ご挨拶

「前臨床から臨床へ」

 分子イメージング学は生体内で作用する分子の動きを画像化し、機能を評価する学問分野です。分子イメージングにはX線CT、磁気共鳴断層撮影法(MRI)、光イメージングなど様々な手法を利用しますが、単光子を用いたシンチグラフィーや断層撮影法(SPECT)、陽電子断層撮影法(PET)は体内分子を定量的かつ生理的な状態で可視化する最も有効な手法です。SPECTやPETは、「核医学」として多くの疾患の病態解明、治療選択、治療効果判定に貢献してきました。そして、現在、核医学的手法による分子イメージングは単なる機能画像診断に留まらず、医薬品の体内動態や投与量の最適化、適応症例の決定、副作用発現の推定などが可能になり、より迅速により安全な医薬品を開発するための手法として、創薬の分野に実践的に応用されつつあります。
 私たちの研究室では、大阪大学大学院医学系研究科附属施設であるPET分子イメージングセンターを中心に、放射性同位元素を用いた新しいイメージングプローブの開発や脳・心疾患や悪性腫瘍などを対象とした小・中動物の生体機能評価を行っています。PET分子イメージングセンターでは、研究専用の粒子加速器と薬剤合成装置、動物用PET/CTやMRIなどが整備され、当講座がその運営の中心的役割を果たしています。そして、前臨床研究で得られた成果を臨床研究に展開し、社会に還元するべく、大阪大学医学部附属病院核医学診療科においてPETマイクロドーズ臨床試験体制の構築を行い、産学連携による医薬品候補化合物の開発や薬効評価にも取り組んでいます。  近年、科学研究は安全性や信頼性を社会に対して示すことが責務となっています。私たちは全国に先駆けてGLPやGMPに準拠した研究体制を敷き、得られる成果の信頼性確保に努めてきました。大阪大学というアカデミアから発信された分子イメージング学研究が革新的であると同時に、高い精度で検証された誇れる結果であるよう、私たちは努力を続けてゆく所存です。

下瀬川 恵久

大阪大学大学院医学系研究科
医薬分子イメージング学寄附講座

下瀬川 恵久

トップに戻る