断機器、創薬に、死因究明の分野も追いつき追い越すことです。死因究明に関わる学問領域としては病理学、私ども法医学等がありますが、いずれもそれぞれの専門分野の業務量が膨大になり、死因究明全体の向上に全力投球ができない現状にあります。また、それを補うために画像分野ではAi(オートプシイメージング、死亡時画像診断)も出てきました。そこで、新たに「死因究明学」という学問領域を創り、死因究明に関する実務の向上を図るとともに、死亡機序等の研究を行います。日本における医療資源や最先端の研究力を生かし、死因診断基準(案)の制定とともにその基準からはずれた死因等を検討することで、10万人とも報告されている心臓性突然死の予防や感染症対策、脳症の予防等に貢献できるものと考えております。

 解剖という手段にいろいろとお思いかも知れません。しかしながら、上記のことを明らかにするためにも解剖という手段は必要であり、そこから得られる所見から診断機器の有効性も科学的に示すことができることを医療関係者のみならず、このホームページをご覧いただいた方々にご理解いただきたいと思います。その一方で画像機器や診断機器でなければわからないこともあります。今後の検討の結果、的確な死因診断を行うためのガイドライン(案)も構築し、死因究明の道筋をお示しできればと思っております。教室員の皆さんは、大阪大学は死因究明の先鋭であるという認識を持ち研鑽を積む必要があります。結果として、私どもは大学病院の外科医の手術手技と同様に、あるレベル以上の解剖手技はもとより、他の医療資源を用いてより正確な死因診断を行うとともに、突然死等の予防を目指して参ります。

 一方、研究については、death-oriented researchを主に進めていく必要があります。上記の死因診断基準(案)では診断できない死亡例や、突然死例から、何が原因なのか考える必要があります。出生前後における胎内環境から外部環境の変化、ここで起こるモレキュラーレベルの動態。幼児期から学童期に至る免疫能と変化。思春期における二次成長と骨格の変化。青年期における成熟。中高年期における体内環境の変化。これらを目に見えない変化を理解するとともに未知なるものへとアプローチしていかなければなりません。たとえば、アルコール研究がなぜ続くのかもエタノールの分子量46に隠されています。教室員の皆さんは、この大阪大学の最先端資源を活用しながら一歩一歩明らかにして行きましょう。このページをご覧いただいた方には、不幸な死を防ぐべく日夜邁進して参りますので、ご期待いただければ幸いです。

 最後に、教育は柱です。私を越え、教室員を越えることで、若き人はより新しい知識と技能を持って死因究明学を担うことができます。自ら持つ能力を若き人にいかに伝えるかについても研鑽を積むとともに、医学部学生に教授して参りましょう。

趣味は野球と水泳。野球のポジションは投手でその面白さを札幌医大時代に野球部学生と院生(共に現在整形外科医)に教わりはまる。11種類の変化球を投げられるまで成長した。阪大に異動後は職員野球部に入るとともに医学部野球部の監督を務めているが、どちらも練習と試合に出られないのが悩み。水泳はオールラウンダで、いずれは世界マスターズで…と妄想を持つ。SUDOKUと自己満の詩作は飛行機移動中にて。

平成25年5月