講座紹介

概要と沿革

 20世紀後半から、物理学、工学、薬学、情報工学、コンピュータ科学などの進歩を集約して、X線CT、MRI、PETなどの生体画像解析技術が著しい進歩を遂げました。中でもPETは、画像診断法として医療の重要な一端を担う一方、生体内分子動態を定量的に追跡し、生理機能を可視化する技術として生命科学の重要な研究手法となりました。

 文部科学省はこの分野の研究推進を支援するため、平成17年度より分子イメージング研究プログラムを開始しました。大阪大学は“分子イメージング研究をサイエンスとして根付かせるための大学院教育プログラム”の国内3拠点の一つに選定され、医学系研究科修士課程科目「PET分子イメージング」を立ち上げ、大阪大学臨床医工学融合研究教育センターを基盤として大学院生を対象に講義・実習を行いました。これと並行して、医学系研究科では、分子イメージング教育・研究の推進を目的として、放射性同位元素等使用施設の改修、研究用粒子加速器の設置、新規標識合成装置や最新型小動物用PETの導入を基盤としたPET分子イメージングセンターの設置を進めました。本寄附講座は、これらの医学系研究科共同利用施設を基盤として分子イメージング研究推進の中核となるとともに、学部教育や大学院教育を通じて分子イメージング技術を活用できる基礎医学研究者や医師の教育を担う目的で、開設の趣旨に賛同した塩野義製薬株式会社の寄附により平成21年10月に設立されました。

 開設後の本寄附講座は、PET分子イメージングセンターの運営において中心的役割を果たし、加速器の運転・管理、放射性核種標識合成、動物のイメージング、画像解析を行う一方、医学部学生、大学院生、学内外の研究者の教育、海外研究者の研修、社会への情報発信を続けてきました。また、独自の研究として、PET/MRI装置の開発、小動物における脳循環酸素代謝測定法の確立など、めざましい成果を挙げました。大阪大学免疫学フロンティア研究センターとの共同研究では、炎症反応のイメージングが可能になり、心臓外科との共同研究では心不全に対する再生医療の有効性がPETイメージング技術によって明らかになりつつあります。

 その後、大阪大学は平成23年7月に厚生労働省の早期・探索的臨床試験拠点整備事業に選定されました。この事業により大阪大学医学部附属病院ではPETマイクロドーズ臨床試験施設やPhase-I入院施設の整備が進み、本寄附講座もこれまで中心に展開してきた前臨床研究/試験とともに、臨床における医薬分子イメージング学の構築にも参画することとなりました。現在、学内外の研究シーズを出発点として前臨床研究から臨床試験までを統合し、マイクロドーズ試験の手法を用いて新しい医薬品の開発、疾患の診断法、治療法の開発が行えるよう、基盤獲得と運営体制の整備を精力的に進めています。そして、新しい医薬品開発の手法を確立するとともに、診断法、治療法に発展させ、医療現場へフィードバックしていくシステムを高い信頼性のもとに築きあげることを目的に努力を続けています。

研究の手法

 本寄附講座では、非密封放射性同位元素による分子イメージングを基本的な研究手法としています。

 前臨床研究での主な使用核種はPET用の陽電子核種、γカメラ・SPECT用の単光子核種であり、β線核種やα線核種を用いた研究も行っています。PET核医学では、医学系研究科放射性同位元素等使用施設内のPET分子イメージングセンターに設置された研究専用の粒子加速器と薬剤合成装置を用いてイメージングプローブを標識合成し、動物に投与し、小動物用PET/CT装置や中動物用PET装置、プラナーポジトロン装置などを用いて生体分子イメージングを撮像します。また、1.5T MRI装置やCT装置による形態的画像診断や画像融合など、マルチモダリティーによる機能画像診断も可能です。PET分子イメージングセンター内には一時的な動物飼育設備や免疫染色設備もあり、放射性同位元素投与前後の小・中動物や霊長類の実験、および病理標本の作製が可能です。また、放射性同位元素等使用施設や大阪大学ラジオアイソトープ総合センターでの実験も行っています。

 臨床研究では、大阪大学医学部附属病院内に設置された粒子加速器と薬剤合成装置を用いて、GMPに準拠した安全性の高い体制下でPETイメージングプローベの厳密な製造を行い、研究専用の3-D PET/CT装置で撮像を行います。また、臨床用SPECT/CT装置を用いた研究も可能であり、画像再構成や補正法の開発、データベース作成などを行っています。臨床検査には定量検査も含めて検査の遂行に熟知した専門医師や技師が対応しており、円滑にPET・SPECT検査を施行することができます。検査システムは専用のネットワークで運用され、守秘性を重視する企業治験にも対応しています。

 前臨床研究、臨床研究に共通して、画像解析に必要なコンピューターシステムを整備し、専門知識のあるスタッフが解析にあたっています。

以上について、詳しくは当HPの「研究内容」または、「創薬開発支援」のページをご覧ください。

創薬開発へのサポート

 PET分子イメージングセンターでは、医薬品開発を前提とした前臨床研究においてGLP準拠下の環境で実験を行い、データを得ることが可能です。本寄附講座では学外の利用者にも実験全般に対する協力や指導を行うとともに、環境の整備や管理運営を行っています。

 大阪大学医学部附属病院では、未来医療開発部の協力のもとで医薬品のFirst-in-Human Studyに関連した企業治験や医師主導型臨床治験などを行うことができます。GMPに準拠した薬剤製造環境下で、イメージング製剤の被曝線量測定、非放射性医薬品の薬効評価試験や薬理量決定試験などの定量的評価について、本寄附講座がプロトコールデザインから検査、解析まで主導的に行っています。また、Phase-I入院施設における被験者のリクルートや健康管理も行っています。

 以上について、詳しくは当HPの「創薬開発支援」のページをご覧ください。

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